~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No52 最大の経済リスク「エネルギー価格」 ・・21世紀オイルショックを起さないための正念場

2006年07月11日 | 景気
●7/7日経・・・「NY原油、時間外取引で最高値」7日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場は北朝鮮のミサイル発射に伴う情勢不安などにより時間外取引で急伸、指標となる米国産標準油種(WTI)8月渡しが一時、1バレル=75.42ドルをつけ、最高値を更新した。


●7/11日経・・・「米原油に再び投機買い」 米国の原油先物市場で投機マネーが再び買い基調を強めている。NY商品取引所で投機筋の買越額は6月27日に八週間ぶりに増加に転じ、2週間連続で増えた。地政学リスクも高まるなかでハリケーンシーズンを迎えるだけに、投機マネーが原油相場をかく乱し、インフレ懸念を強める可能性もある。


●7/11日経・・・「米ガソリン価格、史上2位の高水準に」米エネルギー省が10日まとめた最新のガソリンの平均小売価格はレギュラーで1ガロン2.973ドル(1リットル約90円)となり、大型ハリケーン「カトリーナ」による製油所の被害などで、昨年9月初めに3ドル台をつけて以来、最も高い水準になった。

ガソリンは米国内のほぼ全域で値上がりしている。最近の原油高を背景に再び騰勢が強まると、米国の景気や経済政策に影響する恐れがある。一部の世論調査によると、ガソリン高のために夏休みのドライブの予定を変える家庭も増えている。


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今年に入ってから、世界経済(景気)の様々なリスクがフィーチャーされてきました。
「貿易不均衡問題」「米国景気減速」「インフレ懸念」「世界的政策金利の上昇」「世界同時株安」「イラン核」「北朝鮮ミサイル」・・・これらの課題はモノにより、未解決でもなぜか議論が静まったり、表面的に落ち着く方に向ったり、いまだ大きな懸念として注視されているものもありますが、それらよりもっと根源的問題である原油価格の動向「エネルギー価格高騰」というテーマに、どうやら今年後半の世界経済最大のリスクとして問題意識が収斂されつつあるようです。

70年代の2度のオイルショックでは、中東国の戦争危機から原油輸出停止というハッキリしたキッカケで石油価格が一気に2~4倍も値上がりし、トイレットペーパーに代表される人々の生活必需品の物価高騰という分かりやすい形に問題が表れたこともあって、国を挙げて省エネ型の社会への転換を図ることで乗り越えてきました。

それから四半世紀以上経った現在の状況は複雑です。かつてなかった背景として、エネルギー効率を考えない新興国の需要増、投機資金流入による先物市場での大量売買、新たなエネルギー大国ロシアの台頭、などの要因があり、その前提にはグローバル化で世界経済が一蓮托生になっている状況があります。

需要増は別として、投機集団による過剰な価格釣り上げや石油のために戦争を辞さないアメリカと大国復活を目論むロシアの政治的駆け引きなど、市場原理主義に基づく“我田引水的”な行動が、結果として世界全体のインフレ懸念・金利動向・株価・消費・景気を左右するほどの大きな脅威になっていると言えます。

これはもはや、日本国内が70年代から省エネのために努力し成果をあげた事だけでは全く解決できない事象であるといえます。世界が一体となって解決策を見出さない限り、いずれ日本への大きな影響も避けられません。

その意味で、ロシアのホストで行われる15日からのサミットで、大きな成果が得られるかどうかが、まずは直近のポイントになると考えます。


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●7/8日経・・・エネルギー安保、サミットで特別声明採択へ
15日から始まる主要国首脳会議(サンクトペテルブルク・サミット)で、エネルギー安全保障に関する特別声明を採択する見通しになった。

 今回の特別声明では生産国と消費国が一致して、包括的なエネルギー対策に取り組む姿勢を示す。米政府高官によると、油田や製油所の投資拡大、代替エネルギーの開発促進、原油市場の透明化などを盛り込む方向で、各国の行動計画をまとめる可能性もある。

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一部でいわれるように1バレル=100ドルへ向うのか、世界の努力によって鎮静化していくのか、今が“21世紀初の石油危機”になってしまうかどうかの分岐点に立っているような気がします。

その答えはきわどいところにあると思いますが、イラクの生産余力の増強や、新興国の消費量の伸び※も考慮すると、サミットで一定の成果が得られるならば原油高は近いうちに落ち着く可能性も少なくないと感じます。

※1バレル70ドルを超えていることで、世界の石油需要に減退の兆しが見られるというOPECのコメントがあったとロイターが伝えています。

はたしてその後どちらの方向に向ったのか、いずれまた改めて検証してみたいと思います。