いまし三人の 友だちは
いづれ劣ると なけれども
兎はことに やさしとて
骸をかかへて ひさがたの
月の宮にぞ 葬りける
今の世までも 語りつぎ
月の兎と いうことは これがもとにて ありけると
聞く吾さへも 白袴の
衣の袖は とほりて濡れぬ
有名な良寛の『月の兎』である。今昔では「三獣行菩薩通兎焼身語」という題になっている例の話を長歌にしたのである。飢えた老人のために、猿と狐は食糧を集めてこれたけど、兎は何も出来なかったので、火の中に投身して自ら食糧となった。老人は実は帝釈天で、兎だけ月に飾ってあげたという。
今なら、兎に嫉妬した猿と狐が、「上から目線はやめろ」とか「かわいい子をひいきした」とかいって帝釈天を訴えるところだ。そのうち、帝釈天が公文書偽造をしてたとか、兎と渋谷でデートしてたとかいう事実が、週刊誌をにぎわし、若い社会学者とかが「兎がかわいいというのは老人の常識に過ぎないんじゃないですか~。」とか自慢げに言い出し、統計を取ったりして「猿や狐も好きな人がたくさんいました」と喜んだりする。