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メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『BABEL』

2007-05-23 23:55:00 | 映画
『BABEL』

『バベル』を観てきた。
話題作は期待しすぎて肩すかしなときもあるけど、これはさすがの1本。
メキシコ、モロッコ、日本。離れて暮らす人と人が点と点で結ばれたとき、思わぬドラマが生まれた。
タイトルは私も大好きなバベルの塔の名画をモチーフにしたポスターからもわかるように、
天まで届く塔を建てようとした人間を諫めるため、神が一つの言語を話していた人々の言葉を
分けたことで意思の疎通に混乱が生じて、世界中にバラバラに散ったという聖書の物語りを元にしてる。

こうして観ると人がスレ違う理由は、言葉や文化の違いだけじゃないだろう。
「温かい心の喪失」によって、毎日、いろんなところで無用なケンカが起きてる。
国境を挟んだケンカも、それぞれの家庭内でのケンカも、
どちらも同じ重さなんだ。

これだけ繰り返し繰り返し、銃社会が生み出す数えきれない凄惨な悲劇を訴えても、
銃はこれからも量産され続け、流通し続け、事件は起こり続けるだろう。
人の中の恐怖心(むやみにテロに怯えるバスの乗客)や虚栄心(比べられる幼く無知な兄弟)
などがなくならない限り。

でも、一見不幸に見える出来事も、ちゃんと必要な出来事なんだって視点から観たとしたら、
わざわざ海外まで行って巻き込まれた悲惨な事件も、音のない世界に生まれたことも、
大事な人を失ったことも、ひとつひとつすべて大切な意味がある。それに気づけたら、
悲劇も悲劇だけでは終わらない。誰もほんとうは死んでない。
夫婦は互いに許し合い、父娘は悲しみを分かち合い、男の子は命のかけがえない重さを知ったから。

注目の菊池凛子が何度も脱いでたのは意味があるのか?苦笑
いわゆる「体を張った演技」てやつ。
強烈な孤独感を消すために、安易な恋愛で誤魔化そうとした気持ちの演出かも。
裸になることでしか、愛されることができないとでもいいたげな。
酒とドラッグに頼らなきゃ自由になれない若者の姿も悲しいものがある。

問題になった目が眩んだ観客が出たシーンも、ライブハウスで慣れてるせいか、
騒ぐほどじゃなかったし

ブラピのアップで見えた目の周りの皺はいい年輪だ。
妻役のケイト・ブランシェットは、わたしも友だちもお気に入りの女優。
クールビューティで演技派。そして、作品選びのセンスがいい。

徹底して広大なメキシコとモロッコの自然を背景にじっくり撮ったこのロケーションだけで
この作品はもう大成功したようなものだ。冒頭の現地人の歩く姿だけでもリアルに迫ってくる。
メインテーマの曲も静かで作品の複雑で深い感動を壊さず、さらに深みをもたせている。
リップスライムも使われてた?エンドロールに入ってた気がしたけど。

友だちは、外に出てもなお泣いていた。なにかリンクしたのかもしれないな。