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マケドニア番外地──潜入、世界を動かした「フェイクニュース」工場へ

2023-07-17 15:07:25 | AI・IT・サイバーセキュリティ・メタバース・NFT・ゲーム、

以下、WIRED記事 2017.06.23より引用

マケドニア番外地──潜入、世界を動かした「フェイクニュース」工場へ

 

米国から遠く離れた東欧・マケドニア共和国のヴェレス。この町から米国大統領選において100以上もトランプ支持のフェイクニュースサイトが発信されていた。なぜマケドニアは世界のフェイク工場となったのか。ヴェレスの町から、フェイクニュースに手を染める若者たちを追う。(『WIRED』日本版VOL.28より転載)

 

手っ取り早くカネになる

ボリスが最初に発信したニュースは、トランプ候補がノースカリフォルニアの集会で反対派のひとりを平手打ちした、という記事だった。これは言うまでもなくガセネタである。ボリスはネットでこの記事を見つけ、自身のウェブサイト「Daily Interesting Things」に句読点の打ち間違いに至るまで、そっくりそのままパクって載せた。

 

そしてページのリンクをFacebookに投稿したところ、米国の政治関連のさまざまなグループにシェアされた。ボリスも驚いたことに、シェア数は800にものぼったのだ。2016年2月、このときボリスはグーグルから150ドルの広告収入を得た。ボリスはこれほど有効な時間の使い方はないと思い、高校に行くのをやめた。

ボリスというのは本名ではない。彼が匿名を望んだのは、自分の住むバルカン半島、マケドニア共和国のヴェレスで、ほかの住民との軋轢を避けるためだという。住民の誰ひとりとして、これ以上トランプの話をしたがるものはいない。確かに、小規模なコミュニティであるヴェレスの住民には、悪い噂が立ちそうになるとぴったりと口をつぐんでしまいそうな印象がある。
 
米国大統領選終盤の数週間、ヴェレスの町はこの世界最強国家から“奇妙”な汚名を着せられた。この人口55,000人のマケドニアの町から100以上ものトランプ支持サイトが発信されていたことが『ガーディアン』や『BuzzFeed』の報道により明らかになったのである。
 
その多くは嘘八百のフェイクニュースサイトだった(人気のトピックは「ヒラリーがまもなく起訴される」というものと「ローマ教皇はトランプ支持者」というものだった)。
 

マケドニア、ヴェレス郊外の廃業寸前のレンガ工場。バルカン半島に位置するマケドニア共和国は、1991年ユーゴスラヴィアから独立した。首都はスコピエ。公用語はマケドニア語とアルバニア語。

 

これらのサイトには、Google AdSenseをはじめとする広告エンジンにより、サイトの閲覧者数が増えれば増えるほど自動的に多くの広告収入が支払われる。『ニューヨーカー』によれば、バラク・オバマ米国大統領(当時)は今回の大統領選直前に、ヴェレスの町とそこで行われていた「デジタル・ゴールドラッシュ」問題について「異常なくらい」議論を重ねたという。

 

ヴェレスでも、そういったウェブサイトを運営する若き起業家は羨望の的になった。マケドニアの平均月収は371ドルだが、ボリスが8〜11月の間に2つのトランプ支持サイトで得た収入は16,000ドル近くになる。

大統領選なんて興味ない

ボリスは18歳で、眼はグレー、猫背で痩せている。地肌が見えそうなほど短く刈った髪、伸ばし始めたばかりの顎ひげ。火が消える間もないほどひっきりなしにタバコを吸う。ノトーリアス・B.I.G.、パフ・ダディ、ウータン・クランといったギャングスタ・ラップが好みだ。2009年の伝記映画『ノトーリアス・B.I.G.』を観たボリスは、ニューヨークのブルックリンに行ってみたくなったという。

ボリスのイメージでは、ブルックリンはヒップスターよりギャングスターの街だ。人懐っこく話し上手で、ユーモアのセンスがあり、自分自身やヴェレスのことを冷静に見ている。いつかヴェレスを出たい、こんなちっぽけな町では何もできないから、とボリスは言う。

この町では

まともに働いていても
カネなんか稼げっこない。
つまり、この
Google AdSenseの仕事は
まともじゃないってことさ。

「親と同居してバーの勘定まで出してもらうか、カフェのウェイターをやるか、マッチョなら警備員にでもなるかだね。郊外の工場にはまだ正規雇用の口もいくらかあるけど、ショボい仕事ばかりだ。この町ではまともに働いていてもカネなんか稼げっこない。つまり、このGoogle AdSenseの仕事はまともじゃないってことさ」

ボリスの英語はお世辞にも流暢とはいえず、トランプやクリントンについて、何週間にもわたり5〜10本の記事を毎日書けるとはとても思えない。だが幸いなことに、今回の大統領選挙では数多くのオルタナ右翼(伝統的な保守思想と異なる新たな右翼)系ウェブサイトが、マスコミのニュース記事に似せたフェイクニュースを熱心に発信していた。トランプ自身がTwitterで発信する単純なデマから、『ブライトバート・ニュース』や『NationalReport.net』の組織的捏造記事まで、右翼系メディア全体を通じてイデオロギーが真実を圧倒していた。

だがヴェレスで行われていたことはさらに極端だった。それは感情にも善悪の価値観にも縛られない、さらにはイデオロギーだけでなく大統領選に関するいかなる利害関係や政治的主張とも無縁な、一大産業だった。

Facebookに出没するマケドニア人たちは、トランプが当選するか落選するかなどにまったく関心がない。ただ最新のクルマや時計や携帯電話を買い、バーでもう2、3杯おかわりできるだけのポケットマネーが手に入ればそれでいい。

突発的で不気味な事件、それがこの事件の核心である。インターネットの出現によって、若者たちはいとも簡単に欲しいものを買うカネを得られるようになったが、その行動はきわめて重大な結果をもたらしかねない。

インターネットは「トランプの歴史」を忘れない、たとえ“証拠”が消されても

トランプのウェブサイトに掲載されたムスリム移民防止に関する文書について、記者がスパイサー米報道官に追求した数時間後、その文書が削除された。だが、たとえ大統領といえども、インターネットの記憶を完全に消すことはできないのだ。

ヴェレス中央市場。マケドニアの独立宣言以後、1990年代を通じてこの町の経済は衰退の一途をたどった。

儲けたカネでBMWを買う

ヴェレスはマケドニアのちょうど真ん中に位置する。町の一方はヴァルダル川に接し、低い丘の斜面にしがみつくように赤い屋根の家々が並んでいる。町には長い歴史があり、かつては革命家と知識人が行き交っていた。やがて工業の町として知られるようになるなど、それなりに栄えた町だった。ヴェレス最大の工場のひとつはポルツェランカと呼ばれるセラミック工場で、4,000人が勤務している。ユーゴスラヴィア時代には国内の大気汚染ワースト2の町だったと、住民は屈折したプライドとともに回想する。

1991年にマケドニアが独立を宣言したことが、ヴェレスの凋落の始まりだった。工場は閉鎖され、失業者が急増した。地元サッカーチーム「FKボレク」は連敗を重ね1部リーグから3部リーグに降格を余儀なくされた。町に1軒だけあった映画館も15年前につぶれ、ダウンタウンは衰退の一途をたどった。2000年代半ばの一時期、ひと握りの人々がドイツやオーストリアでヘロインを密売して経済はやや盛り返したものの、すぐに警察の取り締まりによって麻薬組織は壊滅した。ヴェレスはふたたび荒廃という苦しみのなかに振り戻された。

ヴェレスで生まれ育ったボリスにも、この町では仕事がなかった。父親は町の配管工だった。ほかの子どもたちと同じように、ボリスもオスマン帝国時代の時計塔かヴァルダル川のあたりをうろつき、カフェをはしごしては時間をつぶしていた。小さいころはサッカーをやっていたが、じきにヴィデオゲームにのめり込み、特殊部隊とテロリストが銃撃戦を行う対戦FPSゲーム『カウンターストライク』のクラブに入った。9〜10人のティーンエイジャーが部屋に集まり、ノートパソコンを広げてゲームの中で撃ち合うのだ。

何年か前の夏、ボリスは学校に行く途中で道端に停めてあるBMW 4シリーズを見つけた。「なんてこった。なんでおれの好きなクルマがこんなところにあるんだ?」。

ボリスは周りに聞いてみたが、誰もそのBMWのもち主を知らないようだった。その後、あるカフェでボリスは『カウンターストライク』の遊び仲間であるアレクサンデル・ヴェルコフスキーと出会う。

「BMW 4を見たぜ」とボリスが言うと、アレクサンデルはそのクルマが自分のものだと打ち明けた。「ウェブサイトで儲けたカネで買ったんだ」とアレクサンデルは言った。

「フェイクニュース対策の新プロジェクト」にFacebookが参加する意味

フェイスブックが、フェイクニュース対策の新プロジェクトに出資する。米大統領選でフェイクニュースの温床になったと非難を浴びてきた同社が、自社の責任を認めた格好だ。

庭の納屋にたむろして雑談と歌に興ずる男たち。マイクを握る男は政治サイトで一儲けした。

 

アレクサンデルは兄弟で健康食品のサイトを運営して、「ヘルシーブラザーズ」と呼ばれるほど成功していた。そのサイト、「HealthyFoodHouse.com」はダイエットやメイクのアドヴァイスから、天然由来の薬品や、ありとあらゆるインチキ薬品まで、手当たり次第に何でも扱っていた。夜中に足がつるのを防ぐにはシーツの下に石鹸を入れましょうとか、サトウダイコンからつくったシロップで赤血球の数が増えるとか、そういううさん臭い記事に無数の広告が現れる。どういうわけか、このサイトにはFacebookのフォロワーが200万人もいて、毎月のユニークアクセスは1,000万人を超えるという。

アレクサンデルのBMWを目の当たりにして、ボリスもウェブサイトを始めようと決心した。インターネットでカネを稼ぐ方法があることは知っていた。17歳のころ、ボリスもマイクロジョブサイト「MicroWorkers.com」に登録して、YouTubeの動画を評価したりコメントを残したりして0.1セントを得るような小遣い稼ぎをしていたのだ。今回、ボリスはドメイン登録業者のGoDaddyから「GossipKnowledge.com」と「DailyInterestingThings.com」というドメインを買い、無料のブログ作成ソフト・WordPressでいくつかサイトをつくり、スポーツや芸能や健康や政治のニュースを並べた。記事は全部どこか別のサイトからパクってきた(ボリスはスマートフォンを取り出しWordPressにログインして、これらのサイトが本当にボリスのものであることを証明した)。

トランプが反対派の男を平手打ちしたというネタが爆発的に広まるのを見たボリスは、大統領選挙がもつヴァイラルなポテンシャルを実感した。

さっそく『ニューヨーク・タイムズ』のホームページに似せた「NewYorkTimesPolitics.com」というフェイクニュースサイトを開設した。

米国の政治に関する記事は、すべてどこかのサイトからコピー&ペーストした。まもなく本物の『ニューヨーク・タイムズ』から停止を求める通告書が送られてきた。

ボリスはそのメールを外出中に受け取り、怖くなってすぐにスマートフォンでサイトを閉鎖した。8月、ボリスは「PoliticsHall.com」を開設する。

数カ月後には「USAPolitics.co」もボリスのポートフォリオに加わった。このころから、本当に大金が転がり込むようになってきた。

フェイクニュースと、アドテク企業の「正義」

2016年の米大統領選挙をきっかけに、トラフィック目的のフェイクニュースサイトや過激なメッセージを発するメディアの存在が問題となっている。

ブランドとメディアの架け橋となるアドテク企業こそが、フェイクニュース問題を解決するための鍵を握っているのかもしれない。

男のうちひとりがウェブサイトの広告収入を見せてくれた。サイトには無数の(時には事実無根の)ニュースコンテンツが並ぶ。

サンダースの支持者は

トランプの支持者とは
比べものにならないくらい
頭がいい。
あいつらはだまされない。

シェア、シェア、シェア

作業はどんどんルーティン化されていった。1日に何度もインターネットでトランプ支持の記事を探し回り、自分のサイトにコピペする。JavaScriptでコピー&ペースト防止対策がされているときは、Notepadを開いて手打ちで記事を写す。記事を公開したら、そのリンクをFacebookの「わが祖国アメリカ」とか「虐げられた人々」とか「ドナルド・J・トランプを支持する会」みたいなグループに片っ端からシェアする。トランプのニュースを選ぶのは、トランプのグループのメンバーがクリントンのグループよりも何十万人も多いようだったので、記事の拡散に都合がよかったからだ(7月に1週間ほどバーニー・サンダース支持のフェイクニュースを公開してみたこともあるが、「サンダースの支持者はトランプの支持者とは比べものにならないくらい頭がいい。あいつらはだまされない。記事が本物だという証拠がなければ絶対に信じない」とボリスは言う)。

 

ボリスは自分のアカウントのFacebookにも投稿したが、偽プロフィールを200くらい買い、そこからも投稿していた(ロシア人の名前のプロフィールは10セントくらいで買えるのに対し、米国人の名前は50セント前後するらしい)。さまざまなグループを通じて最も多くシェアされた記事は1,200回だという。よく覚えていないが、たしかトランプが公約に掲げた、メキシコとの国境の壁に関する記事だった気がする、とボリスは言う。ボリスはウェブサイトの収益化のコツを覚えていった。たとえば、記事の本文中に大きな広告が出ると、5人に1人はつい広告をクリックしてしまう。ボリスのRPM(広告を1,000回表示させて得られる収入)はずっと15ドル前後だったとボリスは言う。ボリスはペットを育てるみたいにマジメにサイト運営を続けた。

「夜、次の日シェアするための記事を4、5本つくって、朝起きたらそれをシェアする。コーヒーを飲みに出かけて、帰ってくると新しい記事を探して、それを公開する。そしてまたシェアするんだ。それから友達と遊んで、帰ったらまた記事を探して、Facebookにシェア。その繰り返しさ」

広告エンジンから報酬が入るようになり、ボリスの懐は温かくなった。服を新調し、古い東芝のパソコンをAcerの新機種に替え、オフリド湖のリゾートで休暇を過ごした。スマートフォンにはボリスが過ごしたかりそめの裕福な生活の画像が残されている。「あれも買おう、これも買おう、そんな毎日だった」

いつのまにか、ボリスの友達のほとんどが同じようなサイトを開設し、ボロ儲けしていた。

ヴェレスのナイトクラブ、「タランティーノ」や「クラブ・アヴァンギャルド」や「クラブ・ドラマ」にみんなで繰り出しては1本100ドルのモエ・エ・シャンドンでシャンパンファイトをやった。

「飲むためじゃなく、ただぶっかけるためにシャンパンを注文するんだ。注目の的だったよ!」。ボリスが買うのはいつもいちばん高いものだった。「モエ・エ・シャンドン! ロベルト カヴァリ! ジャック・ダニエル!」。

ボリスはバーテンダーに注文するみたいなしぐさをしながら言った。「そういう人生もあるんだ。一度は経験しとくべきだね」

「ニーズ」に死を:トランプ・マケドニア・DeNAと2017年のメディアについて

2016年、米国ではドナルド・トランプが大統領に選出された背景で「フェイクニュース」騒動があった一方、日本では大企業が無自覚に偽情報を垂れ流していた。「post-truth」化が加速する2017年に求められる価値について、弊誌編集長から、年頭のエディターズ・レター。

ボリスはまだ

クラブ通いを
続けているが、
もう高価なものには
興味がないという。
「なんか、飽きちゃったんだ」

 

ボリスはまだクラブ通いを続けているが、もう高価なものには興味がないという。「なんか、飽きちゃったんだ」。それはかえって幸いだった。というのは、悪質なフェイクニュースが問題となり、11月24日、グーグルがボリスのサイトの広告を差し止めたのである。ボリスが最後に「USAPolitics.co」に投稿した記事は「違法移民のすみやかな国外退去に賛成するか?」というアンケートだった。ボリスがFacebookにそのリンクを投稿したところ、あるグループでは292回シェアされ、361の「いいね」がついた。「USAPolitics.co」でも大ヒットした記事のひとつだが、Googleの広告が出なくなってしまったので、ボリスはすっかりやる気を失い、ウェブサイトは広大なインターネットの片隅に放置されたままになっている。

選挙結果の数パーセントを左右

トランプが大統領選に出馬するよりだいぶ前から、ウェブ広告での金稼ぎはマケドニアの産業のひとつだったし、選挙が終わったいま、グーグルやフェイスブックが不適切なサイトを厳重に取り締まるようになっても、それはずっと続くだろう。ミルコ・ツェゼルコスキーは2000年代のはじめにウェブ広告に目を付けた。マッスルカーやセレブや豪華大型ヨットのウェブサイトを7つも8つも開設した。すべて米国の富裕層が興味を引かれそうな内容だ。一般の米国人に比べると富裕層は3倍はカネになるそうだ。毎日5、6時間働けば月に1,000ドルにはなる、とツェゼルコスキーは言う。失業率約24%のマケドニアでは、それくらいの時間の余裕がある人は大勢いる。

2011年、ツェゼルコスキーは“コーチ業”に転向した。はじめは居住地の首都スコピエで6週間の講座を開き、最近はオンラインで3週間コースを開講している。授業料はおよそ425ドルで、生徒はウェブサイト開設の準備から記事を公開するまでの手順、プロモートの仕方までを学べる。とりわけFacebookの活用法をマスターするのに授業の3分の1が充てられる。例の「ヘルシーブラザーズ」もツェゼルコスキーの講座の卒業生だし、ヴェレスのトランプ支持サイトの運営者の何人かは2016年前半にツェゼルコスキーに教わっていた。ツェゼルコスキーはそれを聞いて驚いたという。

「わたしはフェイクニュースのつくり方など教えたことはありません」と彼は言う。「たぶんそういうことで金儲けをしても罪に問われないし、そのほうがヴァイラルしやすいということを知ったのでしょう」。なんだか熱力学の新法則を発見した生徒の話をする物理の先生のような、なんとなく嬉しそうな口調だった。

 

大統領選後、ツェゼルコスキーは何人かの生徒から電話を受けた。グーグルがサイトからすべての広告を引き揚げたうえ、すでに生じているはずの広告料も支払いを拒んでいるという。彼らはパニックに陥っていた。

60,000ドル以上の報酬が未払いだと主張する若者もいた。

大統領選当時、ラスヴェガスに滞在していたツェゼルコスキーも、トランプ勝利のニュースには衝撃を受けた。ツェゼルコスキーはヴェレスのウェブサイト運営者たちのことを考えた。

「もしかしたらヴェレスのサイトによって選挙結果が数パーセントくらいは変わったのかもしれない」と。

「狂人が大統領に

なってしまった。
第3次世界大戦を
始めるのは
あの男かもしれない」

ボリスはもう足を洗ったが、ボリスや仲間たちがでっちあげた「ニュース」は米国のウェブサイトに転載され、大きな議論を巻き起こしていた。世界最強国家の大統領選挙が、あんなインチキサイトのコピペ記事に左右されることがありうるだろうか? 「米国人がヒラリー・クリントンに勝ってほしいと望めば、クリントンが勝っていただろう。だが票を集めたのはドナルド・トランプだった。だからトランプが当選したんだ」。しかし実際にトランプが勝利したいま、ボリスは選挙の結果に不安を抱かずにはいられない。「狂人が大統領になってしまった。第3次世界大戦を始めるのはあの男かもしれない」

12月の昼下がり。ボリスはカフェに座っている。2日前にマケドニア議会の総選挙が行われたところだ。この選挙でも小規模ながら悪質なフェイクニュースが蔓延した。セルビアやクロアチアから発信されたフェイクニュースサイトが、野党の左翼党首ゾラン・ザエフが、マケドニアをマケドニア人とアルバニア系住民で分断させようとしていると報じたのだ。これを信じた投票者もいた。選挙の結果、ザエフ率いるマケドニア社会民主同盟は僅差で敗れた。

 

この一連の出来事に、ボリスはつくづく目が覚める思いだった。世の中政治だらけだ、とボリスは言う。

「みんな敵同士だ。兄はある政党を支持し、弟は別の政党を支持し、自分は正しい、おまえは間違っていると言い争っている」。ボリスは頭を横に振って言った。「メディアはおれたちを洗脳している。国民は羊みたいに従順で、メディアの言うことを聞いているだけだ」

いま、ボリスは無職だ。ボリスたちはいつものカフェか、同じ通りにいくつもある別の店でたむろしている。外は寒いのに、テーブルをヴェランダに出してひたすらタバコを吸い、雑談をして、スマートフォンをいじっている。

ボリスはまだ学校に戻ろうとは思っていない。だが漠然と、プログラミングを学んでマイクロソフトやアップルみたいな大企業で働けたらな、と思っている。

だがその前にもっと多くのウェブサイトをつくりたい。フェイスブックとグーグルが偽情報をふるいにかける新システムを発表したが、それらもまだインターネット中を駆けめぐっているささいな嘘までは捉えきれない。

ボリスが再び政治のフェイクニュースを取り扱うことはまずないだろうが、インターネットには無限のトピックが存在し、ネタ元になるウェブサイトも無数にある。そしてボリスがBMWを買えるようになるまで、記事を読み広告をクリックする人々も世界中に無数にいるだろう。

PHOTOGRAPHS BY by GUY MARTIN

TEXT BY by SAMANTH SUBRAMANIAN

TRANSLATION BY by EIJU TSUJIMURA

 

 

 

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