背寒日誌

2019年7月12日より再開。日々感じたこと、観たこと、読んだことなどについて気ままに書いていきます。

最近ビデオやDVDで見た映画

2013年08月01日 01時48分36秒 | 雑記
 8月1日(木)、午後五時、代田橋で映画監督の中原俊さんと待ち合わせ。駅前の小料理屋の二階でビール、日本酒を飲みながらいろいろなことを話す。気が付いたら、閉店の十二時だった。中原さんと二人で、同じ場所で七時間近く話していたわけだ。中原さんと会って話すのは今度が三度目。二年ほど前、私の高校時代の親友の佐藤徹君(元にっかつのキャメラマン)から中原さんを紹介された。彼には私が映画の企画をして初めてシナリオを書いた時に、相談に乗ってもらい、それから交友が続いている。この日も、私の書き直したシナリオのことや映画化実現に向けての作戦に関し、彼から意見を聞く。中原さんは佐藤徹君と日活入社が同期で、亡くなった映画監督の那須博之さんも同じ。中原さんと那須さんは私より一歳上だが、同世代。佐藤徹君は私が高校時代、8ミリ映画を作っていた頃キャメラをやっていて、一浪して日大芸術学部映画学科に入学。卒業後に当時日活ロマンポルノを製作していた日活に入り、キャメラ助手からキャメラマンになった。中原俊さんは私と同じ東大文学部で、彼は宗教学科、私は美学芸術学科だった。那須博之さんは東大経済学部。大学時代、私は映画研究会で、8ミリ映画を作っていたが、中原さんと那須さんとの付き合いはなかった。二人とも映画青年だったと思うが、実作はしていなかったようだ。当時の東大映画研究会の顧問は助教授時代の蓮見重彦氏だったが、私は蓮見氏に教わったこともないし、話したこともない。彼はすでに映画の評論を書き始めていたと思うが、その頃から難解な迷文で有名だった。私が映画研究会で自主映画を作っていたのは駒場にいた大学一、二年の頃で、部員は十数人いたと思う。私より二年上の本郷の学部にいた先輩たちが中心で、学園祭で自作の8ミリ映画の上映会をやっていた。部員で今でも付き合いのあるのは下里高行君で、彼は那須博之さんの親友だった。大学時代、私は那須さんと話した記憶がない。那須さんとは結局、知り合わないまま、彼が先にあの世へ行ってしまった。享年五十三歳。下里君は那須博之さんの奥さんの真知子さん(シナリオライター)とも親しく、それで一年半ほど前に那須真知子さんを私に紹介してくれたわけだ。つまり、還暦を過ぎてから、同世代の中原俊さんや那須真知子さんといった映画人と付き合って、酒を飲み交わして親しく話すようになった。それもこれも私が、青春時代の夢を追って、映画を作ろうなどと思い立ったからである。

 このところ洋画邦画の名作新作、いろいろな映画をビデオやDVDで見ている。
洋画では、ロジェ・ヴァディムの『輪舞』、ジョセフ・L・マンキーウィッツの『イヴの総て』、フランク・キャプラの『或る夜の出来事』『素晴らしき哉、人生』、ビリー・ワイルダーの『アパートの鍵貸します』、ジョン・フォードの『怒りの葡萄』『静かなる男』。
 それぞれ感想をひと言。『輪舞』は男女愛の円舞曲のような映画で、男優・女優総出演だが、ジャン=クロード・ブリアリとマリー・デュボアが良かった。『イヴの総て』は、傑作で私の好みの映画。ベティ・デイビスもすごいが、可愛い悪女のアン・バクスターも良い。キャプラの『或る夜の出来事』は、「ボーイ・ミーツ・ガール」のロマンティック・コメディの手本。何度見ても面白いが、当時ゲーブルは三十二歳なのにずいぶん老けているし、コルベールも三十歳だったので、若々しさはない。婚期を逸した若い男女の恋愛映画のように見える。『素晴らしき哉、人生』は、最初と最後に神様が守護天使を地上に送る部分があって、とくに最後の方は長すぎるなといつも思う。ジェームス・スチュアートがクリスマスイヴに公金を失くして自殺をしようとするが、疑問を感じる。『アパートの鍵貸します』は、傑作中の傑作。こんな諷刺とユーモアとペーソスのある作品は二度と作れないのではないかと実感する。ジャック・レモンとシャーリー・マクレーンの絶妙のコンビ。『怒りの葡萄』も傑作。アメリカの暗部である貧困社会と貧民に対する差別を痛烈に描き出したリアリズム映画の中でも、最高の作品の一本であろう。同じフォード作品でも『静かなる男』は、アイルランドの美しい風景と古き良き習慣を描いた佳作である。西部劇の主人公ではないジョン・ウェインの代表作。



 邦画の新作では、『阪急電車』が面白かった。が、この映画は原作に頼るところが大きく、テレビドラマ的だなと思う。有川浩のこのベストセラー小説も先日通読したが、ユーモラスなライトノベルで、登場人物はみなよくあるパターンの普通の人たちで、いかにも類型的であるのが気になるが、それで良いのだろう。この作家は良識派の社会人だなと感じる。降旗康男監督、高倉健主演の『あなたへ』は、なんで今更こんな映画を作るのかと疑問に感じる映画。滝田洋二郎の『天地明察』は、学芸会程度の時代劇。題材が映画に向いていない。脚本が悪い。監督の力量がない。『かぞくのくに』は、在日北朝鮮人の社会派ドラマだが、問題意識を深まめないまま、だらだらとドキュメンタリータッチを気取って描いただけの作品。主演女優の安藤サクラは、日本映画批評家大賞で女優賞をもらっていたが、あの個性は地のままなのではないか、この程度で賞をもらっていいのかという印象。
 昔の名画を観ていると、現代の作品のレベルの低さ(相当低い)を感じないわけにはいかない。


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