(19.5.4 イ音便追加)
「征服」13頁10番の読み問題に
泛泛(はんぱん)たる輩勝つことを得ず。
があります。これは9-3で出題されたものですが、「へんぺん」と書いて間違い。13-3の読みでも
泛泛として心が定まらない。
で出題され、また、「本試験型」(2007年版)第14回の読みには
泛泛たる大河の流れ。
があり、このときは「はんはん」と書いて間違っています。
ハ行音が半濁音のパ行音になるのは、音便というのだと思います。時々こういうのが出てきます。「辞典」で拾って以前から「辞典」の冒頭欄外に書いていました。摘記しますと、
雪庇(せっぴ)、先妣(せんぴ)、猿臂(えんぴ)、一臂(いっぴ)、辺鄙(へんぴ)・・
「辞典」のヒ欄の漢字の下付き語の読みを見ていると、ヒ→ピに変わるものが相当あります。ヒ音の前がンあるいはッのときは、ピに変わるような気がしますが、法則性があるといえるのかはよくわかりません。 泛泛はハンパンですが、半半は、ハンハンです。
漢字の音訓の読み方が変わるものとしては他に
a、ツ→ッの促音便
上の熟語の例の雪(セツ→セッ)、一(イチ、イツ→イッ)の他、
結(ケツ)→結紮(ケッサツ)
哭(コク)→哭泣(コッキュウ)
抉(ケツ)→抉剔(ケッテキ)
b、連濁
鬨(とき)→勝鬨(かちどき)
鏝(こて)→焼鏝(やきごて)
嵌(カン)→象嵌(ゾウガン)
c、イ音便
脇(わき)→脇楯(わいだて)
抔があります。他の音便もありそうです。ただ、国語学の門外漢には、何故読み方が変わるのかその法則性はよくわかりません。単に読み癖のような気もします。また、18-2の読み問題で出題された倏忽(シュッコツ、シュクコツ) のようにどちらでもいいものもあります。
法則性はともかく、正確に読めることが大切ですので、音訓が変化するものは、「辞典」の熟語の読みのところに○をつけて注意を喚起しようと思います。例えば、結紮(けっさつ)のっに○をつけます。
ググると、本居宣長の「漢字三音考」の末尾に附録 音便ノ事として、浩瀚な例が載っているようです。これは、筑摩版全集第5巻に収録されていて、私は平成12年3月25日、滋賀県の近江堂という古本屋で1800円で端本を購入しました。宣長はいずれじっくり読みたいと思っているのですが、いつのことやら・・・。
>ハ行音が半濁音のパ行音になるのは、音便というのだと思います。
確認していないので恐縮ですが、これも連濁ではないかと思いますが…。間違ってたらスミマセン
(>_<)
イ音便は特殊なのでさほど面倒ではありませんね。
一方、連濁と促音便はなかなか面倒ですね。どちらでも正解の語や、促音便になりそうなのにならない(?)語もありますね。
・倏忽(しゅっこつ、しゅくこつ) 18-2
あと、何と呼ぶか失念しましたが、「安穏」、「順応」の類もありますね。
>これも連濁ではないか
パピプペポは、半濁音と言いますので、連半濁、略して連濁というのかもわかりませんね。
Wikiの「連濁」「音便」の説明には、ハ行音→パ行音のことは全く触れられていません。
日国では、
「連濁」:二つの語が結合して一語を作るとき、あとの語の語頭の清音が濁音に変わること
とあります。この「濁音」という言葉に「半濁音」を含むかですが、日国には、
「濁音」:五十音図のカサタハ四行のかなの表す音節には、その子音が有声であるもの、無声であるものの対立があり、前者の発音を濁音、後者の発音を清音という。かなで両者を区別するため、濁音の場合には濁点をつける。濁。
「半濁音」:五十音図のハ行のかなの表す音節のうち、両唇の無声破裂音pを頭子音にもつ音節。「ぱ・ぴ・ぷ・ぺ・ぽ」の五つ。有声破裂音bをもつ「ば・び・ぶ・べ・ぼ」を濁音というに対する。
とあります。国語学は門外漢ですので、専門的なところはよくわかりませんが、「日国」の説明に拠ると
濁音>半濁音
ではなく、
濁音と半濁音は別概念
であり、連濁には、半濁音化するものは含まれないように思います。
一方、
「音便」
1 発音上の便宜に従って音が変化すること
2 国語学では音韻の脱落、同化、交替などをいい、イ音便、ウ音便、撥音便、促音便の四種の区別がある。それぞれ「イ」「ウ」「ン」「ッ」となるもの。
とあります。1の広い意味では
音便>連濁・パ行音への変化
となりますが、2の国語学上の意味では、
音便と連濁・パ行音への変化は別概念
になります。だったら、現代の国語学でパ行音への変化を講学上何というのかはよくわかりません。
尤も、日国には、上記引用に引き続き、
「これ(音便)を国語学上の用語として規定したのは本居宣長であるが、宣長は連濁をも音便と含めた。」
とあり玉勝間が引用されています。また、宣長は、「音便の事」で、パ行音への変化を
半濁の音便
と云います。私は宣長贔屓ですので、これに倣いたいと思います。
僕は国語学「も」素人ですが、漢検は国語学と不可分の関係にあるので、「漢字必携」にいろいろ資料が載っているのでしょうね。
少し調べたところ、要するに半濁音と濁音は別個のものであり、それゆえ多くの学者は半濁音は連濁に含まれないという見方をしているということでしょうかね。
一方、別個のものだが便宜上(広義において)連濁に含まれる、とする学説もあるのですね。
勉強になりました。ご教示に感謝致します。一応少し参考となったサイトを挙げておきます。読者の方で関心をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんし。
・清音、濁音及び連濁(西野博二氏)
http://www.asahi-net.or.jp/~va4h-nsn/rendaku.htm
・学習百科事典
http://kids.gakken.co.jp/jiten/7/70022540.html
・光村図書メルマガ
http://www.melma.com/backnumber_24762_4360324/
・BIGLOBE百科事典
http://jiten.biglobe.ne.jp/j/a1/df/ca/166ac47aaab8bd3178630adf3f0b6389.htm
参考資料の御教示ありがとうございました。
尚、余談ですが、子供達の国語の教材を見たところ、連濁について取り上げているものは見つかりませんでした。つまらない文法なんかを遣るよりは、日本語の学習として連濁は結構重要と思うのですが、残念乍ら現在の教育は、伝統的な日本語を守り育てるという風にはなっていないように思います。