「三流のすすめ」(安田登著 ㈱ミシマ社 2021.7.26 初版第1刷 255ページ)
著者はすごい人だ。「私は才能らしい才能もなく、高校まで勉強もできませんでした。どのくらいできなったかというと、まず小学校では掛け算の九九を覚えたのは最後から二番目でした。(略)広報の最初の試験では、4百数十人いる学年の後ろから二番目。最下位の奴とは五教科で一点差。彼とはずっと親友でした。(略)ただ、ラッキーだったことは、両親が子どもの成績にまったく興味がなく、掛け算の九九を覚えられなくても、通知表に「1」があっても、あるいは赤点があってもまったく気にしなかったことです。自分のペースで、自分の興味のあることをやることができた。それが救いでした。(212~213ページ)
著者は能楽師(ワキ方)である。著書には身体感覚の著書、能の著書、40冊を超える図書を出している。
だから著者は三流を目ざせという。一流をめざせる人と、そうでない人がいる。一流をめざしたほうがいい人と、それはやめたほうがいいという人です。本書は後者のために書いた。
三流の人を、本書では「いろんなことをする人」をいう意味で使っている。ですから多流と言ってもいいかもしれません。一流とは「一つのことの専門家」、二流とは「二つのことの専門家」、三流とはいろいろなことを専門にする人をいう。
目があっちにいったり、こっちにいったりしてしまう人、じっと我慢をするというような堪え性(こらえしょう)がない人は三流をめざそう。