~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No43 アメリカ経常赤字を、世界が穴埋めしなくなる時・・

2006年03月24日 | 景気
3/24日経 投資マネー、米流入に陰り/民間マネーの減速鮮明に・・・

外国人投資家の対米証券投資の勢いに陰りが見え始めた。1月の米国の株式、債券などの買越額は780億ドルにとどまり、2カ月連続で1000億ドルを大きく下回った。特に、民間マネーが国債投資で売り越しに転じるなど資金流入額が細っている。米経常赤字が拡大する中で、堅調なドル相場と低金利を支えてきた海外民間マネーの動向が米景気や金融市場を左右するカギとなっている。

1月の外国人投資家の対米証券投資の買越額は1000億ドルを超えた同10、11月と比べると伸び悩みが鮮明だ。


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このブログで何回も取り上げている米国経常赤字問題(ファイルではドルマネーバブルとも呼ぶ事もあります)。
特に貿易赤字は2001年に約4千億ドルだったものが現在8千億近くに膨らんでいます。

これは単純に言えば、米国人の消費や米国企業の設備投資が増加し、輸入が拡大したことに依るわけですが、一国の赤字額がうんぬんという問題ではなく全世界の経済のゆくえに関わってくる非常に重要な大問題であることはいくら強調してもきりがありません。

米国は貿易赤字を海外からの資本流入によって穴埋めしなくてはなりませんが、昨年は赤字を上回る規模の、海外からの投資資金が証券市場に流入しました・・赤字8千億に対し約1兆円規模。

特に中国からの投資に加え、昨年は中東オイルマネーが大量に流入したことは以前にも紹介しました。
また、2004年に流入投資全体の約半分を占めていた海外中央銀行などの公的マネーが05年一気に縮小した代わりに民間マネーが大幅に拡大しました。

その民間マネー流入の勢いがここにきて減速してきたというのが最新の日経記事です。

対米証券投資が減速するということは赤字のファイナンス(穴埋め)ができなくなることを意味し、つまり世界から米国金融市場にお金を充分供給できなくなるということです。

お金が世界から供給されなくなって困る代表的なものが「住宅ブーム」です。民間の社債への投資の多くがABS債という住宅ローンなどの資産を支える証券へ回っています。
つい先日も米新築住宅販売指標が大きく悪化したニュースがありましたが、これらのネガティブな情報が出るとますます海外マネーが細っていく危険があると推測します。

また、05年は米国FRBによる政策金利の利上げで生じた日欧など主要国との大きな金利差が、対米証券投資増加の大きな要因と見られていましたが、その利上げも打ち止めが近いという観測が強く、対米投資を鈍らせる原因となります。


米国ドルは世界の基軸通貨ということで、赤字のリスクは承知しながらもどこかで大丈夫だろうという楽観的な論調が多いのですが、IMF(国際通貨基金)はこのままの水準はいずれ維持不能になるという警告をすでに発しています。

世界からの高水準な投資が維持できなくなれば、結果的に米国市場金利上昇⇒個人消費や設備投資の減少⇒米国に深く関わる世界経済にダメージ・・・となる公算が強いと思われます。

米国の政治&経済の実質的“属国”である日本にとっては大きく景気に水を差すことになるでしょう。

日本では今は報道の扱いもそれほど大きくなく、国内景気の拡大ニュースばかりが目立つ昨今ですが、今後最大の落とし穴になるとしたらこれしかありません。

「アメリカ経常赤字の穴埋め額」推移から目を離さず、当分の間このブログでも注視していきたいと思います。