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No61 世界マネーは2006年も大きく余り、さまよった

2006年12月31日 | グローバル経済
(今からちょうど一年前、06年1月のファイルNo36より転記・・)
06年は~
①収益成長力の高い一部企業とそうでない大部分の企業に株価二極化が進行し、全体としては乱高下、変動率が激しく読みづらい国内相場
②図らずも昨年末の為替レバレッジ取引(FX)調整と年明け日本株調整のコワさに気づいた個人投資家マネーが、これまで以上に外国投信などの世界マーケットへ、長期スタンスの分散投資方向に向かっていく年
③グローバル世界マネーは資金が集まりすぎたBRICsや日本を見捨てて、ユーロ圏や東欧のほうへ風が吹く

・・・・・

と勝手な予想を立てましたが、1年経って振り返ってみると概ね当たっていることも多かった気がします。

日本の株価は05年のような読みやすい相場ではありませんでした。日経平均は小幅の上昇にとどまり新興市場は大荒れ・・国内株調整で引け腰となった個人投資家の多くは、よりローリスクな外国債券などの分散型投信に向いました。ただ全体的に“貯蓄から投資へ”向っていることは確かなようです。

世界同時株安だった5~6月、グローバルマネーはとくにBRICSや日本から大きく離れましたが、欧米市場の盛り返しを機に新興国にもマネーは戻り、結局年間騰落率は中国78%、インド47%、ロシア52%、ブラジル29%(MSCIスタンダード)という先進国を遥かに凌ぐ驚くべき上昇に終わりました(予想はこの部分ハズレ)。

ユーロ圏も通貨上昇を含めると世界的に充分評価されたといえるでしょう。英国では市場自体は年間+11%でしたがドル換算すると実に26%価値上昇したことになります。英国以外のユーロ圏においても同様に年間+19%⇒ドル換算で+32%のアップです。主要国の中であまりモテなかったのは日本だけでした。

06年は世界的な金融引締め局面と謳われたにもかかわらず、グローバルマネーは更に大きく余りまくり世界全体で1年間に約18%の株価押し上げ(MSCIインデックス)を果たしたのです。

世界的にダブついたマネーは、株だけでなく不動産市場(REIT)や原油や金をはじめとする商品市場にもジャブジャブ入り込んできました。


これらの現象の根源的な原因が、2000年の米国ITバブル崩壊に伴う米政府の大規模な財政出動(減税)や金融緩和によって生じたアメリカの前代未聞の経常収支赤字にあるということを忘れてはいけません。平たく言うと、消費好きのアメリカ人においしいアメを大量に与えてしまったツケがどんどんたまってきました。

異様に膨張した対米黒字を抱えた日本や中国その他主要な国々では、アメリカ人の過剰消費パワーに依存した輸出型成長の恩恵を受けるも、受け取って余りあるドルで米国国債を買い支えたり過剰預金が国内で積み増しされたため、世界的に市場金利が低いまま生まれたマネーが行き場をさがして彷徨うという悪循環が続いています。

そして、世界経済のルールに参加しない中国と並んで日本は有力な共犯者です。低空飛行の景気拡大と未曾有の財政赤字を抱えたこの国の金利はゼロを脱したとはいえ異常に低い状態がまだ続くと思われ、“円キャリー取引”などの投機余剰マネーを日々生み出す原因ともなっています。

これらの結実によって、ここ数年の世界好景気・株価上昇(および不動産・商品市場拡大)がもたらされており、それはガラス細工のように脆い状態だということを、ここで今一度認識し直したいと思います。

アメリカの消費は、住宅バブルが今のところ小さな崩壊にとどまるだろうという甘い見通しと共に今だ堅調といわれています。しかし貯蓄率がマイナスの一途を辿っていることからもわかるように、米国消費の膨大な借金を世界が支える図式が続いており、この微妙なバランスはどこまで保持可能なのか、どうしても注視せざるをえません。

このアメリカ消費者を主役としたグローバルなバブルは、今の雰囲気だと長ければあと2~3年間は拡大していく気もしますが、拡大すればするほど巻き戻しリセットのパワーを蓄えることとなります。

そんな中でも最近のユーロパワー台頭とユーロ圏の自律的な内需拡大は、世界バランスを保つ意味で救いと言えます。が、少なくとも日本や中国やたいていの新興国にとってはアメリカ消費およびドルができるだけ暴発しないように支えるのが目先精一杯のようです。

昨今の世界景気拡大や資産価値(株価・不動産・商品)増大などの甘いムードに流され、ただ単に“貯蓄から投資へ”と突き進むばかりでは、いつかハシゴをはずされるカモになるのは確実と思われます。2007年から数年間は、そこらへんの見極めがますます重要になりそうです。