北海道の四季登山と読了記

週末の休みを利用して登山しています。ときどき本も読みます。

(025-0306) 山の本棚

2024年03月13日 | 四季の山登り(2024.1.1~2024.12.31)

「山の本棚」(池内 紀(いけうち おさむ)著 株式会社山と渓谷社 2023.7.5 初版第1刷 470ページ)
翻訳家、文学者、エッセイストでもある著者は、1940年に生まれ、2019年8月に没した。残念な人を亡くしたと思う。
本書は書評エッセイである。153冊を評している。これからすべてを読破することは不可能だが、魅力がある書ばかりだ。登山に関するものだけでなく、植物、地勢、田舎の人の生き方など幅広い。
「津浪と村(山口弥一郎 石井正己 川島秀一編 三弥井書店 2011年)」に昭和八年の大津波のあと、宮城、岩手両県は被災地での集落再興を禁じたが、ほんの少しの例外を除き、ことごとくが失敗した。その結果、平成の大津波が二万人にあまる死者・不明者をもたらした。「我々が不思議に思うのは、これだけの惨害に遭いながら、どうして村を再びその被害地に建てたかである」
八年にわたるねばり強い調査のなかで、不思議が少しずつとけていく。集落、村々、町村の暮らしの実態をとらえないかぎり、意味のある集落移転はありえない。同じ一つの半島でも、岬や入江、地形によって暮らし方が、純漁、純農、混在とちがってくる。それぞれ移転の熱意がちがい、強引にすすめると対立に及んでくる。(418ページ)(中略)「津波を宿命とする土地に住まざるをえない人々への深い思いやりにつらぬかれている」。そして著者は恒久的な基礎調査をする津波研究所などこそ、この三陸海岸に建てないで、世界のどこに設置する適所があるといえようか」に私は同意する。

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