夢への道筋

青臭いけど、人が夢の実現のために発揮できる力って無限。夢を実現するための方法論について徒然なるままに。

マネージメント5原則(5): 規律

2008-04-26 21:34:12 | ちょっといいはなし
マネージメント5原則の最後は「規律」。

 強い組織は、必ずといっていいほど規律がある。規律がある組織が必ずしも強い組織とは限らないのかもしれないが、強い組織には必ず規律がある。

 規律を強めようとすると、マイペースで誰にとっても居心地のいい風土にはならない。やるべきことをやらない者には、しかるべき対応がされる。マネージする方もマネージする方もそれなりに緊張を強いられるし、言いづらいこともしっかり言わなければならない。そのため、日々の活動にはそれなりにエネルギーが必要だ。しかし、組織が勝つため・生き残るためには、安住できるぬるま湯ではなく、やるべきことをやらないとしかるべき対応をする規律のある組織にする必要がある。


僕が高校のときに属していた運動部は、無断で休むのは当然ながら、練習に事前連絡なしで遅刻をしても坊主だった。他にも坊主になることはいくつかあった。たとえば、ポジションによっては初歩的なイージーミスも坊主対象だった。高校時代は、「そこまでやらなくても」とか「理不尽」などと思っていたが、組織を運営してみて今思うのは、坊主という方法以外に何かあったんじゃないかとも思うが、ともかく、あれはあれで強い組織を作るためにありだなあと思った。練習に無断欠勤・遅刻をする選手がいるチームが全国制覇を本当にできるのか、チーム内にも疑問が残るだろう。


織田信長の「一銭切り」のエピソードもそうだ。天下布武を狙う軍隊においては、
そのぐらいのルールはありえるだろう。おそらく当時の織田信長以外の軍隊では
そこまでの規律を持った軍隊がなかったのだろうから、「一銭切り」をする軍隊
に対する朝廷や民衆の信用は高まるだろう。

僕はビジネスにおいて必ず守らなければいけない最低条件としての規律は以下の
3つだと思う。

1.時間
 就業時間・営業時間・納期や月次決算・四半期決算などビジネスにおいては、様々な時間の制約の中で活動している。"Time is money." 時間に対して規律のない組織は、だらしない仕事をする組織になってしまう。

2.お金(および、計数)
 顧客に対して、従業員に対して、取引先に対して、お金が厳密に管理されていない会社はうまくいくわけがない。また、計画も結果も基本的にはビジネスはお金によって組み立てられている。したがって、組織の規律を守る上で数字を厳密に管理できているかは非常に重要なポイントの一つだ。

3.品質
 顧客が期待した品質を提供できていない会社は、成長しない。まして、顧客にコミットした品質を提供できない会社は、生き残ることができない。全ての会社が最高の品質を提供すればいいというわけではない。ただし、顧客に対してコミットした品質を提供できなかった言い訳は成り立たない。品質を守れない会社も規律がない会社といわざるを得ない。

上記のいずれに関しても、規律のない組織が生き残ることは、資本主義原理が適用された事業においては、ほぼありえないと思う。なぜ、顧客が企業に対価を支払うのかというと、上記の3つを企業が顧客対してコミットしているからに他ならない。


規律のある組織とは別の言葉で言うと「約束を守る」組織のことだ。
「約束を守る」組織は、「信用」のある組織だ。
そして、信用のある組織は素晴らしい「ブランド」を持つことになる。


また、規律には「北風と太陽」の両方のアプローチがある。
企業において北風とは異動・人事考課・降格・解雇をちらつかせることで、太陽とは自己実現・達成感に訴えることだろう。当然、「太陽」アプローチがいいに決まっている。ただ、太陽アプローチだけで結果として規律を失ってはいけない。ここらへんがマネージメントの仕事の難しくも面白い部分だと思う。

その他で規律を考える上で重要だと思うのが、

1.おもてなし(ホスピタリティー)
 「おもてなし」をしっかり考えている組織とそうでない組織では大きなパフォーマンスの違いが出ると思う。挨拶、電話対応、WWW/メールでの問い合わせ対応など顧客接点における姿勢に対して規律があるのかどうかは非常に重要だ。
2.情報統制
 組織の規模が拡大するにつれ、本来伝達すべき情報が伝わっていなかったり、本来伝達してはいけない情報が伝わってしまったり、情報のコントロールが難しくなる。ここは気を使うしかないのだが、これも組織の規律を考える上では重要だ。
3.使命感
 なぜ自分たちの組織が存在しているのか?どのような付加価値を提供しているから存在しているのか?つまり、自分たちの仕事の使命に対してどこまで組織のメンバーの理解度は無形だが、非常に重要な資産だ。上から押し付けて理解されるものではないかもしれないが、どれだけ啓蒙できるかは非常に重要だ。一定以上の理解を持った人間しか組織に属すことができない状態を作るべきだ。
4.危機感
 使命を理解させた上で重要なことは危機感を持たせることだ。どうすれば生き残れるのか?どうすれば成長できるのか?逆に、簡単に消滅・後退してしまう可能性についても想像させるべきだ。自分たちが生き残るためには、成長するためには、本質的には何をしなければいけないのかを理解させることも非常に重要だ。危機感のない人間の意識変革もしくは排除をすることも組織運営上は一つの見識だと思う。



僕の把握・想定・伝達・評価はすべて規律を保つ上での必須の仕事だといっても過言ではない。

その上でも非常に重要なことは、最高指揮官の「有言実行」だ。
これなしに末端まで浸透させることは不可能だろう。


2008年マネージメント5原則:
(1)把握
(2)想定
(3)伝達
(4)評価
(5)規律

マネージメント5原則(4): 評価

2008-04-20 14:32:43 | ちょっといいはなし
把握、想定、伝達に続いて今年の僕の重点課題は、「評価」。

「伝達」したことが、「メンバーに理解されたか?」「行動に移されたか?」そして、「行動の結果はどうだったのか?」しっかりとレビューをする必要がある。レビューを軽視もしくは放棄すると、単なる「言いっ放し」になってしまう。「言いっ放し」であれば、原稿さえあれば、誰にでも読み上げることは出来るのである。伝達する事項を理解させ、行動に移させ、その結果に責任を持つから指揮官としての存在意義がある。こうした一連のレビューのことをここでは「評価」とする。

僕がここで想定している評価とは、第一に、「計画の妥当性」に対する評価だ。今の計画が何らかの理由で妥当なものでなかったとすると、かなり悲惨なことになる。したがって、指揮官は、その計画は妥当なものだという確信を持つ必要がある。計画の妥当性は未来予測を的中させることではなく、あくまでも自分たちの目的地にたどりつくための計画として妥当なのかどうかを考えなければならない。その一方、ビジネスは日々様々な変化が起こるが、その変化に応じて、計画をその都度変更していたら、それはそもそも計画通りに行動する意義はなくなってしまう。そういう運用をするのであれば、計画なんか作らない方が時間の無駄にならないだろう。したがって、計画の妥当性を見直す基準(頻度・条件など)を事前にルール化しておく必要がある。このルールに則っている限りは、計画の妥当性はしっかり評価すべきだ。会社としての計画の根幹は、事業計画・経営計画・中期計画などいろいろあるが、数字と時間が明確になっている「予算」が大事だ。

第二に、「計画の進捗」に対する評価だ。例えば、予実。これは非常に重要で、予実管理をしない組織は予算を作る意味がない。そして、予算を作れない会社の先行投資は「ギャンブル」となり、投資ではなく投機化する。計画性がない組織の典型だ。なぜ予算どおりに進まないのか?その原因を突き詰め、行動に移す中で強い組織が作られる。それがPDCAサイクルだ。予実に限らず、すべからく全ての計画は、進捗を把握し、その進捗の背景にある原因を突き詰め、次の行動に移すサイクルをまわしてこそ、計画としての意味があるのだ。「P」だけの計画は、そもそも意味のある計画ではなく、「PDCA」が全て揃ってこそ、計画としての存在意義は高まるのだ。

第三に、「仕組み」に対する評価だ。「仕組み」とは「規程」「組織図」「権限」「業務フロー」「業務マニュアル」など組織で仕事を進める上での基盤を指す。計画の進捗に対する評価を行う上で、まず「仕組み」に問題はなかったのか?どういう仕組みであればもっとパフォーマンスが上がったのかを常に考える必要がある。これは、日々の業務の中で指揮官は常に考える必要がある。メンバーには仕組みを変更するための提案は出来ても、変更を実行する権限は与えられていない。最終的に指揮官が決断をしなければ仕組みは変更できないのだ。そのため、仕組みに対する評価は非常に重要だ。

第四に、「人」に対する評価だ。「計画の進捗」を評価し、「仕組み」を変える必要がある場合もあるが、そもそも「人」のパフォーマンスが悪いために進捗が悪い場合も多いし、「人」のパフォーマンスがいいために計画を大幅に超越した素晴らしい結果を出すこともある。「人」には流動的要素がたくさんある。だからこそ、マネージメントの仕事は難しいし、面白くもある。

まとめると、僕は評価の対象にしているのは、以下の4点だ。
1) 計画
2) 計画の進捗
3) 仕組み
4) 人
順番こそ「人」を4番目に置いたが、評価のウェートで言うとマネージメントは「人」の評価に最も力を入れるべきだ。「人」の評価をしっかりできていなければ、「仕組み」を評価することはできない。それがゆえに、「計画の進捗」に関しても正しい評価ができない。それができない限り、「計画」の評価なんて、おこがましい。つまり、「人」の評価が一番大事なのだ。僕は、これは古今東西、普遍的だろうと考えている。



社長だろうと部門長だろうと、「長」がつく人の重要な仕事の一つは、それはその組織のメンバーへの「評価の責任を持つ」ということだろう。自分が現場のプレーヤーとしての仕事が中心だったときと、マネージメントの仕事がメインになったときを比較してみると、「評価」にかけるパワーが大きく違う。

プレーヤーとしての仕事が中心だった時代は、正直、人への評価云々というよりは、自分の与えられたタスクを確実にやり遂げることが重要だった。仕事に慣れてくるにつれ、どんなに長時間働いたとしても、他人の力をうまく借りないと、自分だけでできることには限界があることに気づいた。そのために周囲の人間に何を任せると自分のパフォーマンスが上がるのかを試行錯誤で試していった。だから、「評価」というよりは、所与の資源の中で「誰に何をいつどこでどのように」依頼すると自分のパフォーマンスが上がるのかということだけを意識していた。人の育成をしたり、人を褒めたり・叱ったりする時間は自分の中では確保しきれていない時間だった。

 そして、自分のパフォーマンスを上げるために戦力を増強していった結果、気付くと、それなりの人数を抱える会社の規模となった。そして、会社の業績も一人で全ての案件の詳細をマネージするのは不可能な規模となった。そうなると次は、自分のパフォーマンスだけではなく、会社のパフォーマンス、部門のパフォーマンスといった「組織のパフォーマンス」を最優先に考えなければならない時期が来た。
プレーヤーとしての仕事が中心ではなくなり、マネージメントの仕事がメインになってきた。当初は、既存の組織では零れる仕事を自分が担当しながら、それを組織で対応するにはどうすればいいのかを考え、再度アサインを見直すことの繰り返しだった。要は仕組みづくりを頑張った。
しかし、仕組み作りは場当たり的には出来ず、設備・人員ともに先行投資を伴うため、計画を作った。そして、計画に対する進捗を見守った。試行錯誤した結果、感じたことは改めて「人」の重要性だった。人にうまく仕事を任せることが出来てしまえば、一人相撲をするよりも、組織のパフォーマンスは飛躍的に向上するのだ。
安心して任せられる人と一緒に仕事をすること、そして、うまく任せるための手法を確立することが非常に重要だと思った。そのためにも、「人」の評価は欠かせない。なぜなら、その人はこの仕事に適任なのかどうか、その人が役割を果たせているのかどうか、役割を果たせている理由・果たせていない理由はどこにあるのか、どうすれば改善できるのか、そういった点を見極める力が必要になるからだ。「人」の評価を指揮官が真剣にしない組織がうまくいくわけない。


まとめると、マネージメントの最も重要な仕事の一つが「評価」だと考えている。そして、それは「人」の評価が最も高いウェート・重要性を占める。「人」の評価を前提として、「仕組み」「進捗」「計画」に対する評価を行うことが、ここで僕が言っている「評価」だ。

最後に補足だが、評価を行う上で重要なことは、評価対象者とのコミュニケーションが取れているかどうかだ。目先の仕事で忙しくなり、いっぱいになればなるほど、評価をする側もされる側も比較的コミュニケーションが疎遠になってしまう。僕は、その際の責任は、評価される側ではなく、すべて評価をする側にあると思う。言い訳なしでコミュニケーションを取ることが仕事なのだと認識し、忙しかろうが何だろうと、なんとかすべきだ。これが出来てないと致命傷になることが多い。

2008年、僕はもう一段高いレベルで「評価」のできる男にならなくてはならない。



マネージメント5原則(3): 伝達

2008-04-12 22:42:52 | ちょっといいはなし
把握・想定に引き続き、2008年マネージメントで重視しようと思っているのは、「伝達」。

うちの会社は2007年、会社の人数も増え、会社の海外拠点数も増えた。

ある一定以上の人数の組織が、複数拠点しかも海外拠点数にまたがって仕事をすると、何が起こるのかをまざまざと理解した一年となった。

その中でも、僕が重く受け止めたのは、自分が伝えたかったことが伝わってないことが増えたことだった。


それまでは意図的に伝えなくても、自分が大事にしていることが何なのかがある程度伝わっていたような気がしていた。もう一方で、事業規模が大きくなるにつれ、自分が人に任せる仕事が増えてきたため、自分が詳細な作業までコミットしない仕事が増えてきて、自分の想定通りに進んでないことが増えたから「伝わってない」と自分が認識しているだけなのかもしれない。両面があるような気がしている。

組織が大きくなるにつれ、組織の部門・機能数が増えてくると社内での目標もその部門・機能数分だけ増えることになり、同じ方向を向ければいいのだが、各部門が使命を果たそうとすると微妙に部門間の摩擦が発生する。

なぜこの部門が存在するのか、なぜこのような組織設計になっているのかを少なくとも役員+ミドルマネージメントがしっかりと理解できていない限り、組織規模の拡大が逆に仇になってしまうような気がした。

今まで自分や役員や少人数のキーパーソンが行っていた仕事を組織に落そうとすると、今まで事細かに伝えなくても伝わっていたことが、どんどん伝わらなくなってきたし、小規模な組織内でトップが伝えるべき内容とそれより大きな組織では伝え方や伝える内容も変質するんだなあと感じた。

組織の拡大に伴い、メンバーの会社での役割も会社に対する期待も多様になってくるので、何をどう伝えると最も効果的なのかは再考する必要がある。一方、そういった人材の多様性が増してくることで、「あなたの話はここがよくわからない」といった指摘も多様化してくるので、それに応える努力をすることで、説明する内容の精度は徐々にUPするはずだという感覚も掴んだ。一方、努力をしないと、ますます伝わらない状況が悪化するので、会社のパフォーマンスも落ちるんだと思う。


それで、じゃあ何を伝えるべきなのか?
僕が行き着いたのは、指揮官の仕事はその組織で「重い」ことを伝えるということだ。難しいか・簡単かという軸でもなく、面白いか・面白くないかとか、流暢か・流暢じゃないか、という軸もあるかもしれないが、僕が行きついたのは「重い・軽い」軸で、指揮官は軽いことではなく「重い」ことをしっかり伝達すべきだ。指揮官が軽い話しかしない組織は、ダメな組織に決まっている。


何が「重い」話なのか?それは、その組織にとって「優先順位が高い」ことだ。トッププライオリティをしっかり伝え、何をどの順番で優先しなければいけないのかを明確に決めるのが指揮官の必要不可欠な仕事だ。そして、その優先順位は、組織の生き残りや成長戦略に対する影響度によって決まる。僕は、直接・間接的に「顧客をもっとHappyにするために自分たちの組織は何をするのか」という基準で決めたことが最も重いと思っている。目先の値引で価格を満足させるもいいのだが、より高い次元で顧客を満足させるための仕事が何なのかをしっかり考えなければいけない。

そのためにも常日頃の組織のメンバーの仕事をしっかり見届け、状況を「把握」し、把握した内容を積み重ね、しっかり「想定」した上で、重い話を伝達する必要がある。そして、その重い話には、指揮官自身の情熱・真剣さ・コミットメントもあわせて伝える必要がある。それは単に伝えるのではなく、指揮官のオーラから「滲み出る」必要があるのだ。「滲み出る」ところまできていない話は、下から見れば、結局は軽いか重いか分からないことなんだと思う。

僕が言う「伝達」とは決してスピーチがうまいかどうかだけではなく、必要な情報を必要な人たちに必要なタイミングでいかに効果的かつ効率的に伝えるか、ということなのだが、そのためには、重い話を指揮官の気迫が滲み出た状態で伝えられているのかどうかが大事なのだ。これはまあ指揮官の総合力なんだと思う。それができなくなった指揮官は、たとえその組織で大きな実績があったとしても、身を引くか更迭されるかどちらの道しかないんではないかと思う。



伝えるときに重要なのは、人それぞの立場によって持っている情報も違うし、仕事に対する意識や危機感も違う。誰の立場で話しているのかは結構大事だ。トップのエゴを伝えることも大事な時もあるかもしれないが、人の立場になって伝えることは大事だ。だから、誰がどのような気持ちでどのようなインセンティブでどのような仕事をしているのかを把握することは指揮官の基本中の基本となる。

また、組織が大きくなればなるほど、全員の立場を理解することは困難になるため、人の立場が分かっている人間を通じて、間接的に伝えることも重要だ。ミドルマネージメントの重要な仕事の一つは、これだろう。こいつには誰から伝えると伝わりやすいといったことがよくあると思うので、一番効果的な人間を指名して、伝えるのでもいいんだと思う。しかし、間接的に伝える場合でも、最終的に自分が伝えたかったメッセージが伝わったのかどうかの確認をするのは指揮官・最高責任者の重要な仕事だ。


会社では、社内報の存在も伝達をする上では結構大事だなあと思う。社内報で重要な伝達事項を伝える必要はないが、社内報を定期的に運用できている会社は、伝達がうまくいくための土壌が整っているような気がいしてる。社内報の質によるのかもしれないが。うちの会社では、社内報がなかった時代に比べ、できた後の方が人数の増大に耐えられるような内部環境が整ってきたと思っている。実際にうちではやってはいませんが、社内SNSも効果があるのかもなあという気もしています。



こういった周辺環境も整えつつ、最高指揮官が何が「重い」か適切な判断が出来ており、それが一人一人にまでしっかり伝達できている組織は強い組織だと思う。

そんな組織を作れるよう来週も頑張ろうと思います。

マネージメント5原則(2): 想定

2008-04-09 23:31:53 | ちょっといいはなし
2008年の自分の「マネージメント5原則」について、「把握」に続いて第二弾は「想定」。

マネージメントは、まずは何をおいても、現状を把握することがスタートになります。現状の把握なしに次のステップはありません。したがって、自分がマネージする組織を「よく見る」ことが仕事の前提であり、義務である。


誰しも経験はあると思うが、人生でも仕事でも「想定外」の事態に遭遇する。「想定外」の事態を切り抜けるためには、想定している事態に対応するために必要な何倍ものパワーを要する。

しかも、想定内の事態に対応することは凡人でもできるのだが、想定外の事態は凡人には対応できない可能性が高い。


まず「想定」するためには、3つの時間軸が必要になる。

第一に、「過去」だ。過去の歴史の中から、何と何が関連しているのか、連動しているのか、もしくは、関係がないのか、因果関係を発見するのが「過去」に対する想定となる。過去に自社もしくは参考になる他社がどのような施策を行い、どのような結果が出たのか、どのような外部環境の動きがあったのか、過去の事実をしっかりと収集し、分析することは成功確率を上げる上で非常に重要だ。「愚者は経験に学び賢者は歴史に学ぶ」だ。過去事例をしっかり研究していれば陥らない不慮の事態で失敗する組織は数知れない。ただし、過去事例をそのまま現状にあてはめても、現在と過去の環境は全く一緒ではないので、失敗するだけだ。カスタマイズを忘れてはならない。


第二に、「現在」だ。現在に対する想定は、現在の自分の組織があげている業績や結果は、過去のどのような取り組みがもたらしたのか、どのような外部環境がもたらしたものなのかを考えることだ。「現在」を導き出した内部要因・外部要因を導き出すことが「現在に対する想定」となる。これは、自分の組織に対して行うだけではなく、競合や類似業種などベンチマークすべき組織に対してこのような想定を行うことも非常に価値がある。

第三に、「未来」に対する想定だ。どのような手をうてば、どのような未来を作り上げることができるのか、自分なりのビジョンや戦略を作ることが「未来」に対する想定となる。その未来を作り上げるために、現在の自分たちはどのような業務を行わなければならないのかをしっかり考えること、そして、外部環境はどのように動くという想定をするのかについても当然考える必要がある。


組織の指揮官は、常に自分の組織をマネージする上で「過去・現在・未来」の想定をしっかり行うべきだ。

ここまで出来たら、次はどのように想定すべきかだ。
僕は、想定をする際は「5W1H」が重要だと思っている。
「Who(誰が) What(何を) When(いつ) Where(どこで) Why(どうして)How(どのように)したのか・するのか」というフレームワークで物事を捉える必要がある。どれか一つの要素が抜けていても、不十分な想定となる。


また、「想定」する際には、企業経営であれば、
 ・顧客
 ・自社の組織(従業員)
 ・取引先(協力機関)
 ・株主や債権者
 ・外部環境(市場・競合・技術動向など)
を登場人物に加えたシナリオ作りをすることだ。

「ソフトバンク「常識外」の成功法則 」にあったのが、孫さんは「経営の1000要素のリストアップを行った」とのこと。1000個あげるのは骨が折れるが、なるべく多くの要素のリストアップをやっておけば、想定を行うでの前提がかなりいい感じで整う。

変数が出そろえば、値を入れて、複数のシナリオを用意できる。
そして、どの時点でどのような判断を行い、どのシナリオを選ぶのかが整理されている指揮官は強い。強い棋士と一緒だ。逆に、シナリオがなく行き当たりばったりで対応している指揮官は、勝率も効率もとても低いのではないかと思う。シナリオありで動いている組織とそうでない組織のパフォーマンスは、著しく異なる。シナリオがない、もしくは、貧弱な組織は、あわただしく仕事をしているつもりになっているだけの場合が多い。


会社経営においての「想定」として一番重要なものはやはり「予算」だと思う。いい予算が作れる会社はいい経営ができる。アーリーステージの組織においては、未知数のことが多すぎるため予算づくりは正直シンドイ。そのステージを生き残った後に、上場の審査基準に予実が存在しているのはうなずける。予算になんとか近づける踏ん張りも大事なのだが、僕は踏ん張り・がんばりで無理くり近づける実行力と同じぐらい「いい予算」を作れるかどうかも非常に重要だと思う。

予算は攻めすぎてもいけないし、守りすぎてもいけない。
数字合わせではなく、どれだけ数字に血を通わせるかが大事で、現実的かつ挑戦的で、その予算どおりに経営を進めれば、持続可能だし、競争に勝てるし、顧客をHappyにできるし、新しい時代を俺たちは作れるよねっていうわくわくするシナリオが描けるかどうかだと思う。
予算どおりにいかないところがあれば、単に詰めるだけではなく、それがなぜだったのか?戦略が悪いのか?いやいや戦略ではなく実行が悪かったのか?じゃあ、どうすればいいのか?といった問題点とソリューションを導き出すのが、いい予実の運用で、問題発見しやすい予算づくりをしておくことも非常に重要だ。そのためにもどこまで想定できているかはとても大事だ。PDCAサイクルの回転率が企業としての強さを決めると思うのですが、そのためにもしっかりした想定ができているかどうかだと思う。

そして、本質的には「なぜ自分が指揮する組織は存在しているのか?どういう状態がこの組織にとって理想で、どのような事態が最悪の事態なのか?この組織が存続する前提条件や存続しない前提条件は何なのか?」といった問いをし続け、しっかりとした「想定」をするのが、指揮官の仕事だ。


僕のマネージメント5原則は、
1)把握
2)想定
三番目の原則はまた次回に。

アウトサイダーズ

2008-04-06 12:40:27 | ふと思ったこと
先週は、大学の入学式前後にあわせて、僕が大学時代に属していたアメリカンフットボールチームのアウトサイダーズの新入生の勧誘を手伝った。

いつも話をするのは20代後半から40代前半の人たちが多いので、18歳前後のちょっと前まで高校生・浪人生だった学生さんたちと話をする、しかも、普段話慣れていないアメリカンフットボールの話をするのは非常に新鮮な体験だった。



大学4年生の時からなんやかんやで加速度的に忙しくなってしまったため、このチームの活動にOBとしてほとんど何も手伝いが出来ていなかった。

1990年設立のアウトサイダーズは今期で18年目になる。ここ数年、部員数が減りすぎて、チームの存続が危機的な状況にあるため、OB有志かなり大勢で解決策を検討し、チームの存続をかけて今回の勧誘にOBもコミットすることになった。僕も卒業後約10年何も貢献できていなかったため、今回は有志の一人として、若干ながらお手伝することにした。

ある人はパンフレットやポスターの作成で、ある人は新歓パーティーの準備で、ある人は新歓パーティーにテレビでも見かける若手芸人を呼んでくれたりと。僕は、平日にキャンパスに現場入りし、ビラ配り&氏名の記入を通じて、勧誘活動を約12時間行った。土曜日には、防具を装着して、練習に加わり、結構本気でヒットをする練習にも参加し、体がボロボロになりながら、新歓パーティーにも参加した。



伏線があった。

去年の8月の暑い夏のまっさかり、11年ぶりに僕はアメリカンフットボールの試合に出場した。アウトサイダーズのOB戦だった。そして、アウトサイダーズのリーグ戦最終戦に現役選手だけでは人数が足りないため、OB有志が参加することになり、その試合にも出場し、いきなり2007年は10年ぶりに2試合に出場した。やってみた思ったこと。アメリカンフットボールはやっぱり結構面白かった。そして、アウトサイダーズというチームは自分にとって、大事な場所なんだなあということを感じた。


11年前、大学4年の僕は学業やら起業の準備やらで忙しく、いっぱいっぱいな毎日の合間をぬって、ちょっとだけしか練習・試合に出場できなかった。同期や後輩が頑張っている中、当時の自分の優先順位に沿った判断だったとはいえ、大学三年のときに副主将を務めていた自分が4年生のときにこれしか貢献できなかったことは、申し訳ない気持ちがあった。

僕は、慶應義塾高校3年間を振り返ると、結果的にアメリカンフットボールが自分のトッププライオリティだった。高校3年間で何をしたかと問われれば、「アメフト以外には何もしなかった」と明確に答えることができる。

全国優勝をしてたら大学でも続けるつもりだったのだが、関東大会準決勝で敗退してしまい、この厳しい高校3年間を大学でもう4年行う余力は自分にとっては残っておらず、強豪校で優秀な選手も多かったことから、チーム内での実力は平均レベルかそれより下ぐらいだったという自分に対する評価もあり、もうやり尽くしたかなという気持ちになり、もうアメフトはやめて、アメフト以外のことに専念しようと、固い決心をして、日吉から遠く離れた総合政策学部に進学した。

その後、アメフトなしの大学生活を始めたものの、数か月でアメフトをやりたくなってしまった。ただし、自分の中で、アメフト以外のことをトッププライオリティにしようという軸は変えるつもりはなかったので、週2回しか練習のないアウトサイダーズに入部することにした。

そのときもいろんな葛藤があった。どうせやるなら体育会がいいんじゃないかとか、いやいやそれなら総合政策学部に進学した意味がないじゃなんとか、体育会にいってもどうせ自分のポテンシャルだと通用しないよなとか、週2回の練習で本当に怪我をせずにアメフトはできるのか、など。何より、アメフトって自分のトッププライオリティにせずにできるほど、甘いスポーツじゃないよな。。。っていう気持ちが、アメフトを再開させる上で最も大きなハードルになっていた。が、まあ、うじうじ悩んでいてもしょうがないので、試してみようという気持ちになった。

そして、練習に参加させてもらった。けれども、高校のチームの練習と比較してしまい、いろいろイケてないじゃんということを周囲に漏らして、まわりでアウトサイダーズで頑張っている人たちを不快にさせてしまった。そもそも週2回という制約の中で、ベストを尽くそうというチームの前提があるのに、今にして思えば、子供なことを言ってしまったなあと恥ずかしい。高校で本気でやっていたスポーツを大学で体育会ではなく同好会でやろうとすると同じような体験をした人は多いのではないかと思う。

そんなKYな奴だったが、試合ではある程度実績を出せたり、アウトサイダーズというチームで先輩・同期と人間関係も出来て、大学で自分の居場所を作ることができた。

高校に引き続き大学でもアメフトにフルコミットしていたら、在学中はたぶん起業する様々な機会には遭遇しなかったと思う。一方、大学でアメフトを全くしていなかったら、おそらく今ほどタフに仕事をこなす体力は続かなかったと思うし、充実した時間もなかったと思うし、貴重な人たちとも出会えなかったと思う。特に僕は、起業・経営の仲間とアメフトの仲間が僕の場合は結構かぶっている。また、社会に出てもチームメートとの話は仕事・プライベート双方で楽しいし、役に立つことが多い。もう年なのかもしれないが、昔の試合の振り返りも楽しい。

いまだ引っかかっているのは、チームにはアメフトにフルコミットしていた選手もたくさんいたので、僕のプライオリティは正直失礼だったと思う。高校経験者で試合で結果が出せなければ、許されなかったんだろうなあと思う。試合で結果を出したとはいえ、チームの士気にマイナスなこともしてしまっていたと思う。



すべてひっくるめてまとめると、僕にとっては、アウトサイダーズというチームや仲間と出会えたことは本当に大きかったなあと思う。要するに、体育会や他のチームではなくSFCのアウトサイダーズだったおかげで僕は学業や起業準備の活動とアメフトを両立できたんだと思う。

僕にとってのアウトサイダーズとのストーリーは、ざっと上記のようなものだのだが、十人十色のストーリーがあると思う。

たくさんの新入生が入ってほしいし、入部した学生の人たちには僕と同じように人生の中でこのチームに入ってよかったと心から思えるような大学生活を送ってほしい。

今になって振り返ってみると、僕は高校→大学→社会人へという流れの中で、運よく軸をぶらさずに、自分の時間配分の選択を行った。

人によっていろいろな軸があるのだと思うけれども、僕の場合は、「アメフトと同じぐらい本気で打ち込めるアメフト以外の何か」を大学で見つけて、それを行動に移すことが基本的な軸になった。僕にとっては、それが最終的に今のAIPでの活動につながった。

そういう意味では、アウトサイダーズがなければ、AIPもなかったんじゃないかなあと思う。これまでそんなことはあまり考えなかったが、今回、勧誘活動をしながら、そんなことを考えた。


人生何が、何につながるかはわからないが、人との縁、そして、「自分の軸」大事にしたい。

何かをやり遂げるためには、自分の生活を大局的に見つめたときに「自分の軸」どおりに自分の時間配分が出来ているのかどうかってことがすごく大事なような気がしている。

それを肝に銘じて、今の自分の軸と自分の時間配分をみつめなおしてみたいと思う。