炎と水の物語 2013 Apprehensio ad Ignis et Aquarius.

広大な宇宙を旅する地球。私たちは今、どの辺にいるのでしょう. 

数十万羽のコウノトリ舞うヨーロッパ 

2008-06-08 | エコロジー
 NHK「生きもの新伝説」「欧州 命集う里山」で、日本では完全に絶滅したコウノトリが、ヨーロッパでは今でも数十万羽が生息していると報じていた. それも、農場の中で…。私たち日本人から見ると、それは奇跡のような光景だ。今日は、日本とヨーロッパの農業の違いを考える.

 降水量が少ないヨーロッパの農業は、畑作が中心である。年間の降水量が、500mm~800mmでは、耕地に水を張って稲を作るのはむずかしい。
家畜の放牧と畑を組み合わせた混合農業が主であり、そうした地域ではコウノトリが、今でも多く棲息しているという番組であった.イタリアの北部ポー川流域で、紀元一世紀頃から稲作が行なわれているが、この地方のコウノトリがどうなっているのか、番組で取りあげてほしかった.
 
 ヨ-ロッパの主要作物、麦の有利な点は、除草剤を必要としないことである.
麦類は、根から他の植物の発芽や生育を阻害する物質を分泌するので、株元に雑草が生えないのだ。
麦は本来、草取りの必要がないエコ作物なのである.

 一方、稲はそのような物質を分泌しないため、多くの労力を払い、人力で、水田の草取りが行われてきた。かつて、水田の豊かな生物層が醸し出す様々な栄養素は、実に、美味なお米を生み出したが、最近は、除草剤に替わり、生態系や健康に大きな負担をかけている。さらに、旨味成分のアミノ酸生成を阻害する除草剤の性格上、生産されるお米の旨味も消えてしまい、売れ行きの不振も招いてしまった。

 ともあれ、日本の気候は、広大なユーラシア大陸の影響を受け、寒暖の差が大きく、雨量も多いため、外来の稲には、温度、湿度によって、さまざまな病菌が襲いかかる。更に、化学肥料が根を痛めつけるので、防除のために、多くの薬剤を必要とする。 本来、日本の作物でなかった稲は、今の日本の環境では、実に病気がちだ。 一方、西ヨーロッパの気候は、暖かい大西洋岸から、常に風が吹く西岸海洋性気候であり、温度、湿度の変化が小さく作物も順調に育つ.

 こうした気候と文化の違いが、コウノトリの生存率に、顕著な差をもたらしている。日本の気候にそぐわない無理な農業が、環境に重い負荷をかけているように思われるのである.

 それでは、日本の気候に適応した主食作物とは一体、何であろうか.
多くの日本人の農学者は、縄文時代の人口を支えたのは、芋類であろうと推測している.
山芋、里芋の類が縄文時代から栽培され、その人口を支えたと考えている。現在でも、縄文人に非常に近いDNAを持つ、ハワイ諸島などのポリネシアの人々の主食は、芋類であり、ニューギニア*では、一万年前のタロ芋、バナナなどの根菜、果樹農業の遺跡が発見され、世界最古の農耕遺跡の一つとされてる。
しかし、これら芋類は、稲科作物とは違い、硬いモミ殻などの痕跡を残さず、日本では未解明の観が有る。
幸いサトイモの繊維質な表皮は、低湿地などの遺跡では比較的分解しづらく、調査研究の開始に期待が寄せられている。

 ともあれ、日本での鳥類の絶滅は、それを支える生態系全体の危機を示している。
最近は、大型の鳥類に続いて、両生類の激減が報告されている。
筆者の周辺でも、蛙の声を聞く事は、ほとんどなくなってしまった。
夏の水田は、しんと静まりきった「沈黙の夏」そのものの状態になって久しい。
同時に、地域は衰退し、ガン死亡率、人口減少率、自殺率も、日本一になった。
もはや、夏の水辺では、食用カエルの声だけが、不気味ひびいている。
ただ、近所の阿漕な熱帯魚屋のビオト-プだけに、どこからか無理やり連れて来られたカエルが、水道水の池で、さめざめと啼いている。

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