背寒日誌

2019年7月12日より再開。日々感じたこと、観たこと、読んだことなどについて気ままに書いていきます。

「ひとりっ子の深層心理がわかる本」(4月24日)

2012年04月24日 20時59分34秒 | 
 香山リカ「親子という病」読了。最終章はやや尻切れとんぼ。
 
 田村正晨「ひとりっ子の深層心理がわかる本」も読了。
 ひとりっ子の画一化されたマイナスイメージは、以下のごとく。
 社会性(協調性)に乏しい、わがままで自分勝手、依存心が強い、ひ弱、自立心が弱い。
 著者はこうした先入観をことごとく打ち消し、新たな「ひとりっ子観」を提示している。
それによると、ひとりっ子は、「達成動機」が高い。つまり、高い目標を設定して、そこにたどり着くために最大限の努力をしようとする。この特質は、親にほめられて育ったためと、ひとりで空想する時間が多かったためだと言う。したがって、ひとりっ子は、自己信頼感が強く、完璧主義者でもある。
 しかし、挫折すると落ち込みが激しく、立ち直りに時間がかかる。自己嫌悪に陥りやすい傾向がある。
 また、敏感で、感性が豊かなのが、ひとりっ子の特質である。兄弟のいる子より、気持ちが「温かく」、思いやりの気持ちが強い。人の痛みを敏感にキャッチする。が、人への対応はぎこちない。
 ひとりっ子が多い職種は、芸術家や研究者である。ほかに、オーケストラの指揮者、音楽家、作家、ボランティア活動家、コンピューターのソフト制作者など。
 自分の趣味の延長、自分の好きなことを生かせる職業を選択しやすい。
 作家の村松友視、池田満寿夫はひとりっ子だとのこと。ふたりは、自分の作品が掲載されている雑誌が出版社から送られてくると、他人の書いた小説は絶対に読まない。自分の小説だけを四回も五回も読み、そして「おれの書いた小説はすばらしい。おれは天才ではないか」と、頭の中でくり返すのだそうだ。
 自分以外の作品には興味がない。ひとりっ子の興味の対象は常に「自分」だからである。自分を天才と思いこんで悦に入るといったことも、自己信頼感の表れで、ひとりっ子の芸術家は楽天的でおおらかである。
 画家の岡本太郎も典型的なひとりっ子だそうだ。
 現代の日本は少子化で子供の数は一家平均1.42。(この本が書かれたのは1996年なので、その頃のデータである。)日本は徐々に「ひとりっ子型社会」に移行してきたという。価値観の多様化、個人尊重の社会ということがよく言われるのもその徴候のようだ。
 それに対し、集団や社会のルールに従い、現実的な妥協を志向するのは、「兄弟っ子型社会」で、従来の社会のパターンだった。つまり、高度成長期の競争社会はそうだったと思う。
 最近、電車に乗っていると気づくことだが、若い乗客はみんなケイタイをいじって、自分ひとりの世界に埋没している。一昔前は、オタクとか言って、家にこもっていたが、今はオタクが街に溢れていると思えてならない。これも、ひとりっ子型の社会が進行している表れなのだろう。

 

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