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とはずがたり

論文の紹介や日々感じたことをつづります

COVID-19陽性の大腿骨近位部骨折患者の生命予後

2020-06-11 14:17:02 | 整形外科・手術
以前紹介したLancetの論文では、COVID-19患者における整形外科手術299例において、30-day mortalityが71.2%、肺合併症率が55.7%だったという極めて高いリスクが報告されていました(COVIDSurg Collaborative. Lancet 2020. May 29;S0140-6736(20)31182-X. doi: 10.1016/S0140-6736(20)31182-X)。このうち115例が大腿骨近位部骨折患者であったことから、次に大腿骨近位部骨折のリスクという観点で調べてみました。
1)Josep Maria Muñoz Vives et al., J Bone Joint Surg Am. 2020 May 6. doi: 10.2106/JBJS.20.00686. "Mortality Rates of Patients With Proximal Femoral Fracture in a Worldwide Pandemic: Preliminary Results of the Spanish HIP-COVID Observational Study"
大腿骨近位部骨折患者136名を対象とした。これらの患者のうち、124例が外科的治療、12例が保存的治療。総死亡率は9.6%であった。62人の患者がCOVID-19の検査を受け、23人の患者が陽性であった。これら23人の患者の平均追跡期間14日での死亡率は30.4%(23人中7人)であった。検査を受けて陰性であった患者の死亡率は10.3%(39例中4例)、検査を受けていない患者の死亡率は2.7%(74例中2例)であった。非手術で管理された12例のうち、8例(67%)が死亡したのに対し、外科的治療を受けた124例のうち、5例(4%)が死亡した。結果は施設間で異なっていた。以上よりCOVID-19患者の大腿骨近位部骨折患者においては死亡率が高い可能性がある。
2)Kenneth A Egol et al., J Orthop Trauma. 2020 May 27. doi: 10.1097/BOT.0000000000001845. "Increased Mortality and Major Complications in Hip Fracture Care During the COVID-19 Pandemic: A New York City Perspective"
New Yorkからの報告。大腿骨近位部骨折患者138人中17人(12.2%)が検査でCOVID-19陽性と確認され(C+)、14人(10.1%)は感染が疑われたが検査を受けなかった(Cs)。C+コホートは、CsおよびC-コホートと比較して、死亡率の増加(35.3% vs 7.1% vs 0.9%)、入院期間の延長、重篤な合併症の発生率の増加、術後の人工呼吸器の必要性の発生率の増加が認められた。COVID-19はパンデミック中の大腿骨近位部骨折患者の死亡率が増加している。
3)Drake G LeBrun et al., J Orthop Trauma. 2020 May 27. doi: 10.1097/BOT.0000000000001849. "Hip Fracture Outcomes During the COVID-19 Pandemic: Early Results From New York"
これもNew Yorkからの初期の報告。大腿骨近位部骨折患者59例中COVID-19陽性が10例(15%)で、40例(68%)は陰性、9例(15%)は検査せず。米国麻酔科学会(ASA)スコアはCOVID+群で高かったが、Charlson Comorbidity Indexは両群間で同程度であった。入院死亡率はCOVID+コホートで有意に増加した(56% vs 4%;OR 30.0, 95%CI 4.3-207;p=0.001)。1例の推定陽性症例を含めると、この差が増加した(60% vs 2%;OR 72.0, 95%CI 7.9-754;p<0.001)。
ということで少なくともパンデミック最中ではCOVID-19陽性患者における大腿骨近位部骨折患者の死亡率は高くなるようです。








外来リウマチ性疾患患者におけるCOVID-19感染(イタリアLombardy地方からの報告)

2020-06-11 13:40:26 | 新型コロナウイルス(治療)
イタリアのLombardy地方の2つのクリニックに通院するリウマチ性疾患患者の新型コロナウイルス感染症の頻度や重症度に関するサーベイの結果です。955人の患者(RA 531人、PsA 203人、SpA 181人、その他40人、平均年齢53.7歳、女性67.4%)を調査ました。47.3%は生物学的製剤の単独使用で、43%超の方が一つ以上の併存症(高血圧20%など)を有していました。このうち鼻腔咽頭swabの検査によってCOVID-19と診断されたのは6人(RA3人、SpA2人、サルコイドーシス1人)で5人は抗TNF-α製剤(etanercept3人、adalimumab1人、infliximab1人)、1人はabataceptで治療を受けていました。4人はcsDMARD(MTX2, LEF1, SASP1)、2人はヒドロキシクロロキンを内服していました。3人が入院しましたが、重症者や死亡例はありませんでした。診断後一時的にヒドロキシクロロキン以外のcs/bDMARDによる治療を中止しました。COVID-19の罹患率は0/62%で、一般人の感染率(0.66%)と変わりありませんでした。ほとんどの患者は治療を続け、疾患活動性にも変化はありませんでした。144人は呼吸器症状を呈しましたが、PCRは行いませんでした。以上の結果より、リウマチ性疾患患者においてCOVID-19の感染率が高いということは言えず、少なくとも感染が明らかになるまでは原疾患に対する適切な治療を続けるべきだという結論です。
Ennio Giulio Favalli et al., Arthritis Rheumatol. 2020 Jun 7. doi: 10.1002/art.41388. 
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/art.41388