2016年12月11日
寝台列車は朝の6時半ごろ、「黒海の真珠」と呼ばれる港町オデッサに着く。
映画「戦艦ポチョムキン」で有名な階段があるところである。
さて次の目的地に向かうバスターミナルを探しに、市内散策。
海に向かって歩けどもなかなか見つからない。
人に聞こうとしても、ほとんど出会わない。
朝食もまだなのでお腹は空く。
もう私は疲れ果てて、荷物番を兼ねて公園でひと休み。
同行者はひとりでポチョムキンの階段に向かう。
全く見知らぬ土地で、一人待つ身の時間は長く感じる。
ようやく同行者が戻ってきたので、どこかで朝食でもと、
再び鉄道駅に向かって歩く。
途中で小綺麗なカフェで朝食。
着替えも済ませて、気分もスッキリ!
鉄道駅まで戻り、そこにいた現地の人に尋ねると、
乗合タクシーでなら国境付近まで行くという。
乗客の中に、60歳代の女性がいて
沿ドニエストルの首都ティラスポリまで行くから
一緒についておいでと言う。
ここで沿ドニエストル共和国について説明
モルドバ東部、ドニエストル川東岸のウクライナ国境に接する国家
国際的にはモルドバの一部とみなされ、主権国家として承認されていない
しかしモルドバの実効統治は及んでいない、事実上の独立状態
要するに地図上には存在しない国、沿ドニエストル。
もうこれだけで不安はいっぱい!
しかしここであきらめたとしても、この先の旅が続けられるだろうか。
半信半疑ながら、この女性について行くことにした。
20人乗りの乗合タクシーは国境付近まで行くと、乗客は降ろされた。
不安を抱えながらも、この女性について歩いて行く。
歩いての国境越えは初めての経験。
先ずは、ウクライナの出国審査。
これはスムーズに終わる。
続いて、沿ドニエストル側の入国審査。
噂では、賄賂を要求されるとか、警察もあてにならないとか。
だが、スムーズに入国できた。
なにやら白い紙を渡されたが、
数時間(夜の10時まで)の滞在を認める証明証のようなものだった。
また別の乗合タクシーに乗る。
もちろん件の女性も一緒だ。安心!
ところが首都であるティラスポリに入ったところで、
その女性はバスを降りた。
え?どうしよう?
でもその女性はわれわれのことを
運転手にきちんと伝えてくれていたのだ。
どこで降りたらいいのかを。
半信半疑でオデッサを出たけど、この女性について行って本当に良かった。
もし彼女がいなければ、スムーズに出入国できなかったかもしれない。
彼女の優しさ、親切に、本当に感謝!
乗合タクシーは終点まで行くが、
モルドバの首都キシナウ行きのバスターミナルではなかった。
そのことを運転手は私たちに伝えようとしてくれたが、
私たちにはうまく通じない。
乗合タクシーを降りて、通りがかりの人に尋ねる。
歩いても行けるところだろうが、荷物もあるし、不安だし、
結局、街のタクシーでキシナウ行きのバスターミナルまで行く。
次の発車時間を確かめ、チケットも購入し、
荷物をロッカーに預けようとした。
だが鍵が壊れている。
どうしようか迷っていると、
切符売り場の女性が、大丈夫のサインをしてくれた。
これまた半信半疑ながら、鍵の壊れたロッカーに荷物を置いて
ティラスポリの街を散策。
決して首都らしくないし、地味な感じだが、
落ち着いた生活感漂う街だった。
(ただし写真はない。むやみに撮影して棘がめられたらとの不安から)
途中で出会った現地の大学生から話しかけられた。
日本から来たことを伝えると、
日本は好きな国の一つだと話してくれた。
お腹も空いたので、
イートインのお店でパンと飲み物とアイスクリームを買って食べた。
公園を散策し、4時過ぎにバスターミナルに戻る。
鍵のかからないロッカーの荷物は大丈夫であった。
この街のあたたかさを感じた。
4時半発の乗合タクシーで、モルドバの首都、キシナウに向かう。
出国審査はスムーズであった。
なおモルドバの入国審査はなかった。
モルドバから見れば、沿ドニエストルは自分の国だからか。
もう一つ、沿ドニエストルの国境付近では、大音量の音楽が流れていたり、
小綺麗な街並みがつくられていた。これも国威発揚のひとつか?
夜の7時ごろキシナウに着く。
さて今夜の宿はまだ決まっていない。
Wi-Fiが通じるレストランに入り、夕食をした後で、ホテルを予約。
ちょっと場末的なところにある、個人経営的なホテルだ。
心配した国境越えも無事に通過できたことに安堵し、
シャワーを浴びて眠る。
つづく