~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No31 天気予報と経済予測はどちらの精度が高いか?

2005年12月22日 | 投資・運用
政府:実質経済成長率見通し・GDP前年度比増減率予想(日経12/20付)

05年2.7% 06年1.9%  

民間:シンクタンク研究所 実質経済成長率見通し(12月発表) 

UFJ総研   05年2.7% 06年2.7%
日本経済研    2.6%    1.4%
日本総研      2.8%    2.1%
ニッセイ基礎      2.8%     1.7%
大和證券SMBC  2.9%    1.3% 
(他社割愛)

・・・ 


いわゆるシンクタンクと呼ばれるところの最新の経済成長率見通しは、直近四半期ごとのGDP値が確定発表されるごとに数値が改訂されそれは新聞やインターネットで見ることが出来ます。 

公表データは12月最新のものですが、各社は当然のように毎回予想値を改訂します。
例えば日本経済研究センターは11月中旬発表からわずか一ヶ月で0.4%上方修正しました(05年見通し)。

民間各社の発表を後追いする形で先日政府の予測が発表されました。ほとんど民間シンクタンクの“最新の”平均値をただ公表したようなものです。

予測は当然ながら最新のテクニカル指標とファンダメンタルズの状況分析に基づいて、その時点で確信的な判断をしていると思うのですが(・・そうでなければプロの研究所の意味がない)それにしても天気予報よろしく毎回言い分が変わっていくような気がします。
そこで、シンクタンクは約半年前どんなデータ予想を公表したのか、拾ってみました。
以下例を挙げてみます。

・・・

<例1>日本総研(05年6月発表) ・・05年実質成長率1.1% 06年1.5% (分析コメント:成長ベースの加速は困難、03~04年よりも鈍化する。06年から上昇する見込み)

<例2>ニッセイ基礎研究所(05年5月発表) ・・05年同0.8% 06年同1.1% (分析コメント:05年度は海外経済の減速や円高によって輸出の鈍化が続き、設備投資の減少が起こる。景気後退に陥る恐れ大きい。06年景気は回復に向かい、成長率は高まる)

・・・

日本総研は半年で2.5倍も数値を修正しています。(05年1.1%→2.8%へ)
ニッセイ基礎研は半年前0.8%と言っていたものが今では2.8%と、6ヶ月で3.5倍も成長率が増えています!

当然、半年前のコメントは見事にはずれています。設備投資はこの半年で勢いよく増加したし、輸出は好調、国内も海外も景気後退に陥ることなく04年より大幅な成長率アップ間違いなしという状況です。もちろん半年後の現在、各研究所は臆面なく全く違うことを主張しているのは言うまでもありません。05年度も残り3ヶ月となった現在では、何事もなかったように各社2.6~2.9%とほぼ横並びの数字に揃いました。

06年見通しも、下は1.3%から上は2.7%まで、研究所によって2倍以上の開きがあります。きっとこの広い幅の中のどこかに収束するんでしょうか。いや05年のハズレ方を見る限り、この枠を越える可能性も大きいですね。

前ファイルで短期の為替予測は的外れな占いや予言に近いと書きましたが、成長率のシンクタンク研究分析についても、週間予報のように朝起きると週末の天気予想がコロコロ変わるのと似たようなレベルといえるでしょう。

企業や機関投資家と呼ばれる方達はシンクタンクと年間契約していい値段で分析データを買っていると思いますが、経費のリストラはまずここからやることをお勧めしたくなります(笑)。 

毎年各社の予測データを並べて、どの研究所が一番精度が高かったか低かったか、分析コメントの信頼性の高低、などをS&Pのように評価するのも面白いかもしれません。このブログで半年後、同じテーマで比較できればと思います。果たして信頼のおけるシンクタンクは見つかるでしょうか?

しかし本当にここで言いたかったのは、単なるシンクタンク批判ではありません。

当ファイルNo28と重なりますが、経済学ほどブレが多く真理が確立されていない学問はあまりなく、その多くが過去の事象に基づいた仮定理論で、著名なエコノミストや有名大学教授の指摘や予測でさえほとんど当てにできないということです。

過去統計のグラフ数値から予測や法則を立てるという日本人好みの分析法(テクニカル分析)に世界に起こる事象・イベントからトレンド予測する方法(ファンダメンタル)を、各専門家が都合のいいようにごっちゃに掛け合わせて出てくる答えですから、100以上の解答があって当たり前です。

多少それますが、何やらあまり広まっていない基礎的情報やグラフを用いたりする分析情報は妙に信憑性が高いように感じてしまう傾向もありますね・・心理学的な話ですが。
それらは、人をサプライズさせることはできても予測結論は相変わらず疑わしいと思うようにしています。 理由は上記と同じです。

結論として、自分の予想はもちろんのことプロフェッショナルな予測情報に頼っての“短期”の投資やビジネスは危険ということです。もっといえば、あるひとつの予測に基づいた1カテゴリーに投資資金を集中しないことが大切です。

予測情報が信用できないならば、消去法的に考えると庶民に残された正しい投資の選択肢は少なくなります。

すなわち予測を当てにしないで運用するためには「投資対象をカテゴリーごと・エリアごとにできるだけ細かく分散して」「短期変動リスクを気にしないで済む対象に投資する」ことぐらいしか道は残されていません。

短期利ざや目当てで、充分に分散されていない投資をするくらいなら、MRFや公社債投信など実質元本確保のモノを買ったほうが良いと、私が個人的に相談された時にはそう答えます。

ちまたにあふれるのは「日本株」と「為替」の短期予測報道。この1つか2つのカテゴリーに集中している庶民投資の現状は、当たらない週間予報を信用して青空市の日程を決めるような心もとない事業に等しいと感じます。