★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

BGM考

2010-08-01 03:05:01 | 音楽
論文を書いているときに、聴く曲がある。

大学生の時は、案の定(かどうかは知らないが)マーラーやショスタコーヴィチを聴いていた。が、どうみても脳の別のところが興奮してくるだけで、文章を書くときにはお勧めできない。フルトヴェングラーもだめであって、とにかくBGMにされることを絶対許さないのが、彼の指揮であった。私は彼の音楽を聴いていて論文のアイデアを少なくとも100個ぐらい失っている。原稿用紙に書き付けようとしたら、彼のアッチェルランドにつられて、ついお尻が浮き上がり立ち上がってしまったためである。ロマン派音楽は悪魔の音楽だ!

大学院生の時は、ウェーベルンの「夏の風の中で」をよく流していた。映画音楽みたいで、聴いてることさえ忘れる。

学位論文を書いているころは、ヴィラ・ロボスを聴いていた。私としては、「ブラジル風バッハ」などより、「ショーロス」シリーズが好きで、あんまり人気がない第12番が特によいと思う。最初に聴いたのは、Bartholomee 指揮 Riege.poの演奏である。これ見よがしのセンチメンタルな旋律が引っ込んだりあらわれたり、軍楽隊だか民謡だかがじゃかじゃかしたり、電車のがたんごとんに乗って風景を描写してるふうなところがあったり、小鳥がぴよぴとさえずったり……一応構成はあるようなんだが、全くとりとめのない音楽に聞こえる。学位論文で「弁証法」「弁証法」と繰り返していた私であったが、今思うと、その全く反対のものにみえる。いや、ほんとうはそうでもなく、わたくしの弁証法のイメージはそんなものであった。多分彼に強い影響を与えているストラビンスキーが物語風であるなら、ヴィラ・ロボスはロードムービー風である。最後はやることなくなったのか、ホルン部隊が一吠えして突然終わる…。

今日は、スヴェトラーノフ指揮、ロシア国立管弦楽団の演奏で、ヴィラ・ロボス晩年のケッサク「アマゾンの伝説」を聴いていた。血管切れそうな感じがよかったです。そして、ソヴィエトの戦車がブラジルの大地を進撃していく様が目に浮かび、論文にはまったくよろしくなかったです。