ミュージアム巡り 歴史資料の宝庫へ 全相平話_1

　私がとても重宝して企画展を観賞する国立公文書館は、国の機関
や独立行政法人などから受け入れた行政文書約85万部、さらに明
治政府が江戸幕府から引き継いだ古典籍や古文書を含む旧内閣文庫
の図書、資料約48万冊を所蔵している。

　今回はその所蔵資料の内、「漢籍」「和書」「公文書」から展示
され、中でも国の重要文化財４点も含まれ「ようこそ 歴史資料の宝
庫へ」と題して先月の11月８日まで開かれていた。
　まずは漢籍の世界から。漢籍とは中国大陸で出版された書物のこ
と。古来より日本の知識人は、この漢籍によって学問を修め知見を
広めている。同館は江戸幕府の所蔵庫・紅葉山文庫や昌平坂学問所
の旧蔵書が展示されている。
　いきなり重要文化財のカードの着いた「全相平話」。この書は中
国の歴史上の出来事などをフィクションを取り入れながら面白く請
う談した歴史物語で、元時代の至治年間(1321～1323)頃に刊行さ
れたもの。この“全相”とは全ての頁に挿絵があること。“平話”とは
史実を面白く講談したもの。
　「全相平話」には５つの物語で構成されている。
1)「武王伐紂書」、2)「楽毅図斉七国春秋後愁」、3)「奏併六国平
話」、4)「前漢書続集」、5)「三国志」。紅葉山文庫旧蔵、1955
年重要文化財指定。
　「楽毅図斉七国春秋後愁」は、中国の春秋戦国時代に活躍した楽
毅の物語。中国の北東にあった燕国は紀元前284年頃、楽毅を将軍
に任命し、大国の斉国に戦いを挑む。楽毅の活躍で斉の70余りの
都市を陥落させていく、というあらすじ。

　「前漢書続集」は、紀元前206年に中国を統一して前漢王朝を樹
立した劉邦の妻・呂后の物語。呂后は王朝の安定のため、建国の功
臣を次々と殺害していく、というあらすじ。

　「奏併六国平話」は、紀元前221年、中国を統一した秦の始皇帝
の物語。始皇帝は強大な軍事力を用いて対立する韓、魏、趙、燕、
斉、楚の６つの国を次々と討伐していく、というあらすじ。
国立公文書館（千代田区北の丸公園3-2）