とはずがたり

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COVID-19重症肺障害の病態メカニズムを肺移植患者の肺から検討した

2020-12-04 05:00:14 | 新型コロナウイルス(治療)
重症COVID-19における肺障害に対する最終手段として、アメリカでは肺移植が行われています(https://medicalxpress.com/news/2020-12-covid-lungs-badly-transplant.html?fbclid=IwAR3CULQ1661IS4ROkV1TTO2kRyed-7oUdx3Z-rGwYw5jGmRzYlKWfNerqSA)。Northwestern大学からの下記論文では、肺移植を受けた3名の患者および呼吸不全で亡くなった患者2名の肺組織を解析し、これらの患者肺ではsingle molecule fluorescent in situ hybridization (smFISH)でSARS-CoV-2ウイルスは検出されなかったこと、組織学的には重症な肺線維症に近い所見が認められたことを報告しています。また肺線維症の患者と重度のCOVID-19の患者の肺組織における線維芽細胞の遺伝子発現プロファイルが類似していることも明らかになりました。つまりいわゆるサイトカインストームを経て重症な呼吸不全をきたしたCOVID-19患者に対しては、ウイルスを取り除くような治療では十分ではないことがわかります。日本でも少しずつ肺移植が増えているとはいえ、年間2,700以上の肺移植が行われているアメリカとは比べるべくもありませんので、どうすればこのような状態にならないかという取り組みが必要です。最近Natureに報告された論文(Conlon, T.M et al. Nature 588, 151–156, 2020)では、LTβRを介したシグナルがWntの抑制を介して肺線維化を促進することが報告されていますが、このような観点からもCOVID-19治療戦略構築が必要かもしれません。
Bharat et al., Lung transplantation for patients with severe COVID-19 Science Translational Medicine  30 Nov 2020:eabe4282 DOI: 10.1126/scitranslmed.abe4282
 


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