ベンチャー企業の失敗学について本を読みました。
「起業と倒産の失敗学」
という本で、失敗学の畑村先生が書いた本です。
アーリーステージでの失敗事例というよりは、ある程度社会的な注目を浴び、成功をしたベンチャー企業がなぜ倒産したのか、について焦点を当てています。
作者は10の視点から失敗事例を整理しています。
これはこれで素晴らしい視点なので、是非この本を読んで欲しいのですが、僕はこの本を読んで僕なりの総括をしてみました。
僕なりの視点では、失敗企業には以下の共通項があるなと思いました。
1) 事業領域の組み立てに失敗
各社創業時に成功した主力事業がありながら、
新事業への参入
海外展開
川下化・川上化(ワンストップ化)
など自分の得意領域以外を整備しようとして転落への道を辿っている。
なぜ得意な領域の外を整備しなければならなかったのか?
好不況への変動リスクや大手の参入リスクなど自らの地位を脅かすリスクをヘッジする施策としての側面もあるが、言葉を変えると、根本的には過去の成功体験を忠実に実行するだけでは通用しない環境になってきたことに対する打ち手なのである。
しかし、残念ながら、打ち手が中途半端というか妥当なことができず、失敗している。
野球の投手にたとえると、決め球がないが故に球種を増やす事だけで、問題を解決しようとしている。
本来は、剛速球に磨きをかけ、それを活かすためにフォークなどの変化球を習得したり、または、切れ味鋭い変化球があるので、ストレートが多少遅くとも相手のタイミングをはぐらかす投球をするなど、決め球があるから戦術も成立する。
アメフトでも、相手の裏を書く攻撃パターンがいろいろ用意されているが、裏をかくためには、表の攻撃が相手に脅威を与えているから効くのであって、表が弱いのに裏をかきにいっても、大敗するに決まっている。
決め球が通用しなくなった投手は、降板すべき。
見るに耐えない試合になってしまう。
上記の失敗した企業は、これまでの決め球が決め球として機能しなくなってきたのである。これまでの決め球にイノベーションを加えようとしたり、別の決め球を模索したが、結果として、決め球を作り切れなかった。
しかし、成功体験を持っている企業ほど、その事実を冷静に理解できないのだろう。
決め球が通用しなくなったときに、過去の成功体験と同じような成功を再度追い求めるから失敗するのである。敗戦処理投手になるもよし、バッティング投手になるもよし、存在意義はいろいろみつけられるはずである。
特に会社経営では、縮小均衡をして、売上がコストを上回っていれば、存続はできるので、じっくり次の決め球を作り出す再建をするという考え方もある。往々にして、若くして起業をした場合、縮小均衡をするぐらいなら、前のめりに討ち死にした方がましだという価値観を持っている人もいる。その善悪は、オーナーがどう考えるか次第なので、一概に良し悪しは問えないが、本当に存在意義のある事業をしているのであれば、縮小均衡も視野に入れるべきである。それをしても継続できない場合は、その市場に残留する意味はないので、早期に撤退すべきだろう。
再建の方法はいろいろあるけど、玉砕は最悪。
昨今では、企業売却・事業売却などExitの方法はいろいろあると思うので、社会的な悪影響の少ないExitをすべきだろ。そもそも、事業をやるときは個人で起業をする場合でもExit Policyをしっかり考えて取り組むべきで、それなしで起業をすると再起が困難な大変なことになってしまう可能性が高い。
そして、何よりも大事なことは一度、起業をして旗を社会に掲げた以上、命懸けで決め球を研ぎ澄まさなければいけない。
2)いい意味でも悪い意味でもトップに頼りすぎで組織力が未整備
創業者の才能・カリスマ・神通力に依存しすぎている。アーリーステージはどのベンチャーも当然少なからずその道を通らないと成功できないのだが、徐々にカリスマの役割を限定的にしていき、象徴化して、経営や現場実務はカリスマから離陸しなければ、会社の成長は早期に限界を迎える。
離陸するためには、組織の整備が不可欠。
創業者は組織を整備する事に比重を大きく移か、それができない創業者なら、組織を整備することに長けたパートナーを見つけるべき。
「パートナー」というところが味噌で、これが「部下」だと権限をうまく委譲できず組織化は失敗するケースが多いのではないかと思う。特に組織作りのセンスがない創業者にとっては。組織作りが下手糞な創業者は、残っていても百害あって一利なしのケースが多いような気がするので、
1) Exitする
2) ビジョン作りなど限定的な機能のみを果たし、経営の権限は持たない
などが必要だと思う。
あらかじめ外部の見識に長けた人たちのガバナンスが効くような資本政策やボードメンバーの構成にしておくのも悪くないと思います。
ただ、経営のパートナーを見つけるにしろ、資本政策やボードメンバーとして協力してくれる人を見つけるにしろ、重要なことは「志」で握れるかどうか。
こうした人たちは志を追求するために必要なのであって、志を理解してくれてない人たちや志を異質なものにしてしまおうという魂胆がある連中とは絶対に手を組まない方がいい。
そういう意味で、創業者は、組織運営センスがなくてもいいし、ビジネスは荒削りでもいいので、志を同じにする仲間を引き寄せる力や志が同じかどうかを見抜く力が不可欠なスキルになるのかもしれない。
そして、組織化の道筋が見えたところで、次のステージの会社で経営者として貢献できない創業者は、現在の地位に固執せずに、Exitを考えたり、経営の最前線から一歩引いた会社とのかかわりを検討すべきなのではないだろうか。
貢献できない人が、ここで、経営者としての既得権を守りに行くと必ず会社は失敗する。
3)ガバナンスが弱い
組織化よりももっと根本的な問題で、コンプライアンスの意識だったり、企業の社会性や公共性を理解できず、企業を自分だけの財産だと思っているトップやオーナーがマネージする会社は長続きしないと思う。
特に上場している企業は、カバナンスが弱いのは論外。
今はそういう会社は上場できないと思うが。
創業当初は、ガバナンスに対してコストも時間もそれほどかけられないと思うので、多少弱くなってしまう側面があるもものの、最低限やっちゃいけないことは遵守しなければいけない。また、事業が軌道に乗れば乗るほど、企業の公共性は高まるので、それに応じて、ガバナンスを強化するためのコストや時間は一定のバランスで重視しなければいけない。
4)ステークホルダーに対して正直じゃない
ガバナンスとも絡む話です。
粉飾決算やリコール隠しなど、株主や顧客などのステークホルダーに対して正直ではない会社はこれまた長続きしないと思う。
会社のブランドをしっかり作るためには、局面局面でお化粧をしなければいけないところもあるし、会社なので全ての情報を開示することは難しい。けれども、正直な体質を持っていないと企業の公共性に反するヒドい行動に出てしまいがち。短期的にはその場を切り抜けられたかのような錯覚に陥るのですが、中長期的に切り抜ける事はほぼありえない。
従業員やその家族、株主、顧客、取引先もしくは社会そのものなどステークホルダーに対して誠意をもった正直なカルチャーは健全な会社運営に欠かせないと思う。
例え市場での競争に敗れ去ったとしてもこうしたカルチャーがあるかないかで、敗戦後の状況が大きく変わると思う。当然、勝負に勝ったときにも永続的に勝ち続けるためには不可欠なことだろう。
5) 予実管理が未熟
これも上記と連動するところあるのですが、予算と実績の管理がしっかりしている会社は強いです。口で言うのは簡単なのですが、思ったよりもなかなかタフな仕事だなあと思っているのですが、予実管理が未熟で精度が低い会社は、事業運営や会社経営をする上でいろんなものが未整備だからなのです。
予実管理が未熟な会社は、会社の完成度が低いといっても過言ではないと思います。
市場の追い風があるときは、行け行けドンドンで、予算作りも商況を見ながら適当に鉛筆ナメナメして、営業のエースにハッパかけておいて、優秀な財務会計担当が一人いてくれれば、なんとかなるんですが、会社が成熟してきたり市場が成熟するにつれてもう少しレベルを上げなければいけないと思います。
中長期的な要素を織り込まなければいけませんしね。
予算作りや予算と実績の比較に対して、経営陣や幹部陣がどれだけの思考を高い質で行うかが重要なんだと思います。あとは、現場への浸透とアカウンタビリティを果たすことですかね。
まあ、しかし、新規事業ではやってみると思ったより難しく、心に重くのしかかってくるのです。。。
以上5点。
人ごとではなく自分ごととして気をつけていきたいと思います。
「起業と倒産の失敗学」
という本で、失敗学の畑村先生が書いた本です。
アーリーステージでの失敗事例というよりは、ある程度社会的な注目を浴び、成功をしたベンチャー企業がなぜ倒産したのか、について焦点を当てています。
作者は10の視点から失敗事例を整理しています。
これはこれで素晴らしい視点なので、是非この本を読んで欲しいのですが、僕はこの本を読んで僕なりの総括をしてみました。
僕なりの視点では、失敗企業には以下の共通項があるなと思いました。
1) 事業領域の組み立てに失敗
各社創業時に成功した主力事業がありながら、
新事業への参入
海外展開
川下化・川上化(ワンストップ化)
など自分の得意領域以外を整備しようとして転落への道を辿っている。
なぜ得意な領域の外を整備しなければならなかったのか?
好不況への変動リスクや大手の参入リスクなど自らの地位を脅かすリスクをヘッジする施策としての側面もあるが、言葉を変えると、根本的には過去の成功体験を忠実に実行するだけでは通用しない環境になってきたことに対する打ち手なのである。
しかし、残念ながら、打ち手が中途半端というか妥当なことができず、失敗している。
野球の投手にたとえると、決め球がないが故に球種を増やす事だけで、問題を解決しようとしている。
本来は、剛速球に磨きをかけ、それを活かすためにフォークなどの変化球を習得したり、または、切れ味鋭い変化球があるので、ストレートが多少遅くとも相手のタイミングをはぐらかす投球をするなど、決め球があるから戦術も成立する。
アメフトでも、相手の裏を書く攻撃パターンがいろいろ用意されているが、裏をかくためには、表の攻撃が相手に脅威を与えているから効くのであって、表が弱いのに裏をかきにいっても、大敗するに決まっている。
決め球が通用しなくなった投手は、降板すべき。
見るに耐えない試合になってしまう。
上記の失敗した企業は、これまでの決め球が決め球として機能しなくなってきたのである。これまでの決め球にイノベーションを加えようとしたり、別の決め球を模索したが、結果として、決め球を作り切れなかった。
しかし、成功体験を持っている企業ほど、その事実を冷静に理解できないのだろう。
決め球が通用しなくなったときに、過去の成功体験と同じような成功を再度追い求めるから失敗するのである。敗戦処理投手になるもよし、バッティング投手になるもよし、存在意義はいろいろみつけられるはずである。
特に会社経営では、縮小均衡をして、売上がコストを上回っていれば、存続はできるので、じっくり次の決め球を作り出す再建をするという考え方もある。往々にして、若くして起業をした場合、縮小均衡をするぐらいなら、前のめりに討ち死にした方がましだという価値観を持っている人もいる。その善悪は、オーナーがどう考えるか次第なので、一概に良し悪しは問えないが、本当に存在意義のある事業をしているのであれば、縮小均衡も視野に入れるべきである。それをしても継続できない場合は、その市場に残留する意味はないので、早期に撤退すべきだろう。
再建の方法はいろいろあるけど、玉砕は最悪。
昨今では、企業売却・事業売却などExitの方法はいろいろあると思うので、社会的な悪影響の少ないExitをすべきだろ。そもそも、事業をやるときは個人で起業をする場合でもExit Policyをしっかり考えて取り組むべきで、それなしで起業をすると再起が困難な大変なことになってしまう可能性が高い。
そして、何よりも大事なことは一度、起業をして旗を社会に掲げた以上、命懸けで決め球を研ぎ澄まさなければいけない。
2)いい意味でも悪い意味でもトップに頼りすぎで組織力が未整備
創業者の才能・カリスマ・神通力に依存しすぎている。アーリーステージはどのベンチャーも当然少なからずその道を通らないと成功できないのだが、徐々にカリスマの役割を限定的にしていき、象徴化して、経営や現場実務はカリスマから離陸しなければ、会社の成長は早期に限界を迎える。
離陸するためには、組織の整備が不可欠。
創業者は組織を整備する事に比重を大きく移か、それができない創業者なら、組織を整備することに長けたパートナーを見つけるべき。
「パートナー」というところが味噌で、これが「部下」だと権限をうまく委譲できず組織化は失敗するケースが多いのではないかと思う。特に組織作りのセンスがない創業者にとっては。組織作りが下手糞な創業者は、残っていても百害あって一利なしのケースが多いような気がするので、
1) Exitする
2) ビジョン作りなど限定的な機能のみを果たし、経営の権限は持たない
などが必要だと思う。
あらかじめ外部の見識に長けた人たちのガバナンスが効くような資本政策やボードメンバーの構成にしておくのも悪くないと思います。
ただ、経営のパートナーを見つけるにしろ、資本政策やボードメンバーとして協力してくれる人を見つけるにしろ、重要なことは「志」で握れるかどうか。
こうした人たちは志を追求するために必要なのであって、志を理解してくれてない人たちや志を異質なものにしてしまおうという魂胆がある連中とは絶対に手を組まない方がいい。
そういう意味で、創業者は、組織運営センスがなくてもいいし、ビジネスは荒削りでもいいので、志を同じにする仲間を引き寄せる力や志が同じかどうかを見抜く力が不可欠なスキルになるのかもしれない。
そして、組織化の道筋が見えたところで、次のステージの会社で経営者として貢献できない創業者は、現在の地位に固執せずに、Exitを考えたり、経営の最前線から一歩引いた会社とのかかわりを検討すべきなのではないだろうか。
貢献できない人が、ここで、経営者としての既得権を守りに行くと必ず会社は失敗する。
3)ガバナンスが弱い
組織化よりももっと根本的な問題で、コンプライアンスの意識だったり、企業の社会性や公共性を理解できず、企業を自分だけの財産だと思っているトップやオーナーがマネージする会社は長続きしないと思う。
特に上場している企業は、カバナンスが弱いのは論外。
今はそういう会社は上場できないと思うが。
創業当初は、ガバナンスに対してコストも時間もそれほどかけられないと思うので、多少弱くなってしまう側面があるもものの、最低限やっちゃいけないことは遵守しなければいけない。また、事業が軌道に乗れば乗るほど、企業の公共性は高まるので、それに応じて、ガバナンスを強化するためのコストや時間は一定のバランスで重視しなければいけない。
4)ステークホルダーに対して正直じゃない
ガバナンスとも絡む話です。
粉飾決算やリコール隠しなど、株主や顧客などのステークホルダーに対して正直ではない会社はこれまた長続きしないと思う。
会社のブランドをしっかり作るためには、局面局面でお化粧をしなければいけないところもあるし、会社なので全ての情報を開示することは難しい。けれども、正直な体質を持っていないと企業の公共性に反するヒドい行動に出てしまいがち。短期的にはその場を切り抜けられたかのような錯覚に陥るのですが、中長期的に切り抜ける事はほぼありえない。
従業員やその家族、株主、顧客、取引先もしくは社会そのものなどステークホルダーに対して誠意をもった正直なカルチャーは健全な会社運営に欠かせないと思う。
例え市場での競争に敗れ去ったとしてもこうしたカルチャーがあるかないかで、敗戦後の状況が大きく変わると思う。当然、勝負に勝ったときにも永続的に勝ち続けるためには不可欠なことだろう。
5) 予実管理が未熟
これも上記と連動するところあるのですが、予算と実績の管理がしっかりしている会社は強いです。口で言うのは簡単なのですが、思ったよりもなかなかタフな仕事だなあと思っているのですが、予実管理が未熟で精度が低い会社は、事業運営や会社経営をする上でいろんなものが未整備だからなのです。
予実管理が未熟な会社は、会社の完成度が低いといっても過言ではないと思います。
市場の追い風があるときは、行け行けドンドンで、予算作りも商況を見ながら適当に鉛筆ナメナメして、営業のエースにハッパかけておいて、優秀な財務会計担当が一人いてくれれば、なんとかなるんですが、会社が成熟してきたり市場が成熟するにつれてもう少しレベルを上げなければいけないと思います。
中長期的な要素を織り込まなければいけませんしね。
予算作りや予算と実績の比較に対して、経営陣や幹部陣がどれだけの思考を高い質で行うかが重要なんだと思います。あとは、現場への浸透とアカウンタビリティを果たすことですかね。
まあ、しかし、新規事業ではやってみると思ったより難しく、心に重くのしかかってくるのです。。。
以上5点。
人ごとではなく自分ごととして気をつけていきたいと思います。