~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No32 今もまだ大企業・海外依存型の心もとない景気回復

2005年12月29日 | 景気
年の瀬に出た経済指標をチェックして並べてみます。管理人の勝手な判断により○はポジティブ結果、●はネガティブ寄りの結果、△は中立的な結果と捉えます。

○経済産業省12/28発表・・・11月の鉱工業生産動向(速報)によると、生産指数(2000年=100)は前月比1.4%上昇の103.5となり1991年5月の103.4を上回り過去最高を更新した。上昇は4カ月連続。

○厚生労働省12/27発表・・・11月の求職者1人あたりの求人の割合を示す有効求人倍率(季節調整値)は0.99倍で、前月比で0.01ポイント上昇した。0.99倍となったのは1992年10月以来、13年1カ月ぶり。

○日経(国内主要企業)社長100人アンケート12/27・・・
足元(10―12月)の業況が「良い」と答えた企業の割合が65.6%と、7―9月時点45.0%)から大幅に上昇。国内景気の拡大局面が今後1年以上続くと予測する経営者も8割超に達し、戦後最長だった「いざなぎ景気」を上回るとの見方が強まってきた。


○日本百貨店協会12/26・・・11月の全国百貨店売上高は前年同月比3.2%増で、3カ月連続で前年を上回った。3カ月連続プラスは96年以来、9年ぶり。


△総務省12/27・・・11月全国の消費者物価は、生鮮食品を除く総合指数(00年=100)が98.0となり前年同月比0.1%上昇。前年同月比プラスは03年10月以来2年1カ月ぶり。

△厚生労働省12/28発表・・・毎月勤労統計は、11月の従業員5人以上の所定内給与額(基本給)が前年同月比0.6%増の25万4473円となり、8カ月連続で増加。
基本給や賞与や手当などの合計である現金給与総額は前年同月比0.8%減の28万9423円で3カ月ぶりの減少。


●12/27総務省「家計調査報告」・・・勤労者世帯・実収入実質増加率・前年比▲1.4% 同じく消費支出実質増加率・前年比+0.9% 実際に支払った金額を示す名目では0.1%減少、可処分所得は実質1.4%減少した。

●日本チェーンストア協会12/26・・・11月の全国スーパー売上高(既存店ベース)は、前年同月比0.4%減の1兆1591億円となり、21カ月連続で前年実績を下回った。


●上記以外にもう一つ、経済産業省が28日朝発表した11月の商業販売統計速報というのがあります。上の百貨店やスーパーの数値と微妙に異なるので並べませんでしたが、百貨店が前年比プラス、スーパーが長期マイナスという事は同じで、コンビニもマイナス値です。
大型小売店全体で0.8%増ですが、(全ての)小売業販売額は前年同月比0.1%増にとどまっています。つまり、中小零細規模の小売業がかなりのマイナスということが推測できます。


・・・

バラバラのデータ報道もこのように並べてみると全体の最新マクロ状況が掴めてくるようです。

<企業状況>
輸出関連を中心とした大企業の業績は好調、今後も明るい見通しを立てている一方、内需と思われる中小零細企業は相変わらず厳しい状況だということが窺えます。
頼みの輸出は米国はじめ諸外国の景気状況に大きく左右されるわけですが、実需的には今もまだやはり大企業依存型・海外依存型の心もとない景気回復であることは否めません。

<消費状況>
嗜好品・高級品など一部の消費は動き出したが、庶民の日常品に対する節約志向は依然根強いと思われます。

人々のインフレ期待が膨らんでくるほど、デフレ用に抱え込んでいた現金が投資や消費に回ってきます。しかし「消費者物価指数」は私たちが日常購入する食料品、衣料品、電気製品、化粧品などの財の価格、家賃、電話代、授業料、理髪料などのようなサービスの価格の動きなどで、我々はこれらの供給はふんだんにあるように肌で感じています。

また、商品の激安情報は街やインターネットにあふれており、日常生活に特段のぜいたくを求めない大部分の市民にとっては安くて納得できるレベルのものがあれば充分で、需給がよほど逼迫しなければあえて高価格志向になる動機が乏しい状況です。

日銀による “デフレ脱却”尺度は消費者物価(CPI)を基準にしているわけですが、安い輸入品が簡単に手に入る以上、こだわりの少ない日用品物価はそう簡単にインフレにならないと考えられます。日銀の言うところの“デフレ脱却尺度”はどこかで見直しが必要になるかもしれません。ずっと基準にするといいつづけてきただけにマーケットとの信頼関係が心配ですが。

そんな物価をよそにして、株などの資産価値は大きく上昇してきました。不動産の上昇も都心から徐々に近郊へ波及しつつあります。これらの要因が余裕となり刺激になって消費が動いていくという構図のほうがまだ現実的ではないでしょうか。

これらの含み資産益は、基本的に生活資金以外の余裕資金ですから、大きな消費額増加はいわゆる勝ち組つまり“持てる者”の余裕のなせるワザということです。「グローバル大企業vs勤労者の70%を占める中小零細」の賃金格差や、都心⇔地方の景況感の格差が開いていることが気になります。しかしとにかく、当面はこの余裕資金が使える人たちの消費を頼りにせざるを得ません。

「貯蓄してから⇒消費・投資ヘ」ではなく、“まず消費ありき”という考え方でないと全体の大きな岩は動かないのではと、当ファイルNo28、29で書いたところですが、
現実的には含み資産を抱えたターゲットに全体を引っ張ってもらうのが手っ取り早いという側面もあります。

とくに団塊以上の世代は退職金や貯蓄で含み資産を多く抱えているといわれます。しかし彼らからすれば、年金制度問題の不安や子供に頼れない老後生活を考えて、いま贅沢をするわけにはいかないのだ!という言い分が聞こえてきそうです。

結局、日本国の抱える財政や福祉問題・社会構造問題といった根深い原因まで踏み込んで解決していかなければ本当の消費の岩は大きく動かないのかもしれません。そこまで考えると気の遠くなる話です。

次回、金融緩和の解除が消費主導型社会への転換の近道?という先日の日経の論説をブログへ引っ張ってきます。