~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No59 いざなぎ超え“張りボテ景気”の果ては・・

2006年11月03日 | 景気
●10/31日経・・・9月の家計調査、実質の消費支出6%減
 総務省が31日発表した9月の全世帯の家計調査によると、一世帯あたりの消費支出は実質で前年同月比6%減。2001年12月(6.6%減)以来の大きな減少となった。

サラリーマン世帯の実収入は実質で前年同月比0.5%減った。実質消費支出は6.6%減。可処分所得から消費支出に充てた比率を示す「消費性向」は81.7%と、9月としては調査開始以来の最低水準だった。



●10/29日経・・・住宅ローン抱えても、意外に消費は減らしていない・内閣府分析
 住宅ローンを抱える世帯の実質的な消費性向(可処分所得から消費支出に回す比率)はほぼ横ばいで推移――。内閣府はこんな分析結果をまとめた。住宅ローンのない世帯と比べると消費は抑え気味だが、意外と消費性向は安定し、消費をあまり減らしていない様子がみて取れる。

ローンのある世帯の可処分所得からローン返済額を差し引いた所得のうち、消費支出に回った比率「修正消費性向」をみると、1990年から05年にかけてほぼ80%台前半で一定している。ローンのない世帯の消費性向とほぼ同じ傾向で、安定した消費行動がうかがえる。


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今年のはじめ頃このブログ(No42)では、総務省の発表した1月家計調査の消費支出が前年比マイナスになっているという小さなニュースを取り上げ、この“長い景気回復”というシロモノは「輸出大企業」「海外投資家が主導する輸出関連株買い」や「国の手厚い保護によって息を吹き返した金融機関」などによって演出されているかりそめの姿だと書きましたが、これを裏付けるかのように内需はいまだ盛り上がりを見せず、消費支出は1月から最新9月まで9ヶ月連続で前年対比で減少をつづけています。 

9月は実際に支払った金額を表す名目でも5.2%減少していますし、サラリーマンの実収入自体も増えていません。これらの数字は、大部分の国民にとって現実に実感し納得できるものではないでしょうか。

消費者物価も、原油価格が下がればデフレ脱却が遠のくような弱い状態です。最近もソフトバンク携帯やセブンイレブンが業績不振により98円ペットボトルを発売するなど値引きのニュースが目立ちますね。もはや死語だと思っていた「価格破壊」がまだ生きているかのような流れです。


さらに気になる統計は、中小企業庁の発表する景況調査で、4~6月期・7~9月期とこの半年間、中小企業の景況判断がマイナスに陥っていて、それは日銀短観でも同じような結果が出ています。9月日銀短観でプラスになっているのは円安効果の大きい大企業の「製造業」のみで、その他の分類は横ばいかマイナスとなっています。

大手を中心に新卒の獲得合戦が話題になっていたにもかかわらず、失業率や求人倍率も目に見えては良くなっていません。

にもかかわらず、国の危機的借金減らしに必死な内閣は、“国民は15年間安定した消費行動を取っている(上の紹介記事)”と分析して見せ、スキあらば利上げしたい日銀は最新の展望リポートでも“景気は緩やかに拡大中”との見通しを変えません。大手マスコミといえば、景気拡大の期間の長さ(いざなぎ景気超え)をひたすら強調するばかりです。


教科書通りの好景気であれば、輸出大企業⇒中小企業⇒内需へ回ってくるはずですが、どうやら一部上場企業の業績や株価が、川下や個人に反映されず中身がカラッポ状態の“張りボテ景気”であることは明らかなようです。


結局のところ、相変らずこの景気拡大は外需に頼らざるを得ないということで、いつも書いている、米国の景気減速がソフトランディングで済むかどうかに日本景気の命運が託されるという結論になってしまうわけです。少なくとも次の1年間ぐらいは・・。


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さてひとつ前のファイルで、特定世代(=おもに40代)の人口数が多ければ景気は上昇トレンドに?という「人口トレンド論」がグローバルな投資家の間で静かな定説になっているという話をさわりだけ書きましたが、それを日本に当てはめてみるとどうでしょう(人口トレンド論が詳しく分らない方にはいきなりで恐縮ですが)。

日本は5年後くらいの中長期で見れば、人口の最後のボリュームゾーンである団塊ジュニアが30代後半から、最も消費が活発になると言われる40代へ突入していくため展望は明るいのではないかと囁かれています。その親世代(団塊世代)の引退に伴うシルバー消費への期待も大きいと言われます。

しかし16年前のバブル崩壊以降、就職難などそのあおりで傷ついたのはまさに団塊ジュニア世代であり、もっとも消費するはずだった40代をバブル崩壊で苦しんだのが最大の人口ボリュームゾーン=団塊の世代・・であったことが、もしや日本の不運になるもしれません。

この2つの人口ピラミッドパワー集団(?)が、人生の節目で味わった苦難のトラウマから脱却できるかどうか(つまりトレンド論どおり素直に大量消費へ向うのか)、これが「人口トレンド論」が日本にそのまま当てはめられるかどうかの大きな分かれ道である気がします。

前ファイルの予告から前置きが長くなりましたが、次回は世界の「人口トレンド論」を筆者なりに考えてみます。