「中高時代に読む本50 強く、やさしく、かっこいい言葉に出会おう」(清水克衛著 2011.5.6 第1版 株式会社PHP 115ページ)
著者は書店「読書のすすめ」店長。NPO法人読書普及協会理事長。
50冊が紹介されているが、私がすでに読んでいる本は1割すこし。中高時代に紹介されている本を読んでいればもうすこしまともな成人になれたのに。紹介されている本を少しずつ読み始めよう。
「はずれ者が進化をつくる 生き物をめぐる個性の秘密」(稲垣栄洋著 ちくまプリマ―新書 2020.6.10 初版 189ページ)
「平均的な生き物」なんて存在しない。個性の数は無限大。唯一無二の生命をつなぐために生き物たちがとってきたオンリーワンの生存戦略。
現存する自然界の生物が幾多の環境変化を乗り越えてこられたのは、個性ある「はずれ者」の存在が大きい。「天上天下唯我独」とは自分が一番偉いのではなく、「広い宇宙の中で、誰もがたった唯一の尊い存在である」という意味で個性の大切さを説いている。
生きることに力はいらない、生きることに余分な力はいらない、生きることに何の努力もいらない。
雑草は踏まれたら立ち上がらず、上に伸びることができなくても横に伸びたり、茎を短くしたり、地面の下に根を伸ばしたりしてなんとか花を咲かし、種子を残す。「踏まれても踏まれても大切なことを見失わない」ことが本当の雑草魂だ。上に行かれないのなら横に行き、横にも行けないときは根を伸ばすことは人間にも言えることだ。
今日の山は、伊達市大滝区にある徳舜瞥山(1309m)。20日(土)に自宅近くの沢登りをしようとしたが、雨天であえなく中止。
21日(日)に天気もよさそうなので、足を伸ばして登った。
ウメバチソウ、だと思う。
アキノキンソウ
支笏湖が見え、左の山は恵庭岳
獲得標高は616m。それを2時間30分で登り、1時間半で降りてきた。暑くなく、風も適当にあり、過ごしやすい登山だった。
「今度生まれたら」(内館牧子著 講談社 2021.3.1 第4刷 282ページ)
「終わった人」「すぐ死人だから」に続く老後小説3段目。3冊とも面白い。
あの時、あっちの道を選んでいたら、と主人公とその周りの人達はつぶやいている。自分のことを翻ってみると、節目のときにどちらを選ぶか、悩んだときがあった。
この主人公は72歳、結婚至上主義時代を生きてきた。世代でいうと団塊の世代といえる。進学や仕事、結婚と節目のときに最善の道を選んだはずなのに72歳のいまとなったとき、後悔が出てくる。
72歳はやり直しのきかない年齢でも「前に進む」「今が充実しているか」だ。人間はすべてを手に入れることはできない。手に入れているように見える人は、必ずどこかにシワ寄せが来ている。(176P)
昔話したり、昔を思い出してる時は、必ず生きることに弱気になってる時だ。(213P)
「しゃべれども しゃべれども」(佐藤多佳子著 新潮社 1997.8.30発行 337ページ)
著者の表現が上手い。主人公は26歳の噺家。修行中で芸をみがくことに熱心で、頑固で不器用だ。
その主人公のもとに他人と上手くコミュニケーションがとれない人物が話し方を学びに集まった。あがり症で吃音症のテニスコーチ、失恋ばかりしている美女、赤面症の野球解説者、学校でいじめにあっている小5。
読んで楽しくなった。人間の生き方にはたくさんある。話し言葉と話し言葉の中にさすがといっていい表現がたくさんあった。
「福の神になった少年 仙台四郎の物語」(作 丘修三 絵 村上豊 佼成出版社1997.1.25 第1刷 270ページ)
初版が25年前に出た。いつかは読んでみたいと思っていた本だ。漢字にはすべてルビが振ってある。
主人公は障がい者。障がいのある人が神さまあつかいをされるのはめずらしいことではない。しかし写真まで掲載されている神さまは初めてだ。
四郎が生まれたたのは江戸時代の終わりころで、物語は明治のはじめから始まる。挿絵がいい。ほのぼのとした雰囲気が満載だ。
「しあわせ読書のすすめ 本のソムリエが教える悩んだときに読んでよしい53冊」(清水克衛著 辰巳出版 2010.9.1 初版第1刷 143ページ)
NPO法人「読書のすすめ」代表、書店「読書のすすめ」代表による53冊の本の紹介である。
私の知らない世界がある。悩んだときは読書だが、読むべき本がわからないときに紹介されたこの本を読むことで解決できるかも。
「小隊」(砂川 文次著 文春文庫(760) 2022.5.30 第4刷 289ページ)
著者は元自衛官で「ブラックボックス」で第166回芥川賞を受賞した。本書は、ロシア軍が北海道に上陸し、自衛隊の3尉・安達は敵を迎え撃つべく小隊を率いて任務につく。ほか戦争小説2篇。
ロシアがウクライナに侵略しているいま、この手の小説を読むと、ロシア軍が北海道に侵略するのか、と思ってしまう。
今日は日高山脈の北に位置するチロロ岳(1880m)。登山ガイドブックには上級コースとあった。
渓流靴を使った沢登りが3分の2,登山靴で3分の1の行程だった。登り5時間半、下り5時間の11時間30分、獲得標高1340mの長時間行程であった。登山口に戻れたのは18時すぎ。あたりは薄暗くなっていた。日高山脈は懐が深いことを再認識した。
6年前の台風で道路決壊、橋流出後、ようやく復旧を終えた。
北電の取水口施設。
太陽のまわりに虹がかかったような幻日環(げんじつかん)。
チロロ西峰
真ん中あたりは「1967峰」と左に「ピパイロ岳」。右方向に「戸蔦別岳」(尖ったところ)や「北戸蔦別岳」「幌尻岳」が見える。
「ロシアについて 北方の原形」(司馬遼太郎著 文春文庫2022.4.10 第32刷 259ページ)
ロシアとはどんな国なのか。
「ともかくも、日本とこの隣国は、交渉がはじまってわずか二百年ばかりのあいだに、作用と反作用がかさなりあい、累積しすぎた。国家にも心理学が適用できるとすれば(げんにできるが)、このふたつの国の関係ほご心理学的なものはない。つまりは、堅牢な理性とおだやかな国家儀礼・習慣だけでたがいうをみることができる(たとえば、デンマークとスウェーデンの関係のようになる)には、よほどの歳月が必要かと思われる。」(あとがき)
単行本として出たのが昭和61(1986)年6月。著者が没したのは 平成8(1996)年2月72歳で、その10年前に著された。
広大な領土とそれをたえず防衛せねばならぬという緊張が内部の変質を生むのだ、というのが本旨だったように記憶している(241P)。ウラル山脈から東がシベリアであるという。「隣人とうまくつきあってゆくしかない」と書かれているが、先の戦争後、捕虜としてシベリアで過酷な重労働をさせられた者とソ連領から引き揚げてきた身内がいる私としては「はいわかりました」というわけにはいかない。