goo blog サービス終了のお知らせ 

ヒロヒコの "My Treasure Box"

宅録、DAW、ギター、プログレ、ビートルズ、映画音楽など趣味の四方山話

キング・クリムゾン札幌公演(12月2日) at 札幌文化芸術劇場 hitaruレポート

2018年12月04日 | プログレ
※注:クリムゾン札幌公演のセットリストについて言及していますので、そのことに触れたくない方は読まないようお願いいたします。

 キング・クリムゾンは私にロック・ミュージックへの道を開かせてくれたグループとして思い出深い。しかし、正直言うと80年代クリムゾンのBeatの頃から興味が失せてしまった。従って最近の再始動にもさほど関心を抱くことはなかった。だが、2015年のRadical Action 3CDs & 1Blu-Rayと2017年のLIVE IN CHICAGO 2CDsは手元にある。それは最近のライブで彼らが初期の楽曲を演奏しているからだ。何と言っても初期のアルバム「宮殿」から「アイランズ」までが私は好きなのだ。特に3枚目の「リザード」が最高に気に入ってる。そしてLIVE IN CHICAGOでは「サーカス」や「リザード組曲」が収録されている。そのような時に、結成50周年のクリムゾンが札幌に来る、それもこの10月に新たにオープンした札幌文化芸術劇場hitaruで行われるというニュースが。これは行くしかない。高額な入場料ではあったがチケットを購入し、12月2日を楽しみにしていた。

     
 まずhitaruについて。複合的施設札幌市民交流プラザの一つであるこの芸術劇場は4階に入り口がありエスカレーターか階段で上がる。こけら落とし公演はオペラ「アイーダ」で、クラシックの演目を多く開催しているようだが、ゴスペラーズや玉置浩二のコンサートなどポピュラーの公演も行われている。会場の造りも北海道初の他面舞台劇場とされ、来年にはレ・ミゼラブルの上演も予定されている。その中本格的なロック・ライブはクリムゾンが最初のようである。私は価格の安い2階席の横側だったが、前方にせり出しているので距離的にはステージに近く、バンド全体の動きを座りながらじっくり見ることができた。

     
 ステージ前列にはドラムが3人分セットされている。トリプルドラムがどのような事態になるのか、Radical Actionで画面を通して見てはいたのだが改めて目の当たりにした。パートを分けたりやフィルインを順番に回すなどの場面も見応えがあったが、3人が同時演奏する時が大迫力であった。前方にあるから他の楽器が聞こえないほど。当たり前だが息もピッタリ。ドラマーの動きに注目せざるを得ないので後方のメンバーもついかすむ。CDではよくわからなかった3人ドラマーの意義はライブバンドとしての活動の中で大きく生きていることがわかった。(Porcupine Treeのドラマーでもあったギャビン・ハリスンが、私の方に近い位置にいたのが密かに嬉しかった。実はCDを何枚か持っている。)フリップ氏は往年の座った姿勢をほとんど崩さず、とても大きなラック1台分のエフェクターを前に黙々と弾き続ける。キャメル以来2度目のご対面となるメル・コリンズのフルート&サックスの演奏も相変わらず凄い。そしてセットリストは初期の作品もたくさん聴かせてくれた。特に「宮殿」からは4曲。メロトロンを模したキーボード・サウンドがアルバムを重厚に再現する。だが、期待していた「リザード」からの曲はなかった。「ポセイドン」や「アイランズ」からも1曲のみ。これは残念だった。残念ついでに言うと、2階席は音が悪かった。前列のトリプル・ドラムの音が先に来て、後列の楽器の音が聞こえづらい。隣の席の方も楽器の音、あまりきれいに聞こえてきませんよね、と言っていたほどである。PAスピーカーの向きが関係しているのだろうか、中央の席ではどうだったのか?だが、終演後階下に降りる列の中で、感動した、来て良かった、と話している人達がたくさんいたし、インスタグラムの投稿でも、音も最高で素晴らしかったという声が多数上がっていたので、やはり場所の問題だったのか、加えて高齢化した私の耳の問題だったのかもしれない。

 クリムゾンの来札は実は2回目のはずである。80年代クリムゾンのメンバーで確か84年くらいに来ている。たまたま私は東京に遊びに行っていて神奈川でのライブを見に行った。その時には古い曲は「レッド」と「太陽と戦慄Pt.2」くらいで、「21世紀の…」はぜひ聞きたかったと思ったものだが、その気持ちは今回のアンコールで解消された。リザードの曲は初日の東京では演奏されたそうだから多少の残念さはあったものの、全体的にはプログレッシブ・ロックバンドとしての「迫力」と「叙情」に満ちた希有で思い出に残るライブだったと言えよう。

 なお、この公演の模様をインスタグラムに投稿したらドラムのパット・マステロット氏より「いいね」を頂いた。たくさんの人が同じ状況にあるようで、マステロットの気さくさに触れクリムゾンがより身近になった気がした。

<関連記事> LIVE IN CHICAGO / KING CRIMSON

LIVE IN CHICAGO / KING CRIMSON「ライヴ・イン・シカゴ 2017年6月28日」キング・クリムゾン

2018年06月27日 | プログレ
     
 本作は昨年10月リリースの2枚組ライブアルバム。次から次へとライブ盤がリリースされるクリムゾンだが、私がこれを購入したのはアルバム「リザード」からの曲が演奏されているからである。ここで述べたように私はリザードが大好きであったが、どうもロバート・フリップ氏はこのアルバムに良い印象はなかったようで、私の知る範囲ではベスト盤に曲が選ばれたりライブで演奏されることもなかった。ところが、2016年からセットリストに入るようになり、その音源を聴くことでできるのがこのアルバムなのである。CIRCUSとTHE LIZARD SUITEが演奏されており、後者は「夜明けの歌」〜「戦場のガラスの涙」〜「ルーパート王子の嘆き」をメドレーで聴くことができる。「サーカス」ではアコギのパートが聴かれ(だれが弾いているのか?)るなど、オリジナルのアレンジの再現が図られており、それは組曲の方も同じでなかなか楽しむことができた。リザードの録音に参加したメル・コリンズがここで演奏しているのもプラスの要素だ。また、4作目のタイトルトラックである叙情的な名曲Islandsもまさかの演奏だ。こうした選曲はキーボード奏者Bill Rieflinがバンドに加わった(復帰した)ことから可能になったのかもしれない。だがメロトロン・サウンドの洪水だったファーストアルバムからは1曲のみで、エピタフや宮殿は披露(収録?)されていないのはやはり残念。
     
 ところで、クリムゾンは今年で結成50周年となるそうだ。そのクリムゾンが8人編成のまま今年来日する。そして嬉しいことに札幌公演も予定されている。この10月に新しくオープンする「札幌文化芸術劇場hitaru」が会場だ。こけら落とし公演のオペラ「アイーダ」は即完売で、当分行く機会もないかなと思っていたら何とクリムゾンのライブで実現することになった。札幌は12月2日。ライブも楽しみ(私にとって80年代ディシプリン期の来日公演以来2回目)だが、この会場もとても楽しみである。

アンソニー・フィリップス/ギース・アンド・ザ・ゴースト(2CD+DVD) THE GEESE AND THE GHOST (DEFINITIVE EDITION)

2018年06月03日 | プログレ
     
 HOCUS POCUS BOX とほぼ同時に購入したのがこちらの3枚組ボックス・セット。ジェネシスの初代ギタリスト、アンソニー・フィリップスが77年に発表したファースト・ソロアルバムである。5.1サラウンドDVDを含むこの3枚組は随分前に発売されていたが、高価だったため買うのを躊躇していた。最近価格が下がり、また貯まったポイントを使うことでようやく手に入れた。

 レコードの方は学生時代に買っていた。店頭で見つけて、この叙情的で牧歌的な、かつ幻想的なジャケットに魅了されてしまった。米国盤のカット版(ジャケットの一部が切り取られているため少し安価で売られている)ではあったが躊躇なく購入。そして針を落とすと、まさにジャケットどおりのサウンド、楽曲が流れてきて感動したのを覚えている。2曲目のフィル・コリンズが歌う Which Way the Wind Blows の美しさ、想像力をかき立てる組曲の構成、マイク・ラザフォードとの12弦ギター・サウンド。もう言うことなし、であった。フルートやオーボエなどの楽器を効果的に導入していることや、特に12弦ギターに関しては、その後の自分の音楽作りにも大きな影響を受けた。
     
 サラウンド・ミックスについては、例えばフィルのヴォーカルが頭の上から聞こえてくるような立体サウンドを巧みに作り上げている感じだ。全体的に中々楽しめた。CD2はデモヴァージョン、ベーシック・トラックが網羅されている。例えば Which Way the Wind Blows はカラオケのように聞くこともできるだろうが、2本のギターのローポジションとハイポジションの音の置き方をしっかり聞くことができる。最後の方には、73年録音で未リリースの Silver Song、Only Your Love という2曲が収録されている。前者はジェネシスの前ドラマーであるジョン・シルバーがバンドを去る時の惜別の歌で、後者はシングルのB面用に共にマイク・ラザフォードとフィル・コリンズとの3人で録音されている。ポップで軽快な良曲だが、考えてみればジェネシスにフィルが加入した時にはアンソニーは脱退していたから、ジェネシスとしてこのメンバーが揃うことはなかった。そう考えると面白く聴くことができた。

 この後数多くの作品を発表したアンソニーであるが、私は続く2枚目と3枚目をLPで購入したのみ。3枚目の SIDES はかなりポップなサウンドになっていったのでこの1枚目はなおさら印象深いアルバムだ。その後の作品にも良作がたくさんあるという。機会があればぜひ聴いてみたい。

フォーカスのCDボックス・セット: HOCUS POCUS BOX 13枚組

2018年05月31日 | プログレ
久々にCDのボックス・セットを2種購入。その一つめはオランダのバンド「フォーカス」のHOCUS POCUS BOX。これは随分前から目を付けていたのだが、5000円を切る価格でベストを含む13枚のアルバムが網羅されている。
     

 フォーカスに関しては傑作のセカンド・アルバムMOVING WAVESを中心とした記事を過去に載せている(こちら)。それだけ思い入れの深いバンドであるが、私は彼らが70年代に残したアルバムしか聴いていなかった。その後、今世紀に入ってからトリビュート・バンドがきっかけで結成された新生フォーカスは全く知らない。Focus8からX(10)まで3枚リリースされているそうだが、改めてそれを聴いてみたいという気持ちもあった。そうした理由でこの格安ボックスを購入した。

 付属の英文ブックレットはバンドの歴史を大まかに述べている。中で、メンバーの交代に関する記述が興味深かった。まず、セカンド・アルバムMOVING WAVES時のベーシスト、シリル・ハーヴァーマンスは自分の演奏に全く自信が持てなかったらしい。他のメンバーのようなジャズ・クラシック的素養がなかったからだ。さらにギタリストのヤン・アッカーマンがベースのパートをほとんど弾くことができ、屈辱的な気分になった彼はバンドを去ったという。同じように、5枚目のアルバムHAMBURGER CONCERTで加入したドラムスのコリン・アレンも、バンドに合わないという理由でこの1枚だけで突然解雇された。ロック的なドラミングで結構私は好きだったのだが、今更ながらそんな事情を知った。

 さて、肝心の後期のアルバムであるが、唯一のオリジナ・ルメンバー、タイス・ファン・レアーが相変わらずの独特な歌唱を披露したり、テクニシャンの若手のメンバーが昔の名曲のフレーズを奏でたりと中々面白く聴けた。メロディアスな良い曲もあるので、これから聞き込むとさらにその良さがわかるかもしれない。

 言うまでもなく、70年代の作品はやはり素晴らしい!ちなみに一番お気に入りの曲は、Ship of Memories 収録のFocus Vである。そして、CDで持っていなかったMOTHER FOCUSを入手したことが一番嬉しい私である。

アナログ・コレクション: 帯付き国内アナログ盤アトール「夢魔」 ATOLL / L’ARAIGNEE-MAL

2018年02月24日 | プログレ
 以前にも日本のレコードやCD、本には帯がついていることに触れた。とりわけ海外アーティストによるレコードの国内盤「帯」は、日本人向けに作品の内容を一言で語る重要な役目を担っていると思われる。そこで、我が家の棚にある帯付き海外アーティストのLPを「ひとつかみ」紹介しようと思う。

 本日はフランスのロックグループ、アトールAtollの「夢魔」である。ヨーロピアン・ロックコレクション第2弾の1作としてキングレコードから79年に発売された。本作はアトールのセカン・ドアルバムで特にB面収録の組曲「夢魔」が素晴らしい。私は最初にこの曲を聴いたのは、以前紹介したFM東京の深夜番組「スペース・フュージョン」だったのではないかと思うのだが、とにかくフランス産の真にプログレな曲とその演奏力にノックアウトされた記憶がある。当然このレコードはすぐに購入した。

 アトールはVo,G,B,Key,Dsの5人編成である。このアルバムでは他にヴァイオリン奏者が参加し、テクニックと安定性のある演奏にさらなる表現力が加わっている。だが、何と言っても全編フランス語による歌唱が曲の摩訶不思議な雰囲気にとても合っているのである。ちなみにATOLLは環礁(環状に形成される珊瑚礁)のことでARAIGNEE-MALは「悪の蜘蛛」の意味。ジャケットのイラストと連動している。帯の紹介文は「イエスを超えたというフランスのNo.1バンド、アトール。この一枚を聴かずしてユーロピアン・ロックは語れない」。キングレコード洋楽制作部にいた?解説のたかみひろし氏の言葉かと思うが、私はそれほどイエスとの関連性を感じておらず、独自の叙情性と力強さを併せ持つオリジナルなバンドだと思う。しかし、聴かずして…は本当にそのとおり。特に組曲「夢魔」の冒頭は何度も耳にしたい美しさだ。

 それにしても70年代の終わりはこのようなプログレ作品がたくさんリリースされていたことに改めて驚く。ジェネシスが初来日したのが78年の11月、そして79年にはU.K.やキャメルが来日したからまだまだプログレ全盛の時だったとは思うが、そろそろパンクも台頭してきた頃ではなかったか。いずれにしても私にとっては良き時代の良き思い出の一枚である。
 (B面の演奏が終わった直後に、曲の最後の部分が一瞬不自然に繰り返し入るのが不思議。これはプレスミスなのだろうか??)

プログレ今日の1枚: MILLIONTOWN / FROST*

2018年01月04日 | プログレ
 先月は仕事が忙しく、一度もブログの更新ができなかった。気がつくとすでに2018年を迎えている。皆様、今年もよろしくお願いいたします。

 さて、昨年を振り返るとマイブームである中古レコード収集は変わらずで、特にイエスのFRAGILE US盤はその迫力ある音圧が印象的だった。プログレ関係では新譜としてはBIG BIG TRAINがコンスタントにリリースしていたのと、大御所KANSASのライブ盤が安定感ある演奏で素晴らしかった。その中で一番のお気に入りはSTEVEN WILSONで最新作のTO THE BONEは今もヘビー・ローテーションである。他に注目したのはビートルズのSGT.PEPPERのリミックスとビル・エヴァンスの未発表音源が2枚のアルバムとして発表されたことか。音楽的にはそれなりに楽しめた1年であった。

 そして新年第一弾のご紹介は2006年発表FROST*のMILLIONTOWN。アマゾン・ミュージックや動画投稿サイトを見ているとたくさんの未知のバンドに触れることができるが時々目(耳)を引くものに遭遇する。FROST*もそのひとつで、特にこのファースト・アルバムは曲がとても良い。各楽器の高度でスリリングな演奏に加えてメロディの叙情性が随所に現れ、これぞプログレという実感が持てる。アマゾンのレビューが高評価なのも頷ける。10年以上前にリリースされていたとは全く知らなかった。メンバーのジョン・ミッチェルは現在IT BITESでも活躍しているギタリストで、芸達者な人はバンドを掛け持ちながらも才能を発揮するものなのだと感心する。

 バンドはその後エレポップ風のサウンドに変化したそうだが、16年に発表されたFALLING SATELLITESの2曲目NUMBERSは80年クリムゾン風サウンドにポップさが加味されたノリノリの好曲である。アマゾンのプライム・ミュージックで聴くことができる。


思い出のプログレ・アルバム#11 ピンク・フロイド「狂気」 The Dark Side OF The Moon / Pink Floyd

2017年11月30日 | プログレ
 73年にリリースされた時、即愛聴盤となったアルバムである。最終的なトータル作品となるまで、何度もライブで演奏され試行錯誤が繰り返されたと言われていた。それだけに完成度の高いアルバムだと思う。ダイアログの挿入、効果音、シンセサイザーのシークエンス、変速拍子、途切れのない曲間など様々な試みの他に、サックスやバックコーラスの導入によりアメリカ的なポップさも加味された。中でも「虚空のスキャット」のジャズ的かつ美しい旋律での叙情性は私の感性を直撃した。

    
 それにもかかわらずレコードを買い求めたことがなかった。従って本ブログの「思い出のプログレ・アルバム」では過去に紹介していない。当時、FM放送で全曲が流れ、カセットテープに録音し聞いていたのではないかと思う。もしくは友人から借りたかのかもしれない。つたない小遣いは私にとってクリムゾン関係が優先で、同時期にリリースされた「太陽と戦慄」の方を購入したのだ。その後も一枚は手元に置きたいと思いつつ、ようやくアナログ盤を入手したのは2011年の9月である。リマスターされた音源での復刻盤で、完備した付属品の他に新たにサイケ風に装飾されたプリズムのポスタ−と高音質MP3ファイルのダウンロード・コードがついていた。

    
 一方、CDの方は最初の紙ジャケ盤を購入していたが、これはA式の厚紙ジャケットで、この度新たにE式紙ジャケが発売となった。帯も含めて発売当時を可能な限り再現したという国内盤仕様を無視することができず、結局購入。(ついでに紙ジャケの厚さの違いを写真で。このようにE式仕様で再発売された紙ジャケCDはレッド・ツェッペリンやEL&Pにもあり、結構買わされました。)音源的にはSACDサラウンド版も持っているので今更との思いがあったが、到着して聞いてみると2011年リマスター音源を使用したとのことで、最初の紙ジャケ盤より少しばかり音圧が高い。低音の厚みもあり予想外に良い音だった。
    

 本アルバムは付属品が豪勢なのも特徴だ。復刻LPも紙ジャケCDもサイズ違いではあるがその辺は充実しており、新たな紙ジャケの方も写真のとおり。
    

 月の裏側、プリズム、七色の光、ピラミッド、音のコラージュ、笑い声、心臓音、時計の音、「月に暗闇はない、あるのは暗黒のみ」ダイアログ、ブラック・ミュージック、ジャズ、スキャット、ロック、叙情性、そしてヒプノシスのアートワーク。これらがこのアルバム対して思いつく言葉だ。トータル・コンセプト・アルバムとして、サウンド面をひとつにまとめたエンジニア、アラン・パーソンズの手腕も大きかったのだろうと思う。音源を手に入れたのは遅かったが、過去にこのアルバムとリアルタイムで接することができたことは大きな喜びである。

ライヴ・アット・ポンペイ/デビッド・ギルモア(ブルー・レイ盤)

2017年10月07日 | プログレ
 この新作は映像版で見るべきである。2016年7月7日と8日に世界遺産となっているローマ時代の石造りの歴史的建造物「ポンペイ円形闘技場」で行なわれたこのライヴは大スペクタクル映像作品である。新旧ピンク・フロイドナンバー、ギルモアのソロ作品がバランス良く選曲されていて、その演奏はとても安定している。その中で見られるステージ上の円形スクリーンでのバリライト、あるいは会場中に走る多色のレーザーなどの照明効果は、かつての新生ピンク・フロイドp.u.l.s.e.ステージを彷彿させながらも、石造りの歴史的建造物全体がイルミネーション化し、久しぶりに画面に釘付けとなってしまった。

 ふと見ると、一人のキーボード奏者はグレッグ・フリィンゲインズではないか!マイケル・ジャクソンやTOTOのサポートなどで超有名な彼がギルモアのライブステージに立っているとはとても意外だったが、フロイド往年の名曲も見事に演奏している。そしてギルモア本人も長年の愛器であるブラック・ストラトキャスターに加えて、スティール・ギター、55年製の見た目が年期の入ったフェンダー・エスクワィアー、ギブソンのアコギ、ナイロンギターなどを駆使し、往年のギターサウンドを奏でている。5.1chサラウンドとしては、ライヴらしい広がりのある空間処理をしていて、時々入るダイアログは完全にリア音声。

 今回バックコーラス3名のうち一人が男性で「虚空のスキャット」では今までにない男声スキャットが聞かれたのも斬新だ。圧巻は終盤のRUN LIKE HELLからTIME~COMFORTABLY NUMBで、ここで会場が一体化した光の演出には「狂気(喜)」すること間違いなし。

 ピンク・フロイドとして同じ場所で演奏したのが45年前。今回このような歴史的遺産の中で聴衆を集めライヴを行うことには多くの課題があっただろうと思うが、この場所で新たな歴史を刻む見事な演奏となった。やはり、この新作は映像版で見るべきである。

スティーヴン・ウィルソン新作 “To The Bone” ブルーレイ盤

2017年08月30日 | プログレ

 スティーヴン・ウィルソンの5枚目のソロアルバム。本ブルー・レイ盤にはアルバムのハイレゾ96/24ステレオ・ミックス、同じく96/24ステレオのインストルメンタル・ミックス、そして5.1サラウンド・ミックス音源が収録されている。さらにビデオ素材としてはメイキングのドキュメンタリーとSong of I、PariahのPVを見ることができる。前作のブルーレイにあったmp3等ファイルのダウンロード・コードは今回は付属していない。
 さて、新作として11曲が収録されている。私は彼の全てのアルバムを聴いているわけではないが、今回もSWらしい曲が揃っていると思う。1曲目のTo The BoneからSW節全開で、後半のプログレ的な展開に早速のめり込むことができた。特に耳を引いたのはPermanatingで、とてもポップなアレンジの曲である。ビートルズ的な、いやビートルズの遺伝子を持つジェフ・リン的なサウンドでとても印象に残った。その他一度聴いただけで気に入った曲が多数あり、安心してSWワールドに没頭することができる。歌詞の内容を紐解きながら、繰り返し聴きたくなるアルバムだ。

 ドキュメンタリーでは録音の様子が記録されている。スタジオと思われる場所には楽器や、アンプ、エフェクターなどが山積みになっており、自ら楽器を弾く者にとっては興味を引かれるはずである。ドラマーのJeremy Staceyがスネヤ類が置かれている部屋を見て、とんでもないビンテージが揃っている!と驚く場面もあった。小綺麗なスタジオではなく、機材が散乱している普通の家のような場所でこのような作品が生まれたと思うと、とても不思議な感じがする。宅録をしている者にとっては励みになるのではないだろうか。

 なお、5.1サラウンドがブルーレイ購入の目的だったが、それほど派手な音の移動等は聞かれず、必要最低限の空間作りという印象である。まだ1度しか聴いていないので今後新たな発見があるかもしれない。

<追記>
 CDの方も購入し、さらに何度も聴いた。最初は気がつかなかったが、ハーモニカの音が随所“攻撃的”な音処理で入っており、このアルバムの特色のひとつであろう。ロック調だが想定外のコード進行がプログレする People Who Eat Darkness, 静かで美しい Detonation, ミサのような合唱が効果的な Song of Unborn などは頭から離れなくなった。それ以外の曲も含め、全曲が素晴らしい。完全にヘビーローテーションになっている。

アナログ・コレクション: エマーソン・レイク&パーマ−4枚のアルバム

2017年07月14日 | プログレ

 暑い!北海道では10日間連続真夏日という20年ぶりの暑さとのこと。札幌も今日は33度ほどあったそうで真夏日を記録した。大通公園のビアガーデンは来週開園だから、ちと早い真夏の到来である。そんな中夏になると思い出すことがある。エマーソン・レイク&パーマーの初来日が1972年の7月、ちょうどこの時期で、それに伴って来日記念盤として発売された4枚目のアルバム「トリロジー」を愛聴していたことである。あの頃も暑い夏だった。記憶が定かではないが、それまでに「タルカス」や「展覧会の絵」は聴いていたはずだ。だが、初めて買ったEL&Pのレコードは「トリロジー」だった。(詳しくはここで。)その後「タルカス」も購入したが、好きなバンドであったにもかかわらず、なぜか揃えたのはその2枚のみ。

 そしてこの度、狸小路(たぬきこうじ)にあるFresh Airさんの店頭ワゴンセールにて、ファースト・アルバムと「展覧会の絵」を見つけ購入した。どちらも国内初回盤(さらに「展覧会」の方は帯付き)で、記憶が40数年前にタイムスリップ。多少汚れがあるが許容範囲のジャケットを見て、そうそう、こんな作りをしていた!などの思いが蘇る。そして針を落としてみると盤の音質はなかなか良い。特にファーストの方は1曲目「未開人」から厚く重たいサウンドが聞かれる。2枚とも音飛びやノイズもなくアナログサウンドを十分楽しむことができた。

 すでに3人中2名が鬼籍に入ってしまったことが信じられない自分だが、リアルタイムを共に生きたことに感謝しつつ、あとは「恐怖の頭脳改革」がそろえば私としてはひと段落である。その彼らの5枚目は超ビッグになったELP待望のアルバムで、リリースされた時には楽曲の素晴らしさ(=良さ)もあり爆発的に受け入れられたものだった。実はワゴンセールにてその国内盤もあったのだが、買わなかった。ここまで来たらぜひ帯付きを探し求めたいと思ったのである。

アナログ・コレクション:プライベート盤LPジェネシス …live・from the mouth of the monster…(2枚組)

2017年05月11日 | プログレ
 ジェネシスのフィル・コリンズ・ヴォイス時代ブートレグ盤として紹介したい次のアルバムがこれ。録音が1978年10月のシカゴで、翌年初来日した彼らの「そして3人が残ったツアー」の模様を聴くことができる。つまりツアー・ギタリストのダリル・スターマーが初めて加わった演奏と曲目として、日本公演と重なる内容なのだ。音質もサウンドボード録音で良い。日本公演で演奏されなかったDANCING WITH THE MOONLIT KNIGHTなどもここではプレイされており、大変聴き応えのあるアルバムだ。

 記憶がはっきりしないのだが、恐らく来日公演に行った後で購入したと思う。その頃にはジェネシスのコピー・バンドもやっていたので、このアルバムをメンバーに貸してコピーの参考にした。特にRipplesなどは2台の12弦ギターの重なり方を解読するのに大いに役立ったものである。当時、何度も繰り返し聴いた貴重な音源である。(後の94年にこの公演の全曲版CDがイタリアのレーベルから出ている。)

アナログ・コレクション:プライベート盤LPジェネシス WHITE MOUNTAIN U.K. TOUR 1976

2017年05月07日 | プログレ
  

 ジェネシスのフィル・コリンズ・ヴォイス時代のブートレグ盤として名作なのはまずこの一枚。1976年のA TRICK OF THE TAIL ツアーとして、ドラムスにビル・ブルフォードが参加した時期のもの(公演場所・日付等詳細の記載なし)。これを購入した当時はオフィシャルのライブ・アルバムSECONDS OUTがリリースされていたが、ブルフォードの演奏は1曲のみの収録であった。そのため店頭でこれを見つけた時には即購入。サウンドボード録音のため音質も良く、また演奏が素晴らしい。特に初期のアルバムTRESPASSに収録されていたWHITE MOUNTAINが取り上げられていて、この曲の良さを再評価することになった。さらにクレジットにはないがFLY ON A WINDSHIELDが歌詞なしのツインドラムスで演奏されているのも感動的だった。
  
 A面B面びっしりと収録されているがLP1枚では全曲をまかないきれないだろう。そのため後に同じ日の音源のCD盤を探したが、「恐らく」これと思われるのが、ロンドンのハマースミス・オデオン、1976年7月10日録音盤。全13曲が収録されている。

アナログ・コレクション:プライベート盤LPジェネシス AWED MAN OUT-THE 1975 BRITISH TOUR

2017年04月29日 | プログレ
  
 ジェネシスの「幻惑のブロードウェイ」ツアー・ライブ音源の決定版はこれだと思う(Wembley Arena, London, UK, April 15 1975)。英国BBCの放送が元になっているのだが、演奏が素晴らしい。ゲイブリエルの歌唱もとても迫力があり耳に残る。全曲収録となっていないのが残念であるが、...EMPTY BOATSのようにとてもマイナーな曲を聞くことができ、私はこれをきっかけにこの曲が好きになった。このブートレグ盤も学生時代に西新宿で買い求めたものだが、後年確かNHK-FMでも放送したことがあり、その時はWATCHER OF THE SKIESが含まれていた。(エアー・チェックしたカセット・テープが残っている。)なお、同じライブを客席から録音したと思われる音源がこちらにアップされている。
※関連記事にどうぞ



アナログ・コレクション:プライベート盤LPジェネシス THE BEDSIDE YELLOW FORM (1974 CANADA LIVE)

2017年04月09日 | プログレ
  
 ジェネシスのブートレッグ盤はCDでは何枚か持っているし、今は動画サイトでもたくさんのパフォーマンスが公開されている。良い時代になったものだ。しかし、70年代の頃はこのようなプライベート盤だけが頼みの綱で、西新宿にひっそりある専門店に時々顔を出したものだった。ジェネシスではGNESIS LIVEというオフィシャル盤がリリースされていたが、そこに収録されていなかったアルバム「月影の騎士」の曲やSUPPER'S READYのライブ演奏を聴きたくてこの盤を購入したと思う。改めて聞き直すと客席から録音した音の悪さが目立つが、演奏のみならず曲前のピーター・ゲイブリエルの語りを聞くことができ、とても貴重な一枚であった。すっかりジェネシス・ファンになっていた私は、その後の大作「幻惑のブロードウェイ」ライブのブートレッグ盤などを求めて、西新宿には頻繁に通うことになっていった。

アナログ・コレクション:プライベート盤LP:キング・クリムゾン「"UN REVE SANS CONSEQUENCE SPECIALE"〜1973アムステルダム・ライブ」

2017年03月25日 | プログレ
  
 時々手元にあるアナログ盤(レコード)をアトランダムかつ簡単に紹介しようと思う。まずは、ご存じ名演と言われているクリムゾン1973年のアムステルダム・ライブを収録した1枚。元は英国BBCで放送された音源と思われる。学生時代に久しく探し求めてようやく購入した念願の一枚でもある。後年、このパフォーマンスは「ザ・ナイトウォッチ」というアルバム・タイトルでオフィシャル・リリースされた。そのオリジナル音源はあまりにも音が良すぎて、私としてはこのブートレグ盤のうねりのある音質の方が圧倒的に迫力に満ちていると思う。