20-2の文章題のB蒲原有明「『春鳥集』序」に
然るに旧慣ははやくわが胸中にありて、この新たに就かんとするを いと(厭)えり。
という書き取り問題がありました。これは、
人は闇を いと(厭)い光を愛す。14-1K=征122頁
から解ける問題としました。
ただ、厭いの終止形が、厭うであることはいいでしょうが、
厭う→厭えり
という変化は、文語文表現です。私が使っているATOK16で、「いとえり」と打っても、「厭えり」とは変換されず、「糸恵里」と変換されます。家内は、厭うという言葉は知っていましたが、「いとえり」と言われてもよくわからないと言っていました。娘達は、そもそも厭うという言葉を知りませんでした。現代ではあまり使われない表現なのでしょう。
高校の古典文法の参考書によれば、厭えりは、
厭え+り
で、厭うの已然形「厭え」に、存続・完了の助動詞「り」が付いたものです。「り」という助動詞があったんだなあ、昔はこんなことを勉強して、古典が嫌いになったなあと思いました。
1級の文章題の書き取りは、最近は殆どが「辞典」の見出し語ですから、それを憶えておけば何とかなりますが、こういう文語表現が理解できないと戸惑うものが時々あります。私は最近は文語文ばかり読んでいるので痛痒は感じませんが、明治期の文章に慣れておく必要はあるのでしょう。文章題の出典の作家の中で、取っつきやすいものとしては、中島敦あたりがお奨めです。
さて、「糸絵梨」もとい、(私のPCではこう変換されちゃいましたよ。。。)、「厭えり」ですが、過日、幸田露伴の「雪たたき」を読んでいて、立て続けに「厭わしい」「厭味(いやみ)」「厭わし」の3つを発見しました。さまざまな訓読みがある漢字ですね。「あきる」というのもある。音読みでも「エン、オン、ヨウ」とバラエティに富んでいます。要注意の漢字です。露伴を読んでいて不図、白魚一寸さんのこの記事を思い出したものですから、投稿させていただきました。今後とも熱の籠った記事を期待しております。
>とてもマニアック
いやあー、それほどでも・・。charさんには、敵いませんよ。
>露伴を読んでいて不図、白魚一寸さんのこの記事を思い出した
光栄なことです。
>幸田露伴の「雪たたき」
昔、新古書店で105円で買った「豪華版 日本現代文学全集2 幸田露伴集」(講談社、昭和47年第5冊)にも所収されていました。面白そうですが、露伴は、鰹節を噛むみたいなところがあってなかなか食いつけません。
芥川、谷崎・・と来て、今は、露伴なのですね。昔の人の本を読みながら漢字学習されるって素敵だなあと思っております。
>要注意の「厭」
>音読みでも・・ヨウ
「辞典」の見出し語だと、禁厭(キンヨウまたはキンエン)ですね。でも、こんなの出題されるかなあ。厭の音符の1級漢字も3つあるから、これも要注意ですね。
>今後とも熱の籠った記事を期待しております。
ありがとうございます。貴兄の日記も愉しみにしております。