硯水亭歳時記

千年前の日本 千年後の日本 つなぐのはあなた

  福島第一原発・吉田所長の反乱

2011年05月28日 | エッセイ

小さな藪に 儚げな昼顔の花を一輪みつけたり

 

 

 

福島第一原発・吉田所長の反乱

 

 

先週国会の予算委員会で、菅総理の初動ミスについて、論戦があった。

ベントを開けるの開けないの議論から、海水注入を55分間止めた大失態の追求だのと。

斑目原子力安全委員長がそう指示しただの、再臨海はゼロではないと表現を換えたり、

東電発表も内閣の発表も二転三転し、大混乱。

「しっかりやる」と言ういつもの枝野官房長官の決めセリフは聞き飽きた。

「しっかり」とは自分の言質が人に取られないようにするためだけのことだ。

菅さんの「何か」と言う口癖になった表現も焦点をぼかすためだけにある。

まるで茶番劇。呆れて見てられない能天気な国会議員さまたちの議論であった。

気分を換え、フランス北部の町・ドービルで開かれたG8に飛んで行った菅総理。

冒頭の挨拶を底知れぬ得意顔でしていた。1000万戸に太陽光パネルを設置するとか、

当のエネルギー担当相の海江田万里も聞いていなかったと茫然と釈明する。

 

そんな中、又々東電から発表漏れを報告された。事実は福島第一原発の吉田所長が、

単独の判断で、海水の注入をし続けたと。炉心爆発していなくとも、メルトダウンをした

その炉心目掛けて、海水を注入し冷やすのが大正解の処置であった。

以前から吉田昌郎所長には一目置いていた私は実にホっとしたものだ。

東電副社長・武藤栄も、それを評価していたが、何とこの吉田氏を処分すると言う。

「貴様ぁ、何さまだぁ!」と私は思わず絶句した。あり得ないのは本社にいる貴殿たちだ。

 

当初、菅総理は東電に朝早く出向いて、潰してやるぅと罵詈雑言を浴びせ掛け、

斑目委員長と共に未明のヘリで現場に行った、その初動すべてが問題であるが、

原賠法の但し書き(予測不能な事故では賠償の免責が適用される)に拘る東電本社、

従って只管、官邸に阿る東電首脳陣が出来上がり、発表される事態は小出しに、

まるで官邸と東電首脳の蜜月ぶりを思わせ、気味悪くなったものである。

東電にはりつめの細野豪首相補佐官は、東電OBの元副社長・武黒フェローに任せきり。

聞き取り調査は何のために、東電本社へ出向いていたのか、これも大いに呆れる。

 

5月20日、東電の決算報告会見で明らかなように、清水社長は退任するという。

東大閥の東電役員人事の中で、初めての慶応義塾大学出身者であった清水社長。

新社長は西澤俊夫氏。京都大学卒の原発立地担当部署出身だ。

だがここでも摩訶不思議な人事が?何と勝俣恒久会長(ってかエンペラー)は

そのまま残っていた。柏崎刈羽原発の責任を取り社長を退任したのに、まだ居た怪物。

流石、財界の勝俣三兄弟は経済界では知らぬ人はいない。当然、院政を敷くのだろう。

 

官邸と東電本社と、駆け引きやら、情報開示のあり方やら、一人呆れていた御仁は、

現地の吉田昌郎所長ただ一人。現場を知らずして何が分かるか、作業員の待遇も、

今まさに逼迫していると、現地から悲痛な声をあげていた人だった。独断で注水をした。

東工大大学院を卒業し東電入社。一貫して原発畑を歩いてきたスペシャリストである。

子会社孫会社の作業員全員を把握し、カリスマ性もあり、何よりも現場に精通している。

私は何事も彼のような現場を重視する生き方に共感する。それが何故処分?

吉田所長に、現場作業の全権を預けるぐらいの度量はないものだろうか。

これは官邸・東電役員の対応に不満を持っていた吉田所長の反乱であり反骨である。

国際原子力機構(IAEA)の調査団を案内し、独自に懇切丁寧な説明をする彼の

姿が印象的である。私は吉田所長の更迭など、考えられるすべての処分に断固大反対だ。

 

(尚、吉田所長の処遇は法律上問題がないとして、このブログをアップした直後、

処分しないと言うニュースが流れた。現場を次に熟知している人が誰もいないのに、

何たる浅はかさよ。何が法律上だ。更に隠蔽していた放射能値も発表されたが、

東電幹部には呆れ果て、私は全く信用していないことに変わりはない)

 

サミットでは情報開示を徹底して求められた菅総理。さもありなん。

フランス大手有力新聞のLe Mondeを読んでみると、菅総理の記事はホンの些細なもので、

’12年に、日本で原発の安全基準を議論することを提唱したという記事だけであった。

原発推進国・仏国としたら、再生可能エネルギーを菅総理が言ったところで取り上げられず、

大見出しは中東の春をどうやってG8で、民主化を応援するかという議題が大きかった。

国内にいる海外記者団に、詳細な情報も開示せず、全く信用されていないのである。

菅さんの記事はそうだなぁ、一面で200分の1ぐらいのちっぽけな記事だけ。

 

サミットに出掛ける直前に聞いた、ソフトバンク・孫社長発案「電田プロジェクト」を標榜した。

いつもスポット的に俄か勉強で、誰もついてゆけない事態、場当たり主義の極みである。

何の採算や裏づけがないことを、平気で公言する全く軽薄な菅さんの退陣を強く求める。

経済界・教育界・警察・防衛省、更に各地自治体など、あらゆる機関に何の相談もなく、

根回しもない仕業がリーダーの資質と勘違いしているらしい。人の意見を聞くのが大嫌いだ。

宰相の器にあらず、野党時代の誠実さを忘れ、権力にただ盲執する醜悪さ。見ておれん。

それにしても自民党もだらしない。永年原発を推進してきた経緯を自己批判すべきである。

 

フィンランドでは核廃棄物施設を地下数千メートルに立派な施設を作っている。

フィンランド政府は核燃料棒が安全になるのに、10万年掛かると公式に発表している。

核は武器であり、これほどコントロールし辛い人工のものではないのである。

安全神話は電源三法という恐ろしく周到な悪法によって守られているから始末が悪い。

 

「ところでこの5月27日 参議院行政監視委員会に、
小出裕章、後藤政志、石橋克彦、孫正義の四氏が参考人として招致された。
原発事故の実態、そしてこれからの原発について、それぞれ鋭い意見を述べていたが、
彼等のこれまでの活動ダイジェスト版とも言える、そして最も強いメッセージを発していた。
私は、YouTubeで中継放送されたのを注意深く見ていた。小出氏は事故直後の東京は
20ミリシーベルト/毎時の内部被曝に達した可能性を解き、ドキリとした。
後藤氏は格納容器の設計者として、福島原発のリスクを解説していた。
石橋氏は地震学の観点から、最も危惧される次の場所は若狭湾だと断言し驚愕した。
孫氏は新しいプロジェクトを「電田プロジェクト」と位置づけ、休耕田の利用を説いた。
こんな大切な参考人聴取を、NHKや他局でも、何故放映しないのか。
やはり原発問題は政・官・財、及び報道機関の責任を同時に痛切に感じた次第である。」
 
 

帰国後、菅総理はどんな自慢話をするのだろう、楽しみである。

お土産は、国内で手薬煉引いて待っている菅内閣不信任案の可決だろうか。

未だに10万人以上も避難所暮らしをしている方々がいるというのに!

この愚か者めらが!!

 



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
吉田所長と組織の論理 (hisatan)
2011-05-28 19:56:46
風呂あがりのひととき、ブログでのご意見、楽しく読ませていただきました。まったく同感です。
同じサラリーマンとして、あの局面で自分ならどうしただろうかとずっと考えていました。問題の解決策は現場に宿っていることが明らかなのに、官邸の意向を忖度し、組織の論理を優先させようとする本社。企業規模が大きければ大きいほど官僚制のワナにどっぷりと浸かっていくものです。
それにしても吉田所長の判断と胆力には頭が下がります。一歩間違えれば、関東軍。人間としての誠実さと度量が問われる出来事でした。
返信する
官僚組織以上の民間 (硯水亭歳時記)
2011-05-28 21:07:29
   hisatanさま

 ご訪問下さって感謝致します。吉田所長の顔は割と温厚なお顔だちですが、おっしゃる通り胆力がある方だと感じ入っています。仕事をするのに、「大覚悟」があってのことでしょう。普通私のような凡人ではあれだけのハートは持てないかも。でも今回のことではよくよく東電の体質が分かりました。私も自家発電(ジェネレーター)で東電に協力している身なので、本来は応援すべきでしょうが、やはり腹がたつことがありますものね。何とか国策に救って貰おうという魂胆がありありです。徹底的に電化策を民間の建売業者までおしつけておいて、今度は節電なんですからねぇ。荒川区の私の知り合いは弱小企業なのですが、凄いモノづくりをしています。計画停電の時、どれほど困ったことでしょう。ましてや荒川区は都内屈指の税収のいい区なのに、同じ荒川区で、お隣が点いて、一軒隣の自分チは停電だと大いにこぼしておりました。
 アイゼンハワー元大統領が核の平和利用を提唱したものの、核はやっぱり武器以外はないとの感想を持っています。将来どういう国家にしたいか、はっきりした国家像を持たない内閣も問題で、その内閣と責任の押し合い圧し合いをしている訳ですから情けない話ですね。上司とは部下へ掛けたハシゴを決して外さないのがいい上司なのでしょう。本当に有難う御座いました!
返信する
輝く総理 (りんこ)
2011-05-31 16:20:11
こんにちわ。りんこです。
msnの勝手の悪さに
私もちょっとグーをつまんでみる事にしました。
まだよくわかっていないので、様子を見ながらの更新になると思いますが、よろしくお願いします 笑
それにしても、フランスに降り立った時のあの総理の顔はいかがな物でしょうか。
かつて無いほど日本に注目が浴びせられる状況、
良くも悪くも目立てる事が、彼にはそんなに嬉しい事だったのでしょうか。
奥様はなにも思わないのでしょうか。
つくづく感じるのは男性は連れて歩く女の器量に左右される物なのだろうナァと・・
無職の私ですが、よくよくそれを肝に銘じたいと思います 苦笑
返信する
愚かなる宰相 (硯水亭歳時記)
2011-06-01 13:36:12
    りんこさま

 今日にでも内閣不信任案が出されるというのに、あんなにはしゃいで、馬鹿かいなと呆れています。内閣は駄目だが、菅総理には続投して欲しいという世論調査にほくそえんでいるようで、何だかとっても上機嫌だとか。内閣府に僕の友人がいますが、彼は実によく彼を鑑賞し観察しています。ちょいとでも意見をいうものなら、菅自身に出された反対意見だと思い込むらしく、人の意見には全く聞かないのです。今だからこそ、官僚や財界や学会や報道する人もすべて巻き込んで、全員野球をしなければ、この国家は持たない認識はないように思われます。残念ながらもういいやと思ってしまいます。

 それと気に食わないのは隠蔽体質であるということです。中国漁船衝突事件の時だって、今持って隠蔽されているじゃありませんか。何故事実を事実として公表しないのでしょう。恐ろしいことです。亡国の宰相に違いありません。隠蔽すればするほど、余計な付属物がついて回ることを未だに学習してません。

 以前書きましたが、この人は本を読んでいる人かなと直ぐ分かりますよね。それを当てはめて行くと、事実ですから呆れます。学生運動出身で、市民運動家であることは承知していますが、組織論についてはまだまだ足りません。現在書いている記事は四柱推命お持ち出して、菅論を書いていますが、よかったらお読みくださいね。だんだん!
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