オフィスビルの「環境認証」(LEED, CASBEEなど)が近年ビル価値向上に貢献していると言う。
「環境認証ビル」に競争力、省エネなど基準、取得相次ぐ、賃料上昇、収益も改善(2016/11/17 日本経済新聞)
環境認証を取得するオフィスビルが増えている。省エネや環境負荷の軽減を基準とするため、所有企業は認証取得の取り組みでコスト削減が進み、収益改善につながる。環境対策を材料に投資する海外投資家が増えていることもあり、資金取り込みを狙った取得の動きが広がりそうだ。環境認証は空調抑制、自然エネルギー利用、節水など一定の基準を満たした場合に取得できる。国内の制度として国土交通省が主導する「CASBEE(キャスビー)」、日本政策投資銀行の「DBJ Green Building(グリーンビルディング)認証」などがある。築1年以上のオフィスビルや商業施設のCASBEE不動産評価認証件数は11月16日時点で100件。認証が始まった2013年の2・6倍に増えた。新日鉄興和不動産は「神田淡路町二丁目ビル」(東京・千代田)など12件でCASBEEを取った。グリーンビルディングは5件、温暖化対策を対象にした東京都の「トップレベル事業所」は2件取得した。重複認証を含めた物件は計19件で、全体の2割を占める。テナントの獲得競争が激しくなるなか、認証は「ブランド力の向上と競争力強化」(新日鉄興和不動産)につながる。所有オフィスビルの約20%でDBJ認証を取った三菱地所によると「取得を評価する外資系テナントもある」という。海外の投資を呼び込むため、世界的に認知度の高い認証の取得に動く企業もある。三井不動産は「日本橋アステラス三井ビルディング」(同・中央)で米国グリーンビルディング協会の「LEED認証」を取った。国内ではまだ珍しいという。関西でも取得の動きは広がる。近鉄グループホールディングスは超高層複合ビル「あべのハルカス」(大阪市)で、大阪市が主導する「CASBEE大阪」とグリーンビルを取得した。吹き抜けで熱を逃がしやすくして、二酸化炭素(CO2)排出量で標準的なビルの3割に当たる年約7千トン分を減らした。関電不動産開発は17年に完成する「新MID大阪京橋ビル」(同)で熱を通しにくいガラスを採用、CO2削減率を高める。「環境意識の高い会社へのアピールになる」(同社)として「CASBEE大阪みらい」の認証を取得した。大阪市は条例で一定規模の建築物にCASBEEに基づく評価の届け出を求めており、市内のオフィスは対応を進めている。ザイマックス不動産総合研究所(東京・千代田)によると、認証取得済み物件の賃料は未取得に比べ4%程度高い。不動産サービス、ジョーンズラングラサール(同・千代田)リサーチ事業部マネージャーの岩永直子氏は「環境に配慮しないビルはテナントにとって魅力がなくなる」と話す。