とはずがたり

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COVID-19に対する抗体製剤LY-CoV555の有効性

2020-10-31 14:46:41 | 新型コロナウイルス(治療)
Eli Lilly社が開発しているSARS-CoV-2の受容体結合部位に対する抗体製剤であるLY-CoV555(LY3819253と同じ)のCOVID-19に対する有効性を検証した第2相臨床試験の中間解析結果が報告されました。この抗体はアカゲザルにおける有用性が確認されているものです(https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.09.30.318972v3)。
アメリカの41センターがこの臨床試験に参加しました。軽症~中等症のCOVID-19患者467人がランダム化され、317人が抗体(平均年齢45歳)、150人がプラセボ(平均年齢46歳)投与を受けました。発症からの日数の中央値は4日です。抗体の投与量は700 mg(101人)、2800 mg(107人)、7000 mg(101人)の3 dosesです。Primary outcomeは11日(±4日)後のPCRで検出したSARS-CoV-2ウイルス量のベースラインからの変化で、主要なsecondary outcomeは有害事象、臨床症状であり、臨床症状COVID-19による入院、救急外来受診、死亡です。
(結果)抗体投与群におけるプラセボ群と比較したウイルス量の差は2800 mgの抗体投与群では−0.53 (95% confidence interval [CI], −0.98 to −0.08; P = 0.02)と有意に低かったのですが、700 mgでは−0.20 (95% CI, −0.66 to 0.25; P = 0.38) 、7000 mg群では0.09 (95% CI, −0.37 to 0.55; P = 0.70)と有意差はありませんでした。抗体投与群では2日目、6日目の症状がやや軽症でした。COVID-19による入院または救急外来受診は抗体群で1.6%、プラセボ群で6.3%でした。抗体投与による重篤な有害事象は見られませんでした。
この中間解析では2800 mg投与群でウイルス量の有意な減少が見られたものの、他の用量では差が見られませんでした。この理由としてはプラセボを含めたすべての患者においてウイルス量の減少が見られたためではないかと考えられます。多くの患者が治療しなくても良くなってしまったということです。抗体製剤は治療法としては最も期待できるとは考えておりますが、中々感染症に対する臨床試験というのは難しいものですね。
Chen P et al., SARS-CoV-2 Neutralizing Antibody LY-CoV555 in Outpatients with Covid-19. N Engl J Med. 2020 Oct 28. doi: 10.1056/NEJMoa2029849.




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