うまさいと

お馬さんは好きですか?

斤量差って何だろね。

2006-11-28 11:57:28 | 競馬
少し古い話題。斤量差って一口に言うけど、なんだろうねって話。

Prix de l'Arc de Triomphe(FR-G1 T2400m:凱旋門賞)の後、池江師が「3歳馬には要注意と言われている通り、斤量の差もあったかもしれません。」という言葉を残した通り、こと凱旋門賞においては「斤量差」について語られることが多いように感じます。3歳馬がここ12年で10勝という3歳馬有利な条件の下で施行されているのですが、これは一般的に3.5kgという斤量差のせいであると言われています。

では凱旋門賞の過去のデータを少し漁ってみたいと思います。斤量差とその間の古馬と3歳馬の勝ち数の比較についてはこのようになっています。また、牝馬は全て-1.5kgになります。

1920 - 1929 古馬 60kg - 3歳馬 55kg (古馬2勝 vs 3歳馬8勝)
1930 - 1975 古馬 60kg - 3歳馬 55.5kg (古馬18勝 vs 3歳馬26勝)
1976 - 1994 古馬 59kg - 3歳馬 56kg (古馬10勝 vs 3歳馬9勝)
1995 - 2006 古馬 59.5kg - 3歳馬 56kg (古馬2勝 vs 3歳馬10勝)

ということで、最初の10年は5kgの差が、その後46年もの間は4.5kgの斤量差があったんですね。知らなかったとはいえ驚きました。といっても、血統や馬産、育成、飼料などお馬さんを取り巻く全ての環境が様々な面で今とは異なっていたでしょうから、3歳馬の10月時点での成長度合いが現在と同じであるかという点は一概には比較できないでしょう。

さて、ターニングポイントは1976年に訪れます。4.5kgの斤量差が一気に3kgにまで縮まります。但し、1966-1975年までの10年間を見ても古馬4勝 vs 3歳馬6勝と、特に偏りが出ているわけではないのですが、何かしら変更する理由があったのでしょうか。余談になりますが、この1976年はKing George VI & Queen Elizabeth Diamond S.(GB-G1 T12f10y)の古馬と3歳馬の斤量差が1951年の創設以来初めて変更(14lbs→13lbs : 1ポンド減った)された年でもあります。英国と仏国の大レース(この時期のこれらのレースの位置付けについては詳しくないので指摘があればお願いします)が揃って古馬と3歳馬の斤量差を縮めるというのも、何かを暗示しているようではありますが。

次に1976-1994年までの19年間は古馬10勝 vs 3歳馬9勝と、大変拮抗していることが数値にも現れています。しかし、1995年にこれまでとは逆に斤量差3kgから3.5kgに広がっています。この時期の変更ならば何かしらの発表や報道の記録(斤量差の変更理由について)が残っているのではないかと思い探してみたのですが見つかりませんでした。10年以上海外競馬をご覧の方ならば知っていらっしゃるかもしれません。

そしてその後の1995-2006年まではご存知の通り、古馬2勝 vs 3歳馬10勝となっています。斤量差が3.5kgから3kgになっただけで、これほど有利不利が出てしまうというのも興味深い結果です。Marlさんもおっしゃっていましたがこの2勝というのはいわゆるヴィンテージイヤー、つまり2000年に3歳だった世代でのものです。これは00年 1着 Sinndar, 01年 1着 Sakhee, 02年 1着 Marienbard, 03年 2着 Mubtakerと、こと凱旋門賞においては抜群の相性を示した世代のことを指します。

ここで少し視点を変えてみましょう。凱旋門賞はセン馬が出られないということからも、ある程度「繁殖馬選定」に重きを置いた(それはどれも当たり前なのかもしれないが)「世界最高峰のレースを目指した」レースと言えるでしょう。同様にレースの成り立ちはかなり違うかもしれませんが2400m, もしくは12fで行われる古馬混合の大きなレースということで先程話題にのぼった英国の"King George"を比較対象として考えてみたいと思います。こちらはセン馬も出走することができますが。このレースは7月下旬に行われますが、この時期の3歳馬は成長曲線の傾きがかなり大きな時期だと考えられるので、古馬の実力差というのは秋口に行われる凱旋門賞よりも評価が難しいところだと考えられます。ということで、今度はこちらのデータを出してみます。牝馬はそれぞれ-3lbs(1.4kg)です。

1951 - 1956 古馬 130lbs(59.0kg) - 3歳馬 116lbs(52.6kg) (古馬2勝 vs 3歳馬4勝)
1957 - 1975 古馬 133lbs(60.3kg) - 3歳馬 119lbs(54.0kg) (古馬12勝 vs 3歳馬7勝)
(上と合わせると、古馬14勝 vs 3歳馬11勝)
1976 - 1989 古馬 133lbs(60.3kg) - 3歳馬 120lbs(54.4kg) (古馬5勝 vs 3歳馬9勝)
1990 - 2006 古馬 133lbs(60.3kg) - 3歳馬 121lbs(54.9kg) (古馬10勝 vs 3歳馬7勝)

さらにこちらは面白い統計になってしまい、あまり比較の意味を持たなくなった気がするのは私だけでしょうか。但しこのレースの場合、時期柄か3歳馬の参戦が無い年があります。最後に斤量差変更が行われた90年からの17年間で、3歳馬が出走しなかった年が2回(02, 06年), 3歳馬の出走が1頭だけなのが4回(90, 97, 04, 05年)ということでして、確率論的に言えば凱旋門賞よりも古馬勢の勝つ可能性が大きいということになります。しかし、勝ち馬や面子について各個の年について考え出すとキリがないので、ここでは統計的に物事を考えたいと思います。つまり、King Georgeの場合はちと偏る位でちょうどいいかと。現在は古馬29勝 vs 3歳馬27勝です。
King Georgeは「古馬と3歳馬が大体同じ位の勝ち数」という印象だったのですが、デコボコがちょうど良い感じになっているというのが真相でした。創設当初の斤量差は14lbsで、57年の変更は両者同じだけ重量が増えているだけです。76年、90年の変更でそれぞれ3歳馬の重量が1poundずつ重くなっていくのは、成長が前倒しされていると考えればよいのでしょうか。76年の変更は何でだろ?という感じではありますが、90年の変更は理に適ったものであることがわかります。凱旋門賞と比較すれば年齢差による有利不利の少ない(少なくしようとしている)レースなのかな、という気はしますねぇ。

たった2レースだけ書いたところでどうとなるものでもないですけれど、とりあえず日本ではメジャーであり今年はディープインパクトとハーツクライが遠征したレースということで挙げてみました。

じゃあ日本はどうなんだってことで有馬記念辺りと比較しようとしたのですが、例えば英・仏などとは走らせ方の考え自体が異なってるかもしれんなと思いましたのでやめとく。有馬記念は古馬が圧倒的に有利になっています。でも、日本の場合は「お馬さんが一番充実するのは4歳秋」みたいな考え方があるのでそれでいいのかもしれませんけれど。

2 コメント

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Unknown (1972)
2006-11-30 00:43:55
面白かったです。

同じチャンピオン決定戦のBCクラシックは、約1.8キロ差ということもあって、かなり古馬有利になってますよね。斤量差の問題だけでなく、パワーが要求されるダートは芝よりもが古馬が有利な気がします。3歳である程度人気を背負ってBCクラシックを勝ったのは、サンデーサイレンスとエーピーインディ。両方とも種牡馬として大成功していることを見ると、あまり3歳のハードルを低くしてしまっても意味がないような気もします(笑)
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Unknown (ろぜ)
2006-12-01 19:46:04
こんばんはー。
種牡馬としての価値を考えれば、BCクラシックはぜひとも欲しいものではありますよね。しかし「人気になったお馬さんが負ける」のと同様「人気が無いのに勝ってしまう」ことも不評だったりするでしょうし。繁殖馬としての機会をあまり与えられないままVolponiのように左遷されてしまうのを見ると「アメリカって血統にシビアだよねー」と思ってしまいます。

ぜんぜん斤量関係無い・・・。
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