「地方から、国を変えよう会」

中央集権を打破し、地域主権を確立しよう!!

「禁煙推進の国民的運動が始まっている」

2011年10月10日 | 日記
たばこ税 健康のために禁煙策を

 東日本大震災の復興財源として、たばこ増税が政府案に盛り込まれた。12年10月から10年間(地方税分は5年間)、1本当たり2円増税される。有効な手段の一つだろう。しかし、たばこ増税をめぐる議論はどこか順序がおかしかったことも指摘しておきたい。財源確保の議論が先行すると、「健康のために禁煙対策を進める」という基本的な論点がずれてしまいがちになるからだ。

 今回、火をつけたのは小宮山洋子厚生労働相だ。就任直後の会見でたばこ税を毎年一定額上げ、「700円台にまでたどり着きたい」と述べた。これに安住淳財務相が「(税の)所管は私だ」とかみつき、日本たばこ産業(JT)も「販売数量が減少し税収増に結びつかない」と反論した。小宮山厚労相の持論は「税収のためではなく健康を守るために」だったが、「1箱700円」という数字に関心が集まり、健康問題に焦点が当たらなくなった。

 英医学誌「ランセット」は9月、健康長寿社会を達成した日本の保健医療に関する論文を集めた特集号を発行した。戦後の感染症対策や健康診断の普及、減塩指導の徹底などを高く評価する一方で、今後の危険要因として「喫煙」を筆頭に挙げた。若年男性の喫煙率は約50%と高く、女性の間にも広まっていること、健康増進法(03年)で公共の場での喫煙や受動喫煙の予防が進められているが自治体間に差があることなどを指摘する。「全成人が禁煙すれば平均寿命は男性が1・8年、女性が0・6年延びる」との推定を示した。

 たばこによる健康被害の研究報告はこれまでにも多数ある。喫煙習慣のある男性は非喫煙者に比べて肺がんによる死亡率が4・5倍、その他のがんや心筋梗塞(こうそく)、狭心症による死亡率も高い。自分は吸わなくても、他人のたばこの煙を吸ってしまう「受動喫煙」による被害、胎児の発育に悪影響を及ぼし低体重児が生まれるなどの研究結果もある。やはり、国民の健康を守るためにこそ禁煙や受動喫煙の予防が必要なのだ。

 職場などで分煙を進めるための規制強化、医療や保健の専門機関による禁煙指導、未成年者への販売禁止などを徹底する必要がある。そうした対策の一つとして、たばこ増税の有効性についても評価されるべきなのである。「ランセット」は日本のたばこの小売価格(08年当時)が「高所得国の平均よりかなり低い」として、値上げによる消費抑制策を促す必要があると強調している。

 高齢化による医療や介護費用の自然増は避けられないが、高齢になった人が健康で暮らすことができれば国民負担は相対的に軽減される。

 腰を据えて禁煙対策を進めたい。(毎日新聞社説)