俳優の大滝秀治さんが亡くなられた。享年87歳。
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独特の個性で知られる大滝さんは、映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍された名優だ。
CMでも、「南アルプス天然水」「キンチョール」「やずや」などでお馴染みだった。
私は、故・伊丹十三監督の映画のファンなのだが、大滝さんは数々の伊丹映画に、味わい深い役どころで出演されている。
「お葬式」(1984年)では、ちょっとKYでマイペースな所が嫌味の親族代表、雨宮正吉。
「タンポポ」(1985年)では、蕎麦屋で汁粉の餅をのどに詰まらせる、美食家の老人。
「マルサの女」(1987年)では、酸いも甘いも噛み分けたベテラン税務調査員、露口。
「あげまん」(1990年)では、一流銀行のトップにも拘らず、夜な夜な「ふんどしバー」(Men's)に通う男好きの千々堂頭取。部下の鈴木主水(津川雅彦)に平手打ちを喰らい、「飼い犬に手を噛まれた!」と嘆くシーンが印象的だった。
そして、「ミンボーの女」(1992年)では、弁護士の井上まひる(宮本信子)に全幅の信頼を寄せ、ヤクザに毅然と立ち向かう「ホテルヨーロッパ」の会長を演じた。
いずれの映画も脇役ではあったが、作品に「深み」を増す大きな存在感を示していた。まさに、「味のある脇役」を地で行く方だった。
パチンコ繋がりでいえば、「マルサの女」の港町税務署でのワンシーンが、真っ先に思い出される。
大滝さん演じるベテラン露口が、女性調査員の板倉亮子(宮本信子)に声をかける場面だ。
露口「おはよう。板倉君、今日はパチンコ屋か?」
亮子「はい、大光商事です。」
露口「髪に寝グセが付いてるぞ。」
亮子「あ・・・(きまり悪そうに笑って髪を直す)」
露口「一万円札、仕込んだかい?」
亮子「(自信を持って嬉しそうに)はい!」
露口「あれ、原始的だけど案外効くんだ。」
亮子「はい!」
「一万円札を仕込む」とは、税務調査員がパチンコ屋の内偵を行う際、店の両替機にマジックで目印を付けた一万円札を何枚か仕込む、という昔ながらの手口だ。
こうすれば、オーナーが店の売り上げをちょろまかした時に、足が付く可能性が高まる。
映画でも、調査に乗り込んだ亮子が事務所で不審な現金を発見し、調べてみると例の「目印」が付いた万券が混じっていて、オーナーの「売上除外」を暴くことに成功する。
まぁ、公開当時はともかく、今もこうした泥臭い方法が使われているかは不明だが…。
(映画「マルサの女」のパチンコシーンを考察した記事)
http://blog.goo.ne.jp/selfconfide777mc/e/548d9a23aa069d43633e179a2ed2176e
それにしても、常に飄々として深みのある演技をする、素晴らしい役者さんだった。
また一人、「本物」の俳優がこの世を去ってしまった。
大滝秀治さんのご冥福を、心よりお祈り申し上げます。
あっちのパチンコ屋では沢山出しますから!
そうですか、ご冥福をお祈りします。