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建物の構造

2016-07-31 20:18:44 | データセンター、施設建設、クラウド
1   建物に働く力
(1) 垂直荷重
① 固定荷重(fixed load/dead load)
建物の躯体や仕上材などの自重のこと。構造材料によって単位当たりの重量は決まっている。
木8kN/m3、鉄78kN/m3、コンクリート23~24kN/m3、軽量コンクリート17~21kN/m3
② 積載荷重(live load/superimposed load)
居住者、家具、設備機器など積載物の荷重のこと。建物の用途や居室の種類、構造計算の対象ごとに法令によって計算用の数値が定められている。
床の計算用の数値>大梁、柱または基礎の計算用の数値>地震力の計算用の数値
(2) 水平力
① 地震力(seismic force/earthquake load)
② 風圧力(wind load)
建物が大きくなるほど風の力を大きく受ける。
風荷重[N]=風圧力[N/m3]×見付面積[m2]
風荷重[N]=風力係数×速度圧[N/m2]
(3) その他の外力
① 地盤や地下水によって基礎にかかる土圧、水圧
② 日射などの熱による温度応力
③ 物がぶつかった時に生じる衝撃荷重
④ 設備機器の移動による繰返荷重

2   応力図(stress diagram)
構造計算の結果を表すもので、建物に発生する様々な応力の分布を図式化・視覚化する。
(1) 曲げモーメント図(bending moment diagram)
(2) せん断力図(shearing forced diagram)
(3) 軸力図(axial forced diagram)

3   鉄筋コンクリート造(reinforced concrete construction)
コンクリートは圧縮に対して強度は非常に高く、逆に引っ張りに対して強度が極端に低い特徴を持つ。このコンクリートの構造的な弱点を鉄筋(reinforcement/reinforcing bar)で補ったものが鉄筋コンクリートである。
コンクリートはアルカリ性。コンクリート自体が鉄筋の防錆の役割を果たす。しかしながら経年によってコンクリートの中性化により中の鉄筋が錆びやすくなり、ひび割れや強度の低下につながる。
コンクリートの性質を確認する指標は以下の通り。
(1) 単位水量  最大185㎏/m3
(2) 水セメント比  最大65%
(3) 単位セメント量   最大270㎏/m3
(4) 空気量  4.5%±1.5%
(5) 塩化物量  0.3㎏/m3以下
(6) スランプ  8~18cm±2.5cm
(7) 粗骨材の最大寸法  砂利25mm、砕石20mm
鉄筋コンクリート造の構造形式としては、柱・梁を剛接合したラーメン構造が一般的。
柱や壁などの部材を予め工場で製作し、現場で組み立てるプレキャストコンクリート造もある。現場打ちよりも部材の精度が高く施工期間が短くなる。

4   鉄筋コンクリート造の構造計算と取扱う数値
構造計算の流れは以下の通り。
荷重の計算→応力の算出→断面の検討→2次計算(壁量計算、剛性率、偏心率の計算など)
構造計算の段階で取扱う数値を整理すると以下の通り。
(1) 単位重量(比重)  24kN/m3(鉄筋コンクリート)
(2) ヤング係数(Young's modulus, 材料の変形しにくさ)  2.1×10^4N/mm3(コンクリート)
(3) ポアソン比(Poisson's ratio, 物質に軸方向の力を加えた時に生じる横方向と縦方向のひずみ・圧縮との比)  0.2(コンクリート)
(4) 線膨張係数(温度の上昇に対して長さが変化する割合) 1.0×10^-5(コンクリート)
(5) 基準強度  FC=16~40N/mm2
(6) 長期許容応力度(部材に生じる応力の限界値)  引張り(異形鉄筋)196~215N/mm2、圧縮(コンクリート)5.3~13.3N/mm2

5   鉄筋コンクリート造の設計と施工
(1) 継手(jonit)と定着(anchor)
鉄筋同士の接合方法すなわち鉄筋の継手方法と定着長さが重要である。定着とは一方の部材の鉄筋を延ばし他方の部材に埋め込んで緊結すること。鉄筋の末端は鍵状に折り曲げて(フック, hook)コンクリートから抜け出ないように定着しなければならない。定着の長さとは埋め込んだ鉄筋の長さのこと。その長さは鉄筋の種類や部材によって必要長さは異なる。継手には以下の方法がある。
① 重ね継手
鉄筋が重なるように配置しコンクリートの付着力で鉄筋同士の応力を伝達する方法。鉄筋を重ねる長さはコンクリートの強度や配筋位置、鉄筋の種類・径・端部形状などで異なる。
② 圧接
ガス圧接、エンクローズ溶接
③ その他
ネジ形継手
(2) 床の設計
・たわみ量の許容値<=1/250
(3) 柱の設計
・主筋は4本以上とすること。
・主筋は帯筋(hoop/tie hoop)と緊結すること。
・帯筋の径は6mm以上とし、その間隔は15cm以下で、かつ最も細い主筋の径の15倍以下とすること。
・帯筋比は0.2%以上とすること。
・柱の小径はその構造耐力上主要な支点間の距離の1/15以下とすること。
・主筋の断面積の和はコンクリートの断面積の0.8%以上とすること。

6   構造計算のためのモデル化
現実の建物で抽象的な架構に置換える(架構のモデル化)
① 荷重のモデル化
② 地震力のモデル化

7   構造計画と構造計算
建物の構造を設計する際には、まず構造計画、そして構造計算である。
(1) 構造計画
① 建築計画の目標値の設定
② 構造システム、材料、施工方法などの検討
(2) 構造計算
① 計算数値のモデル化
(ア) 架構のモデル化
(イ) 荷重のモデル化
② 構造解析
(ア) コンピュータによる力の流れの解析
(イ) 部材の断面算定

8   構造の安全性
構造の安全性は以下の項目を確認する。
(1) 荷重・外力に対する安全性
① 長期垂直荷重(固定荷重、積載荷重)
② 積雪荷重
③ 地震力
④ 風圧力
⑤ 土圧、水圧(面圧・浮力)
⑥ 温度応力
⑦ 人の活動に伴い荷重
⑧ 衝撃荷重
⑨ 繰返荷重
⑩ 機器類の動作に伴う振動(疲労確認)
⑪ 地盤の性状(沈下、液状化陥没)
(2) 火災に対する安全性  耐火性
(3) 特殊な用途に対する安全性  対薬品性、耐摩耗性など
(4) その他の安全性  耐久性、耐気候性など

9   構造設計の図書
鉄筋コンクリート造の場合、構造設計の図書として以下のものが必要となる。
(1) 構造設計標準仕様書
(2) 標準図(標準仕様図)
(3) 伏図(ふせず)
基礎伏図、床伏図、小屋伏図、屋根伏図とある。平面的な構造を知ることができる。基礎や床(天井)、小屋組、屋根などの構造材を表した平面図。スパン、部材符号、スラブレベルなどを描込む。
(4) 軸組図(じくくみず)
立体的な構造を知ることができる。建物の垂直方向の骨組みを表す。部材符号と梁のレベルを描込む。柱の長さや梁の継手位置の他に、伏図では表現しづらい梁のかかり方の上下関係や開口部の一などを表現できる。
(5) 部材断面リスト
(6) 部分詳細図
(7) ラーメン詳細図
(8) 杭地業工事特記仕様
(9) 杭伏図
(10) ボイドスラブ工事特記仕様書

10   構造計算書
構造計算書は、1級建築士の免許証の写しを添付して建築確認申請図書として提出する。15年の保存義務がある。構造計算には以下のものがある。
(1) 許容応力度計算(allowable stress calculation)
部材の許容応力度を長期および短期の2通りを設定して、部材の発生する応力度が長期・短期ともに許容応力度以下であることを確認する方法。
(2) 保存水平耐力計算(calculation of possessive strength for lateral force)
最終的に倒壊する直前の建物の耐力を計算する方法。
(3) 限界耐力計算(limit strength calculation)
建物の使用限界と安全限界の目標値を設定して、それを満足していることを確認する計算方法。
(4) 時刻歴応答解析
観測された地震波や建築基準法で定められた地震波を用いて、コンピュータ上で実際に建物の時々刻々と変化する状態を解析する方法。

11   法令による構造規定
(1) 建築基準法
6条  適合性判定の義務化
18条  確認や検査に対する手続きや指針に関する内容規定
20条  構造耐力に関する規定、構造計算対象建築物の区分
(2) 建築基準法施行令
36条  構造方法に関する技術的基準
81条  法20条各号に応じた構造計算基準の適用範囲
     ④ 時刻歴応答解析
82条  構造計算の手法、① 許容応力度計算、② 保有水平耐力計算、③ 限界耐力計算
83~88条  荷重・外力の算出方法
89~94条  各種材料の許容応力度の算出方法
95~99条  各種材料の材料強度の算出方法
(3) その他 構造関連の規準書
「鉄筋コンクリート構造設計指針」(日本建築学会)
「壁式鉄筋コンクリート造設計施工方針」(日本建築センター)
「基礎構造設計指針」(日本建築学会)

12   構造計算の内容
鉄筋コンクリート造でルート1(高さ20m以下)の場合
(1) 荷重・外力を算出して応力計算
(2) 荷重・外力の組合せによる長期と短期の応力を算出
(3) 許容応力度計算を用いた応力度の確認
(4) 使用上、支障がないかを確認、構造計算(断面計算含む)
(5) 構造計算適合性判定の要否の確認
(6) 規模、柱量、壁量の確認

13   ビルの構造と構造計算(1次設計と2次設計)
(1)ビルの構造
① RC造 ・・・Reinforced Concreteの略で、鉄筋コンクリート造のことである。
② S造 ・・・Steel structureの略で、鉄骨造のことである。
③ SRC造 ・・・鉄骨鉄筋コンクリート造のことである。
(2)構造設計(1次設計と2次設計)
① 1次設計 ・・・許容応力度(allowable stress)の設計
② 2次設計 ・・・層間変形角(storey drift)、剛性率(rigidity propotion)、偏心率(ratio of eccentricity)、保有水平体力(possessive strength for lateral force)の検討
建物の構造種類によってどこまで行うか異なる。
ルート1(RC造で高さ<=20m、S造で軒高<=9m、高さ<=13m、階数<=3、延床面積<=500sqm)の場合は1次設計まで。
ルート2(RC造およびS造で高さ<=31m)、ルート3(RC造およびS造で31m<高さ<=60m)の場合は2次設計まで。
高さ60mを超える超高層建築物は国土交通大臣が定める構造計算を行うこととなる。
構造設計をしっかり行った後、建築確認申請を行うことになる。
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