1 基礎的な事項
1-1 温度、潜熱と顕熱
(1) 絶対温度
(絶対温度[K])=(摂氏温度[℃])+273.15
(2) 顕熱
物体の温度変化に使われる熱量[kJ]
Q=m・c・Δt [kJ]
m:質量[kg]、c:比熱[J/kg・K]、Δt:温度差[K]
(3) 潜熱
物体の状態変化に使われる熱量[kJ]
蒸発熱(液体→気体)、凝縮熱(気体→液体)、融解熱(固体→液体)、凝固熱(液体→固体)、昇華熱(固体→気体)
(4) 比エンタルピー
顕熱と潜熱の和が全熱量で、物体1kgの全熱量をkJに換算したもの[kJ/kg]
(5) 水の状態変化
① 標準大気圧における水の状態変化
(ア) 融点0℃における氷と水の比エンタルピー、すなわち融解潜熱または凝固潜熱
333.6[kJ/kg]
(イ) 融点0℃から沸点100℃までの水の比エンタルピー、すなわち顕熱
比熱4.18[kJ/kgK]×100[K]=418[kJ/kg]
(ウ) 沸点100℃における水と蒸気の比エンタルピー、すなわち蒸発潜熱または凝縮潜熱
2258[kJ/kg]
② 圧力変化における水の状態変化
圧力を上げると沸点は高くなり、圧力を下げると沸点は低くなる
1-2 熱の移動
(1) 熱伝導
物体内を高温端から低温端に向かって熱が移動する現象
定常状態での伝熱量
φ=λ・A・Δt/L [kW]
λ:熱伝導率(物体内の熱の流れやすさ)、A:伝熱面積、Δt:温度差、L:熱移動の距離
(2) 熱通過
高温流体から固体壁で隔てられた低温流体へ熱が流れる現象
φ=K・A・Δt [kW]
K:熱通過率(固体壁を隔てて熱が流れる時の通りやすさ)、A:伝達面積、Δt:温度差
1-3 冷凍機の原理
(1) 冷媒
熱を温度の低いところから高いところへ移動させるために使用される熱媒体
冷凍装置内において冷媒液が、蒸発器で低い温度で気化(蒸発)しながら、周囲から熱を吸収して(蒸発熱)冷媒ガスになる
(2) 冷凍サイクル
蒸発→圧縮→凝縮→膨張
蒸発器→圧縮機→凝縮器→膨張弁
液体が気体になる時に多量の熱を吸収する
蒸発器において冷風吹き出し(冷房)。冷媒の蒸発熱(潜熱)を利用。低圧の冷媒液→低圧の冷媒ガス
気体が液体になる時に多量の熱を放出する
冷凍サイクルの成績係数は運転条件によって変わる。冷凍サイクルにおいて蒸発圧力だけが低くなっても、あるいは凝縮圧力だけが高くなっても、成績係数としては小さくなる
蒸発圧力(温度)だけを低くして運転すると、圧縮機吸込みガスの比体積は大きくなり(ガスが薄くなり)、冷媒循環量が減少することにより、成績係数は小さくなる
凝縮圧力(温度)だけが高くなると、断熱効率と機械効率が共に小さくなり、成績係数は小さくなる
冷媒の蒸発温度がほぼ-30℃程度までは単段圧縮冷凍装置が使用され、蒸発温度が-30℃以下の場合には装置の効率向上、圧縮機の吐出しガスの高温化による冷媒と潤滑油の劣化を防止するために一般に2段圧縮冷凍装置が使用される
1-4 p-h線図と冷凍サイクル
(1) p-h線図(モリエル線図)の構成
横軸:比エンタルピー、縦軸:圧力
① 圧力
p-h線図の縦軸は絶対圧力であり、対数目盛となっている
(絶対圧力)=(ゲージ圧力)+(大気圧 0.1MPa)
絶対圧力:真空を基準にした圧力
ゲージ圧力:大気圧を基準にして測定した圧力
冷凍装置の冷凍圧力は一般にブルドン圧力計で計測され、圧力計のブルドン管は管内圧力と管外大気圧との圧力差によって変形する。指示される圧力は測定しようとする冷凍圧力と大気圧との圧力差(ゲージ圧力)である
② 比エンタルピー
p-h線図の横軸
冷媒1㎏あたり持っている全熱量[kJ/kg]
(2)p-h線図上の冷凍サイクル
(3)p-h線図上の冷凍機の性能
① 冷凍効果
蒸発器で吸収する熱量。冷凍装置内を循環する冷媒1㎏が蒸発器で奪うことができる熱量
wr=hA-hD [kJ /kg]
冷凍サイクルの成績は、使用する冷媒が同じであっても冷凍サイクルの運転条件によって変わる
② 冷凍能力
冷凍装置の蒸発器で冷媒が吸収する単位時間当たりの熱量
φ0=qmr・wr=qmr(hA-hD) [kW]
qmr:冷凍装置の冷媒循環量[kg/s]
冷媒循環量は、圧縮機の吸込みガスの比体積が大きくなると、減少する
1冷凍トン:0℃の水1tを1日(24時間)で0℃の氷にするために除去しなければならない熱量
1[Rt]=333.6×1000/24=13900[kJ/h]=13900/3600[kW]=3861[kW]
333.6kJ/kg:0℃の氷の融解熱
蒸発圧力が低下すると、圧縮機の吸込みガスの比体積が大きくなるため、冷媒循環量が減少し、冷凍能力が小さくなる
③ 理論断熱圧縮仕事の熱当量(圧縮に要する仕事量)
ws=hB-hA [kJ/kg]
理論断熱圧縮動力(冷媒が受け入れた外部からの圧縮動力エネルギーを熱量で表したもの)
Pth=qmr・ws=qmr(hB-hA) [kW]
冷凍装置において冷凍能力を得るため、絶えず圧縮機で外部から圧縮仕事のエネルギーを冷媒に加える
④ 圧縮比(圧力比)
(圧縮比)=(吐出しガスの絶対圧力)/(吸込みガスの絶対圧力)
圧縮比が大きいほど、すなわち蒸発圧力が低いほど、また凝縮圧力が高いほど、圧縮の間の比エンタルピー差hB-hAは大きくなり、冷媒循環量当たりの理論断熱圧縮動力が大きくなる
⑤ 理論凝縮熱量(凝縮器で放出する熱量、凝縮負荷)
圧縮機から吐出された高温高圧ガスが、凝縮器内において、冷却水や外気に放出する熱量のこと。冷凍能力に圧縮機のの軸動力を加えたもの
φk=qmr(hB-hD)=φ0+Pth [kW]
φ0=φk-Pth
φ0:冷凍能力(凝縮器での熱流量)[kW]
Pth:圧縮機の軸動力を熱量に換算したもの[kW]
⑥ 理論成績係数
COP=(冷凍能力)/(断熱圧縮動力)=φ0/Pth=qmr(hA-hD)/qmr(hB-hA)
成績係数が大きいほど効率が良い
蒸発圧力だけが低くなると冷凍能力に対して圧縮機の軸動力が増加し、凝縮圧力だけが高くなっても冷凍能力に対して圧縮機の軸動力が増加する。すなわちどちらも成績係数が小さくなる
小さな圧縮軸動力で大きな冷凍能力を出すためには
・蒸発温度を必要以上に低くしすぎないこと
・凝縮温度を必要以上に高くしすぎないこと
・配管を細くして冷媒の流れの抵抗を大きくしないこと
⑦ ヒートポンプ
凝縮器により放熱する熱を暖房や加熱に利用する冷凍装置
理論ヒートポンプサイクルの成績係数は、同一運転温度条件の理論冷凍サイクルの値よりも、凝縮熱量は蒸発器熱量よりも動力分1.0だけ大きくなる
2 冷媒
2-1 冷媒そのもの
空調の冷媒は種類がいろいろあり、空調が働くためのコアというべき技術であり、かつ地球温暖化問題にも関連して、その技術は国策・各メーカ戦略にも関連してくる。
沸点の低い冷媒は、同じ温度条件で比べると、一般に沸点の高い冷媒よりも飽和圧力が高い
(1) フロン系冷媒(フルオロカーボン)
フルオロカーボン冷媒の比重は、一般に液の場合は1より大きく、冷媒機油(比重0.92~0.96)より大きい
① CFC(クロロフルオロカーボン)
R12など。オゾン層破壊の程度が高い。特定フロンと呼ばれ、1995年に生産中止となっている
② HCFC(ハイドロクロロフルカーボン)
R22など。オゾン層破壊の程度が少ない。指定フロンと呼ばれ、2020年に全廃とされている。かつての主流で、現在でも使用されているところは多いが、いずれ廃止・交換・設備更新の手を打つ必要がある。CFC, HCFCあわせて旧冷媒と呼ばれる
③ HFC(ハイドロフルオロカーボン)
R410A, R407C, R134aなど。オゾン層破壊がないフロン系冷媒で、代替フロン・新冷媒と呼ばれる。空調の冷媒として現在流通しているのがこれ。フロン系冷媒であることには変わりなく、地球温暖化防止の流れで、2004年からその排出に関して削減を開始している
(2) 炭化水素系冷媒 HC(ハイドロカーボン)
プロパン(C3H8)、イソブタンなど。可燃性・爆発性があり、扱いに注意
(3) その他冷媒 アンモニア、CO2、水
アンモニア:価格が安く冷凍能力が大きい冷媒であるが、可燃性・毒性があり、かつ一般的に冷凍機油(潤滑油)とも溶け合わないため、その利用が難しい
(2)(3)の冷媒は、フロンを使わない冷媒として、自然冷媒と呼ばれ、地球環境問題から注目されてきている。
(4) アンモニア冷媒とハイドロフルオロカーボン冷媒の比較
① アンモニア冷媒
冷凍機油(潤滑油)よりも軽く、漏えいしたガスは空気より軽い。液は水より軽い
水とは容易に溶け合ってアンモニア水となる
微量の水分が混入しても運転に大きな支障は生じないが、水分が多量に混入すると装置の性能が低下し潤滑油が劣化する
銅や銅合金を腐食するため、管材料に使用できない(鋼管を使用する)
吐出しガス温度は高い。アンモニア圧縮機の吐出しガス温度はアンモニアは比熱比が高いので、フルオロカーボン圧縮機の吐出しガス温度よりも10数度高くなる
沸点が高い
② ハイドロフルオロカーボン冷媒
冷凍機油(潤滑油)よりも重く、漏えいしたガスは空気より重い。液は水より重い
床面に滞留して人体の酸欠を引き起こすことがあり注意を要する
R22/鉱油、R134a/エステル油、R404a,R407c/エーテル油
銅管、鋼管を使用
水とはほとんど溶け合わない(ドライヤが必要)
吐出し温度は低い。圧縮機の吐出し温度はR134aの方がR210Aに比べて大きい
沸点が低い
フルオロカーボン冷媒液と水分はほとんど溶け合わないが、ごくわずかにフルオロカーボン冷媒液に溶け込む。溶けきれない余分の水分は水の粒となってフルオロカーボン冷媒液の上に浮いており、これを遊離水分と言う。温度の低い所では溶けない水は凍るので、これが膨張弁に詰まって冷媒の流れを悪くすることがある。またフルオロカーボン冷媒が分解して酸性の物質をつくり、これを加水分解して金属を腐食させ装置に故障を引起す
複数の単成分冷媒(R22, R134aなど)を混ぜた冷媒を混合冷媒と呼び、非共沸混合冷媒は沸点差の大きい複数の冷媒を混合したものである(R407c, R410A, R404Aなど)。非共沸混合冷媒は蒸発する時には沸点の低い冷媒が早く蒸発し、沸点の低い冷媒が早く凝縮する
2-2 冷凍機油(潤滑油)
圧縮機に使用する潤滑油。フルオロカーボン冷媒液とはよく溶け合う。圧力が高いほど温度が低いほどよく溶け合う。エーテル油などの合成油が一般的に使用される。オイルフォーミング(泡立ち)には注意
潤滑油温を50℃以下程度にしなければならない
2-3 ブライン
凍結点が0℃以下の液体で、液体状態のままその顕熱を利用して物を冷却する媒体
(1) 無機ブライン
塩化カルシウム(製氷、冷凍、冷蔵用および一般工業用として最もよく使われる)、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム
(2) 有機ブライン
エチレングリコール、プロピレングリコール
3 圧縮機(コンプレッサ)
低温・低圧の冷媒ガスを高温・高圧の冷媒ガスにする
3-1 圧縮機の種類
(1) 容積式
① 往復式(レシプロ式)
ピストンの往復運動によりシリンダの容積変化で圧縮するもの
② スクリュー式
遠心式に比べて高圧力比に適しているため、ヒートポンプや冷凍用に多用されている
③ ロータリー式
④ スクロール式
(2) 遠心式
ターボ冷凍機がコレ。大容量に適しており高圧力比には不向きで、圧力比の小さい空調用として使用されることが多い
3-2 圧縮機の構造
(1) 開放型
アンモニア冷媒を使用する圧縮機の場合(電動機巻線を侵すので開放型しか使えない)
圧縮機と電動機を別々に置いているため、冷媒の漏れ防止用にシャフトシールを必要とする
(2) 密閉型
フルオロカーボン冷媒を使用する圧縮機の場合
半密閉型と全密閉型があり、圧縮機と電動機が直結されケーシング内に納められた一体構造であるためシャフトシールは不要である
3-3 圧縮器の性能
吐出しガス温度の上限は120~130℃とされている
(1) 往復式圧縮機の理論ピストン押しのけ量
単位時間当たりのピストン押しのけ量のことで、気筒数・シリンダ容積および回転速度により決まる
(2) 体積効率
(体積効率)=(実際に圧縮機から吐出されるガス量)/(理論ピストン押しのけ量)
往復式圧縮機の体積効率は、圧縮機の構造、運転力の圧力比の大きさなどによって異なる。圧力比とシリンダのすき間容積比が大きくなるほど体積効率は小さくなる
(3) 冷媒循環量
(冷媒循環量)=(実際の吸込みガス量)/(吸込みガスの比体積)
吸込み圧力が低くなると、圧縮機の吸込みガスの比体積は大きくなり、冷媒循環量は減少し、冷凍能力は減少する
吸込みガスの過熱度が大きくなると、圧縮機の吸込みガスの比体積は大きくなり、冷媒循環量は減少し、冷凍能力は減少する
(4) 断熱圧縮効率
(断熱圧縮効率)=(理論断熱圧縮動力)/(実際にガスを圧縮する動力)
断熱圧縮効率は、圧縮比が大きくなるにつれて低下し、圧縮機の回転速度が大きいほど低下する
蒸発温度(蒸発圧力)と凝縮温度(凝縮圧力)の温度差が大きくなると、圧縮機の圧力比が大きくなる。圧縮機の圧力比が大きくなると、断熱圧縮効率は小さくなり、機械効率は若干小さくなる。よって冷凍装置の成績係数が大きく低下する
(5) 機械効率
(機械効率)=(実際にガスを圧縮する動力)/(圧縮機の実際の軸動力)
機械効率は、圧縮比が大きくなると、若干小さくなる(0.8~0.9程度)
(6) 圧縮機の軸動力
P=Pth/ηtad
Pth:理論断熱圧縮動力
ηtad:全断熱圧縮効率(断熱圧縮効率と機械効率の積)
圧縮機が冷媒ガスをシリンダに吸込んで圧縮し吐出す量は、ピストンの押しのけ量より小さくなる
圧縮機の冷媒循環量は、圧縮機のピストン押しのけ量、吸込みガスの比体積、体積効率の大きさによって決まる
冷媒ガス吸込み側に電動機を収めた密閉型圧縮機では、電動機で発生する熱が吸込み冷媒に加えられ、シリンダ吸込みガスの過熱度が大きくなりやすい
圧縮機の吐出しガス圧力が高くなると蒸発圧が一定ならば、圧力比が大きくなることにより、体積効率が低下して、圧縮機駆動の軸動力が増加し、冷凍装置の冷凍能力は低下する
3-4 圧縮機の運転と保守
(1) 圧縮機の容量制御装置
負荷に合わせて圧縮機の容量を調節する装置
① 多気筒圧縮機の容量制御装置
多気筒圧縮機の容量制御はアンロード装置で行われる。この装置は吸込み弁を開放して作動気筒数を減らすことにより25%~100%の範囲で容量を段階的に変えられる
多気筒圧縮機の油ポンプはクランクシャフトに直結しており、始動直後に油圧は確立されていない。アンロード装置は油圧が確立するとロード状態となり、始動時に負荷軽減装置としても使われる
強制給油方式の多気筒圧縮機は、液戻りの湿り運転状態が続くと、潤滑油に多量の冷媒が溶け込んで、油の粘度が劣化し潤滑不良となることがある
② スクリュー圧縮機の容量制御装置
スライド弁により、ある範囲内で無段階に容量を制御することができる
③ インバータ制御
圧縮機の回転速度を限定された範囲内で無段階に近い調節を行うことができる
(2) 圧縮機の保守
① 運転時間の管理
② 頻繁な始動・停止を防止
圧縮機が頻繁に始動と停止を繰り返すと、始動時の大きな電流により電動機巻線の異常な温度上昇を招き、電動機の焼損のおそれがある
③ 吸込み弁と吐出し弁の漏れ防止
弁の耐久時間に応じて交換する
④ ピストンリングからの漏れ防止
コンプレッションリング(吐出しガスがクランクケースに漏れないようにする)、オイルリング(冷凍機油をかき落とす)の摩耗度をチェックする
⑤ 給油ポンプの油圧のチェック
⑥ 液戻りの防止
急激に負荷が増大すると、蒸発器からの冷媒ガス中に冷媒液が混入し、圧縮機のシリンダに吸込まれる現象が発生する(液戻り)。大量の液戻りが起きて圧縮機内で液圧縮を起こすと液体は非圧縮性であることから、極めて大きな圧力を生じ圧縮機の弁割れやシリンダヘッドの破壊に至ることがある。またフルオロカーボン冷媒では、油の中に冷媒液が多量に溶け込んで油の粘度が低下するので潤滑不良となる。圧縮器の中に冷媒液が逆戻りするのを防止しなければならない。
⑦ オイルフォーミング(泡立ち)の防止
フルオロカーボン冷凍装置では、圧縮機停止中のクランクケース内の油温が低い時に潤滑油に冷媒が溶け込む割合が大きくなり、このような状態で圧縮機を始動すると、油の中の冷媒が気化して油が沸騰したような激しい泡立ちが発生する(オイルフォーミング)。これを防止するために圧縮機においてクランクケースヒータを用いて、圧縮機運転開始前の油温を一定温度以上にして、油中おフルオロカーボン冷媒の溶解量を少なくする
4 凝縮器(コンデンサ)
4-1 凝縮器の動作
圧縮機で圧縮された高温・高圧の冷媒ガスを、水や空気で冷やして凝縮させ、高温・高圧の冷媒液にする熱交換器。冷媒と冷却水(または空気)との間で熱交換が行われる
水あかの除去、冷媒過充てんの回避、いくら冷却しても凝縮しないガス(空気)の除去が重要
(1) 水あかの除去
水あかは熱伝導率が小さく、熱の流れを妨げ熱通過率が小さくなる。凝縮器能力が減少し凝縮温度が上昇するので、圧縮機の軸動力は増加する
冷却管の水あかの熱伝導抵抗を汚れ係数f[m2K/kW]で表し、汚れ係数が大きいほど熱通過率は低下する
(2) 冷媒過充てんの回避
凝縮器に冷媒を過充てんすると、余分な冷媒液は凝縮器内に貯えられて液に浸されることによって有効な冷却管が減少する。このために凝縮温度が上昇し、冷媒液の過冷却度は大きくなる
(3) 不凝縮ガスの除去
凝縮器に不凝縮ガスが混入すると、冷媒側の熱伝達が悪くなって凝縮圧力が上昇し、不凝縮ガスの分圧相当分以上に圧力が高くなる
4-2 凝縮器の種類
空冷凝縮器と水冷凝縮器を比べると、熱通過率の値は水冷凝縮器の方が大きい
(1) 空冷凝縮器
蒸発式凝縮器と比較すると凝縮温度は高くなる。主としてフルオロカーボン冷凍装置で使われる
空冷凝縮器を用いた冷媒装置では、冬季に外気温度が低くなり、凝縮圧力が低くなると冷媒循環量が減少して冷凍能力が低下する。そのため凝縮器出口に凝縮圧力調整弁を取付け、凝縮器内に冷媒液を留め、凝縮器内に冷媒液が溜まることにより、有効に凝縮作用を行う伝熱面積が減少し、凝縮圧力を所定の圧力に保持する
空冷凝縮器の空気と冷却管外面との間の熱伝達率は、冷媒と冷却管内面との間の熱伝達率に比べるとはるかに小さいため、冷却管外面にフィンを付けて表面積を大きくし内外面の熱伝達抵抗が同程度となるようにする
受液器を持たない空冷凝縮器では、冷媒を過充てんすると出口より冷媒液が溜まり、凝縮器の伝熱面積が減少することにより凝縮温度(圧力)が上昇し、冷媒液としては過冷却度が増大する
(2) 水冷凝縮器
① シェルアンドチューブ凝縮器
鋼管製の円筒胴(シェル)と管板に固定された冷却管および水室カバーから構成される。冷却管の中に冷却水が流れ、管外の圧縮機吐出しガスを凝縮する。凝縮された冷媒液は凝縮器の底部に溜まり、液出口から受液器または膨張弁に向かって送り出される
伝熱面積は、冷媒に接する冷却管全体の外表面積の合計で表す
適切な水速は1~3m/s
フルオロカーボン冷凍装置でもアンモニア冷凍装置でも使用される
銅製のローフィンチューブはフルオロカーボン冷凍装置の水冷凝縮器の冷却管として使用される
② 2重管凝縮器
主としてフルオロカーボン冷凍装置で、主に水冷のパッケージエアコンに使用される
2重構造の管で、内側に冷却水を通し、フルオロカーボン冷媒ガスは内管と外管との間を流れ、凝縮された冷媒液が下部から出てくる
③ 冷却塔(クーリングタワー)
水の蒸発潜熱で冷却される
冷却塔の性能は水温、水量、風量および湿球温度で決まる
冷却水の出入口の温度差は4~6Kで、凝縮温度は冷却水出口温度よりも3~5K高い温度が一般的となる
アプローチ:冷却塔の出口水温と周辺空気の湿球温度との差3~5K
クーリングレンジ:冷却塔の出入口冷却水の温度差4~6K
循環水量に対して約2%前後の補給水が必要
④ コンデンサ・レシーバ(受液器兼用水冷凝縮器)
容量があまり大きくない水冷凝縮器では底部にある程度の冷媒液を溜め、冷却管の最下部数本をこの液の中で浸して過冷却を図るとともに、受液器の役目を持たせる場合がある
(3) 蒸発式凝縮器
凝縮器内に配管を通る冷媒に対して上部から水を散布、送風を同時に行い、散布された水が管内を流れる冷媒から熱を奪って蒸発する。水の蒸発潜熱を利用している
主としてアンモニア冷凍装置に使用されている
蒸発式凝縮器では空気の湿球温度が低いほど、散水された冷却水温度が低くなり、凝縮温度(圧力)が低くなる
5 蒸発器(エバポレータ)
周囲の物質を冷却するには、蒸発器において冷媒液が蒸発する時の蒸発潜熱により、周囲の物質から熱を吸収する
低温・低圧の冷媒液を冷媒ガスに蒸発させて冷却作用を行う熱交換器
空気冷却器(空気を冷却する)と水冷却器(水を冷却する)がある
空気冷却器では、庫内温度と蒸発温度との平均温度差Δtmが大きすぎると蒸発温度を低くしなければならないので、その場合圧縮機の軸動力は減少し、冷凍装置の成績係数は低下する
フィンピッチは、冷凍・冷蔵用では着霜があるので10~15mm、空調用では2mm程度とされている
5-1 蒸発器の種類
(1) 乾式蒸発器
膨張弁から流れ出た冷媒は飽和液と乾き飽和ガスが混じり合った状態になっており、これらをそのまま蒸発器に導き、飽和液が蒸発潜熱を周囲から取り込んで乾き飽和ガスとなり、さらにいくらか過熱さらた状態で蒸発管から出ていく
多数の伝熱管に均等に分配させるためのディストリビュータを取付ける。ディストリビュータを用いる場合は、一般的に冷媒の流れの圧力降下が大きいので、外部均圧形温度自動膨張弁が使用される
乾式プレートフィン蒸発器の伝熱計算に必要な伝熱面積は、冷媒に接する外表面側(フィン側の空気に接する面)の面積を基準として表す
乾式シェルアンドチューブ蒸発器は、シェル側に水またはブラインが流れ、冷却管内には冷媒が流れる。バッフルプレートによって水の流速を増し、水流を冷却管に対してできるだけ直角になるように水やブライン側の熱伝導率を向上させる
(2) 満液式蒸発器
乾式蒸発器のような過熱に必要な管部がないため、乾式蒸発器より冷媒液に接した伝熱面における平均熱通過率が大きい
フルオロカーボン冷媒を使用する満液式蒸発器では、蒸発器に入った油の戻りが悪いので、油戻し装置が必要となる
(3) 冷媒液強制循環式(液ポンプ式)蒸発器
低圧受液器から、蒸発量より3~5倍多い量の冷媒液を、冷媒液ポンプで強制的に蒸発器に送る。未蒸発の液は気化したガスとともに低圧受液器へ戻り、潤滑油も冷媒液とともに運び出される
5-2 除霜(デフロスト)および凍結防止
霜が付着すると空気の通路が狭くなって風量が減少する。また霜の熱伝導率が小さいので伝熱が妨げられ、冷凍能力と成績係数が低下する。そのため着霜した蒸発器から霜を除去する
(1) 除霜方式
着霜すると熱通過率が小さくなり蒸発圧力が低下する
① ホットガス・デフロスト方式
圧縮機から吐出される高温の冷媒ガスを蒸発器に送り込み、その顕熱と凝縮潜熱によって霜を融解させる
② 散水除霜方式
③ 不凍液散布除霜方式
④ 電気ヒータ除霜方式
(2) 凍結防止
水は凍結するとその体積が約9%膨張する
サーモスタットや蒸発圧力調整弁を用いる
6 付属機器
6-1 受液器(レシーバ)
(1) 高圧受液器
単に受液器と呼ぶことが多い。高圧受液器は凝縮器の出口側に連結され、以下の役割を持つ
・運転状態に変化があっても冷媒液が凝縮器に滞留しにように、受液器内に吸収する
・冷凍装置を修理する際に、冷媒を回収することができる
(2) 低圧受液器
低圧受液器は、冷媒液強制循環式冷凍装置で使用される
蒸発器へ冷媒液を送り、かつ蒸発器から戻る冷媒液の一時的な液溜めとする役割を持ち、液ポンプがガスを吸込まないための液面レベルの確保と冷凍負荷に応じた液面制御で行う
6-2 油分離機(オイルセパレータ)
圧縮機の吐出し管に取付ける
圧縮機からの冷媒ガスとともに吐出される潤滑油を冷媒ガスとを分離する
大型低温用のフルオロカーボン冷凍装置やアンモニア冷凍装置で用いることが多い。小型のフルオロカーボン冷凍装置では油分離器は設けない
フルオロカーボン冷凍装置では、分離された潤滑油は自動的に圧縮機に返油される
アンモニア冷凍装置では、分離された潤滑油は油が劣化するので一般には圧縮機のクランクケースに自動返納されずに油だけを油溜めに抜取り、廃油。新しい潤滑油を補充する
6-3 液分離機(アキュムレータ)
蒸発器と圧縮機の間の吸込みガス配管に取付ける
冷媒のガスと液を分離し、冷媒ガスだけを圧縮機に吸込ませて、冷媒液を圧縮機に流れ込まないようにし液圧縮を防止する
円筒形の胴を持った容器でガス速度を約1m/s以下に落としてガス中の液的を重力で分離して落下させる
小型のフルオロカーボン冷凍装置やヒートポンプ装置に使用される小容量の液分離機(アキュムレータ)では、分離された液は容器の下に溜まり内部のU字管下部に設けられた小穴(メンタリングオリフィス)から液圧縮にならない程度に少量ずつ、液をガスとともに圧縮器に吸込ませるものがある
6-4 液ガス熱交換器
フルオロカーボン冷凍装置では、冷媒液を過冷却して液管内でフラッシュガスの発生を防止し、圧縮機に湿り状態のまま吸込まれるのを防止するために、圧縮機への吸込みガスを適度に過熱して液戻りを防止するために設置する。
アンモニア冷凍装置では、圧縮機の吸込みガスの過熱度が高いと冷媒の比熱が大きいので、吐出しガス温度の上昇が著しいので、使用しない
6-5 乾燥器(ドライヤ)
フルオロカーボン冷凍装置の冷媒系統に水分が存在すると氷結時の閉塞など装置の各部に悪影響を及ぼすので、冷媒液はドライヤを通して水分を除去するようにしている
シリカゲルやゼオライトを用いて化学反応を起こさない形で水分を吸着する
フィルタドライヤの冷媒入口と出口がL字形に配置されているものがある。これは配管を外さずに乾燥剤の交換やフィルタの清掃を行うことを可能とするための構造である
アンモニア冷凍装置においては、アンモニア液と水と容易に溶け合ってアンモニア水となり、冷凍装置内に微量であれば差支えないので、ドライヤを設けない
7 自動制御機器
7-1 自動膨張弁(エキスパンションバルブ)
・高圧の冷媒液を低圧部に絞り膨張させる機能
・熱負荷に応じて冷媒流量を自動的に調整する機能
を持つ
(1) 温度自動膨張弁
蒸発器の出口の温度を感温筒で感知して、蒸発器出口冷媒の過熱度を一定に保つように、冷媒流量を調整する膨張弁
温度自動膨張弁の容量(冷凍能力)は、弁オリフィスの口径によって変わり、一般的には弁開度の80%程度の時の値が定格容量とされている。膨張弁の容量が大きすぎると周期的に変動するハンチング減少が生じる。また膨張弁の容量は、弁開度と弁オリフィス口径が同じであっても、凝縮圧力と蒸発圧力との圧力差すなわち弁前後の高低圧間の圧力差によって異なってくる
① 外部均圧形温度自動膨張弁
温度自動膨張弁から蒸発器出口までの蒸発器やディストリビュータにおける圧力降下が大きな場合に用いられる。大型の冷凍装置向け
蒸発器出口の圧力を外部均圧管で、膨張弁のダイヤフラム面に伝える構造になっている
② 内部均圧形温度自動膨張弁
膨張弁から蒸発器出口までの圧力降下が小さい場合に用いられる。小型の冷凍装置向け
(2) 定圧自動膨張弁
蒸発温度(圧力)がほぼ一定になるように冷媒流量を調節する蒸発圧力制御弁で、この弁は温度自動膨張弁と違い、蒸発器出口冷媒の一般に熱負荷変動の少ない小型冷凍装置に用いられる
(3) キャピラリチューブ
キャピラリチューブは細い銅管を流れる冷媒の流れ抵抗により圧力降下を利用して冷媒の絞り膨張を行い、固定絞りとなる。したがって冷媒流量がほぼ定まり蒸発器出口冷媒の過熱度は制御できない
家庭用電気冷蔵庫や小型ルームエアコンのような小容量の冷凍装置において、温度自動膨張弁の代わりに使われている
7-2 圧力調整弁
(1) 蒸発圧力調整弁
蒸発器の出口配管に取付けてる
蒸発器内の冷媒の蒸発圧力が所定の蒸発圧力よりも下がるのを防止する目的で用いられる
2個以上の蒸発器を1台の圧縮機で運転する冷凍装置において、蒸発温度の高い蒸発器出口に蒸発圧力調整弁を取付け、それぞれ蒸発器の蒸発圧力を制御することができる
(2) 吸込み圧力調整弁
圧縮機の吸込み配管に取付ける
弁の出口側の圧縮機吸込み圧力が設定値よりも高くならないように弁を絞り、圧縮機に流れ込む圧力を制御することにより圧縮機の過負荷を防止する。圧縮機の吸込み圧力を一定値に調節する
(3) 凝縮圧力調整弁
空冷凝縮器に取付ける
冬季に凝縮圧力が低くなりすぎる時に膨張弁を流れる冷媒量が不足するので、凝縮圧力調整弁を用いて弁を絞り、凝縮器内に冷凍液を溜めることにより熱伝達を悪くし、凝縮圧力を一定圧力に維持する
(4) 冷却水調整弁
7-3 圧力スイッチ
7-4 電磁弁
7-5 断水リレー
水冷凝縮器や水冷却器で、断水や循環水量が異常に低下した場合に電気回路を遮断して、圧縮器を停止したり、警報を出して装置を保護する
8 冷媒配管
8-1 冷媒配管の基本
十分な耐圧性能と気密性能が必要
横走り管の場合、冷媒の流れる方向に1/150~1/250の下り勾配要。
配管の途中で不必要なU字状のトラップを設けない。横走り管にU字トラップがあると、軽負荷運転時や停止時に油や冷媒液がU字トラップに溜まり、圧縮機の再始動時または軽負荷運転から全負荷運転になった際に、圧縮機に液が戻り液圧縮の危険が生じる
フルオロカーボン冷媒の場合、その配管材料として銅管および鋼管(マグネシウムを含んだアルミニウム合金は不可)
アンモニア冷媒の場合、銅および銅合金の配管を使用することは不可(腐食してしまう)
配管用炭素鋼交換(SGP)は毒性を持つ冷媒、設計圧力が1.0MPaを超える耐圧部分、温度が100℃を超える耐圧部分には使用することができない
8-2 冷媒配管の施工
(1) 低圧冷媒ガス配管(吸込み管)
圧縮器への吸込み配管は、外部からの熱の侵入や管表面の結露あるいは着霜を防ぐために防熱材を巻いて防熱を施す
管径は、冷媒ガス中に混在している潤滑油を最小負荷時において確実に圧縮機に戻せるようなガス速度を確保でき、かつ過大な圧力降下を発生させない程度のガス速度を上限として決定する
(横走り管で約3.5m/s以上、立ち上がり管で約6m/s、25m/s以下)
圧縮機の吸込み配管径を小さくして冷媒流速を大きくすると、配管抵抗が大きくなり吸込み圧力が低下する
圧縮機への吸込み管の立上げが非常に長い場合には、約10m毎に中間トラップを設けて潤滑油が戻りやすくする
(2) 高圧冷媒ガス配管(吐出し管)
圧縮器の停止中に配管内で凝縮した液体や油が逆流しないようにする(そのために横走り管で下り勾配あり)
管径は、冷媒ガス中に混在している潤滑油が確実に運ばれるガス速度が確保でき、かつ過大な圧力低下と異常な騒音を生じないガス速度を上限として決定する
(横走り管で約3.5m/s以上、立ち上がり管で約6m/s、25m/s以下)
(3) 高圧液冷媒配管(高圧液管)
飽和温度以上に高圧液管が温められると、フラッシュガスが発生する。その場合、冷媒液内に気泡が発生し膨張弁を通過する冷媒流量が減少することにより冷凍能力は減少してしまう
受液器から膨張弁の高圧液管において、冷媒液がフラッシュガスを発生するのを防ぐために、流速をできるだけ遅くして圧力降下が小さくなるように、管径を決める
(1.5m/s以下)
9 安全装置
圧縮機には、その吐出し圧力を正しく検知できる位置に高圧遮断装置および安全弁を取付ける。ただし冷媒能力が20トン未満の圧縮機においては安全弁の取付けを省略することができる
9-1 安全弁
安全弁が作動すると、冷媒を放出する
安全弁に付帯して設けた止め弁は、修理・清掃・検査時を除き、常に全開してくこと
(1)圧縮機に取付けるべき安全弁の口径
d1=C1√V1 [mm」
d1:安全弁の最小口径[mm]
V1:標準回転速度における1時間のピストン押しのけ量[m3]
C1:冷媒の種類による定数
(2)容器に取付けるべき安全弁または破裂板の口径
d3=C3√DL [mm]
D:容器の外径[m]
L:容器の長さ[m]
C3:冷媒の種類、高圧部、低圧部別に定められた定数
9-2 高圧遮断装置
安全弁の噴出し以前に、高圧遮断装置の作動により圧縮機を停止させるようにしている。すなわち高圧遮断装置の作動圧力は、安全弁の吹始め圧力の最低値以下のア強くである
原則として手動復帰式。ただし可燃性ガスおよび毒性ガス以外のガスを冷媒とするユニット式の冷凍設備(10トン未満)で運転および停止が自動的に行われても危険の生ずるおそれのない構造のものは自動復帰式とすることができる
9-3 溶栓
溶栓は温度により溶融し、冷媒を放出する構造になっている
溶融温度は原則として75℃以下と定められている
当該溶栓の取付けられる冷媒設備に係る冷媒ガスの温度を正確に検知でき、かつ圧縮機の高温吐出しガスに影響されない位置に取付ける
溶栓は可燃性ガスおよび毒性ガスには使用することができない
9-4 破裂板
圧力の上昇を検知して作動する。弁を閉じることなく冷媒ガスの圧力が大気圧に下がるまで噴出を続ける
破裂板の破裂圧力は耐圧試験圧力以下であること、安全弁の作動圧力以上とすること
溶栓と同様に可燃性ガスおよび毒性ガスには使用することができない
9-5 圧力逃がし装置
10 機器の材料および圧力容器
高圧部の設計圧力:通常の運転状態で起こりうる最高の圧力を設計圧力とする
低圧部の設計圧力:停止中に周囲温度の高い夏期に内部冷媒が38~40℃程度まで上昇した時の冷媒の飽和圧力に基づいて規定されている
JIS規格のSM400B材の最小引張強さは400N/mm2であり、許容引張り応力は一般に最小引張強さの1/4の応力とされているので、400×1/4=100N/mm2となる
10-1 材料力学の基礎
一般の鋼材は低温でもろくなり、これを低温脆性と呼ぶ。この低温脆性は切欠きなどの欠陥、引張りまたはこれに似た応力がかかった場合に衝撃荷重が引き金となって瞬間的に大きな破壊を起こすことがある
10-2 圧力容器の強さ
圧力容器の鏡板には種々の形状があり、同じ設計圧力で同じ材質でも鏡板の形状がさら形、半楕円形、半球形で必要な板厚が異なる。半球形が最も薄くできる
圧力容器の円筒胴の設計板厚は、冷媒の種類毎の設計圧力、円筒胴内径、材料の許容引張り応力、溶接継手の効率および腐れしろから求めることができる
円筒胴の直径が大きく内圧が高いほど円筒胴の必要とする板厚は厚くなる。円筒胴の直径が小さいほど円筒胴の必要とする板厚は薄くなる
応力集中の小さい形状であると、より安全な容器と言える。応力集中は形状や板厚が急変する部分やくさび形のくびれの先端部に発生しやすい
許容圧力は、冷媒設備において現に許容しうる最高の圧力であって、設計圧力または腐れしろを除いた肉厚に対応する圧力のうち低い方を言う
薄肉円筒胴圧力容器の板の内部に発生する応力は、円筒胴の接線方向に作用する応力が長手方向に作用する応力の2倍になっている
11 圧力試験および試運転
11-1 耐圧試験
耐圧試験は気密試験の前に行う。配管以外の部分に対して行う
水や油その他揮発性のない液体で行う場合、設計圧力または許容圧力のいずれか低い方の1.5倍以上の圧力とする。空気や窒素などの気体で行う場合は1.25倍の圧力とする
空気圧縮機を使用して圧縮空気を供給する場合は、空気の温度を140℃以下にする
耐圧試験において、気体で行う場合は圧力計の文字板の大きさは100mm以上、液体で行う場合は75mm以上と定められている
11-2 気密試験
耐圧試験に合格した容器等の組立品ならびにこれらを用いた冷媒配管で連結した冷媒設備について行うガス圧試験。設計圧力(1倍)以上の圧力で行う
使用するガスは空気、窒素、フルオロカーボン(不燃性のもの)、二酸化炭素など
二酸化炭素はアンモニア冷凍装置の気密試験には使用してはならない。酸素ガスはどの冷媒設備の気密試験にも使用してはならない
フルオロカーボンを使用する場合、ガス漏れ検知器(ハライドトーチ)で容易に漏れ検知を行うことができる。バーナ炎が漏れ出したフルオロカーボンに接すると色が変わる
アンモニアの漏えいの検出をするために、硫黄を燃やすと亜硫酸ガスが発生し、アンモニアと反応して硫化アンモニウムの白煙を生じる
時間の経過とともに温度変化により圧力の変動があるので、温度補正を考慮する必要がある
気密試験において、圧力計の文字板の大きさは75mm以上と定められている
11-3 真空試験
気密試験を実施して漏れがない場合に最終チェックとして、冷媒系統の乾燥として行う
微小の漏れは発見できるが漏れ箇所がどこにあるかはわからない。先に行う気密試験で発見すべし
冷凍装置内部の乾燥のため、必要に応じて水分の残留しやすい場所を過熱するとよい
ゲージ圧で-93kPa(絶対圧力で8kPa)程度の真空状態にする。真空計を用いる
11-4 油の充てんと冷媒の充てん
真空乾燥の終わった冷凍装置には、冷媒と冷凍機油(潤滑油)を充てんする
高速回転で軸受荷重の小さい圧縮機を用いる場合には一般に粘度の低い冷凍機油を用いる
12 冷凍装置の運転と状態、冷凍装置の保守管理
(1) 運転開始
冷凍装置の運転開始前には、多気筒圧縮機の吸込み止め弁を全開する
冷凍装置の運転開始後には、液管にサイトグラスがある場合にそれにより気泡が発生していないことを確認する
(2) 運転停止
冷凍装置の運転停止時には、油分離器の返油弁を全開として油分離器の冷媒が圧縮機に流入しないようにする
冷凍装置が運転を停止した時に蒸発器に多量の冷媒液が滞留していると、圧縮機の再始動時に冷媒液が活発に蒸発し、液戻りを起こしやすい
冷凍装置を手動で停止する時は、受液器液出口弁を閉じて冷媒の供給を止め、液管・蒸発器の冷媒を回収するためにしばらく運転して、液封が生じないようにしてから圧縮機を停止する
液封自己の起きやすい箇所としては、低温液で満たされた管が運転停止時に両端の弁を閉じている場合など、温度の低い冷媒液の配管内で温度上昇し体積膨張し異常圧力上昇となる
(3) 長期間休止
冷凍装置を長期間休止させる場合には、低圧側の冷媒を受液器に回収し、装置内の圧力と大気圧よりもやや高くして、空気の混入を防止する
(4) その他の運転管理
水冷凝縮器の冷却水量が減少したり、冷却温度が上昇すると、凝縮圧が上昇し、圧縮機吐出しガス圧力と温度が上昇する。そして圧縮機シリンダが過熱する。この過熱により潤滑油温度が上昇し、油を劣化させてシリンダやピストンを傷める
圧縮機の吸込みガスの圧力は、蒸発器や吸込み配管の抵抗により、蒸発器内の冷媒の蒸発圧力よりもいくらか低い圧力となり、冷凍サイクルとしては一番低い圧力となる
圧縮機のシリンダの温度が過熱運転により上昇すると潤滑油の温度が上昇し潤滑油が炭化し分解して多少の不凝縮ガスを発生することがある
蒸発温度(圧力)と凝縮温度(圧力)との差が大きくなる、圧縮比が大きくなることにより圧縮機の体積効率が低下し、また吸込みガスの比体積が大きくなる(ガスが薄くなる)ので、冷媒循環量が減少し、冷媒能力と圧縮機の軸動力も減少する
圧縮機の吸込みガスの過熱度が大きいと、吐出しガス温度が高くなり、潤滑油を劣化させ、軸受けの焼付きの原因となることがある
1-1 温度、潜熱と顕熱
(1) 絶対温度
(絶対温度[K])=(摂氏温度[℃])+273.15
(2) 顕熱
物体の温度変化に使われる熱量[kJ]
Q=m・c・Δt [kJ]
m:質量[kg]、c:比熱[J/kg・K]、Δt:温度差[K]
(3) 潜熱
物体の状態変化に使われる熱量[kJ]
蒸発熱(液体→気体)、凝縮熱(気体→液体)、融解熱(固体→液体)、凝固熱(液体→固体)、昇華熱(固体→気体)
(4) 比エンタルピー
顕熱と潜熱の和が全熱量で、物体1kgの全熱量をkJに換算したもの[kJ/kg]
(5) 水の状態変化
① 標準大気圧における水の状態変化
(ア) 融点0℃における氷と水の比エンタルピー、すなわち融解潜熱または凝固潜熱
333.6[kJ/kg]
(イ) 融点0℃から沸点100℃までの水の比エンタルピー、すなわち顕熱
比熱4.18[kJ/kgK]×100[K]=418[kJ/kg]
(ウ) 沸点100℃における水と蒸気の比エンタルピー、すなわち蒸発潜熱または凝縮潜熱
2258[kJ/kg]
② 圧力変化における水の状態変化
圧力を上げると沸点は高くなり、圧力を下げると沸点は低くなる
1-2 熱の移動
(1) 熱伝導
物体内を高温端から低温端に向かって熱が移動する現象
定常状態での伝熱量
φ=λ・A・Δt/L [kW]
λ:熱伝導率(物体内の熱の流れやすさ)、A:伝熱面積、Δt:温度差、L:熱移動の距離
(2) 熱通過
高温流体から固体壁で隔てられた低温流体へ熱が流れる現象
φ=K・A・Δt [kW]
K:熱通過率(固体壁を隔てて熱が流れる時の通りやすさ)、A:伝達面積、Δt:温度差
1-3 冷凍機の原理
(1) 冷媒
熱を温度の低いところから高いところへ移動させるために使用される熱媒体
冷凍装置内において冷媒液が、蒸発器で低い温度で気化(蒸発)しながら、周囲から熱を吸収して(蒸発熱)冷媒ガスになる
(2) 冷凍サイクル
蒸発→圧縮→凝縮→膨張
蒸発器→圧縮機→凝縮器→膨張弁
液体が気体になる時に多量の熱を吸収する
蒸発器において冷風吹き出し(冷房)。冷媒の蒸発熱(潜熱)を利用。低圧の冷媒液→低圧の冷媒ガス
気体が液体になる時に多量の熱を放出する
冷凍サイクルの成績係数は運転条件によって変わる。冷凍サイクルにおいて蒸発圧力だけが低くなっても、あるいは凝縮圧力だけが高くなっても、成績係数としては小さくなる
蒸発圧力(温度)だけを低くして運転すると、圧縮機吸込みガスの比体積は大きくなり(ガスが薄くなり)、冷媒循環量が減少することにより、成績係数は小さくなる
凝縮圧力(温度)だけが高くなると、断熱効率と機械効率が共に小さくなり、成績係数は小さくなる
冷媒の蒸発温度がほぼ-30℃程度までは単段圧縮冷凍装置が使用され、蒸発温度が-30℃以下の場合には装置の効率向上、圧縮機の吐出しガスの高温化による冷媒と潤滑油の劣化を防止するために一般に2段圧縮冷凍装置が使用される
1-4 p-h線図と冷凍サイクル
(1) p-h線図(モリエル線図)の構成
横軸:比エンタルピー、縦軸:圧力
① 圧力
p-h線図の縦軸は絶対圧力であり、対数目盛となっている
(絶対圧力)=(ゲージ圧力)+(大気圧 0.1MPa)
絶対圧力:真空を基準にした圧力
ゲージ圧力:大気圧を基準にして測定した圧力
冷凍装置の冷凍圧力は一般にブルドン圧力計で計測され、圧力計のブルドン管は管内圧力と管外大気圧との圧力差によって変形する。指示される圧力は測定しようとする冷凍圧力と大気圧との圧力差(ゲージ圧力)である
② 比エンタルピー
p-h線図の横軸
冷媒1㎏あたり持っている全熱量[kJ/kg]
(2)p-h線図上の冷凍サイクル
(3)p-h線図上の冷凍機の性能
① 冷凍効果
蒸発器で吸収する熱量。冷凍装置内を循環する冷媒1㎏が蒸発器で奪うことができる熱量
wr=hA-hD [kJ /kg]
冷凍サイクルの成績は、使用する冷媒が同じであっても冷凍サイクルの運転条件によって変わる
② 冷凍能力
冷凍装置の蒸発器で冷媒が吸収する単位時間当たりの熱量
φ0=qmr・wr=qmr(hA-hD) [kW]
qmr:冷凍装置の冷媒循環量[kg/s]
冷媒循環量は、圧縮機の吸込みガスの比体積が大きくなると、減少する
1冷凍トン:0℃の水1tを1日(24時間)で0℃の氷にするために除去しなければならない熱量
1[Rt]=333.6×1000/24=13900[kJ/h]=13900/3600[kW]=3861[kW]
333.6kJ/kg:0℃の氷の融解熱
蒸発圧力が低下すると、圧縮機の吸込みガスの比体積が大きくなるため、冷媒循環量が減少し、冷凍能力が小さくなる
③ 理論断熱圧縮仕事の熱当量(圧縮に要する仕事量)
ws=hB-hA [kJ/kg]
理論断熱圧縮動力(冷媒が受け入れた外部からの圧縮動力エネルギーを熱量で表したもの)
Pth=qmr・ws=qmr(hB-hA) [kW]
冷凍装置において冷凍能力を得るため、絶えず圧縮機で外部から圧縮仕事のエネルギーを冷媒に加える
④ 圧縮比(圧力比)
(圧縮比)=(吐出しガスの絶対圧力)/(吸込みガスの絶対圧力)
圧縮比が大きいほど、すなわち蒸発圧力が低いほど、また凝縮圧力が高いほど、圧縮の間の比エンタルピー差hB-hAは大きくなり、冷媒循環量当たりの理論断熱圧縮動力が大きくなる
⑤ 理論凝縮熱量(凝縮器で放出する熱量、凝縮負荷)
圧縮機から吐出された高温高圧ガスが、凝縮器内において、冷却水や外気に放出する熱量のこと。冷凍能力に圧縮機のの軸動力を加えたもの
φk=qmr(hB-hD)=φ0+Pth [kW]
φ0=φk-Pth
φ0:冷凍能力(凝縮器での熱流量)[kW]
Pth:圧縮機の軸動力を熱量に換算したもの[kW]
⑥ 理論成績係数
COP=(冷凍能力)/(断熱圧縮動力)=φ0/Pth=qmr(hA-hD)/qmr(hB-hA)
成績係数が大きいほど効率が良い
蒸発圧力だけが低くなると冷凍能力に対して圧縮機の軸動力が増加し、凝縮圧力だけが高くなっても冷凍能力に対して圧縮機の軸動力が増加する。すなわちどちらも成績係数が小さくなる
小さな圧縮軸動力で大きな冷凍能力を出すためには
・蒸発温度を必要以上に低くしすぎないこと
・凝縮温度を必要以上に高くしすぎないこと
・配管を細くして冷媒の流れの抵抗を大きくしないこと
⑦ ヒートポンプ
凝縮器により放熱する熱を暖房や加熱に利用する冷凍装置
理論ヒートポンプサイクルの成績係数は、同一運転温度条件の理論冷凍サイクルの値よりも、凝縮熱量は蒸発器熱量よりも動力分1.0だけ大きくなる
2 冷媒
2-1 冷媒そのもの
空調の冷媒は種類がいろいろあり、空調が働くためのコアというべき技術であり、かつ地球温暖化問題にも関連して、その技術は国策・各メーカ戦略にも関連してくる。
沸点の低い冷媒は、同じ温度条件で比べると、一般に沸点の高い冷媒よりも飽和圧力が高い
(1) フロン系冷媒(フルオロカーボン)
フルオロカーボン冷媒の比重は、一般に液の場合は1より大きく、冷媒機油(比重0.92~0.96)より大きい
① CFC(クロロフルオロカーボン)
R12など。オゾン層破壊の程度が高い。特定フロンと呼ばれ、1995年に生産中止となっている
② HCFC(ハイドロクロロフルカーボン)
R22など。オゾン層破壊の程度が少ない。指定フロンと呼ばれ、2020年に全廃とされている。かつての主流で、現在でも使用されているところは多いが、いずれ廃止・交換・設備更新の手を打つ必要がある。CFC, HCFCあわせて旧冷媒と呼ばれる
③ HFC(ハイドロフルオロカーボン)
R410A, R407C, R134aなど。オゾン層破壊がないフロン系冷媒で、代替フロン・新冷媒と呼ばれる。空調の冷媒として現在流通しているのがこれ。フロン系冷媒であることには変わりなく、地球温暖化防止の流れで、2004年からその排出に関して削減を開始している
(2) 炭化水素系冷媒 HC(ハイドロカーボン)
プロパン(C3H8)、イソブタンなど。可燃性・爆発性があり、扱いに注意
(3) その他冷媒 アンモニア、CO2、水
アンモニア:価格が安く冷凍能力が大きい冷媒であるが、可燃性・毒性があり、かつ一般的に冷凍機油(潤滑油)とも溶け合わないため、その利用が難しい
(2)(3)の冷媒は、フロンを使わない冷媒として、自然冷媒と呼ばれ、地球環境問題から注目されてきている。
(4) アンモニア冷媒とハイドロフルオロカーボン冷媒の比較
① アンモニア冷媒
冷凍機油(潤滑油)よりも軽く、漏えいしたガスは空気より軽い。液は水より軽い
水とは容易に溶け合ってアンモニア水となる
微量の水分が混入しても運転に大きな支障は生じないが、水分が多量に混入すると装置の性能が低下し潤滑油が劣化する
銅や銅合金を腐食するため、管材料に使用できない(鋼管を使用する)
吐出しガス温度は高い。アンモニア圧縮機の吐出しガス温度はアンモニアは比熱比が高いので、フルオロカーボン圧縮機の吐出しガス温度よりも10数度高くなる
沸点が高い
② ハイドロフルオロカーボン冷媒
冷凍機油(潤滑油)よりも重く、漏えいしたガスは空気より重い。液は水より重い
床面に滞留して人体の酸欠を引き起こすことがあり注意を要する
R22/鉱油、R134a/エステル油、R404a,R407c/エーテル油
銅管、鋼管を使用
水とはほとんど溶け合わない(ドライヤが必要)
吐出し温度は低い。圧縮機の吐出し温度はR134aの方がR210Aに比べて大きい
沸点が低い
フルオロカーボン冷媒液と水分はほとんど溶け合わないが、ごくわずかにフルオロカーボン冷媒液に溶け込む。溶けきれない余分の水分は水の粒となってフルオロカーボン冷媒液の上に浮いており、これを遊離水分と言う。温度の低い所では溶けない水は凍るので、これが膨張弁に詰まって冷媒の流れを悪くすることがある。またフルオロカーボン冷媒が分解して酸性の物質をつくり、これを加水分解して金属を腐食させ装置に故障を引起す
複数の単成分冷媒(R22, R134aなど)を混ぜた冷媒を混合冷媒と呼び、非共沸混合冷媒は沸点差の大きい複数の冷媒を混合したものである(R407c, R410A, R404Aなど)。非共沸混合冷媒は蒸発する時には沸点の低い冷媒が早く蒸発し、沸点の低い冷媒が早く凝縮する
2-2 冷凍機油(潤滑油)
圧縮機に使用する潤滑油。フルオロカーボン冷媒液とはよく溶け合う。圧力が高いほど温度が低いほどよく溶け合う。エーテル油などの合成油が一般的に使用される。オイルフォーミング(泡立ち)には注意
潤滑油温を50℃以下程度にしなければならない
2-3 ブライン
凍結点が0℃以下の液体で、液体状態のままその顕熱を利用して物を冷却する媒体
(1) 無機ブライン
塩化カルシウム(製氷、冷凍、冷蔵用および一般工業用として最もよく使われる)、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム
(2) 有機ブライン
エチレングリコール、プロピレングリコール
3 圧縮機(コンプレッサ)
低温・低圧の冷媒ガスを高温・高圧の冷媒ガスにする
3-1 圧縮機の種類
(1) 容積式
① 往復式(レシプロ式)
ピストンの往復運動によりシリンダの容積変化で圧縮するもの
② スクリュー式
遠心式に比べて高圧力比に適しているため、ヒートポンプや冷凍用に多用されている
③ ロータリー式
④ スクロール式
(2) 遠心式
ターボ冷凍機がコレ。大容量に適しており高圧力比には不向きで、圧力比の小さい空調用として使用されることが多い
3-2 圧縮機の構造
(1) 開放型
アンモニア冷媒を使用する圧縮機の場合(電動機巻線を侵すので開放型しか使えない)
圧縮機と電動機を別々に置いているため、冷媒の漏れ防止用にシャフトシールを必要とする
(2) 密閉型
フルオロカーボン冷媒を使用する圧縮機の場合
半密閉型と全密閉型があり、圧縮機と電動機が直結されケーシング内に納められた一体構造であるためシャフトシールは不要である
3-3 圧縮器の性能
吐出しガス温度の上限は120~130℃とされている
(1) 往復式圧縮機の理論ピストン押しのけ量
単位時間当たりのピストン押しのけ量のことで、気筒数・シリンダ容積および回転速度により決まる
(2) 体積効率
(体積効率)=(実際に圧縮機から吐出されるガス量)/(理論ピストン押しのけ量)
往復式圧縮機の体積効率は、圧縮機の構造、運転力の圧力比の大きさなどによって異なる。圧力比とシリンダのすき間容積比が大きくなるほど体積効率は小さくなる
(3) 冷媒循環量
(冷媒循環量)=(実際の吸込みガス量)/(吸込みガスの比体積)
吸込み圧力が低くなると、圧縮機の吸込みガスの比体積は大きくなり、冷媒循環量は減少し、冷凍能力は減少する
吸込みガスの過熱度が大きくなると、圧縮機の吸込みガスの比体積は大きくなり、冷媒循環量は減少し、冷凍能力は減少する
(4) 断熱圧縮効率
(断熱圧縮効率)=(理論断熱圧縮動力)/(実際にガスを圧縮する動力)
断熱圧縮効率は、圧縮比が大きくなるにつれて低下し、圧縮機の回転速度が大きいほど低下する
蒸発温度(蒸発圧力)と凝縮温度(凝縮圧力)の温度差が大きくなると、圧縮機の圧力比が大きくなる。圧縮機の圧力比が大きくなると、断熱圧縮効率は小さくなり、機械効率は若干小さくなる。よって冷凍装置の成績係数が大きく低下する
(5) 機械効率
(機械効率)=(実際にガスを圧縮する動力)/(圧縮機の実際の軸動力)
機械効率は、圧縮比が大きくなると、若干小さくなる(0.8~0.9程度)
(6) 圧縮機の軸動力
P=Pth/ηtad
Pth:理論断熱圧縮動力
ηtad:全断熱圧縮効率(断熱圧縮効率と機械効率の積)
圧縮機が冷媒ガスをシリンダに吸込んで圧縮し吐出す量は、ピストンの押しのけ量より小さくなる
圧縮機の冷媒循環量は、圧縮機のピストン押しのけ量、吸込みガスの比体積、体積効率の大きさによって決まる
冷媒ガス吸込み側に電動機を収めた密閉型圧縮機では、電動機で発生する熱が吸込み冷媒に加えられ、シリンダ吸込みガスの過熱度が大きくなりやすい
圧縮機の吐出しガス圧力が高くなると蒸発圧が一定ならば、圧力比が大きくなることにより、体積効率が低下して、圧縮機駆動の軸動力が増加し、冷凍装置の冷凍能力は低下する
3-4 圧縮機の運転と保守
(1) 圧縮機の容量制御装置
負荷に合わせて圧縮機の容量を調節する装置
① 多気筒圧縮機の容量制御装置
多気筒圧縮機の容量制御はアンロード装置で行われる。この装置は吸込み弁を開放して作動気筒数を減らすことにより25%~100%の範囲で容量を段階的に変えられる
多気筒圧縮機の油ポンプはクランクシャフトに直結しており、始動直後に油圧は確立されていない。アンロード装置は油圧が確立するとロード状態となり、始動時に負荷軽減装置としても使われる
強制給油方式の多気筒圧縮機は、液戻りの湿り運転状態が続くと、潤滑油に多量の冷媒が溶け込んで、油の粘度が劣化し潤滑不良となることがある
② スクリュー圧縮機の容量制御装置
スライド弁により、ある範囲内で無段階に容量を制御することができる
③ インバータ制御
圧縮機の回転速度を限定された範囲内で無段階に近い調節を行うことができる
(2) 圧縮機の保守
① 運転時間の管理
② 頻繁な始動・停止を防止
圧縮機が頻繁に始動と停止を繰り返すと、始動時の大きな電流により電動機巻線の異常な温度上昇を招き、電動機の焼損のおそれがある
③ 吸込み弁と吐出し弁の漏れ防止
弁の耐久時間に応じて交換する
④ ピストンリングからの漏れ防止
コンプレッションリング(吐出しガスがクランクケースに漏れないようにする)、オイルリング(冷凍機油をかき落とす)の摩耗度をチェックする
⑤ 給油ポンプの油圧のチェック
⑥ 液戻りの防止
急激に負荷が増大すると、蒸発器からの冷媒ガス中に冷媒液が混入し、圧縮機のシリンダに吸込まれる現象が発生する(液戻り)。大量の液戻りが起きて圧縮機内で液圧縮を起こすと液体は非圧縮性であることから、極めて大きな圧力を生じ圧縮機の弁割れやシリンダヘッドの破壊に至ることがある。またフルオロカーボン冷媒では、油の中に冷媒液が多量に溶け込んで油の粘度が低下するので潤滑不良となる。圧縮器の中に冷媒液が逆戻りするのを防止しなければならない。
⑦ オイルフォーミング(泡立ち)の防止
フルオロカーボン冷凍装置では、圧縮機停止中のクランクケース内の油温が低い時に潤滑油に冷媒が溶け込む割合が大きくなり、このような状態で圧縮機を始動すると、油の中の冷媒が気化して油が沸騰したような激しい泡立ちが発生する(オイルフォーミング)。これを防止するために圧縮機においてクランクケースヒータを用いて、圧縮機運転開始前の油温を一定温度以上にして、油中おフルオロカーボン冷媒の溶解量を少なくする
4 凝縮器(コンデンサ)
4-1 凝縮器の動作
圧縮機で圧縮された高温・高圧の冷媒ガスを、水や空気で冷やして凝縮させ、高温・高圧の冷媒液にする熱交換器。冷媒と冷却水(または空気)との間で熱交換が行われる
水あかの除去、冷媒過充てんの回避、いくら冷却しても凝縮しないガス(空気)の除去が重要
(1) 水あかの除去
水あかは熱伝導率が小さく、熱の流れを妨げ熱通過率が小さくなる。凝縮器能力が減少し凝縮温度が上昇するので、圧縮機の軸動力は増加する
冷却管の水あかの熱伝導抵抗を汚れ係数f[m2K/kW]で表し、汚れ係数が大きいほど熱通過率は低下する
(2) 冷媒過充てんの回避
凝縮器に冷媒を過充てんすると、余分な冷媒液は凝縮器内に貯えられて液に浸されることによって有効な冷却管が減少する。このために凝縮温度が上昇し、冷媒液の過冷却度は大きくなる
(3) 不凝縮ガスの除去
凝縮器に不凝縮ガスが混入すると、冷媒側の熱伝達が悪くなって凝縮圧力が上昇し、不凝縮ガスの分圧相当分以上に圧力が高くなる
4-2 凝縮器の種類
空冷凝縮器と水冷凝縮器を比べると、熱通過率の値は水冷凝縮器の方が大きい
(1) 空冷凝縮器
蒸発式凝縮器と比較すると凝縮温度は高くなる。主としてフルオロカーボン冷凍装置で使われる
空冷凝縮器を用いた冷媒装置では、冬季に外気温度が低くなり、凝縮圧力が低くなると冷媒循環量が減少して冷凍能力が低下する。そのため凝縮器出口に凝縮圧力調整弁を取付け、凝縮器内に冷媒液を留め、凝縮器内に冷媒液が溜まることにより、有効に凝縮作用を行う伝熱面積が減少し、凝縮圧力を所定の圧力に保持する
空冷凝縮器の空気と冷却管外面との間の熱伝達率は、冷媒と冷却管内面との間の熱伝達率に比べるとはるかに小さいため、冷却管外面にフィンを付けて表面積を大きくし内外面の熱伝達抵抗が同程度となるようにする
受液器を持たない空冷凝縮器では、冷媒を過充てんすると出口より冷媒液が溜まり、凝縮器の伝熱面積が減少することにより凝縮温度(圧力)が上昇し、冷媒液としては過冷却度が増大する
(2) 水冷凝縮器
① シェルアンドチューブ凝縮器
鋼管製の円筒胴(シェル)と管板に固定された冷却管および水室カバーから構成される。冷却管の中に冷却水が流れ、管外の圧縮機吐出しガスを凝縮する。凝縮された冷媒液は凝縮器の底部に溜まり、液出口から受液器または膨張弁に向かって送り出される
伝熱面積は、冷媒に接する冷却管全体の外表面積の合計で表す
適切な水速は1~3m/s
フルオロカーボン冷凍装置でもアンモニア冷凍装置でも使用される
銅製のローフィンチューブはフルオロカーボン冷凍装置の水冷凝縮器の冷却管として使用される
② 2重管凝縮器
主としてフルオロカーボン冷凍装置で、主に水冷のパッケージエアコンに使用される
2重構造の管で、内側に冷却水を通し、フルオロカーボン冷媒ガスは内管と外管との間を流れ、凝縮された冷媒液が下部から出てくる
③ 冷却塔(クーリングタワー)
水の蒸発潜熱で冷却される
冷却塔の性能は水温、水量、風量および湿球温度で決まる
冷却水の出入口の温度差は4~6Kで、凝縮温度は冷却水出口温度よりも3~5K高い温度が一般的となる
アプローチ:冷却塔の出口水温と周辺空気の湿球温度との差3~5K
クーリングレンジ:冷却塔の出入口冷却水の温度差4~6K
循環水量に対して約2%前後の補給水が必要
④ コンデンサ・レシーバ(受液器兼用水冷凝縮器)
容量があまり大きくない水冷凝縮器では底部にある程度の冷媒液を溜め、冷却管の最下部数本をこの液の中で浸して過冷却を図るとともに、受液器の役目を持たせる場合がある
(3) 蒸発式凝縮器
凝縮器内に配管を通る冷媒に対して上部から水を散布、送風を同時に行い、散布された水が管内を流れる冷媒から熱を奪って蒸発する。水の蒸発潜熱を利用している
主としてアンモニア冷凍装置に使用されている
蒸発式凝縮器では空気の湿球温度が低いほど、散水された冷却水温度が低くなり、凝縮温度(圧力)が低くなる
5 蒸発器(エバポレータ)
周囲の物質を冷却するには、蒸発器において冷媒液が蒸発する時の蒸発潜熱により、周囲の物質から熱を吸収する
低温・低圧の冷媒液を冷媒ガスに蒸発させて冷却作用を行う熱交換器
空気冷却器(空気を冷却する)と水冷却器(水を冷却する)がある
空気冷却器では、庫内温度と蒸発温度との平均温度差Δtmが大きすぎると蒸発温度を低くしなければならないので、その場合圧縮機の軸動力は減少し、冷凍装置の成績係数は低下する
フィンピッチは、冷凍・冷蔵用では着霜があるので10~15mm、空調用では2mm程度とされている
5-1 蒸発器の種類
(1) 乾式蒸発器
膨張弁から流れ出た冷媒は飽和液と乾き飽和ガスが混じり合った状態になっており、これらをそのまま蒸発器に導き、飽和液が蒸発潜熱を周囲から取り込んで乾き飽和ガスとなり、さらにいくらか過熱さらた状態で蒸発管から出ていく
多数の伝熱管に均等に分配させるためのディストリビュータを取付ける。ディストリビュータを用いる場合は、一般的に冷媒の流れの圧力降下が大きいので、外部均圧形温度自動膨張弁が使用される
乾式プレートフィン蒸発器の伝熱計算に必要な伝熱面積は、冷媒に接する外表面側(フィン側の空気に接する面)の面積を基準として表す
乾式シェルアンドチューブ蒸発器は、シェル側に水またはブラインが流れ、冷却管内には冷媒が流れる。バッフルプレートによって水の流速を増し、水流を冷却管に対してできるだけ直角になるように水やブライン側の熱伝導率を向上させる
(2) 満液式蒸発器
乾式蒸発器のような過熱に必要な管部がないため、乾式蒸発器より冷媒液に接した伝熱面における平均熱通過率が大きい
フルオロカーボン冷媒を使用する満液式蒸発器では、蒸発器に入った油の戻りが悪いので、油戻し装置が必要となる
(3) 冷媒液強制循環式(液ポンプ式)蒸発器
低圧受液器から、蒸発量より3~5倍多い量の冷媒液を、冷媒液ポンプで強制的に蒸発器に送る。未蒸発の液は気化したガスとともに低圧受液器へ戻り、潤滑油も冷媒液とともに運び出される
5-2 除霜(デフロスト)および凍結防止
霜が付着すると空気の通路が狭くなって風量が減少する。また霜の熱伝導率が小さいので伝熱が妨げられ、冷凍能力と成績係数が低下する。そのため着霜した蒸発器から霜を除去する
(1) 除霜方式
着霜すると熱通過率が小さくなり蒸発圧力が低下する
① ホットガス・デフロスト方式
圧縮機から吐出される高温の冷媒ガスを蒸発器に送り込み、その顕熱と凝縮潜熱によって霜を融解させる
② 散水除霜方式
③ 不凍液散布除霜方式
④ 電気ヒータ除霜方式
(2) 凍結防止
水は凍結するとその体積が約9%膨張する
サーモスタットや蒸発圧力調整弁を用いる
6 付属機器
6-1 受液器(レシーバ)
(1) 高圧受液器
単に受液器と呼ぶことが多い。高圧受液器は凝縮器の出口側に連結され、以下の役割を持つ
・運転状態に変化があっても冷媒液が凝縮器に滞留しにように、受液器内に吸収する
・冷凍装置を修理する際に、冷媒を回収することができる
(2) 低圧受液器
低圧受液器は、冷媒液強制循環式冷凍装置で使用される
蒸発器へ冷媒液を送り、かつ蒸発器から戻る冷媒液の一時的な液溜めとする役割を持ち、液ポンプがガスを吸込まないための液面レベルの確保と冷凍負荷に応じた液面制御で行う
6-2 油分離機(オイルセパレータ)
圧縮機の吐出し管に取付ける
圧縮機からの冷媒ガスとともに吐出される潤滑油を冷媒ガスとを分離する
大型低温用のフルオロカーボン冷凍装置やアンモニア冷凍装置で用いることが多い。小型のフルオロカーボン冷凍装置では油分離器は設けない
フルオロカーボン冷凍装置では、分離された潤滑油は自動的に圧縮機に返油される
アンモニア冷凍装置では、分離された潤滑油は油が劣化するので一般には圧縮機のクランクケースに自動返納されずに油だけを油溜めに抜取り、廃油。新しい潤滑油を補充する
6-3 液分離機(アキュムレータ)
蒸発器と圧縮機の間の吸込みガス配管に取付ける
冷媒のガスと液を分離し、冷媒ガスだけを圧縮機に吸込ませて、冷媒液を圧縮機に流れ込まないようにし液圧縮を防止する
円筒形の胴を持った容器でガス速度を約1m/s以下に落としてガス中の液的を重力で分離して落下させる
小型のフルオロカーボン冷凍装置やヒートポンプ装置に使用される小容量の液分離機(アキュムレータ)では、分離された液は容器の下に溜まり内部のU字管下部に設けられた小穴(メンタリングオリフィス)から液圧縮にならない程度に少量ずつ、液をガスとともに圧縮器に吸込ませるものがある
6-4 液ガス熱交換器
フルオロカーボン冷凍装置では、冷媒液を過冷却して液管内でフラッシュガスの発生を防止し、圧縮機に湿り状態のまま吸込まれるのを防止するために、圧縮機への吸込みガスを適度に過熱して液戻りを防止するために設置する。
アンモニア冷凍装置では、圧縮機の吸込みガスの過熱度が高いと冷媒の比熱が大きいので、吐出しガス温度の上昇が著しいので、使用しない
6-5 乾燥器(ドライヤ)
フルオロカーボン冷凍装置の冷媒系統に水分が存在すると氷結時の閉塞など装置の各部に悪影響を及ぼすので、冷媒液はドライヤを通して水分を除去するようにしている
シリカゲルやゼオライトを用いて化学反応を起こさない形で水分を吸着する
フィルタドライヤの冷媒入口と出口がL字形に配置されているものがある。これは配管を外さずに乾燥剤の交換やフィルタの清掃を行うことを可能とするための構造である
アンモニア冷凍装置においては、アンモニア液と水と容易に溶け合ってアンモニア水となり、冷凍装置内に微量であれば差支えないので、ドライヤを設けない
7 自動制御機器
7-1 自動膨張弁(エキスパンションバルブ)
・高圧の冷媒液を低圧部に絞り膨張させる機能
・熱負荷に応じて冷媒流量を自動的に調整する機能
を持つ
(1) 温度自動膨張弁
蒸発器の出口の温度を感温筒で感知して、蒸発器出口冷媒の過熱度を一定に保つように、冷媒流量を調整する膨張弁
温度自動膨張弁の容量(冷凍能力)は、弁オリフィスの口径によって変わり、一般的には弁開度の80%程度の時の値が定格容量とされている。膨張弁の容量が大きすぎると周期的に変動するハンチング減少が生じる。また膨張弁の容量は、弁開度と弁オリフィス口径が同じであっても、凝縮圧力と蒸発圧力との圧力差すなわち弁前後の高低圧間の圧力差によって異なってくる
① 外部均圧形温度自動膨張弁
温度自動膨張弁から蒸発器出口までの蒸発器やディストリビュータにおける圧力降下が大きな場合に用いられる。大型の冷凍装置向け
蒸発器出口の圧力を外部均圧管で、膨張弁のダイヤフラム面に伝える構造になっている
② 内部均圧形温度自動膨張弁
膨張弁から蒸発器出口までの圧力降下が小さい場合に用いられる。小型の冷凍装置向け
(2) 定圧自動膨張弁
蒸発温度(圧力)がほぼ一定になるように冷媒流量を調節する蒸発圧力制御弁で、この弁は温度自動膨張弁と違い、蒸発器出口冷媒の一般に熱負荷変動の少ない小型冷凍装置に用いられる
(3) キャピラリチューブ
キャピラリチューブは細い銅管を流れる冷媒の流れ抵抗により圧力降下を利用して冷媒の絞り膨張を行い、固定絞りとなる。したがって冷媒流量がほぼ定まり蒸発器出口冷媒の過熱度は制御できない
家庭用電気冷蔵庫や小型ルームエアコンのような小容量の冷凍装置において、温度自動膨張弁の代わりに使われている
7-2 圧力調整弁
(1) 蒸発圧力調整弁
蒸発器の出口配管に取付けてる
蒸発器内の冷媒の蒸発圧力が所定の蒸発圧力よりも下がるのを防止する目的で用いられる
2個以上の蒸発器を1台の圧縮機で運転する冷凍装置において、蒸発温度の高い蒸発器出口に蒸発圧力調整弁を取付け、それぞれ蒸発器の蒸発圧力を制御することができる
(2) 吸込み圧力調整弁
圧縮機の吸込み配管に取付ける
弁の出口側の圧縮機吸込み圧力が設定値よりも高くならないように弁を絞り、圧縮機に流れ込む圧力を制御することにより圧縮機の過負荷を防止する。圧縮機の吸込み圧力を一定値に調節する
(3) 凝縮圧力調整弁
空冷凝縮器に取付ける
冬季に凝縮圧力が低くなりすぎる時に膨張弁を流れる冷媒量が不足するので、凝縮圧力調整弁を用いて弁を絞り、凝縮器内に冷凍液を溜めることにより熱伝達を悪くし、凝縮圧力を一定圧力に維持する
(4) 冷却水調整弁
7-3 圧力スイッチ
7-4 電磁弁
7-5 断水リレー
水冷凝縮器や水冷却器で、断水や循環水量が異常に低下した場合に電気回路を遮断して、圧縮器を停止したり、警報を出して装置を保護する
8 冷媒配管
8-1 冷媒配管の基本
十分な耐圧性能と気密性能が必要
横走り管の場合、冷媒の流れる方向に1/150~1/250の下り勾配要。
配管の途中で不必要なU字状のトラップを設けない。横走り管にU字トラップがあると、軽負荷運転時や停止時に油や冷媒液がU字トラップに溜まり、圧縮機の再始動時または軽負荷運転から全負荷運転になった際に、圧縮機に液が戻り液圧縮の危険が生じる
フルオロカーボン冷媒の場合、その配管材料として銅管および鋼管(マグネシウムを含んだアルミニウム合金は不可)
アンモニア冷媒の場合、銅および銅合金の配管を使用することは不可(腐食してしまう)
配管用炭素鋼交換(SGP)は毒性を持つ冷媒、設計圧力が1.0MPaを超える耐圧部分、温度が100℃を超える耐圧部分には使用することができない
8-2 冷媒配管の施工
(1) 低圧冷媒ガス配管(吸込み管)
圧縮器への吸込み配管は、外部からの熱の侵入や管表面の結露あるいは着霜を防ぐために防熱材を巻いて防熱を施す
管径は、冷媒ガス中に混在している潤滑油を最小負荷時において確実に圧縮機に戻せるようなガス速度を確保でき、かつ過大な圧力降下を発生させない程度のガス速度を上限として決定する
(横走り管で約3.5m/s以上、立ち上がり管で約6m/s、25m/s以下)
圧縮機の吸込み配管径を小さくして冷媒流速を大きくすると、配管抵抗が大きくなり吸込み圧力が低下する
圧縮機への吸込み管の立上げが非常に長い場合には、約10m毎に中間トラップを設けて潤滑油が戻りやすくする
(2) 高圧冷媒ガス配管(吐出し管)
圧縮器の停止中に配管内で凝縮した液体や油が逆流しないようにする(そのために横走り管で下り勾配あり)
管径は、冷媒ガス中に混在している潤滑油が確実に運ばれるガス速度が確保でき、かつ過大な圧力低下と異常な騒音を生じないガス速度を上限として決定する
(横走り管で約3.5m/s以上、立ち上がり管で約6m/s、25m/s以下)
(3) 高圧液冷媒配管(高圧液管)
飽和温度以上に高圧液管が温められると、フラッシュガスが発生する。その場合、冷媒液内に気泡が発生し膨張弁を通過する冷媒流量が減少することにより冷凍能力は減少してしまう
受液器から膨張弁の高圧液管において、冷媒液がフラッシュガスを発生するのを防ぐために、流速をできるだけ遅くして圧力降下が小さくなるように、管径を決める
(1.5m/s以下)
9 安全装置
圧縮機には、その吐出し圧力を正しく検知できる位置に高圧遮断装置および安全弁を取付ける。ただし冷媒能力が20トン未満の圧縮機においては安全弁の取付けを省略することができる
9-1 安全弁
安全弁が作動すると、冷媒を放出する
安全弁に付帯して設けた止め弁は、修理・清掃・検査時を除き、常に全開してくこと
(1)圧縮機に取付けるべき安全弁の口径
d1=C1√V1 [mm」
d1:安全弁の最小口径[mm]
V1:標準回転速度における1時間のピストン押しのけ量[m3]
C1:冷媒の種類による定数
(2)容器に取付けるべき安全弁または破裂板の口径
d3=C3√DL [mm]
D:容器の外径[m]
L:容器の長さ[m]
C3:冷媒の種類、高圧部、低圧部別に定められた定数
9-2 高圧遮断装置
安全弁の噴出し以前に、高圧遮断装置の作動により圧縮機を停止させるようにしている。すなわち高圧遮断装置の作動圧力は、安全弁の吹始め圧力の最低値以下のア強くである
原則として手動復帰式。ただし可燃性ガスおよび毒性ガス以外のガスを冷媒とするユニット式の冷凍設備(10トン未満)で運転および停止が自動的に行われても危険の生ずるおそれのない構造のものは自動復帰式とすることができる
9-3 溶栓
溶栓は温度により溶融し、冷媒を放出する構造になっている
溶融温度は原則として75℃以下と定められている
当該溶栓の取付けられる冷媒設備に係る冷媒ガスの温度を正確に検知でき、かつ圧縮機の高温吐出しガスに影響されない位置に取付ける
溶栓は可燃性ガスおよび毒性ガスには使用することができない
9-4 破裂板
圧力の上昇を検知して作動する。弁を閉じることなく冷媒ガスの圧力が大気圧に下がるまで噴出を続ける
破裂板の破裂圧力は耐圧試験圧力以下であること、安全弁の作動圧力以上とすること
溶栓と同様に可燃性ガスおよび毒性ガスには使用することができない
9-5 圧力逃がし装置
10 機器の材料および圧力容器
高圧部の設計圧力:通常の運転状態で起こりうる最高の圧力を設計圧力とする
低圧部の設計圧力:停止中に周囲温度の高い夏期に内部冷媒が38~40℃程度まで上昇した時の冷媒の飽和圧力に基づいて規定されている
JIS規格のSM400B材の最小引張強さは400N/mm2であり、許容引張り応力は一般に最小引張強さの1/4の応力とされているので、400×1/4=100N/mm2となる
10-1 材料力学の基礎
一般の鋼材は低温でもろくなり、これを低温脆性と呼ぶ。この低温脆性は切欠きなどの欠陥、引張りまたはこれに似た応力がかかった場合に衝撃荷重が引き金となって瞬間的に大きな破壊を起こすことがある
10-2 圧力容器の強さ
圧力容器の鏡板には種々の形状があり、同じ設計圧力で同じ材質でも鏡板の形状がさら形、半楕円形、半球形で必要な板厚が異なる。半球形が最も薄くできる
圧力容器の円筒胴の設計板厚は、冷媒の種類毎の設計圧力、円筒胴内径、材料の許容引張り応力、溶接継手の効率および腐れしろから求めることができる
円筒胴の直径が大きく内圧が高いほど円筒胴の必要とする板厚は厚くなる。円筒胴の直径が小さいほど円筒胴の必要とする板厚は薄くなる
応力集中の小さい形状であると、より安全な容器と言える。応力集中は形状や板厚が急変する部分やくさび形のくびれの先端部に発生しやすい
許容圧力は、冷媒設備において現に許容しうる最高の圧力であって、設計圧力または腐れしろを除いた肉厚に対応する圧力のうち低い方を言う
薄肉円筒胴圧力容器の板の内部に発生する応力は、円筒胴の接線方向に作用する応力が長手方向に作用する応力の2倍になっている
11 圧力試験および試運転
11-1 耐圧試験
耐圧試験は気密試験の前に行う。配管以外の部分に対して行う
水や油その他揮発性のない液体で行う場合、設計圧力または許容圧力のいずれか低い方の1.5倍以上の圧力とする。空気や窒素などの気体で行う場合は1.25倍の圧力とする
空気圧縮機を使用して圧縮空気を供給する場合は、空気の温度を140℃以下にする
耐圧試験において、気体で行う場合は圧力計の文字板の大きさは100mm以上、液体で行う場合は75mm以上と定められている
11-2 気密試験
耐圧試験に合格した容器等の組立品ならびにこれらを用いた冷媒配管で連結した冷媒設備について行うガス圧試験。設計圧力(1倍)以上の圧力で行う
使用するガスは空気、窒素、フルオロカーボン(不燃性のもの)、二酸化炭素など
二酸化炭素はアンモニア冷凍装置の気密試験には使用してはならない。酸素ガスはどの冷媒設備の気密試験にも使用してはならない
フルオロカーボンを使用する場合、ガス漏れ検知器(ハライドトーチ)で容易に漏れ検知を行うことができる。バーナ炎が漏れ出したフルオロカーボンに接すると色が変わる
アンモニアの漏えいの検出をするために、硫黄を燃やすと亜硫酸ガスが発生し、アンモニアと反応して硫化アンモニウムの白煙を生じる
時間の経過とともに温度変化により圧力の変動があるので、温度補正を考慮する必要がある
気密試験において、圧力計の文字板の大きさは75mm以上と定められている
11-3 真空試験
気密試験を実施して漏れがない場合に最終チェックとして、冷媒系統の乾燥として行う
微小の漏れは発見できるが漏れ箇所がどこにあるかはわからない。先に行う気密試験で発見すべし
冷凍装置内部の乾燥のため、必要に応じて水分の残留しやすい場所を過熱するとよい
ゲージ圧で-93kPa(絶対圧力で8kPa)程度の真空状態にする。真空計を用いる
11-4 油の充てんと冷媒の充てん
真空乾燥の終わった冷凍装置には、冷媒と冷凍機油(潤滑油)を充てんする
高速回転で軸受荷重の小さい圧縮機を用いる場合には一般に粘度の低い冷凍機油を用いる
12 冷凍装置の運転と状態、冷凍装置の保守管理
(1) 運転開始
冷凍装置の運転開始前には、多気筒圧縮機の吸込み止め弁を全開する
冷凍装置の運転開始後には、液管にサイトグラスがある場合にそれにより気泡が発生していないことを確認する
(2) 運転停止
冷凍装置の運転停止時には、油分離器の返油弁を全開として油分離器の冷媒が圧縮機に流入しないようにする
冷凍装置が運転を停止した時に蒸発器に多量の冷媒液が滞留していると、圧縮機の再始動時に冷媒液が活発に蒸発し、液戻りを起こしやすい
冷凍装置を手動で停止する時は、受液器液出口弁を閉じて冷媒の供給を止め、液管・蒸発器の冷媒を回収するためにしばらく運転して、液封が生じないようにしてから圧縮機を停止する
液封自己の起きやすい箇所としては、低温液で満たされた管が運転停止時に両端の弁を閉じている場合など、温度の低い冷媒液の配管内で温度上昇し体積膨張し異常圧力上昇となる
(3) 長期間休止
冷凍装置を長期間休止させる場合には、低圧側の冷媒を受液器に回収し、装置内の圧力と大気圧よりもやや高くして、空気の混入を防止する
(4) その他の運転管理
水冷凝縮器の冷却水量が減少したり、冷却温度が上昇すると、凝縮圧が上昇し、圧縮機吐出しガス圧力と温度が上昇する。そして圧縮機シリンダが過熱する。この過熱により潤滑油温度が上昇し、油を劣化させてシリンダやピストンを傷める
圧縮機の吸込みガスの圧力は、蒸発器や吸込み配管の抵抗により、蒸発器内の冷媒の蒸発圧力よりもいくらか低い圧力となり、冷凍サイクルとしては一番低い圧力となる
圧縮機のシリンダの温度が過熱運転により上昇すると潤滑油の温度が上昇し潤滑油が炭化し分解して多少の不凝縮ガスを発生することがある
蒸発温度(圧力)と凝縮温度(圧力)との差が大きくなる、圧縮比が大きくなることにより圧縮機の体積効率が低下し、また吸込みガスの比体積が大きくなる(ガスが薄くなる)ので、冷媒循環量が減少し、冷媒能力と圧縮機の軸動力も減少する
圧縮機の吸込みガスの過熱度が大きいと、吐出しガス温度が高くなり、潤滑油を劣化させ、軸受けの焼付きの原因となることがある