入り江の小船

ヒマがあったら書く日記。

爾霊山の例祭

2014年06月09日 18時29分12秒 | Weblog


唐櫃浜の王子ヶ浜に爾霊山(じれいさん)と呼ばれている山がある。
言い伝えによると唐櫃浜の東の海岸に屋島の戦いに敗れた平家の落人が流れ着いたそうだ。
この地で息絶えた者もいたのか、山頂には平家の墓という石壇のようなものがある。




この地の周辺に矢立と呼ばれているところがあり、
他では見られない矢竹と呼ばれる変わった竹が生えているそうだ。
平家の落人の霊の仕業とでもいうのか。
また、ひとりで山へ上がろうとすると何処からか鈴の音が聞こえてくるという。





そんな恐怖が渦巻く爾霊山の真下では心臓音のアーカイブで
今日も何も知らずに観光客が記念に自分の心臓音を録音していく。
後日送られてくるCDに奇妙な音が混じっていないことを祈る。





と、恐怖を抱いて爾霊山の例祭に参加した。曰く付きのこの地の例祭は、
さぞかし厳かな雰囲気で執り行われるのだろうと思っていたが、
例祭の開始時刻になったら氏子たちが酒盛りを始めだし、
当番のおばちゃんだけが終わり際で心経を唱えるという楽しい例祭だったのである。

さて、豊島村誌では源平合戦の話ではなく、南北朝時代に細川勢と佐々木信胤がこの辺りで戦い、
バラバラにあった墓を十輪寺の住職が一箇所にまとめて山頂に移し、爾霊山と名付けたとある。
文献と口伝で話が乖離するところがあるのが民俗学の面白いところだ。

旅順の203高地で乃木大将が詠んだ漢詩の爾霊山(にれいさん)の話に通じるところがある。
豊島の徴兵区は善通寺の第11師団(師団長に乃木大将がいたことがある)
村誌の編纂が大正初期だから何らかの関連性があるかも。