「ログがやられた!」
「復讐だ!」
取り巻きたちは騒ぎながら、小屋から農耕具を持ち出してきた。
そこに別の声がかぶせられた。
「早くしろ! 逃げるんだ! 俺に付いて来い!」
ナオは、青い男の指示に従った。
逃げる二人と村人たちの追いかけっこが始まったが、
コーブンの村境を越えれば、こっちのものだ。
青い男は、くすくす笑いながらナオに話しかけた。
「お前もお人好しだな。そりゃ、あの連中は俺に容赦しなかったろうが、
それがお前に何になる? そもそも忍び込むのに失敗した俺が悪いんだ。
まさかあんな可愛い子がいるなんて……って、どうしたお前、喋れないのか?
それとも無口なだけか? まあいいや。俺はグロッグ・クロートゥース。
グロッグでいいぜ。オークのおやじと、人間のおふくろから生まれた
ハーフオークだが、その中でも俺は変わり種でね。
なあ、お前これからドコへ行くんだ? 何か美味いもの持ってないか?
俺も一緒に行っていいか? いいよな? 俺、親友だから」
(…………何でしょう、この人。よく一息に話せますね。
それも初対面で、こんなに)
(うん。凄い。でも、何か……いいな)