メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『森と氷河と鯨 ほたるの本 ワタリガラスの伝説を求めて』星野道夫

2011-11-08 21:43:09 | 
『森と氷河と鯨 ほたるの本 ワタリガラスの伝説を求めて』星野道夫/文・写真
世界文化社

雑誌『家庭画報』の1995年8月号から連載が始まった同タイトルのエッセーをまとめた1冊。
最初は12回の予定が17回まで延長されたが、道夫さんの事故死によって未完に終わった。
それぞれの章の最初に、ブリティシュコロンビア大学人類史博物館などで撮影した
ワタリガラスの工芸品の写真と、素晴らしいインディアンの詩が載せられている。

道夫さんが出版社に送ったメモには、
「最終的なテーマは、森と鯨と氷河をつなぐものです。つまり森も氷河も鯨も同じものなのではないかということです。つまり時間というものがテーマのような気がします」といっていたそうだ。


「何かがもう終わりに近づいていた。村は捨て去られ、廃墟となり、人びとも少しずつ変わっていった。海はその豊かさを失い、大地は荒れ果てていった。おそらく時が来たのだろう。ワタリガラスがもう一度この世界を作り直す時が・・・」(ハイダ族の神話“ワタリガラスと最初の人々”の最後の章)p.75


リペイトリエイション=帰還。
発掘したものを元に戻し、自然のまま朽ちるようにする運動。

「リペイトリエイションとは、この世を心としてとらえるか、それとも物としてとらえるか、その二つの世界の衝突のようにも思われた。人類学者が、墓を掘り返し、骨を収集し、その研究をするという行為をクリンギット族の人々はおそらく理解できないだろう。そしてその逆に、人類学者は霊的世界の存在を本質的には信じることが出来ないのかもしれない」p.79


クラン=家系

「ぼくは、“人間が究極的に知りたいこと”を考えた。一万光年の星のきらめきが問いかけてくる宇宙の深さ、人間が遠い昔から祈り続けてきた彼岸という世界、どんな未来へ向かい、何の目的を背負わされているのかという人間の存在の意味・・・そのひとつひとつがどこかでつながっているような気がした。けれども、人間がもし本当に知りたいことを知ってしまったら、私たちは生きてゆく力を得るのだろうか、それとも失ってゆくのだろうか。そのことを知ろうとする想いが人間を支えながら、それが知り得ないことで私たちは生かされているのではないだろうか」p.133


▼マスクラット=おっきいネズミ!

▼レインディア=カリブー、トナカイ


クリンギット・インディアンのボブ・サムのミステリアスな人となりが毎回、物語りを引っ張ってゆく。
そして、ベーリング海を渡ってきた人々の流れについての考察が何度も繰り返し述べられている。

「目に見えるものに価値を置く社会」から「見えないものに価値を置くことができる社会」への旅だったと池澤夏樹さんが解説に書いている。


道夫さんの親友であるシリア・ハンターの言った言葉。
“Life is what happen to you while you are making other plans.”
(人生とは、何かを計画している時起きてしまう別の出来事のことである)

本編最後には、道夫さんが最後の取材に出かけた際、事故に遭う直前までの日誌メモがあり、
たくさんの伝説、口伝を集めながら、さまざまな感動をして、写真を撮りまくり、
あとですべてまとめようとしていたことがうかがわれて複雑な思いになった。


妻の直子さんが編集した道夫さんの主な著作をメモ。
(すでに読んだものは★印)

グリズリー アラスカの王者 平凡社 1985
アラスカ 光と風 六興社 1986
ムース 平凡社 1988
アラスカたんけん記 福音館書店 1990
Alaska 極北・生命の地図 朝日新聞社 1990
Alaska 風のような物語 小学館 1991
イニュイック(生命) 新潮社 1993
ARCTIC ODYSSEY 新潮社1994
アラスカ 光と風 福音館書店 1995
旅をする木 文藝春秋 1995
★森へ 福音館書店 1996
ナヌークの贈りもの 小学館 1996
★森と氷河と鯨 ほたるの本 ワタリガラスの伝説を求めて 世界文化社 1996
ノーザンライツ 新潮社 1997
GOMBE メディアファクトリー 1998
★クマよ 福音館書店 1998
星野道夫の仕事(全4巻) 朝日新聞社 1998
長い旅の途中 文藝春秋 1999
★Michio's Northern Dreams(全5巻) PHPエディターズ・グループ 2001
星野道夫の世界 日本通信教育連盟 2002
Alaskan Dreams(全3巻) 阪急コミュニケーションズ 2002
星野道夫著作集(全5巻) 新潮社 2003
魔法のことば 星野道夫講演集 スイッチ・パブリッシング 2003
アラスカ永遠なる生命 小学館文庫 2003
ぼくの出会ったアラスカ 小学館文庫 2004
未来への地図 朝日出版社 2005

コメント (4)

『吾輩は看板猫である』

2011-11-08 21:37:39 | 
『吾輩は看板猫である』(文藝春秋)
梅津有希子/著

ステキな看板にゃんこばかりを特集した1冊
しかも、昭和な店がコンセプトで、食堂、電気屋さんなど、
都内および神奈川で活躍してるコたちを紹介している。
高円寺にやたらと多いんだなあ!
そして、けっこうご高齢な方が多くて立派/驚

100匹の猫がいたら、100匹とも個性が違うってどこかで読んだことがあるけれど納得。
こうして見ると看板猫として働くにゃんこは、キリリとカッコいい!
いや、そもそもにゃんこはみんなふつうにしていても真面目な表情なのか?w


喫茶アカシア
まさに昭和カフェ。高齢のチャーくんは、今年の春に天国へいってしまったという/涙

インドサラサの店@東池袋
うーん、ちょっと遠いかな?


コメント