~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No66 米国すでにプチ・スタグフレーションか? ・・世界経済の主役は欧州に

2007年05月05日 | グローバル経済
●4/28日経より・・『米、実質1.3%成長・1-3月期、景気減速続く』

米商務省が27日発表した1―3月期の米実質国内総生産(GDP)の速報値は、前期の昨年10―12月期に比べ年率換算で1.3%増となった。前期の2.5%を大幅に下回り、2003年1―3月期の1.2%以来、4年ぶりの低水準を記録した。住宅投資の減少が主因で、米景気の減速が一段と鮮明になった。

住宅投資は17.0%減で、6.四半期連続で減少した。輸出は1.2%減で、外需(輸出から輸入を差し引いた純輸出)も成長率を押し下げる要因になった。

個人消費は3.8%増となり、底堅い伸びを維持した。設備投資は2.四半期ぶりの増加に転じたものの、2.0%増にとどまった。

総合的な物価動向を示すGDPデフレーターはプラス4.0%。上昇率は前期の1.6%を上回り、1991年1―3月期の4.8%以来、16年ぶりの高水準を記録した。原油価格の再上昇などを背景に、インフレ圧力がなお強いことを裏付けた。



●5/1日経より・・・『主要通貨「1強2弱」鮮明に。ユーロ、ドルに並ぶ存在感』

外国為替市場でユーロ高・円安・ドル安という「1強2弱」の構図が鮮明になっている。景気拡大が続くユーロ圏で金利先高観が強い一方、米国では景気の先行き不透明感から利下げ観測がくすぶり、日本も利上げペースが緩やかとの見方が定着。ユーロに資金が集まっている。ユーロがドルに並ぶ存在感を示し始めたことで、円の相対的な地位低下が目立ってきた。

今年に入りユーロは円とドルに対し、ほぼ一本調子で上昇。対ドルでも一時、1ユーロ=1.3683ドルまで上昇し、最高値を更新した。


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ファイルNo64(2/18)で、米国景気後退リスクの高まりでドル安懸念と書いたわずか10日後、世界はドルの急落と同時株安を体験しました。

その後1ヶ月足らずで米を含む世界株価は反発、多くの国が同時株安前の水準を越えてきました。

しかし今回の一連の動きによって世界のマネーが不安な米国景気に大きく左右されることを図らずも証明してしまい、その後も米国から出てくる経済指標に一喜一憂する敏感な状態が続いていることに変わりはありません。

特に先月ファイルNo65で書いたように、直近の米住宅指標はバブル崩壊と言われ始めた頃よりも悪化、GDP全体を大幅に押し下げる主因となっています(上の記事)。

さらにもっと深刻な憂慮は、景気減速と同時に進んでいるインフレです。
総合的な物価を表す指標(GDPデフレター)は前期比+4%、雇用者の平均自給が4月は前年比+3.7%、ドル安による輸入物価の高振れ、原油や食物原料などの再高騰なども懸念されています。

米高官やエコノミスト達は、減速しているとはいえ底堅い雇用・個人消費・設備投資などプラス材料を取り上げて、米国景気の先行きを楽観視する発言をくりかえします。株価も3月期の企業好決算を受けて史上最高値更新中、これらが混乱する原因となります。

しかし物価の番人FRBといえば、インフレ進行や堅調な個人消費・株価などが材料なら利上げ発言してもいいはずなのに、住宅市場が悪い波及をもたらす懸念を優先して、ついに利下げをも意識させる微妙な声明を出すようになってきました。

これは、金利据え置きの現状が心地よいからではなく、利上げも利下げもできない金縛り状態に陥っているということを露呈しているのではないでしょうか。

つまり米国は、インフレvs景気悪化が同時進行する“プチ・スタグフレーション状態”へすでに突入していると言えるかもしれません。


順調な景気拡大と高金利が続くユーロ・英国・豪などは、最近のIMFいわく「米国景気減速の影響を余り受けない国々」とされ、むしろこれらの好調な国々が米国景気を支える役割を果たすという論調さえあります。

ユーロやポンド・豪ドルは人気のない米ドルに代わって世界マネーを集める主役になりつつあります。中東オイルマネーやロシア・中国などが稼いだ外貨をドル⇒ユーロへシフトする動きは当面止まりそうにありません。

根本的問題である米国経常赤字を解消し世界不均衡を是正するためにも、今後いっそうのドル安が容認されなければいけないという事情もあります。

これらを端的に言うと『世界景気を牽引した米国の後退と、それに代わるユーロ圏の台頭』というような一種のパワーシフトが起りつつあるといえます。


しかし日本に関してはカヤの外です。グローバル化の波をかぶっているため物価・賃金とも一向に上がらず、おかげで今だ唯一超低金利が続いていることで、円は世界から借りるために利用される通貨に成り下がっていますし、米国への輸出比率が高いため米国が景気後退した場合その影響をモロにかぶるでしょう。 いつまでも円安で輸出企業が助かるなどと喜んでいられないかもしれません。

また残念ながらユーロ圏のように、輸入で米国を支える消費力も持ち合わせていません。

皮肉なことに日本も別の意味で、利上げもできず(インフレにならない)利下げもできない(ゼロ%に近いから)金縛り状態にありますね。米国と逆で地価だけは上がっているようですが・・。  なにか笑えない冗談のような話しです。