秋燕や非正規雇用のチェック欄 いつもの時間いつものベンチ秋つばめ 秋燕明日は宇宙に届くころ 秋燕やバンアレン帯突破せる 水先の空湧き上がる秋つばめ 秋燕や青い地球の青い海 秋燕赤ちゃんポストそこが海 秋つばめ四百万年の不在あり 秋燕や死にぞこないの青さとも 桃井かおりのもう頬づえはつかない燕去る(今年1月に結婚) 燕去る徐福は日本に来なかった 神武崇神応神秋燕の迷い込む 人類は未熟秋燕のうすれけり 立待岬この世に二つ燕去る
イチローがスシローになる日新酒酌む 秋まつり死んでも花実が咲いている まだ死ねぬ新宿二丁目海鳴りす 肉欲にはアスパラガスが効くそうな 芭蕉忌やWE ARE THE WORLD熱唱す 柱時計日時計砂時計散乱す 日焼サロン昭和の父が消えてゆく 往生要集タンポポの絮覗き込む 亀鳴くや私もいつか泣くだらう 男女七人夏物語蜂残る 散水車人生いたるところに青山あり 秋なかば幸福といふ名の犬がいた
秋茄子や群青色の廃れゆき 秋茄子や無心といふ名の喫茶店 秋茄子を漬けてはニューカレドニアの空 秋茄子を日本一の八百屋で買ふ 秋なすび定年の二字我に無し 無花果を喰う亡父まるで野人のやう 無花果や日本シュメール起源説 無花果を食うといふより啜りけり 無花果の墜ちて遠のく未来あり
午前2時の公園まぼろしの秋入日 球場のある公園球場の冷え始む 秋落葉すでに未来は頓挫せり きゃりーぱみゅぱみゅ平成の世は夢ばかり 自暴自棄になりそうだ黄金の風が吹く パンパンパン白夜の祭り一度だけ 晩秋の足音能舞台からさようなら 晩秋と言わず人工の滝を指す 桜紅葉の枝垂れしまま火達磨に 深秋や愛なき世界転がりだす
秋刀魚焼く戦後七十年といふ空白 秋刀魚一本二百円ならしめたもの 仮設の灯秋刀魚焼く日は強まれり ランボーと秋刀魚の距離を測る人 格差社会の底のあたりで秋刀魚焼く 秋刀魚焼く臭いをメールに添付せり 七輪で秋刀魚焼くとき空うごく 家屋敷売られ秋刀魚の売られけり 3Dで観る東京物語秋刀魚焼く 秋刀魚喰うに箸は使わぬ祝祭日 秋刀魚焼く鈴木しづ子の八千句 攝津幸彦の意外な白さ秋刀魚焼く 三陸産ことさら青し秋刀魚焼く