今日5月5日は、こどもの日、立夏ですが、GWも終盤となり、多くの方が旅行や
スポーツなど、楽しまれたことでしょう。 フレッシュマン(ウーマン)も、
一息ついて落ち着いた頃かもしれません。
この5月3日で、日本国憲法施行71年となりました。憲法改正については、これまで何度
も議論されてきましたが、昨年のこの日、安部首相は、自衛隊の根拠規定を掲げるための
9条改正を政治課題に掲げ、党内論議の末、今年3月 9条改正や緊急事態条項の創設などに
ついて改憲の考え方をまとめました。 このうち第9条に絞って、少し検討してみたいと
思いました。
検討に際しては、ネット記事をはじめ、最近手元に届いた会報の記事「憲法第9条への
自衛隊明記について」(高見勝利氏、北大、上智大名誉教授)および「日本国憲法」
(谷口真由美氏、大阪国際大学准教授、文芸春秋、2015.7.5)を参照しながら整理して
みました。が、理解が及ばず、曲解・誤解に基づく一人合点かもしれません。お許しの
ほどを・・。
まず、日本国憲法第9条を再掲します。
今更ですが、これが、戦争を放棄し、一切の軍備を持たない‥と宣言した部分なんで
すね。 しかし、直後に朝鮮戦争が勃発(1950年)し、GHQの指令により事実上の軍隊と
して「警察予備隊」が創設され、その訓練は、基本的にアメリカ軍事顧問の監督下で
進められたのでした。この警察予備隊が、サンフランシスコ平和条約締結(1952年)に
より「保安隊」に改組され、その後 1954年に現在の「自衛隊」として成立したのです。
私が子供のころ、“再軍備反対”など、巷で議論されていたことをうっすら記憶して
います。
一切の軍備を持たない・・としながら、事実上の軍備である自衛隊を有しているとこ
ろに 長年現実的な矛盾(ねじれ)の存在を許してきているのです。 極論すれば、憲法
改正によって憲法上の制約をなくし、名実共に再軍備すべきという主張と反対する主張
が営々と続いて議論されてきているのですね。
しかし、今日的には「再軍備」とする主張はさすがに影を潜めてはいますが、何とし
ても「自衛隊」を合憲とすべき・・との主張に収れんしようとしているように思えます。
つまり、政府見解によれば憲法は 自衛権の放棄を定めたものではなく、その自衛権の
裏付けとなる自衛のための必要最小限度の実力は憲法第9条第2項にいう「戦力」には
該当しない、との解釈で、したがって、日本を防衛するため 必要最小限度の実力を行使
することは当然に認められ、これは交戦権の行使とは別の観念であるとの立場に立って
いるのです。
これに反して、多くの憲法学者は、自衛隊は「違憲」であるとの主張ですが、この根拠
は、自衛のための軍事行為は認めるけれども、侵略行為も もとはといえば自衛から始まる
こともあり、さらにこれらの軍備そのものは、自衛のためのものか 侵略のためのものか
区分できない・・だから憲法違反だというのですね。
学問上の理屈としてはそうかもしれませんが、では、他国から攻め込まれた場合、どの
ように対処するのかという現実的な事象に対して、何ら反論できないのです。
国民の間には、自衛隊を容認する人の割合が増えており、自衛隊を「合憲」と考える
人は76%に上り、「違憲」ととらえる人は 19%にとどまるとの最近の調査が報告され
ています。
会報記事の高見氏も『 今回の安倍首相提案の 9条改正の目的は、自衛隊違憲論を封じ
ることにあり、同条に自衛隊を明記することによって自衛隊法で定められた任務・権限
に少しの変化も生じさせるものでない、というのである。』と断言されています。
もともと、我が国に、自衛軍を持ちうることを明確にすべきだとする論が長くあり、
この場合は、戦力不保持・交戦権否認を明記した 9条2項を改正すべきとする案が主流で
ありましたが、今回の安倍首相提案では、9条1項の戦争放棄と2項の戦力不保持はそのま
ま残して、新たに自衛隊の存在を明記する 3項を付け加えるという案です。
どのように追加されるのか、ネット(NEWSWEEK)に一例がありました。
『 「自衛隊は我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織」と定義した上で、
「前条(9条)の規定は自衛隊を設けることを妨げるものと解釈してはならない」と規定
する案です。その変形としては、単純に「第3項」を付加して「前二項は自衛隊を設ける
ことを妨げない」などとする 』という案です。
しかし、この場合も、高見氏(前述)意見では、『実力組織や自衛隊といった新規の
概念が、前条や前文の平和主義との関係、さらには憲法の基本原理との関係で 一から
解釈されなおすことになる。したがって、仮にこの案に基づいて、安倍首相の狙い通り
に第9条維持の改正がなされたとしてもなお、「自衛隊は違憲かもしれない」との論が
生じる余地を封じ去ることには決してならない。』と厳しい。
これほどこの山は高くて大きいわけですけれども、この案が仮に国民投票で、主権たる
国民の過半数によって「承認」された暁には、爾後、国民の名において自衛隊の違憲論
を持ち出すべからず・・との見解が成立します。
しかし、仮にこの案が国民投票において、結果「否」となった場合には、それこそ
『「政府解釈」とともにそれに基づく自衛隊の存立根拠が揺らぎ、自衛隊そのものが
存立危機事態に陥ることになるのではないか。』との指摘があります。
2020年を目指して、議論が進められていますが、昨今の不祥事の連発で、支持率低下、
野党の反発で審議そのものが遅滞し、先行きが見通せませんが、国民にもっとわかり
やすく説明を尽くし、確信が得られたならばその手続きを進めるとの手堅さが真に求め
られるでしょう。
長くなりました。言い尽くせていない上に理解不足もあり、一層わかりにくい記事と
なってしまいましたことをお詫び申し上げます。