滴りのいつからの空透き通る 母はいつも働きずくめ夕端居 草笛の名手か草笛光子といふ女優 ショーケンの「祭囃子が聞こえる」挫折あり なめくじを潰して空虚の意味を知る 山姥に子を捨てし過去蛍飛ぶ どこにでもある真暗がりにかたつむり ここまではニッポン天使魚放つなり
バタバタと音立てて死ぬ久保山忌(9月23日。第五福竜丸無線長久保山愛吉氏) 秋立つや日本母親大会開催す(1955年平塚らいてうの呼びかけで開催。今年で60回を数える) 母の忌の夢醒ますべく滝の音 この街の虹でありたい明鴉 宇宙よりの吉報初夏の巨大蟻 言霊の幸(さちわ)ふ国に蝉鳴けり 蟻と蚊の転生前の騒がしさ ゲゲゲの女房年金不適格者の夫(つま)持てり かーんかーんと待たれし者の再臨す 稲妻はプラズマ愛犬の騒ぎ出す 夏衣と寸分違わぬわが身かな 父と母の炎の寄る辺なき盆迎え カトリーナ到来少年の掌の泥まみれ(2005年米南部を襲った史上最大のハリケーン)
人間は丸太かイペリット弾撃ち込めり いぺりっとるいさいと悲しみは止まらない 死の露や毒ガス焼けの父がいた きいとあかびらんとくしゃみ愛燦燦 関東軍防疫給水部石井731部隊 オリンピック作戦九州の私に「明日はなかった」(鳥越俊太郎) 特殊煙特殊弾やればやられる止めておけ 対中から対日へ大毒ガス戦継承す 広島の毒ガス島痛いから殺してくれ(戦中戦後大久野島に巨大毒ガス開発工場)
夏満月パッパラパーと血を抜けり 若田光一の宇宙日記夜蝉鳴く ガザまでのロードマップに海は無し 体内をカメラが泳ぐ春うらら 何もない晩夏タモリのハナモゲラ 花鳥風月の炸裂ニッポンは蚊帳の外 風鈴のごとき鉄片昭和の夢 火を焚いても火を焚いても夏の果て 高層ビル街抜けてカナンを遠望す クノッソスの迷宮人体は無言なり 大亀の干されしままの涯(よ)となりぬ 大晩夏止めてくれるなおっ母さん 廃墟の火焚かれ平成のどん亀たち 8.15の惨憺たるものオンリー・ユー
魂のビッグデータに不滅とあり ほおずきの神族たらんとしてあをし 鉄砲百合の吐くものなくて言葉吐く 日暮れまでの空限り無し青葡萄 風鈴のけたたましさは何とせる バルコニーの棺一個に飽き足らず 化石掘るための明るさ盆迎え