*****ご注意!一部ネタバレの可能性があります!*****
安楽死の是非を考えさせられるドクター・デスシリーズ
難病など生きることに苦痛や絶望を感じている病人の心情にくみとり積極的安楽死を施したドクター・デス事件では雛森めぐみが逮捕され拘置所の中
「難病の母親がネットで安楽死を依頼したようだ」との通報で警視庁内には緊張が走る
前事件の流れから犬養と高千穂を中心とした麻生班が担当することになる。
JKギルドと名乗る犯人の安楽死の方法が前事件と同じだが報酬が一桁違った。
模倣犯なのか。
犯人に繋がる証拠が皆無の中、犬養は拘置所内の雛森に報酬を目的とした模倣犯ではないか、と雛森の安楽死に対する倫理観に訴え捜査協力を依頼する
雛森から出てきた犯人像の絞り込みに手ごたえを感じた犬養は、次の事件を防ぐため雛森の現場に立ち会いたいとの要求に応じてしまう。
難病の娘のいる犬養の弱点を巧みに突かれてしまうが、最後に最悪の事態を防げてよかった。
難病の母親の例も辛いが、女優が病気と老いを感じた時、作家が作品を書けないと知った時の絶望感で死を選択する話は生きるモチベーションを持ち続けるメンタルはどうしたらよいのだろうと思った。
不審者と思われないために宅配業者を装ったり、国外脱出を楽器ケース内に潜んで図ったり、と昨今の世情を上手く取り入れているのは中山作品らしかった。
2024年5月31日初版発行
初出「日刊ゲンダイ」2020年10月5日号~2021年4月1日号
装丁 高柳雅人
*****ご注意!一部ネタバレの可能性があります*****
事件に関して異人類の記憶力を持つガンさんこと岩倉剛が主役のラストラインシリーズ
最近の堂場作品は他シリーズの主人公が言及されたり登場したりしていさるが、本作は被害者支援課の村野との競演
しかし、設定に違和感を感じたのだが、どうも読み忘れていたらしい。
既にシリーズ6を読んでいるから本作とシリーズ5(悪の包囲)が抜けていたのか・・・
南太田署から立川署に異動したガンさん
民家取り壊し現場で白骨遺体が発見される。
遺体は10年前の高校生失踪事件の少女だったことが判明、事件解明の担当となる。
少女の親のケアに被害者支援課の村野が担当
ガンさんと村野は互いの立場を尊重しつつも事件が意外な方向に向かっていく
本作では村野が被害者支援課の中心人物として疲弊していく様も強めに描かれている
この事件が被害者支援課シリーズの主人公が柿谷晶になっていく伏線だった。
*****ご注意!一部ネタバレの可能性があります!*****
西川・沖田のコンビが活躍する追跡捜査係シリーズの新作
西川・沖田ともに年齢を重ね、時折定年後に思いを馳せる場面が増えてきていて、本作でも弱音だったり自らに活を入れる場面だったりででてくる
西川は30年以上前の冤罪事件の真犯人捜査に、沖田は所轄の5年前の未解決事件に指南役として投入される
全くの別事件と思われていた2件が登場人物に重なりがでてくる
驚きというより、小説としてはこうなるよね、という感じ
30年前の情報収集をするのだけど、記憶の書き換えとかないのかな?
その危険性を防ぐために多くの情報源に当たるのだろうけど、30年前の記憶はあまりにも覚束ない
30年前に悪さをした者は結局人生をやり直すことなどできず、これは自業自得
冤罪を受けた者の人生も滅茶苦茶になり余生を小さくなって過ごしていたのは本当に気の毒
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「このミス大賞」を受賞した郷間シリーズや派手な事件を舞台とするドリフターな警察物が多い印象の梶永正史作品の新シリーズ?
本作の主人公は警察を辞めて、知り合いの助けもあってライターと称して全国を放浪している草野誠也
ライターと言っても文章を書いた経験もなくこれまで1記事も書けていない。
節約を兼ねて車で寝泊まりする日々を送っています。
今回辿り着いたのが香川県にある鏡浜という美しい浜を持つ小さな村
浜の美しさに惹かれ、村の情報を集めているうちに、最近移住してきたアーティストが亡くなった事実を知る
村の人々の対応など気になることもあり、草野は深堀をしていってしまう。
テレビドラマのような展開
浅見光彦シリーズを連想してしまう
瀬戸内海に終戦後米軍基地が検討されていたことなど初めて知った
デラシネとはフランス語で根無し草
作者が香川県父母が浜(秩父が浜)を訪れたのが本作のきっかけだったとのこと。
*****ご注意!一部ネタバレの可能性があります!*****
辛い幼少期を過ごしたとは言え、その後の精神科医の誘導で殺人鬼の人格を持ってしまった有働さゆり
逮捕された有働さゆりは医療刑務所から脱走し、一時は嗤う淑女シリーズの蒲生未知留と組んで大量殺人まで手を染めてしまった。
今回の被害者は人権派弁護士、現場にはカエル男の特徴を示すメモが置かれていた
生きたまま苦しみを伴う殺害方法は相変わらずの残虐性
しかし3人目の被害者の名前が「アイウエオ順」の法則から外れた
捜査に当たる渡瀬はこの違和感に拘る一方、ピアノ講師有働さゆりと接触があった古手川は複雑な感情を抑えきれずにいた
本当に完結編だった
二重人格者の人格が統合(どちらかの人格が支配してしまう)されるのは二重人格者になってしまうと同様の悲劇なのだと思う
小児虐待の罪は本当に重い
2024年11月22日第一刷発行
初出 このミステリーがすごい 2023年12月、2024年3月、6月、9月
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毒舌な元刑事で小説家毒島が事件を解決するシリーズ
現在は捜査指導・協力者みたいな立場で文壇がらみの事件現場に登場する
新人賞を獲ったばかりの小説家の卵が殺される事件など5編
帯に「文芸界が生んだ承認欲求モンスターを・・・」とあったが、大なり小なり歪んだ
自己顕示欲が事件の背景になっている
現在のSNS時代らしく炎上商法やインフルエンサーなども登場
相変わらずの毒島節だったけど、ちょっと毒が薄まったかな。
今の世の中、小説とはいえアレコレ言葉選びにも制約がかかるのかしらん
1編目が小説家育成教室が舞台で、小説家を目指す人の勘違いぶりが痛すぎて・・・
だからプロになれないんだよ、と思っていたら、小説家や評論家にも拗らせている人がいて、おかしな人はプロアマ関係なかった
2024年9月20日 初版第一刷り
初出 小説幻冬 2022年6月号から2023年3月号
装画 帽子
装幀 長崎綾
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堂場瞬一のSCU(特殊事件対策班)シリーズ 4作目
今回はSCUのまとめ役 綿谷亮介の事件
今回はSCUのまとめ役 綿谷亮介の事件
父が脳梗塞で倒れたとの報に綿谷は故郷盛岡へ赴く
一命はとりとめたもののリハビリ生活が予想されるとの診断に、綿谷は警察をやめて盛岡に帰る可能性を考え始める
そんな折、盛岡で綿谷が6年前に取り逃がした犯人菅原が立てこもり事件を起こし綿谷と話したいと言い、綿谷は6年前の失態を取り戻そうと解決に向かう
ボーダーズはSCUのチームワークもあって面白いのだが、取り上げられる事件は結構厳しい。
今回も立てこもり事件解決間際に菅原の臆病から発砲に発展、10センチずれていたら綿谷も銃弾を浴びていたかもとの場面がある
SCUのメンバーは5人なので、次作はキャップ結城のストーリーかな。
エピローグではSCUの司令塔朝比奈の異動が決まり、メカ担当の最上の異動も示唆され、ボーダーズ終章なのか、新SCUとなるのか。
*****ご注意!一部ネタバレの可能性があります!*****
2023年発刊の姫川玲子シリーズ
今回は誉田哲也氏の別の女性刑事シリーズの魚住久江が捜査一課姫川班に異動してくる
姫川シリーズは面白いけど、時に姫川の思考が重く感じて距離を置いてしまいがち。
一方、魚住久江シリーズはかなり好きで、魚住登場で二人の女性刑事の対比も面白かった。
(魚住シリーズは旧ブログの2013年でした!10年以上前!)
事件は廃屋で頭部損傷の身元不明遺体が発見される
廃屋なのに、遺体発見の部屋は監禁部屋のように改装されていた
捜査が進むにつれて朝陽新聞の創業者一族で取締役の葛城が関係者であることが浮上する
週刊誌を賑わせているジャングルジャパンの買収とそれに対抗しようとしている朝陽新聞のトラブルなのか
並行して、朝陽新聞が捏造した従軍慰安婦の記事の影響を受けた少女と家族が語られていて、事件との接点が見えてくる
姫川の閃きから周りを巻き込む捜査と魚住の人の懐に入り込む捜査
本作では姫川・魚住とも互いを認め尊重し合う良関係だった
この姫川班のメンバーなら次作も楽しみ

2023年10月30日 初版第一刷発行
初出 ジャーロ86号~90号
装幀 泉澤光雄
写真提供 Mint Images/ Mint Images RF/ Getty Images
PIXTA, ostill//123RF, christerme/123RF
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久しぶりの中山七里作品
人口300人の限界集落の農村
終戦直後の惨殺事件の祟りが現在も続いていると信じている村が舞台
鬼哭山から鬼の声が聞こえた夜は死人が出るといわれていたう。
その村に都会から移住してきた男性麻宮が移住してきたが、コロナ禍もあり村人は麻宮に対して排他的態度を硬化させる
麻宮の隣家に住む中学生裕也は都会への憧れと閉鎖的な村への辟易から、麻宮と接する唯一の村人となる。
村人が死亡し、コロナ感染が確認されると、村人は全ての元凶は麻宮だとより感情的・攻撃的になっていく
テレビドラマ向きの話だが、地方過疎地の閉鎖性は比較的多く語られている域
300人の村に中学生の子供がいたり、50代の家族がいる設定だったが、個人的には違和感
その人口では50代以下は教育や仕事の機会を求めて村を出て行って70代後半以降の高齢者のみとなっているのでは・・・と思った。

2024年5月30日初版第一刷り
初出 ジャーロ 75号~84号
ブックデザイン 坂野公一+吉田友美
イラストレーション 緒賀岳志
カバー印刷 萩原印刷
*****ご注意!一部ネタバレの可能性があります!*****
未解決事件(コールドケース)を扱う部署の藤木を主人公とするシリーズ第2弾
遺体が激しく損壊された殺人事件が発生
捜査の中、過去の事件に関連する人物が浮上したことから凍結捜査班に声がかかる
過去の事件と複雑に絡んでいることが徐々に判明してくる
後半からヤングケアラーだった少年が事件に何らか関わっていると推察され、妻を介護した経験のある藤木は少年に大きく感情加担してしまう
藤木の介護や亡き妻への思いの段に一層の熱量を感じるのは、作者自身の人生に重なる部分もあるためか
犯人には納得できるのだが、遺体損壊が他人に罪をきせるためだったにしては執拗すぎる気がした
藤木の妻の遺品整理は始まったばかり
シリーズは続きそうだ