この病気のKが、最も悔しい思いをしているのは、「言葉を失ったこと」ではないかと思います。自分に起きている体の不調(花粉症で目がかゆい、漏らしたので気持ちが悪い、便秘でつらい、お腹が痛い、寒気がするなど・・・)の訴え、おしっこがしたい、何か食べたい、飲みたい、寝たいという基本的な欲求などから喜怒哀楽まで、Kの意思を言葉で私に伝えられないからです。とはいっても、まったく言葉を失ったわけでなく、私の発する言葉やテレビ、ラジオから流れる言葉、好きな音楽には、的確に反応することができます。ときに私を驚かせ、笑いを提供してくれます。この能力は、ずっと残しておきたい財産です。意味不明なことであっても、相づちを打ちながら、私は極力聞くようにしています。そのうちに、Kの云いたいことが見えてきます。そこから夫婦の会話へ発展していきます。 . . . 本文を読む