~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No60 景気は40代人口の数で決まるのか?

2006年11月22日 | 景気
日経11/8・・・「団塊ジュニア、サービス市場けん引」
 団塊ジュニア層の消費行動がサービス市場をけん引している。日本経済新聞社がまとめた2006年の「サービス業総合調査」によると、業種別の売上高伸び率は「結婚式場・手配」「保育サービス」などが上位に入った。人口の多い団塊ジュニア層が人生の節目を迎え、こうしたサービスの利用機会が増えたためとみられる。


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「人数の多い世代が一番多くお金を使う」というのは、団塊や団塊ジュニア世代をターゲットにした商品が多く開発されているように、実際のビジネスマーケティングでは当たり前のことですが、“アメリカでは45歳~49歳が最もお金を使う年代⇒この年代の人口が多くなる時に景気は上昇する”という説を米国の人口統計学者が90年代に唱えはじめ、実際に株価や景気の動きが10年以上その予測通りに動いたことで、今や欧米の投資家たちの間ではすっかりポピュラーな考え方となっているといわれています。

私がそれを知ったのはハリーSデントJrが3年前に著した「TheNextGreatBubbleBoom」の日本語版を読んだ今年のことです。同氏は03年の書で06年5月からの世界同時株安もピタリと言い当てていて、これは単純すぎる理論だけれどもあながち軽く見過ごせない予測方法だと思いました。

アナリストの木下晃伸氏はこの考えをベースにして、それを日本の場合に置き換えた本を出しましたが、それによると日本人の場合はいつの世も40~44歳が飛びぬけて消費額の多い世代と分析しています。

詳しい論拠は本に譲って飛ばしますが、事実として40代前半の人口が最も多かったのは80年代後半から91年まで(団塊世代)で、これから再び多くなっていくのは、団塊ジュニアが40歳台に近づいていく現在から2015年にかけてだということは人口動態を調べるとすぐ判ります。

80年代後半といえばまさにバブル景気に当たります。そして理屈通り30代前半の団塊ジュニアがこれから40代前半のピークに向って大盤振舞いしてくれるなら、その後はともかくとして今後10年近くは日本の景気は明るい雰囲気が期待できると言えるわけです。

一点気付くことは、この理屈はあくまで内需消費関連について語っているという点です。
現在の景気局面においては前ファイルでも詳述したように、外需頼みの張りボテ景気ですから、内需はまったくといっていいほど盛り上がっていません。

外需関連=グローバル大手上場企業が稼いだ外貨が日本国内に回ってくることを政府も日銀も期待していますが、既知のようにグローバル化による富の二極化が猛スピードで進んでいる現状では、グローバル大企業から国内の庶民の大部分に富が回ってきて消費が盛り上がるとは思えません。

しかし表題の日経記事にもあるように、最後の大きな人口層である団塊ジュニア世代がその年代ごとに必要な分野の消費をしていくのは間違いないと思われます。人口の少ない世代に比べて景気にインパクトを与える力は大きいはずです。

ジュニア層30代前半の現在でいうと、事実として婚姻数や出生数が“一時的に”増えていたり、上の記事のように結婚・保育などのサービス分野が現在比較的好調であることが裏付けと言えるし、今後のジュニア層30代後半時は持家・マンション購入など不動産関連そして住宅ローンを扱う金融が大きな恩恵を受けることになるでしょう。

その後の2010年代(ジュニア層40代)では教育関連サービスをはじめとした様々な分野の内需が最後の?盛り上がりを見せると予想できます。

一方海外諸国の人口統計を調べると面白いことがわかります。前述のように最も消費する40歳代後半にフォーカスすると・・
米国では09年に向けてその世代人口は戦後最大となりつつあります。英・独・仏・伊・豪でも国によって多少バラツキがあるものの2010~15年前後にむけて最大となります。つまり主要国は足並みを揃えた格好でいずれもMAXに向けて右肩上がりな現況というわけです。

これら主要先進国にとって、あと数年間は最大で(最後の!)景気拡大に期待を寄せる状況にあるといえます。日本にとっても、それまでは欧米への輸出など外部環境は良好な追い風が吹くはずです。

しかし主要国のその先の将来は・・・悲惨なものになるといわざるを得ません。総人口が減っていくだけでなく、最も景気にインパクトを与える40代が例外なく減少の一途をたどります。少子化対策では間に合いませんので、政府として消費力のある移民の積極的確保や勝ち組グローバル企業の国内誘致への取組がとても重要になってくるでしょう。

逆にインド・ブラジル・インドネシア・トルコあたりはその先数十年間が有望という人口動態です。しかし中国と韓国は先進国と似た人口動態なので、その意味では期待が持てないということになります。
もっともこういった新興国では、いつの世も40代が最も消費するというデータの裏付け自体がないため一概には比較にならないと考えます。個人的には新興国は欧米や日本とは違った消費の動き方であると感じます。


いずれにしても今後・・
各国の人口ピラミッドを眺めながら、投資やビジネスや自分の将来を決めていくという行動が、世界的規模でより一般化していくのではないかと予想できます。あわせて関連する“消費行動学”的な分析データが多く出てくると思われ、そのような数字に注目していくべきでしょう。

なぜならこういった一つの予測理論がポピュラーになるほど、人々の景気変動(株価変動)に対する期待の合意:コンセンサスが図られやすくなり、行動ファイナンスの結果として実際の各国景気を動かす要因になるかも知れないからです。その意味でも見過ごせないウォッチ・トレンドだと感じます。