ヒロヒコの "My Treasure Box"

宅録、DAW、ギター、プログレ、ビートルズ、映画音楽など趣味の四方山話

NOW AND THEN / THE BEATLES 最後の新曲

2023年11月18日 | ザ・ビートルズ

 Tower Recordsに注文していたザ・ビートルズの最後の新曲 NOW AND THEN が届いた。  

   
 配信となった今月上旬から数週間遅れてのリリース。私が購入したのはシングル盤の透明ディスク・ヴァージョン。
 もともとデモ的な音源だったそうだが、結果としてかなり作り込まれた印象。解説を読んで知ったのが、ABBEY ROAD 収録のBECAUSE でのコーラスを流用していること。たしかにそんなコーラスワークが聞こえる。
 何度も聴くと、それなりに曲が馴染んできた。ビートルズの4人が関わった新曲?としての価値はあるかもしれない。
 ちなみに、裏面はLOVE ME DO。最初のシングルとラスト・シングルのコントラストを味わうということか。
 それにしても、これで三千円は高い気がする。ファンだから買ってしまうけれど、、、。
   
 

ザ・ビートルズ Get Back を見て

2021年11月28日 | ザ・ビートルズ

 ザ・ビートルズのGet Back(Disney+チャンネル)を見た。1969年1月の約1ヶ月にわたるセッションの膨大な記録を3本のパートに分けて構成したものとなっている。

   

   (ディズニー+公式チャンネルからhttps://www.disneyplus.com/ja-jp

 まずは50年前とは思えない映像の美しさ。丹念にブラッシュアップしたのだろう。全体で8時間ほどあるのだが、パート1は集まれば何とかなるだろう的見切り発車な内容のため、2時間半を見るのは辛いものがあった。だが、パート2に入り、特にキーボード奏者のビリー・プレストンが参加したあたりからバンドの雰囲気が変わり、俄然面白くなってきた。そしてパート3のメインはあの伝説のルーフトップ・ライブ。これが通しで見られるだけでもこの作品的価値は大きい。

 いくつか気のついたことがある。まず、かつての映画LET IT BEの印象から、このセッションはメンバーのエゴがむき出しになり暗い雰囲気に終始した、と思っていたのが決してそうではなかった。確かに意見の相違や一時的にジョージが脱退したなどのトラブル発生もあったのだが、クリエイティブな活動の中で異なった意見が出るのは当たり前である。それを乗り越え曲を仕上げるため悪戦苦闘・試行錯誤していた様子を知ることができた。時には真剣に、時にはユーモアを持って。その気になればメンバーが力を合わせ充分に成し遂げることができたのだ。だからこそ、次のABBEY ROADが産まれたのだろう。

 次に曲を仕上げる手順として、特に作詞に関してお互いに考えを出しながら進めていたことがよくわかる。レノン/マッカートニーとクレジットされていたのはそういうことかと改めて理解した。場合によってはジョージも自曲について「この後が思いつかなくて」などとメンバーに話していた。

 こうしたメンバーやスタッフとのやり取りは実はすでに公表されており、日本では青土社刊藤本国彦著の「ゲット・バック・ネイキッド」に詳しいとレコード・コレクターズ11月号のLET IT BE特集で紹介されていた。当然ながらその記事の記述とGET BACKは映像的に重なっている。

 パート3で紹介されるルーフトップ・ライブは直前まで行うかどうか迷っていたらしい。だからこそ事前の配慮するべき準備が何もなされていなかったのだろう、演奏が始まって騒音、治安妨害として2名の警察官がやってくる。彼らの氏名も紹介されていたが、職務上トラブルとして対処しなければならなかった彼らの毅然とした、そして少し困った表情が印象に残った。

 それにしても、このルーフトップライブには興奮した。ライブバンドとしてのビートルズの演奏力はさすがであった。そしてビリー・プレストンのピアノがそれに彩りを加え、最高の演奏を作ってくれた。周囲の人々の反応も面白かった。多分、旧作映画のLET IT BEを見た時にも思ったはずだが、改めて感じた次第である。だが、これだけの曲の録音素材がありながらも結局はしばらく放置されてしまうことになる。

 こうしたことが理解できるGet Back は長尺だった。古くからのビートルズ・ファンにはとても受けると思うし私は大満足だったが、リアルな彼らを知らない世代にはどうか。せめて2時間程度に再編集し、映画館で見たい人がだれでも見られるようになればさらに良いと思う。


ザ・ビートルズ LET IT BE スペシャル・エディション版が到着

2021年10月24日 | ザ・ビートルズ

 10月15日のリリースに伴って数日遅れでLET IT BEの50周年スペシャル・エディション版が到着した。同時に久しぶりにレコード・コレクターズの11月LET IT BE特集号も買ってみた。今回のスペシャル・エディションについて何の予備知識もないので同雑誌の力を借りようと思ったのである。

  

 さて私が注文したのはリミックスの音源+アウトテイク・ハイライトの2枚組CD版である。まずジャイルズ・マーティンによりリミックスされた音源は、最初に聴いただけではオリジナルミックスとの違いが分からなかった。I’VE GOT A FEELING の最後でジョンとポールが違ったメロディを同時に歌う部分があるが、確か左と右に明確に分かれていたが、今回は中央に寄っているかな?と思った程度である。ということでレココレを紐解く。76ページからのスペシャル・エディション解説(文・小山守)によると各楽器の分離が薄まって丸みを帯びた音像になっていて、同時にヴォーカルの生々しさがいっそう際立っている、特に数曲で聞かれるオーバーダビングされたストリングスの音が全体に溶け込んだ質感になっている、という。それを読んで、やはりI'VE GOT A FEELING のヴォーカル処理もそういうことかと、改めて聞き直してみた。でも、やっぱりあまりわからないな、、、まあこのアルバムは、変わりすぎない方が良いのかもしれない。それにしても、収録時間はトータル35分程度しかなかったのですね。

 ディスク2の方は多分初めて聞くものばかりだ。リハーサル的ではなく完全演奏のテイクが多いのが良かった。これもレココレに詳しい解説が載っているのでとても参考になった。音源についてのみではなくレココレの特集記事ではLET IT BEが出来るまでの背景なども改めて説明されていて、読み応えのある内容であった。

 なお、付属のブックレットにポールの言葉や、詳しい解説、そしてレコーディングの詳細などが記載されている。時間のある時にじっくり読んでみたいと思う。

 そして来月いよいよ映像版GET BACKがディズニー・プラスで配信される。楽しみに待ちたい。


【特報】ザ・ビートルズLET IT BE のスペシャル・エディションが発売決定

2021年08月27日 | ザ・ビートルズ

 映画LET IT BE のリニューアル・ヴァージョンGET BACK について以前こちらで紹介したが、この映画は当初は今年の8月に公開予定であった。本来なら今頃劇場で見ることができたはず。だが、結局は11月にディズニー・プラスで配信されることになった。宣伝文句は次のとおり。「伝説のロックバンド、ザ・ビートルズの3話構成6時間超の時空を超えた《オンライン・ライブ・エンターテインメント》が、ディズニープラスで独占配信。彼らのラスト・ライブのノーカット完全版とともに明かされる衝撃の真実とは?11月25日(木)・26日(金)・27日(土)ディズニープラスにて全3話連続見放題で独占配信」。何と6時間を超す映像が見られるようだ。当初の映画より長尺となったのか?私はたまたまディズニー・プラスを見ることの出来る環境にあるため、これは楽しみになってきた。

 そして、ビートルズ最後のオリジナルアルバムLET IT BEについては「50年後の後追いビートルズ」のラスト記事としてこちらで紹介した。その時、この時点での記念盤などの動きがあるのか?とコメントしたのだが、8月26日付けで同アルバムのスペシャル・エディション版が発売となる旨発表があった。リリース日は10月15日全世界同時とのこと。突然のニュースに驚いたのだが、なるほど、これは映画の公開に合わせての販売戦略だと思いついた。

   (Universal Music の広告から)

 今回のリリースもいくつかのヴァージョンがあり、詳しくは UNIVERSAL MUSIC JAPANの記事  や TOWER RECORD の記事、そして映像版はYouTubeを参照いただきたい。例によってアウトテイクやリハーサル音源、そしてニューミックスによるサラウンド音源、アナログ盤などが網羅されている。特筆すべきは当初リリースが予定されていたGet Back LPの新マスタリング音源が収録されていること。(これはすでに公開されていたのでしたっけ?)

 リアルタイムでLET IT BE を体験していた私としてはこのラスト・アルバムがとても思い出深くて、大好きなサージェント・ペパーやアビー・ロード以上に食指が動くのだが、やはりスーパー・デラックス・エディションは高価すぎて無理だと結論。いつもの2CDデラックス版の予約に落ち着く。(でも今ならTOWER RECORD さんはポイント15%に加えて国内盤スーパー・デラックス版も10%引きでお得です。)ホワイトアルバムのスペシャル・エディションが発売された時は、それに向けた各雑誌の特集号や冊子が発売された。今回は映画の公開もあるからそのような動きがさらに活発になりそうだ。情報も知識もない私なので、今後に期待しつつ今回はこの特報の紹介のみとしたい。


ザ・ビートルズの映画 Let It Be の再編集版は "Get Back"

2020年12月31日 | ザ・ビートルズ

 2021年はビートルズのゲット・バック・イアーなのだそうだ。

 50年後の追っかけザ・ビートルズを7年間にわたりこのブログで展開してきた私は、映画についてはノータッチだった。ただ、アルバムLet It Be の紹介時に映画の再編集版の噂がありそれが楽しみ、と記載させてもらった。その実情がYouTube動画で明らかになった。その紹介動画(予告編ではない)に私は目が釘付けになってしまった。ビートルズのセッション風景がとても綺麗な映像でメンバーのユーモラスな様子とともに紹介されているのだ。本編映画の暗い雰囲気が少なくともここでは全く感じられない。今まであの映画の状況でよく次作のAbbey Roadが完成出来たものだと思っていたのだが、作品づくりに4人一緒に和やかにセッションしているこの状況ならば納得もできる。寄せられたコメントもそのように感じた人がほとんどで、これはLet It Be セッションのイメージが覆されることになりそうだ。もっとも、メンバーの確執や仲たがいがあったことも事実である。映画Let It Beは解散に向けたバンドの終末という面を強調したかったのだろうか。
 ちなみに再編集版のタイトルは「ゲット・バック」らしい。ということは全く別物の作品になるのだと思われる。いずれにしても、公開されるのが楽しみだし、その時に改めて考えてみたい。

 映像版ではA HARD DAY’S NIGHT Blu-ray版 2021.01.30 発売とのこと。

     

      映画Get Back 2021.08.27   公開(先行特別映像リンク)

 今年は大変な一年でした。来年こそ、少しは笑顔になれればと心から願っています。


「ザ・ビートルズ/LET IT BE」50周年〜50年後の後追いビートルズ最終回?(その2)

2020年05月10日 | ザ・ビートルズ
 Let It Beのアルバムはイギリス発売が1970年5月8日である。写真集付きのボックス・セットとして高額でのリリースだったがトータル6週第1位を獲得。同年6月5日日本でも発売。私はこれを友人宅で目撃、写真集を見せてもらった記憶がある。国内盤の通常のLPは71年2月に発売。自分はいつ買ったのか覚えていないが、それは瓢箪帯に加えて「アカデミー賞受賞レコード」の金地赤文字帯がついたダークアップルレーベルのものである(AP-80189 A面YEX-773 8S5 B面 YEX-774 6S6)。ちなみに、アカデミー賞とは映画LET IT BE のタイトル曲に対し編曲・歌曲賞が授与されたそう。さらにはグラミー賞の映画音楽賞も受賞したそうだ。
    
    

 後年、札幌狸小路の中古レコード店フレッシュ・エアーさんにてボックスセットで発売されたシングルジャケット版のLP(AP-9009)を購入。ダークアップルレーベルで歌詞カード、黒インサート付き。プレス番号の最初の6桁は通常盤と同じだが、その後の番号はA面が2S、B面が1Sと読める。全体的にチリノイズが多く、後のプレスよりおとなし目の音だが、音量を上げると厚みのある音に変化する。手軽な値段で、これは良い買い物だった。
    

 アルバムとしてのLet It Beは最初は地味な印象だったが、聴き込むとなかなか味わい深い。その味のあるところが結局は好きなのだ、と今回理解した。だが、実際にはかなりの編集・加味がなされていたこともNakedを聞いて納得。ロング・アンドワインディング・ロードは日米でシングルカットされ、ビートルズの終焉にふさわしい曲と思うが、ご承知のようにストリングスが加味されたことにポールが激怒したという。夢弦サウンドが好きな私はとても良いと思うが、初心に帰ろう、とバンド・サウンドを志向した当時の状況では当然受け入れられなかったのだろう。今更ながら恐るべしフィル・スペクター、である。

 さて、映画版のLet It Beは多分リバイバル上映の時に見たと思う。期待して行ったはずが見ていて気持ちが暗くなったことは覚えている。メンバーが言い合いをしていたり全体的な雰囲気も明るいものではなかった。(ただ、後半のルーフトップ・ライブは良かったが。)それ故この後にあの完成度の高いアビーロードを作ったと後に知って驚いたものだ。

 2013年から続いた「50年後の後追いビートルズ」、50年前のアルバムのリリースと同じ日にオリジナルアルバムを聴くという試みをしてきたが、とうとう終わってしまった。振り返ると、偉大なビートルズもレコードを出してからの活動期間はそんなに長くなかったのだなと思う。にもかかわらず様々に取り上げられ未だに語られる。何て素晴らしいバンドだったのかと改めて感じている。彼らの音楽はこれからも私の人生を満たしてくれる一助となるだろう。ありがとう、ザ・ビートルズ!

「ザ・ビートルズ / LET IT BE」50周年〜50年後の後追いビートルズ最終回?(その1)

2020年05月09日 | ザ・ビートルズ
 昨日でアルバム LET IT BE リリースから50年。記念盤など何らかの動きがあるのかなと思っていたが、世の中それどころではない状況。最も、アルバムの素材を素のままに出し直したLet It Be ...Nakedという編集版がすでにあるので、手をつけにくいかもしれない。映画版の方も、未公開シーンを加えたニュー・ヴァージョンが作られているという噂を聞いて久しいが、果たして実現するのだろうか。

 2013年の3月から「50年遅れの後追いビートルズ」を実践してきて昨日はとうとう最終作まできてしまった。アルバムをターンテーブルに置きながらこのアルバムについての思い出をメモで書き出してみる。するとすぐにA4一枚埋まってしまった。私にとって実は思い入れの深いアルバムだったようだ。
 いつものようにレコード・コレクターズ増刊THE BEATLES MATERIALSとCDジャーナルムックのビートルズ・ストーリーVol.9 1970を参考文献に思うところを述べてみる。

     
 まず、シングル盤Let It Beは70年3月のリリースだった。ラジオでかかっているのをよく聞いたものだ。歌詞がエルピー、エルピーと聞こえたので、シングル盤だけどLPを歌ってる曲だよ、と当時同級生が言っていたのを覚えている(苦笑)。このシングル盤とアルバム収録の同曲が微妙に違って聞こえるのが昔とても不思議だった。これについてはレコード・コレクターズ増刊ザ・ビートルズ・リマスターCDガイドに詳しいが、素材テイクにリードギター等のオバ−ダブを行い、シングルはジョージ・マーティン、アルバムはフィル・スペクターが編集したことで2種類のヴァージョンができたとのこと。その指摘を見ながら改めて聴くと、本当に細かいところまで聞き込んでいて、著者の守山直明氏は「違いのわかる」凄い人だ。(続く)

50年後のザ・ビートルズ追体験/9月26日は奇跡のアルバム「アビー・ロード」

2019年09月26日 | ザ・ビートルズ
 50年後の追っかけビートルズも、とうとう実質的ラスト・アルバムまで来てしまった。
   
 ビートルズのオリジナル・アルバムの中でサージェント・ペパーズと並んで好きなのがアビー・ロードである。アルバムとしてフルに聞いたのは、確か中学生の頃だったと思うが、この中に収録されているCome TogetherやOh Darlin'がラジオのヒットチャートで流れているのは小学生の頃に聞いた記憶がある。

 なぜ好きかと問われれば、まず捨て曲がない名曲揃い。私は完全にポール派だが、リンゴの大傑作と思うOctpus's Garden、そしてジョージのSomethingやジョンのBecauseなどメロディアスな私好みの曲が揃っている。(ちなみにBecauseやMaxwell's Silver Hammerではモーグ・シンセサイザーが使われていると思われるが、そうだとしたらこれらの曲で私は初めてシンセの音を聞いたことになる。ビートルズの革新性に脱帽!)そしてI Want Youのコーダはまるでプログレだと感じるし、B面のメドレーは組曲のように見事に構成され、ドラマティックな展開が感動的なのは誰もが認めるところだろう。さらにビートルズ節と言って良いコーラスワークとポールの弾くベースギターのフレーズの凄さにいつも聞き惚れてしまう。

 後に知ったのは、これがLet It Be セッションの後に録音されたということ。映画を見て悟ったビートルズのバラバラな様子に、その後四人が結集してこれほど素晴らしいアルバムを作るとは、まさに奇跡の作品だ。実際には、資金不足を解消するためなどビジネス的な思惑も多々あったようだが、結果的に大傑作アルバムが完成した。

  私自身の初の海外旅行でロンドンに行った時の一番の目的が、ポール死亡説まで生み出したスタジオ前のアルバムジャケットに写った横断歩道を歩くことだったのはこちらで述べた。リリースが69年だったから行ったのはほぼ20年後のことである。ビートルズと同じ場所を歩いたという事実に大きな感動を覚えたものだが、どういう経緯かEMIスタジオの敷地内の玄関前で記念写真を撮ることもできた。

 さて、我が家にあるAbbey RoadアナログはAP-8815番号のLP国内盤と17年にdeagostiniからリリースされたジャケ写真の色合いがかなり違って見える(明るい?薄い?)made in E.U.のリマスター音源盤。国内盤はかろうじて帯があるが悲惨な状況。両盤を比べると特にB面のカッティングにおいてEU盤には曲間の区切りが見られないせいかレーベルと溝の間がかなり広い。音的には最新プレスということもあるだろうが、こちらの方が音圧が高いように聞こえた。50年前に発表された当時、イギリスでは18週、アメリカでも11週という長期間にわたってチャートの1位をキープしたそうだ(出典:THE BEATLES MATERIALS〜レコード・コレクターズ4月増刊号)。
   
 リミックス音源の50周年記念エディションは27日発売なのでタワーレコードに注文した私の手元に届くのは数日後になるのだが、最初のリリース時からステレオだったこのアルバム、どのように音が再構成されているのか聞くのが楽しみである。何はともあれ、今日は中学生の頃に買った国内盤LPに針を落として奇跡のアルバムを再体験するとしよう。

50年後のビートルズ追体験〜19年第一弾アルバムは「イエロー・サブマリン」

2019年06月14日 | ザ・ビートルズ
    
 50年後の追っかけビートルズ、今回は1969年1月に発売されたYellow Submarineである。そして今は6月。今年の年明けは多忙で、すっかり追体験することを忘れていた。いつもの参考図書「レコードコレクターズ増刊 THE BEATLES MATERIALS」によると本アルバムは米国で69年1月13日、英国で1月17日、そして日本では3月21日に発売されている。いずれにせよ、追体験すべき時期はとっくに過ぎてしまった。前回の大作「ホワイト・アルバム」の紹介を経てすっかり気が抜けてしまったようだ。気を取り直して我が家にあるアナログ盤に針を落とした。

 しかし、これはオリジナル・アルバムと呼んで良いのだろうか。ご承知のように本作はアニメ映画のサントラである。映画自体は68年の初めに完成し7月にビートルズのメンバーを集めてプレミア・ショーが行われたそうだ。が、アルバムのリリースは遅れ翌年に持ち越された。A面収録のYellow SubmarineやAll You Need Is Loveは既出の曲で新曲は4曲のみ。B面にはジョージ・マーティンのオーケストラ曲が収録されている。結局オリジナル・アルバムであるという意識が低くて長らく私は手にしていなかった。そして86年に来日20周年記念としてモノーラル・カラー・レコードが発売された時に、自分が持っていないアルバムの一枚として購入したのである。
    
 初めて聞いた時のことは今でも覚えている。私はずっと映画音楽が好きだった。そのためか、本作のB面のオーケストラ・トラックがとても気に入ったのだ。恐らく映像に合わせて作曲・演奏されているのだろうが美しい旋律を奏でる曲ばかりで、中にはシタールの演奏やバッハの一部が入る曲もありアレンジも多彩。ジョージ・マーティンは単にプロデューサーに留まらず、作曲家としても有能な人なのだとその時理解した。その衝撃が大きかったせいかA面のビートルズの曲は印象が薄い。

 手元には前述の国内モノ盤と後年買ったキャピトルのステレオ盤2枚がある。両者のジャケットを比較すると裏面が違う。レイアウトが全く異なっているのと、ライナーもそれぞれ別人が書いているようだ。
    
 さて、1969年は7月にアポロ11号による人類初の月面着陸があり、小学校で担任の先生共々クラス全員でテレビ中継を見たという忘れられない年だ。そしてその年の9月にビートルズは実質的なラスト・アルバムを発表する。次回の追っかけはいよいよAbbey Roadである。

50年後のザ・ビートルズ追体験〜11月22日は「ザ・ビートルズ(通称ホワイト・アルバム)」

2018年11月22日 | ザ・ビートルズ
 50年前の今日、イギリスにてザ・ビートルズの2枚組アルバムが発売された。前作のMagical Mystery Tourからほぼ1年ぶりの新作であった。その通称「ホワイト・アルバム」を今レコード盤で聴いている。
        
 ホワイト・アルバムは1968年11月22日に本国英国にてリリースされた。当時の私は小学生で、自分がこのアルバムを購入したのはそれから2〜3年後の中学生の頃だった。その時にはキング・クリムゾンやイエスなどプログレ大好き少年だったはずだが、ビートルズ・ファンにもなっていた私は2ヶ月分の小遣いを貯めて何とか手にした記憶がある。しかし、知っていた曲はOb-La-Di Ob-La-Daくらいで、アルバムを通して聴いた最初の印象は短い曲が多くて何かまとまりがないなという感じだった。それでも、特にポールの作ったI Will、Martha My Dear、Mother Nature’s Sunなどはすぐ好きになったし、各サイドに1曲ずつ入っていたジョージの曲も気に入った。そして何度も聴くにつれ、そのI WillとWhy don’ we do it in the road?のポールの歌声があまりにも違うことに驚いたり、Rocky Raccoonのメロディが妙に耳に残ったり、BirthdayやEverybody’s Got Something…のロック調のリズムが体に染み込んだり、リンゴが初作曲したDon’t Pass Me Byのカントリーさを面白いと感じるなど、徐々にアルバムの楽しさや良さがわかってきた。その中であえて一番好きな曲をあげるとしたらGood Nightだろう。自分はポール派だと思っていたが、この曲はジョンの作曲。ゴージャスなストリングス・サウンドとリンゴの渋い歌声に魅了された。しかし、何だかよくわからないRevolution #9もジョンが作ったということがわかりビートルズの奥深さを知ったのはずっと後のことである。
          
 今思うと、サージェント・ペパーの「総天然色」から「真っ白」になった(中身のポスターはサイケデリックな側面もあるけど)訳は収録された曲に現れているのではないだろうか。ビートルズのメンバーは68年2月頃からインドの瞑想キャンプに赴きそれぞれが曲を書いた。同行したドノバンからアコギを借り、そして演奏法を教わったそうだがその成果が多くの曲に現れている。5月には50周年デラックス盤にセットされた「イーシャー・デモ」で聞かれるように4人が集まり持ち寄った曲で新作に向けてのセッションを行った。この時はメンバーが結束してアルバム作りに向かっていたと感じられる。しかし、その後スタジオ入りしてからはオノ・ヨーコの出現などで人間関係がこじれ、リンゴの一時脱退という事態まで引き起こし、レコーディングはぎくしゃくしたものとなった。こうなるとそれぞれの曲をそれぞれで作り上げるという動きになるのは必然だ。ジョージが若きクラプトンにギターを依頼し録音したような動きもそれまでにはなかったことだ。だが、こうした様々な出来事が改めてバンドとしての結束感を導いて、最終的に2枚組アルバムの完成に至ったのである。結束から個別へ、個別から結束へという流れがバンドとしてどうあるべきなのか、どう進むべきなのか白紙に戻して提起した、そんな思いがこの真っ白ジャケットに表されているのではないだろうか。などと独りごちていると、実際にはこのアルバム用にイラストが準備されアルバムタイトルも別案があったが、他のバンドが似たようなアルバムを出すことがわかり、従来との対極にある「白紙」に戻ったということだったらしい。まあ、個人的感想なのでご容赦を。
        
 私が所有する本作は中学生当時に買った国内ステレオ・アナログ盤、30周年記念の紙ジャケ盤とTHE BEATLES IN MONOのCD、MONO LP BOXのアナログ盤、そして先日発売された50周年デラックス盤CD3枚組の5種である。今日は50年後の追っかけビートルズの日なので2種類のアナログ盤を聴いている。特に国内盤LPは聴きたい人に貸したり、押し入れの中に置いたままという状況だったのでジャケットの表面がすっかり汚れてしまっている。打たれたナンバーはA 080681。この番号は何を意味するのだろうかと今更ながら思う。そして、この国内盤には4面とも曲間の溝が見あたらない。確かに音的にも切れ目なく曲が続く所もある。そのつもりでモノラル盤を見たら曲間がわかる作りになっていた。これにも何か意味があるのだろうか?また、この頃にはステレオ・ミックスでのリリースに意味が出始めていたので、メンバーもその気になってステレオ盤を制作したとのこと。事実アメリカと日本ではステレオのみのリリースだったらしい(米国では11月25日、日本は69年1月21日発売)。
        
 本アルバムの制作・発売時期には様々な出来事があったことが各文献に詳しい。例えばジョンの大麻所持逮捕と離婚、ヨーコの流産、ビートルズ初のソロアルバムとしてジョージの「不思議の壁」の世界リリース、立ち上げたApple Recordsの経営など。こうした中でリリースされたホワイト・アルバムは50年後の今も大きな話題となるほどの問題作であり、ロック・ミュージックとしての傑作なのだと思う。本ブログでも結果として3回も記載することになったのは、結局の所私自身も色々思うところのある大好きなアルバムであるということなのだ。

※参考文献
 THE BEATLES REMASTERED CD GUIDE(株式会社ミュージック・マガジン)
 THE BEATLES MATERIALS VOL.1(同上)
 ビートルズ・ストーリー’68(株式会社音楽出版社)

ザ・ビートルズ「ホワイト・アルバム」50周年記念エディションCDがようやく手元に

2018年11月17日 | ザ・ビートルズ
       
 11月16日付け北海道新聞夕刊の全国ランクの映画部門の第1位が「ボヘミアン・ラプソディ」だった。そして音楽アルバム部門の2位にビートルズの「ホワイト・アルバム」がランクされていた。Queenもビートルズもこれほど注目されていたのかと正直驚いた。そういえば50周年エディションはアマゾン・ジャパンでも一時「お取り寄せ」となっていたから、やはりたくさんの人が予約を入れていたのだろう。そして私の手元にもようやく届いた。9日全世界同時発売だったため、元々Tower Record on lineでは数日遅れで届くことになっていたが、結局手にしたのは1週間後になってしまった。
       
 私が購入したのはCDの3枚組である。ジャケットはエンボス加工を施したデジパック仕様。コラージュ・ポスターのミニチュアが封入されているが4人のポートレートはブックレットに印刷されているのみ。早速CD1を聞く。ノイズが無くとても澄んだ、かつ迫力あるサウンドだ。まるで目の前にビートルズがいるかのよう。今まで気がつかなかった細かい音を新たに発見できそうな気がした。今回もリミックスを担当したジャイルズ・マーティンは「『ホワイト・アルバム』のリミックスで楽器やリズムの定位を変えたか」という質問に答えて「かなりオリジナルと違う。私がベストだと思うポイント、心地よいと思うポイントに定位させている。センターにドラムスやベースを置き、ヴォーカルもセンターのケースが多い。」とインタビューで答えたそうだ(mora11月9日付け記事)。個人的にはその定位感の確認が楽しみだったのだが、オリジナルがどのようになっていたかよく覚えていなかったのであまり意味はなかった(笑)。しかしニューアルバムを聴くような新鮮な感覚でCD2まで通して聴くことができた。

 3枚目のCDは“イーシャー・デモ”である。ビートルズはインド旅行時に各自が書いた曲をスタジオ入りする前にジョージの家に持ち寄ってデモテープ作りを行ったそうだが、そのデモ演奏27曲が収録されている。この時点で後の完成版と変わらずと言って良いほど仕上がっていることに驚く。そして曲はアコースティック・ギター中心に演奏されているが、Everybody’s Got Something To Hide…のように,まるで別のバンドがビートルズの曲をアコギでカバーしているのかと思わせるほどグルーブ感のあるデモもあり、非常に楽しめた。

 前作から1年を待って発表されたビートルズの新作は50年前の今月22日にリリースされた。「50年後の追っかけビートルズ」の取組としては、今回はこのようなスペシャル・エディションが登場したのでイレギュラーな状況となったが、改めて同日にアナログ盤を聴く予定である。


「ザ・ビートルズ/ホワイト・アルバム」50周年を前に

2018年10月13日 | ザ・ビートルズ
 来月のリリース50周年を前にホワイト・アルバムの話題が賑わいを見せている。ひとつはCD6枚とブルー・レイがセットされたスーパーデラックス・エディションが11月8日に発売されること。
      
 私としては本アルバムに関してサラウンド・ミックスが出るとは予想していなかった。前回のサージェント・ペッパーほど5.1chに向いているサウンドとは思えなかったからである。しかし、前作のMagical Mystery Tourから約1年を経て制作されたこのアルバムは、トータル感には欠けるが様々なタイプの曲が網羅され、聞き所満載である。中にはRevolution#9のようなサウンド・コラージュもある。そう考えると、どのように立体音楽化が図られているのか、やはり興味がわいてくる。新たなブックレットも加わりぜひ入手したいと思ったのだが、相変わらず価格が手強い。サージェントのサラウンド・ミックスを含むスーパーデラックス・エディションも結局購入できずにいるので、今回もニュー・ステレオ・ミックス+アルバム制作を前にメンバー4人が集まって録音された通称“イーシャー・デモ”が収録されたCD3枚組の方を注文したに留まる。もちろん、これはこれでとても楽しみだ。
 
 さて、もうひとつの注目はシンコー・ミュージックMOOKより発行される「50年目に聴き直す『ホワイト・アルバム』深掘り鑑賞ガイド」。本アルバムを様々に検証し、新たな楽しみ方を模索するという内容とのこと。「コード進行&構成解説」という項目もあり、楽器を演奏する立場としてはなかなか面白そうだと思った。表紙も購入欲をそそる渋さだ。
       
 この他にも「ロッキンオン11月号」もホワイト・アルバムの特集をしているようで、来月の50周年に向けてホワイト・アルバムは静かに盛り上がりを見せている。本ブログ恒例の「50年遅れの追っかけビートルズ」では、50年前の本国リリース日である来月22日にアナログ盤に針を落とす予定である。


50年後のザ・ビートルズ追体験〜11月27日は「マジカル・ミステリー・ツアー」Magical Mystery Tour

2017年11月27日 | ザ・ビートルズ
  50年後の追っかけビートルズ、今回は1967年11月27日に発売されたMagical Mystery Tourである。
     
 いつもの参考書THE BEATLES MATERIALS(レコード・コレクターズ増刊、和久井光司・著)によると、アメリカ滞在中にポールが得たアイデアを元に企画されたのが、何かが起きることを期待しながらバスの旅に出るというストーリーの映画であった。結局「事件」は何も起きず、映画自体は不評に終わるのだが、音楽の方は素晴らしくアルバムは翌68年1月以降8週間トップの座に輝いた。アルバム用の曲は6曲のみだったため、英パーロフォンは2枚組のEP盤でのリリースを予定したが、米キャピトルはLP盤を熱望し、B面に67年のシングル曲をまとめたアメリカ編集盤として11月27日に発売した。EP盤は12月8日に発売となったが、日本でリリースされたのは翌年の3月で、LPは何と1年後の12月になってからである。

 私が初めて聞いたのはLP盤の方である。新曲の中ではタイトル曲が一番好きだ。シンプルなコード進行の中にツアーが始まるわくわく感が込められており、エンディングのサントラ風効果音も良い。インストのFlyingは浮遊感あふれる曲で耳に残るし、さらにYour Mother Should Knowはメロディーが良い。だが何と言ってもB面に並ぶHello Goodbye, Penny Lane, All You Need Is Loveなどがいかにもビートルズらしい名曲であるし、Strawberry Fields Foreverはレコーディング上難産の曲として有名。特にHello Goodbyeは曲のセンス、歌詞の面白さに当時のビートルズの勢いが感じられて、映像版も全く見る機会がなかった私にとっては、このキャピトル・ヴァージョンがアルバム「マジカル・ミステリー・ツアー」なのである。

 アルバムとしてはブックレットが付属し、また当時の流行を表したと思われるサイケデリックなファッションも加わり、クリスマスに向けた豪華さが感じられる。手元には昔持っていたはずの国内盤LPはすでになく、今所有するのはフォーエバー帯盤、モノ・ボックスLP、そして国内オデオン盤のEPである。モノ・ボックスはアメリカ仕様のジャケットが重くて、唯一のモノラル盤。EPについてはこちらで触れたが、この記事からいつのまにか3年以上も経ったことに驚いてしまった。

 さて、次回の追いかけは1年後まで待たねばならない。68年11月22日発売のThe Beatles(ホワイト・アルバム)である。

50年後のザ・ビートルズ追体験〜6月1日は「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」

2017年06月01日 | ザ・ビートルズ
 50年前の1967年6月1日、本アルバムが発表された。ビートルズとしては8枚目のオリジナルアルバムであると同時に、その後のロック・ミュージック界に大きな影響を与えた重要作でもある。その特色として北海道新聞5月24日夕刊記事では、「コンセプトアルバムの先駆けで、最初のタイトル曲から最後のA DAY IN THE LIFEまでを一つの物語として完結させている…」、「当時としては異例の約5ヶ月間をかけ録音、音を何重にも重ねたり効果音を多用、インド音楽を組み合わせた実験的なサウンド…」と紹介。さらに、「レコード・コレクターズ増刊THE BEATLES MATERIAL」によると、「切り抜きのオマケや専用の内袋が封入されていたことに加え、ジャケットの裏側に全ての曲の歌詞が印刷されたことも楽譜販売の関係から大英断の行為であった。そして全世界で同一内容とジャケットで発売することになったのも大きな変化である。アルバムをトータルな作品として認めさせたのだ。これがきっかけでロック・アーティストという概念が広がっていったのである。」これらは今では当然のことに思われるだろうが、だからこそ音楽産業の歴史の一つをビートルズはつくったとも言えるだろう。そういえば、シングルカットした曲が一つもないこともトータル・アルバムとしての存在を誇示しているようだ。

 さて、私は単純にこのアルバムが好きだ。何と言っても曲が良い。当初は本当にライブ録音だと思っていた1曲目タイトル曲から2曲目WITH A HELP FROM MY FRIENDへの繋がり、不思議な感覚にさせるFIXING A HOLE、 ハープやストリングスが美しいSHE’S LEAVING HOME など、特にポールの書いた曲が気に入っているが、どの曲も思い出深い。ビートルズを知り始めた頃、ラジオからカセットテープに録音したこれらの曲を何度も何度も聴いたものだ。

 手元にあるレコードはいつのまにか5種類も。50年後の追いかけなので、LP盤で聴くのが鉄則。今回はモノラル盤とステレオ盤の両方に針を落とす。両者でミックスされた「音」が違っているからだ。中学生の頃私が最初に買ったのがステレオのスペイン盤。国内盤ではなく輸入盤に目が行ったのはなぜなのか、全然覚えていないのだが(こちらで紹介済み)、長らくこれが愛聴盤となった。
     
     
     

 このアルバムについて何か書こうとしたら、なかなか言葉が見つからない。今日はじっくり聴くことだけに専念しよう。

 50年後の追っかけビートルズ、次は11月27日のMagical Mystery Tourである。

ザ・ビートルズ「サージェント・ペパー」の2017ニュー・ステレオ・ミックス盤

2017年05月29日 | ザ・ビートルズ
 「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」発売50周年を目前にした今日、注文していたリミックス盤が到着した。一聴しただけだが、このニュー・ミックス盤は特筆すべき出来である。

 私が購入したのは2CD ANNIVERSARY EDITION。ボックスの中にブックレイトと2枚のCDが紙ジャケットに収められている。組み立てのオマケもミニヴァージョンで付属している。CDは1枚が本編のリミックス(ニュー・ステレオ・ミックス)で2枚目はリハーサルの音源がアルバムの曲順に収録されているのに加え、「ストロベリー・フィールズ」の2015年ミックスと「ペニー・レイン」のニューミックスが収められている。

 本編のニュー・ステレオ・ミックスに向けて、ジャイルス・マーティンは限られた素材に対しとても丁寧に処理をしたのだろう。かつてYellow Submarine Songtrack でのリミックスを聴いた経験はあったが、サージェント・ペパー・アルバムにおいて左右のバランスが良く、そしてヴォーカルが自然に中央から聞こえてくるなんて感動ものである。また、ベースやドラムのリズム・セクションもくっきりかつ安定したサウンドだ。どの曲も今の時代のバンドCDを聴くような仕上がりに思える。さらに聞き込むと音的に今まで気がつかなかった新しい発見があるかもしれない。

 モノ盤とステレオ盤において大きな違いが聞かれたタイトル曲のリプライズの素材は、モノラル・ヴァージョンの方を採用しているようだ。SHE'S LEAVING HOMEのテンポもモノラルの方だろう。つまり今回の50周年アルバムはオリジナル・モノラル盤がステレオ化された全く新しい作品であるとも言える。LOVEでのリミックスによるビートルズ・ナンバーを聴いた時の驚きと同様の感覚である。何度も聴いてきた本アルバムだが、当分の間ヘビー・ローティションとなりそうだ。

 そして、来る6月1日がいよいよ「サージェント・ペパー」の50周年である。