「日々これせっせとお薬作り」 -製薬会社新米研究員SIUの日常-

新薬の研究に営む毎日・・・のはず。製薬会社研究職の日常をつたない文章でつづります。

ある一つの生き残り方

2005年11月16日 | 製薬業界トレンド
お昼に良く行く中華料理屋のおじさんが、お気に入りの人には
食前に何かくれます。SIUの場合はしばらくバナナでした。
ところが本日、ヨーグルトに変わりました、SIUやっと
お猿さんから人間に格上げです、めでたいめでたい(笑)
そんな小話はさておき…

最近やわらかい話題ばっかりだった気もしますし。
たまには真面目に業界分析なんかしてみましょうか、と思います。
分析と呼べるか文章になるかわからないところが不安ですが…


以前、先発薬メーカーがジェネリックに手を出すんじゃないかと
書いたんですが、その時にもらったコメントに
「先発品メーカーで研究開発をしたいんだから困る」という
ものがありました(と思う)。

結局、いわゆる大手はジェネリックに手を出していませんので
今のところSIUの予想は見事に外れているのですが…
数日前に日経系の新聞(日経産業新聞だっけな?)を読んでいると
以下のような内容の記事が

「道修町に本社を置く製薬企業数社が、厚生労働省に今後の医薬品
政策について説明を受け、厳しい現状を認識した。
その際『後発品に手を出す気はありませんか?』と尋ねられた」


との事である。
現在一般的な認識として
「政府の医療費抑制政策の一環でジェネリックの取り扱いが
増えることが予想される」というものがある。実際レセプトに
「ジェネリック可・不可」を記入する欄の新設が検討されており
もし導入された場合(どうゆう風に導入されるかも問題ですが)
さらにジェネリックが使われる可能性が増してくるでしょう。

そのような考えを元に、最近ジェネリックメーカーの株価が
あがっているわけですね(沢井製薬とか大洋薬品とか)。
ただジェネリックに使用量が上がったからといって、これら
後発品大手が急激に成長するかと言うと、その可能性は非常に強いが
そのシナリオ通りに進まない可能性もあるわけです。

例えば…
巨大な資本力を持つ外資製薬メーカー(後発専門かもしれません)が
国内の中規模製薬メーカーを買収し、MR数を急激に増やして販売攻勢をかけ
既存のジェネリックメーカーを駆逐してしまう…かもしれません。
(あくまで可能性の一つですよ、ジェネリックメーカーの人、石投げないで_涙)
採算が取れるかどうか?医薬品において日本は米に次ぐ市場規模です。
ましてや今後、ジェネリックが欧米並みに使用率が高まるのであれば
参入するだけの、ビジネスチャンスがある…かもしれません(笑)

また、研究開発型メーカーが参入したら後発品メーカーと比べ
販売力(MRさんの数)の差は、0が一つ違うくらいなので
これも厳しいもの戦いになるでしょう。
ただ、研究開発型メーカーが(いわゆる国内の大手メーカーですね)
後発品事業に参入することは多くの点でメリットがないと
いわれています。その理由はイロイロあると思いますが
大きな点は「コスト競争ができない」ということでしょう。

後発品はドコが作っても同じという考えを元にすれば
(実際どうなのか?とか、同じであっても気分的に…とか、ここでは省きます)
あとは値段勝負になっていくのですが、研究開発型メーカーは
製剤面でもお金をかけていますし
(らしいですが、専門ではないのでよくは知りません)
何よりも給与体系が高いらしいです。
結局、1円を削っていくコスト競争には勝てないとの事です。
ちなみに、このことは数日前の日経でアステラスの社長さん(竹中さん)が
おっしゃっていたので、SIUの思い込みではないと思います。

では国内の大手メーカーが後発品事業に参入し成功する
ビジネスモデルはないのか?
SIUに一つシナリオがあるのですが…
いろんな意味で敵を作ってしまいそうな気がします。

そしてなによりも…
そうな、なによりも…
オクスリツクル製薬で行われた場合、SIUがご飯を
食べれなくなってしまうような提案です(涙)


いいですか、SIUがこうなったらいいなんて思ってるわけでは無いですよ。
そこんとこ、ヨロシク


さて、どんな内容か?
研究部門の多くを解雇します(本気でやめてくれ_涙)
それで販売に力を注力するわけです。
ほら高コスト体質が改善された。

しかしながらそれだと先発品メーカーであったメリットを
充分に享受できませんね、ただ単に社員数が減っただけの
MRさんが多い会社になってしまいますから。
ではどうするか?
まず臨床開発を行う部門に予算と人間を手厚くする。
このことによって、他の後発品メーカーと差がつけられます。
つまり「研究開発メーカー」ではなく
「開発メーカー」になるのです、どちらかというと
後発品は今後導入品が育つまでのつなぎみたいなイメージで
行くのはいかがでしょうか?
(MRさんの現場のことは知らないから、まったくばかげた話をしてるかも
まあその場合は笑い話ということで)

ベンチャーだけでなく、国内のそれなりの規模のメーカーでも
高血圧・糖尿病・肥満・高脂血症・動脈硬化などの生活習慣病の
臨床試験を1社でやるのは物凄いリスクを伴います。
それこそPhIIIで失敗した時は会社が傾きかけないほどのダメージです。
それを一緒に行う代わりに販売権も持つ。
もちろん海外からの導入も行います。
日本支社が充分な販売力を持たない会社なんていいじゃないですかね?

しかしながら研究部門はすべて潰すわけでなく
薬理的な特徴づけ試験などは行えるようにしておけば
他の会社と差がつけられます。そして現場の人間は…
それを使って論文が書ける、めでたしめでたし(笑)
[あくまでクビを切られなければね…涙]

研究所の中でも製剤部門は手厚く保護して
後発品であろうと導入品であろうと
ウチに持ってきたら、一段階価値が上がるって事は
できないかな?動態面が問題で薬にならなかった
化合物って多いと思うんだけど、T1/2が短い物とか…
そんなものを製剤的工夫でどうにかするような研究所。
それが理想です(って、それをSIUが力説する意味がわからないが)

現実味が無いように思えますが、アメリカのFOREST社*は
ほぼこれと同じビジネスプランだと思うんだよな。

さて、こんな提案まったくもって現実味がないでしょうか?
識者のご意見お待ちしております。
(ちなみに入社当初、若気の至りでお偉いさんに言ってみたが
『無理』っていわれました_笑。[もちろん研究部門を切る話は無しで])

補足
<FOREST社>
米国の製薬メーカー名。シード探索には手を出さず
開発に特化するという戦略をとっている。
身近な例で言えば、米国に十分な販売網を持たない
三共の代わりにオルメテック(一般名オルメサルタン:ARB)を
販売し、順調にシェアを伸ばしている。