歌庭 -utaniwa-

“ハナウタのように:ささやかで、もっと身近な・気楽な庭を。” ~『野口造園』の、徒然日記。

紫陽花と傘

2009年06月10日 | 徒然 -tzure-zure-
まず先走り気味に
花屋さんの店先に、“出来上がり状態”のものが並ぶ。

新緑が勢い勇猛に湧き出した候。
「あれ、もうそんな季節かな、まだ早くないかな」と 想ったりする。

そしたら
いつの間にか町中にも、
当たり前のように 咲き出していた。


無意識に見馴れてしまったのか
何となく 気にもならなくなってしまって、居たみたい
なのだけど


そろそろ此処も「梅雨近し」と、世間が云う。


空の色と 湿度が
確かに少し なま蒼白く、うら暗く、重たくなって

気配ばかりは 着々と 雨の支度を整えてきた。



うつむきたくなるような
重たい色。



代わりに

紫陽花の涼しげな顔立ちが

明るい幽霊みたいに 浮かび上がって見えて来た。




 紫陽花(アジサイ)

  英名:Hydrangea
  ユキノシタ科アジサイ属  落葉低木
  Hydrangea macrophylla form. macrophylla




この色は、
そのまま 梅雨の雨色を想わせる。その色の存在は 既に 梅雨という季節と同調している。



あの雨はまだ、此処には やって来ていない。
今日も、彼らはまだ 濡れていない。

まだ濡れていないのに 既に濡れた色をして居る。





特に 目立った香りはしないのだけれど

雨にそぼ濡れると

その色合いのせいか すがたは少しぶれて見え
とりまく空気ごと儚く霞んでいるように 錯覚させる。

なんとも幽玄な香が
煙たいまでに匂い立って来るようにも、感じる。


それも全部、冥界じみた錯覚。



雨の花の季節は、
見えないものが 浮かび上がって来る。




 額紫陽花 (ガクアジサイ)

  Hydrangea macrophylla form. normalis






今年は 白い和傘を買った。



 和傘 (わがさ)

  英名:Umbrella
  雨の降る 京都・大原で買った。もうそれだけで、雅やかな気持ち。
  でも実は飛騨高山製。
  

和傘は
雨に濡れても(もちろん)全然問題ないが
貫通系の衝撃なんかには、すごく弱い。

乱暴に扱えない。
だから、すごく気をつける。
通りすがる人(の傘の爪とか)にも、すごーく気をつける。


濡れた後に、ちゃんと開いて干さなきゃいけない。
大事にすれば、それだけ永く使える。

コンビニで500円で買えるものじゃない。
だから、すごく丁寧に、親身に付き合うことになる。
だから、情が湧く。


だから、
うつむいて歩いてなんて 居られず
意識は 鋭敏に外に放たれて

自ずと
背筋がシャンとする。



雨が降ると、
今日はあれを使えるな と想う。そうすると、
気持ちが シュッと 真っ直ぐに伸び、

澄む。



今年は、雨が待ち遠しい。







copyright (c)

Copyright (c) 2009-NOW "uta-niwa" <by ngch-zoen> All Rights Reserved.