とはずがたり

論文の紹介や日々感じたことをつづります

オルガノイド研究に対する期待

2020-07-22 17:20:56 | 発生・再生・老化・組織修復
オルガノイドの話が出だした頃は今一つ有用性が理解できなかったところもあるのですが、最近のこの分野の進歩は目を見張るものがあり、完全に動物モデルとヒト病態をつなぐ実験系というポジションを確立したように思います。自分が関心のある分野でいえば、京都大学の小川誠司先生および慶応大学の佐藤俊朗先生らが今年発表された患者細胞から作成したオルガノイドを用いた潰瘍性大腸炎の遺伝子変異同定に関する研究などは、オルガノイド研究の強みを発揮したすばらしい研究です(Nature. 2020 Jan;577(7789):254-259; Nature. 2020 Jan;577(7789):260-265)。整形外科分野においても京都大学の戸口田先生らは骨オルガノイドを用いて創薬スクリーニングを行っておられます。今後例えば脊髄オルガノイドを用いた脊髄損傷研究や脳のオルガノイドによる慢性疼痛分野の研究などが進めば、これらの分野に新たな光を当てるものになのでは・・などと妄想しております。
Kim, J., Koo, B. & Knoblich, J.A. Human organoids: model systems for human biology and medicine. Nat Rev Mol Cell Biol (2020). https://doi.org/10.1038/s41580-020-0259-3.