~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No62 07年日本経済を冷静に予測してみると・・

2007年01月09日 | 景気
1/4日経・・・「産業景気はおおむね好調を維持」日本経済新聞社が3日まとめた主要30業種の産業天気図の2007年1―3月期予測は全体の3分の1にあたる10業種が「晴れ」となった。外食の景況感が悪化したが、その他の業種の景況感に変化はなかった。個人消費に依存する業種の多くは「曇り」にとどまり、景気の改善傾向はやや足踏みした格好だ。

 「晴れ」が続くのは輸出が好調な家電やプラント・造船、産業・工作機械、鉄鋼・非鉄など。逆に百貨店、スーパー、コンビニエンスストアなどの内需型は「曇り」を脱せず、今の景気拡大のけん引役が外需になっていることを鮮明に映した。

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2007年の幕開け、新聞などを見ると経済界やエコノミストの大方は日本は今年も概ね好景気を予想し、恒例の株価予測では(今より20%近く高い)20000円越えは十分あり?というような縁起の良いコメントが並んでいました。

正月は3つの経済週刊誌の07年予測特集などをナナメ読みして、各論者の主張などを比較してみたのですが、そのポイントはやはり「個人消費動向」そして「企業M&A」が注目ということでしょうか。

ここでは07年の日本経済がどうなっていくか、それら記事群からポジティブな要素とネガティブ(リスク)要因を整理して並べてみたうえで、私なりの視点を加えて勝手予想してみたいと思います。

まずはポジティブ要素から・・

◎米国経済減速がソフトランディング&再上昇へ⇒輸出が再び伸びて企業業績向上?

◎団塊世代の退職マネー⇒足踏みしている消費を引っ張っていく?

◎個人の投信人気など外国通貨での投資パワーや日米の絶対的金利差(日本利上げ僅か+米国利下げせず)⇒円安⇒輸出企業に追い風が吹く?

◎昨年後半からのエネルギー価格下落⇒企業・消費にプラス?


一方、リスク要因(ネガティブ)です。

●5月の三角合併解禁などでM&Aが加速⇒グローバル競争激化に耐えるため企業は収益確保を最優先/株価対策で配当性向も高まる⇒労働分配率は低いまま⇒家計へ波及せず消費は伸び悩み?内需関連の業績足踏み?

●団塊世代の退職延長(先延ばし)の社会的流れ/実際のところ老後生活資金余裕なしが大多数⇒大きな消費パワーにならず?可処分の余剰は蓄え・運用に大部分が流れる?

●円高要因(=景気を牽引している輸出企業にマイナス)

①実質実効円レートは市場最安値圏内にある⇒円高へ巻き戻し?

②正常金利に戻したい日銀は現在マネー供給引締め中・市場予想より早く利上げ?⇒円高

③利上げや何らかの信用収縮により外国勢による円キャリー取引の縮小?⇒すなわち円買い

●足元の鉱工業生産の指数は鈍化傾向⇒企業業績下方修正へ?

●足元の消費関連指数良くなっていない/デフレ完全脱却もまだ/社会保険料や税金の実質負担増 ⇒今年も家計引き締めの年? 

●エネルギー下落に代わり穀物など商品価格が急上昇中⇒企業が消費者価格へ転嫁できず苦しい?

●米国経済減速リスク(住宅バブルの更なる崩壊?)⇒日本経済全体に影響



・・こうして並べてみますと、ポジティブ面のパワーよりどうしてもマイナスに働くリスク要因のほうがリアリティがあるように感じられるのは私だけでしょうか。

特に企業が企業体および経営者の保全のため収益や株価を重視するあまり、賃金足踏み⇒消費に回っていかないリスクは現実となりつつあり、これは労働者にとって問題であるだけでなく国内景気の先行きに極めて深刻な影響を及ぼすと考えます。

団塊世代の引退先延ばしは若い労働力(=若い消費力)の芽をつぶすというマイナス要素があることも忘れてはいけません。反対に高賃金の団塊が引退して低賃金の若年労働者が増えた場合は、むしろ日本全体の賃金伸び率は抑制されるという試算もあります。いずれのケースも、日本全体の家計はトータルでプラスにはなりません。

いずれにしても現状の日本は“ダム論”で例えられるような、輸出⇒内需⇒家計への恩恵が目に見えて増えるようになるのは容易ではなく、たとえ賃金が上昇しても社会保険料や税金の実質負担増によって相殺されるうえ、純増分があったとしても将来不安により消費ではなく貯蓄へ回る確率も高いと思います。

そして国民の資産増を期待されている日本株ですが、残念ながら大部分のエコノミストが予測するような日経平均20000円という状況は簡単ではないと予想します。むしろ上記のリスク要因の状況が悪くなれば、現状(17000円台)の維持も微妙だと覚悟せねばならない・・と考えます。もちろんこの予想はハズれるとうれしいんですが。

ただし株式市場については、外的要因(米を始めとした世界マネー経済/流動性の状況)によって大きなブレがありますので、日本の実力より上振れる可能性も当然あり、外国人による買支えをまず期待したいところです。

果たしてこの勝手予想はどうなるか・・1年後振り返ってみたいと思います。