<前回からの続き>
佐久間ダムは堰堤の高さがおよそ200メートルはあり、発電能力37万キロワットの発電能力を持ち、昭和31年の竣工当時は東洋一の規模を誇り、その当時はバス1日、数10台が訪れるなど、当時はこの地域の観光の目玉であったという情報を得ていた
しかし、その後電源開発が電力館の閉鎖をするなど、ダム湖周辺から撤退するなどから現在は観光客もまばらであったが、取水塔や五門の見事に佇むなど全盛期当時の面影を残すのみとなっていた
見事な湖面は満々と水を湛え、春には満開の桜、秋には見事な紅葉が湖面を彩っているという・・・
そしてダム湖周辺で、秋には竜神祭りも行われると聞いていた
そんな往時の面影の残る湖畔でケンジはひとしきり散策を楽しんだ後、帰路につこうとしていた
キュル、キュル、キュル・・・ド・ド・ド・ドゥ~~ン・・・ドッ、ドッ、ドッ・・・
エンジンの調子はすこぶる良かった
ド ド ド ド ド ド ド・・・
湖畔に迫力のある排気音を残し長野県方面には向かわず、往路の道をトレースしてゆく・・・
第一トンネルからモンスターマシンの轟音が響きわたり、心地よい振動に身を任せ、颯爽と走ってゆくケンジの姿があった
帰路は三叉路までは下り坂であった
対向してくる車やバイクの数は少ないものの、多数のトンネル内での響きはこの上なく心地よく、途中でニホンザルの群れに出会うなど興味を引くものがあった
最後のトンネルを過ぎてしばらくすると、左手に小さな山村の風景が開けてきたところで一旦停車し、おもむろにタバコを取りだし一服し、しばし閑静な山並みを見つめていた
眼下には天竜川にかかる赤いB型鉄橋が、人工物としてはやけに美しさに華を添えていた
ケンジの故郷である伊豆堂ヶ島とはまた違った山村の風景の趣を味わっていた
やがてタバコを吸い終えると、再び走り出して152号線に戻った
第一発電所横のトンネルを抜けると再び寂しい家々の前を轟音を響かせ、通り過ぎて行った
曲がりくねる狭い、国道とは名ばかりの狭く曲がりくねった道が続き、やがて水窪方面、天流方面への三叉路にかかる鉄橋の信号機に差し掛かった
水窪方面にも多少の未練はあったが、ここは右折を選択し帰路の天竜方面へと向かった
ここからは片側一車線ではあるが、国道らしい道が続くこととなる
制限速度は概ね時速50キロであったが、前方に数台の車が同じ方向に向かっていた
片側1車線の道路は、中央線が追い越し禁止の黄線と追い越し可能な白線が交互に続いていた
左に見える秋葉湖は満々と深緑の水を湛え、ケンジの気分はとても良かったように見えていた
前方の数台の車は標識の走行速度を守っていた
しかし、それを追従して走行していたケンジはモンスターバイクの力を持て余し、しばらく前から苛立ちを抑えられなかった・・・
やがて、黄色の中央線が消え、追い越し可能な白線を迎え追い越し可能となった
ケンジは迷うことなく追い越しをかけ、乗用車を含む数台を追い越していた
・・・とその時、目なしカーブにかかった瞬間に対向車線から数台の車が行く手を遮るようにして対向してきた・・・
状況は危機迫っていたが、間一髪避け切ることが出来た・・・
そしてアクセルをふかそうとした瞬間、後ろの乗用車からけたたましいサイレントとも赤色灯がバックミラーに映った・・・
『そこのバイク、左へ寄せなさい・・』
何と覆面パトカーが混じっていたのであった・・・
『やいやい、なんなんだよ、こんなところで・・・』
ケンジは左へ寄せて、追従してきたパトカーと相対していた・・・
『君い~~、あんな無茶な追い越しはないよ・・・』
なんだかんだと言われていたが、幸いにもお灸を据えられただけでこの場は逃れられた・・・
ふ~~、こんな田舎でかよ~・・・そんな気持ちがケンジの心を支配していた・・・
その後は安全運転に終始し何事もなく天竜を過ぎて袋井ICから東名に入り、道中のSAで暫し休憩を取ったのち沼津ICで降りた
その後は、海岸線を通り、大瀬崎を超え戸田を抜け海岸線を楽しんだあと故郷堂ヶ島に帰着したのであった
途中の夕日はとても印象に残るものであった
ケンジの顔からは安堵の表情が見え隠れし、遠路の度を満喫した達成感が滲み出ていた・・・(完)
この物語は文、画像、ともにフィクションです・・・念のため・・・
最後までのご閲覧誠にありがとうございました