ヒロヒコの "My Treasure Box"

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「Xの悲劇」「Yの悲劇」「Zの悲劇」エラリー・クイーン角川文庫版

2017年06月10日 | ミステリー小説
 角川文庫版国名シリーズの新訳を完成させた越前敏弥氏がそれ以前に刊行していたクイーンの悲劇三部作。この機会に読んでみた。(厳密には「レーン最後の事件」を含めてドルリー・レーン四部作となるのだが、越前氏訳の最終作は未読。)いずれも中学か高校生の頃読んだはずだが記憶は不確かであり、ほとんどが初めて読む感覚に等しかった。

 通常では2作目の「Yの悲劇」が特に有名だが、私としては犯人の設定と「あの終わり方はちょっと、、、」という気がしていまいち推す気にならない。むしろXやZの方が犯人の意外性や物語性、そして論理的な解決の部分で評価したい。とりわけ語り手として新登場するサム元警視の娘ペイシェンスが活躍するZは新鮮な気持ちで作品に没頭できた。彼女は最終作でも登場するはずだから楽しみである。

 作者クイーンがバーナビー・ロスという別名でXの悲劇を発表した1932年は、続くYの悲劇や国名シリーズのエジプト十字架、ギリシャ棺を立て続けに刊行したそうだ。作家としての才能を充分に発揮していた時期の名作であることは言うまでもない。角川版の各解説は有栖川有栖、桜庭一樹、法月綸太郎。これもまた面白い。それぞれの視点での作品観がわかる。ぜひご一読を。


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